ニュースレター(2024年12月30日)2024年の貴金属相場と市場のまとめ
私は先週から休暇に入っていますので、先週金曜日までのデータ及び市場を基に今年のまとめのニュースレターをお届けします。次回ニュースレターは年初からのまとめを11日土曜日にお届けします。
週間市場ウォッチ
金曜日のLBMA PM金価格は、前週金曜日の同価格から0.02%安でトロイオンスあたり2616ドルとほぼ前週と同水準となっていました。この間金曜日のLBMA 銀価格は、前週の同価格から2.95%高のトロイオンスあたり29.65ドルと週間の上昇で前週の9月半ば以来の低さから上昇していました。金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格は、前週同価格から0.54%安のトロイオンスあたり925ドルと週間で下げていました。また、金曜日のLBMA PMパラジウム価格は、前週金曜日の同価格から0.22%安でトロイオンスあたり919ドルと5週連続の下げで金曜日の価格としては9月初旬以来の低さとなっています。
先週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
先週貴金属市場は欧米がクリスマス休暇で薄商いの中で、ドル及び長期金利の動きに反応し、また年末の利益確定などの調整の取引となっていました。金相場は、月曜日は週末に米議会がつなぎ予算に同意し一部政府機関の閉鎖が免れたことで多少下げたものの、クリスマス後には前週大きく下げたことからも買い戻されて木曜日にトロイオンスあたり2639ドルと一週間ぶりの高さまで上昇後に、金曜日に米長期金利が上昇したことや年末の利益確定からも上げ幅削って前週末の水準で終えていました。それに対し、銀、プラチナ、パラジウムは、金同様に金曜日までは週間で上昇していたものの、金曜日に下げ幅を広げて、前週終値からはさらに下げて終えていました。ちなみに、今週の金価格は薄商いの中で、米株価同様に年末の利益確定も入っている模様で、2600ドルの攻防となっています。
今年の金相場について
今年金相場は1月にFRBの政策金利引き下げ観測が後退する中で、2000ドルを超える水準に抑えられて始まりました。その後3月にFRB高官のハト派的コメントや経済懸念が広がっていた中国の需要増等もあり上昇をして史上最高値を主要通貨で記録し、更新していました。
4月の史上最高値更新はイスラエルとイランの紛争への懸念等が背景となっていました。5月の最高値は米インフレ鈍化によるFRBによる利下げ観測が背景となっていました。
6月には中国中銀の金購入停止がきっかけとなり良好な米雇用データで下げたものの、フランス政情不安で上昇をしていました。7月にも米雇用統計が雇用市場の逼迫緩和を示唆していたことからも再び史上最高値をつけていました。
8月初旬に日銀のサプライズの利上げで株価が急落したことで金は下げたものの、再びFRBの9月利下げ観測からも史上最高値を更新していました。
9月は同月の利下げ幅が0.5%と大幅なものになる観測、また同月のFOMCで観測通りの利下げが行われ、メンバーによる政策金利予想では年内2回の0.25%の利下げも示唆され、史上最高値更新を続けることとなりました。
10月は米経済が堅調であることで下げたものの、中東紛争激化にサポートをされ、今年の市場最高値をつけることとなりました。
11月は米大統領選でトランプ氏が勝利したことで、トランプトレードでリスク資産が上昇する中で下げ幅を広げることとなりました。
12月に入り、米インフレが粘着性の高いものであること、またFOMCでの将来の政策金利の引き下げペースが半減したこともあり2600ドルを試すこととなりました。
今年の貴金属価格のパフォーマンスを前年の終値価格と先週金曜日の価格で比較してみましょう。金は主要通貨建てで大きく上昇し、日本円建ては日本円が対ドル下げたことで、より大きく上昇しています。銀価格は金には劣るものの同水準で上昇したのに対し、工業用需要が大きく、中国の需要にも大きく影響を受けるプラチナとパラジウムは、同国の経済懸念からも下げることとなりました。
* 金、プラチナ、パラジウム価格は2023年12月29日のLBMAのAM価格。銀は同日LBMA価格。
** 金、プラチナ、パラジウム価格は2024年12月27日のLBMAPM価格。銀は同日のLBMA価格
また、今年のそれぞれの貴金属の最高値と最低値についても下記に示します。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、月曜日に12月24日までのデータが発表されて、米国がつなぎ予算で一部政府機関閉鎖を免れた後にクリスマス直前で薄商いの中で、金と銀とパラジウムはネット強気ポジションを減少させ、プラチナはネット強気ポジションを増加させていただこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、9.7%減で573トンと2週連続で減少して7月上旬以来の低さとなっていたこと。価格は0.9%安でトロイオンスあたり2614ドルへ下げ、建玉は3.5%減と2週連続で減少して2月27日以来の低さへ減少していたこと。2024年の平均はネットロング556トンと前年平均の286トンから増加、5年平均も369トンと前年までの5年平均の354トンから増加。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、6.7%減で3202トンと2週連続で減少して3月初旬の低さへ減少していたこと。価格は前週比2.3%安で、トロイオンスあたり29.61ドルと2週連続で下げて9月初旬以来の低さへ下げていたこと。2024年の平均は4262トンと前年平均の1797トンから増加し、5年平均は3561トンと前年までの5年平均3564トンから若干下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、前週のネットショートからネットロングへ転換して3.4トン。価格は前週比1.1%高でトロイオンスあたり942ドルと前週の9月初旬以来の低さからは上昇していたこと。縦玉は、前週の2006年6月以来の高さから下げて11月初旬以来の低さとなっていたこと。2024年平均は9.4トンのネットロングで、前年平均の7.3トンから増加し、5年平均は11.4トンと前年までの5年平均の12.0トンからは減少していたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに14.2%増で31.7トンと9月上旬以来の高さへ増加していたこと。価格は2.0%高でトロイオンスあたり953ドルと前週の8月初旬以来の低さからは上昇していたこと。縦玉は11月半ば以来の高さへ増加。2024年平均は32.6トンのネットショートと前年平均の21.8トンのネットショートから増加し、5年平均は8.4トンのネットショートで、前年までの5年平均の6.8トンのネットロングから下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週4.88トン(0.6%)減少し12月19日以来の低さへ週間で2週連続で下げていたこと。年間ベースでは前週までに、27日までに6.59トン(0.75%)減少傾向。その場合、4年連続の年間の減少であるものの、その減少量は下げていたこと。2023年38.53トン(4.4%)減、2022年57.2トン(5.9%)減、2021年195トン(6.8%)減。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、先週週間で全く変化なく、392.57トンと12月11日以来の低さ。年間ベースでは前週までに6.03トン(1.53%)減で4年連続の減少傾向であるものの過去3年より小幅となる。2023年50トン(11.6%)減、2022年42トン(8.9%)減、2021年36トン(7.0%)減。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週11653.78トン(1.15%)減で14,323.55トンで12月19日以来の低さで週間の減少。年間ベースでは前週までに、720.44トン(5.3%)増と3年ぶりに年間で増加傾向。前年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。
- 金銀比価は、先週88台後半に上昇して終えていたこと。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、先週1672~1686ドルを推移し、年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
- プラチナとパラジウムの差は8月27日からディスカウントで、12月18日からプレミアムに転換し、先週24日に一日ディスカウントになったものの、金曜日に19ドルで終えていたこと。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は835ドルのディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格は8月19日からディスカウントであったものの12月20日からプレミアムに転換し、先週金曜日に一日のみディスカウントになったものの、前週の平均は5.16ドルのプレミアムと前週の9.6ドルのディスカウントから増加。2024年の平均は15.15ドル。2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、先週前週比、金は47.4%減で少なくとも2019年8月以来の低さ、銀は45.2%減で金同様に2019年5月以来の低さ、プラチナは19.3%減で12月初旬以来の高さ、パラジウムは45.8%減で9月半ば以来の低さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月13日から負の相関関係で-0.70と週間ではその関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は12月19日から負の関係で、0.58と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は12月9日から正の関係で、0.58と前週から関係を弱めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週は欧米がクリスマス休暇で主要経済指標の発表は限られて薄商いの中で、ドルと長期金利の動きに市場は反応していましたが、来週も新年の休暇が入り、やはり経済指標やイベントは限られていますが、木曜日の主要国の製造業PMIや金曜日の米ISM製造業景況指数は注目されることとなります。
詳細は主要経済指標(2024年12月30日~2025年1月3日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年12月23日~27日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年12月30日~2025年1月3日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年12月23日)米政府閉鎖懸念で金ETFが過去3年で最大の残高増加した後につなぎ予算案可決で金は下落
- 金投資が21世紀を制した理由
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
先週と今週英国では、ウクライナ戦争や中東の紛争に関するニュースや、シリアの前提政権についてが引き続き大きく伝えられていますが、年末の今年一年を振り返るニュースが多く伝えられています。
そこで、今週のロンドン便りは、今年一年ここでお伝えしたニュースをまとめてみました。
内容を見ると、英総選挙を含む政権関連が13と最も多く、スポーツ関連は6、英王室関係は天皇皇后陛下の英国公式訪問も入れて3と少ない中、文化関係は8つのニュースをご紹介していました。
2月 英国の難民問題について、北アイルランドの政治関連ニュースについて、英下院補欠選挙の結果について、英ヴィクトリア・アルバート博物館がテーラー・スウィフト氏のファンを公式アドバイザーとして応募していたこと
3月 補欠選挙で勝利した反イスラエルのジョージ・ギャロウェイ氏について、ロンドンで行われた日本証券サミットについて、UK駅伝発足について、英政府の年金年齢引き上げ対応の問題について、テムズ川の水質問題について
4月 日英桜植樹プロジェクトについて、アフリカ全長を325日かけて走った英国男性について、たばこ製品を禁止した英国の法案について、英国の不法入国者対応のルワンダ法案
5月 英国地方選挙結果について、ユーロビジョン・ソング・コンテストについて、ロンドンでのプラチナウィークについて、スナク首相の突然の議会解散総選挙決定の背景について、英国総選挙の与野党の活動での話題について
6月 D-ディ80周年の記念式典について、ティラー・スウィフトのUKツアーの反響について、チャールズ国王の公式誕生日の式典について、天皇皇后両陛下の英国公式訪問について
7月 英国の総選挙結果について、サッカーの欧州選手権でのイングランドチームの活躍について
8月 バンクシーの新たな一連のストリートアート作品について、ウェールズ自治政府の新たな交通規制で影響を受けたサイクリングレースについて、英国政府の屋外での喫煙への規制について
9月 労働党新政権が年金受給者の冬季燃料支援金を廃止したことについて、朝日焼の16代松林豊斎氏のロンドンエキジビションについて、労働党の与党に返り咲いた後の初の党大会について
10月 英領チャゴス諸島のモーリシャス返還について、ウィンブルドンテニストーナメントで新たに自動オンライン判定を導入することについて、チャールズ国王のオーストラリア公式訪問について、英国の男性グループが56年間毎週パブで集っていること
11月 英新政権の予算案について、英国野党保守党新党首について、英国国教会を揺るがした問題について、ウクライナが米英兵器を対ロシアで使用したことについて、ブラインドラグビーについて
12月 ロンドン貴金属市場協会の年度末セミナーとパーティについて、著名辞書会社が選んだ2024年の言葉について、スターマ首相の支持率悪化について
素晴らしい新年をお迎えください。