金市場ニュース

ニュースレター(2024年2月16日)金価格は根強い米インフレで下げたものの2000ドルを守る

週間市場ウォッチ

本日金曜日の午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1998ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.3%安の2週連続の下落となっています。この間本日の弊社チャート上の午後12時の銀価格は、前週のLBMA価格(午後12時)から1.7%高のトロイオンスあたり23.03ドルと週間の上昇となっています。本日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から2.0%高のトロイオンスあたり896ドルと週間の下落となっています。本日金曜日の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から8.2%高のトロイオンスあたり947ドルと週間の上昇で前週の2018年7月以来の低さから大きく上げています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、米主要経済指標で動くこととなりました。まず、火曜日の米消費者物価指数が予想を上回り、FRBによる利下げの後ずれ観測が広がり、その後木曜日の米小売売上高が10か月ぶりの低い数値でその観測が後退しましたが、本日の米卸売物価指数が予想を上回り、インフレ鎮静化の遅れで、再び利下げ後ずれ観測が広がっていた模様です。

しかし、金価格はそのような中で直近のサポートラインのトロイオンスあたり2000ドルを割ると買いが入っており、堅固な動きといえるようです。とはいっても、中国市場が春節の休暇で閉まる中、株価市場も本日下げているものの、引き続き史上最高値水準を推移していることもあり、上値を追う動きは乏しいようです。

そこで、今週は、昨日も最高値を更新していた米主要株価指数の一つのS&P 500種と金価格のチャートをみていただきましょう。

パンデミックの2020年前後は逆相関関係でS&P 500種が下げる中金は上昇していました。その後、FRBの利上げと利下げ観測で、利上げは株と金には向かい風で、利下げ観測は追い風ということから、ほぼ正の相関関係に近い動きをし、2023年半ばからは株価がマグニフィセント7と呼ばれる、アルファベット、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラのハイテク株にけん引されて、金を引き離して大きく上昇しています。これは、最近ではドットコムバブルと比較するアナリストも出てきていますが、Fear of missing out (FOMO)によるリスクオン基調は、金の頭を押さえてはいるようです。

金価格とS&P 500種の推移 出典元 ブリオンボールト

そのような中、前週大きく下げていた工業用需要の多い銀、プラチナ、パラジウムは、先物・オプション市場でショートポジションが増加(パラジウムは史上最高の水準)していたことからも、上昇と共にショートカバーも入っているようで、大きく戻しています。詳しくは下記のその他の市場ニュースで詳細をご覧ください。

今週の金相場の動きと背景について

月曜日は中国が春節の休暇で一週間、日本と他の主要アジア市場が祝日で休場と市場参加者が少ない薄商いの中で、翌日の米消費者物価指数へと市場が注目してレンジ取引ではありましたが、トロイオンスあたり2019ドルと前週終値から下げて終えていました。

火曜日は市場注目の米消費者物価指数が発表され、予想を上回ったことで、金相場は直近のサポートラインのトロイオンスあたり2000ドルを割って1992ドルと2か月ぶりの低値へと下げて終えていました。

同日の米消費者物価指数は前月比0.3%と予想と前回修正値の0.2%を上回っていました。また、前年同月比では3.1%と前回の3.4%を下回ったものの、予想の2.9%を上回っていました。また、コアも前月比0.4%と予想と前月の0.3%を上回り、前年同月比は3.9%と前月と同水準で予想の3.7%を上回っていました。

事前の予想がほぼ前月から下げるというものであったことからも、前月よりと同水準、もしくは上回ったことは、サプライズとなり、FRBによる利下げが遠のいたという観測で、ドルが3か月ぶり、長期金利が2か月半ぶりの高さへと上昇していました。

そして、CMEのFEDWatchツールの3月の政策金利据え置きは前日の84%から94%へと上げ、5月の据え置きも40%から64%へと増加していました。

水曜日金相場は、ドルと長期金利が前日のそれぞれ3か月ぶりと2か月半ぶりの高さから若干下げる中、トロイオンスあたり1993ドルと引き続き12月半ば以来の低さで終えていました。

なお前日は、米消費者物価指数が予想の下げに対して上昇していたことで、株価も下げて、恐怖指数と呼ばれているVIXも3か月ぶりの高さへ上昇していました。

また、FRB高官は今週も引き続き早期の利下げのけん制をしていましたが、同日はFOMCの投票権を持たないもののシカゴ連銀のグールズビー総裁が金融政策について「(物価目標である)2%を達成するまで利下げの開始を待つことを支持しない」と述べたことが伝えられており、株価は前日から反発して上昇していました。

木曜日金相場は、ドルインデックスと長期金利が、予想を上回る米消費者物価指数でFRBによる利下げ観測が後退して急騰する前の水準へと戻る中で、2002ドルで終えていました。

この背景は、本日発表された米小売売上高が前月比-0.8%と予想の-0.1%と前回修正値の0.4%を下回り、米鉱工業生産も前月比-0.1%と予想の0.3%と前回修正値の0%も下回り、FRBによる利下げ観測が再び広がった模様です。

しかし、米新規失業保険申請件数は21.2万件と前回修正値と予想の22万件を下回り、フィラデルフィア連銀製造業景気指数も5.2と予想の-8.0と前回の-10.6を上回っており、金は小売売上高発表後には2008ドルまで一時上昇した上げ幅を削って、直近のレジスタンスの2000ドルの攻防となっていました。

本日金曜日金相場は、市場注目の米卸売物価指数が予想を上回ったことで、ドルインデックスと米長期金利が昨日の下げから反転し、トロイオンスあたり2000ドルを割って1995ドルまで一時下げた後、再び2000ドルを超えて2010ドル前後を推移しています。

卸売物価指数は、前月比0.3%と前回の-0.1%と予想の0.1%を上回り、前年同月比でも0.9%と前回の1.0%は若干下回ったものの、予想の0.6%を上回っていました。コアにおいても2.0%と前回修正値の1.7%、予想の1.6%を上回っていました。

そこで、発表後下振れして、2000ドルを割ると買いが入るようで、下げ幅を削って推移しています。

なお、その後発表された米1月建設許可件数が予想と前回を下回り、ミシガン大消費者態度指数が前回は上回ったものの、予想を下回ったことも多少行き過ぎたFRBの利下げの後ずれ観測を後退している模様です。

過去1週間のドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に2月6日のデータが発表され、発表前週金曜日の米国雇用統計で大きく下げた下げ幅を前日月曜日に金価格が削っていた際に、金を除く全ての貴金属において強気ポジションが減少していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、15%増で257トンと4週ぶりに増加に転じ、2週ぶりの多さになっていたこと。価格は0.5%安でトロイオンスあたり2030.80ドルと下げていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、前週のネットロングから再びネットショート転換して744トンとなっていたこと。価格は3.34%安のトロイオンスあたり22.31ドルと下げていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは前週以来ネットショートで、311%増加して7.5トン。価格は1.95%安でトロイオンスあたり907ドルと2週ぶりに下げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは引き続きネットショートで、2.2%増の32.8トンと増加していたこと。価格は3%安で951ドルと下げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに4.6トン(0.5%)減で837.31トンと7週連続の週間の減少傾向で2019年8月半ば以来の低さ。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.85トン(0.47%)減で390.11トンと3週連続の週間の減少傾向で2020年3月末の低さ。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで8.53トン(0.6%)増で13,635.56トンと2週連続の週間の増加傾向。
  • 金銀比価は、今週88で始まり、水曜日に90を超えた後に、本日は87を割って1月初旬以来の低さで終える傾向。2023年年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、前週木曜日に1153ドルと1990年にLBMA価格が始まって以来の高さへと上昇した後、5営業日連続で1101まで下げていたものの、本日1115へと若干上げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは前週木曜日に2018年4月以来初めてプラチナがパラジウム価格を上回ったものの、今週木曜日から再びプラチナ価格が下回り51ドルのディスカウントで終える傾向。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、今週春節の1週間の休暇で休場中。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週前週平均比で、金は30%増で前週の昨年年末以来の低さからは上昇し、銀は61%増で2022年11月半ば以来の高さ、プラチナは6%減、パラジウムは56%増で昨年11月末以来の高さ。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月27日に負の相関関係となり、本日-0.85と前週から強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は11月21日から負の相関関係へ転換して、本日-0.74と前週より関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は負の相関関係に14日から転換して-0.26。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は、中国が春節で一週間連休となる中、火曜日発表の米消費者物価指数、金曜日の米卸売物価指数等の重要指標、そして引き続きFRB高官のスピーチに、FRBによる利下げのタイミングを探る意味でも市場は注目しました。

来週もまた主要中央銀行の利下げタイミングの観測によって市場は動くこととなり、引き続きFRB高官のコメントと水曜日のFOMC議事録要旨、木曜日の主要国の製造業とサービス部門のPMI、そして米新規失業保険申請件数等へ注目することとなります。

詳細は主要経済指標(2024年2月19日~23日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、イスラエルとハマス紛争やウクライナ戦争関連に加え、前週がんと診断されたことが伝えられたチャールズ国王の様子、それに加え昨日行われた英国下院補欠選挙で野党労働党が連勝したこと、そしてロシアの反体制派ナワリヌイ氏が収監先で死亡したことを大きく伝えています。

そこで、本日は英国下院補欠選挙の結果について簡単にお伝えしましょう。

英国では総選挙は5年に一度行われるために、2025年1月までに総選挙が実施されなければなりません。

そこで、通常総選挙の間に行われる補欠選挙は与党政権への不満票が集まることから、与党が議席を失うことは多いとはいえ、今回の補欠選挙は総選挙での与野党への支持の動き見るうえでも重要とは考えられていたようです。

その結果は、与党が地盤としていた2つの選挙区で共に労働党が勝利することとなりました。特に一つの選挙区のイングランド中部のウェリングバラは2005年以来与党保守党が議席を守ってきた選挙区で、その票の流れは史上2番目の規模とのことです。

しかし、英国が欧州連合(EU)を離脱する是非を問う国民投票で、離脱運動を主導した、当時のイギリス独立党(UKIP)を率いたナイジェル・ファラージ氏が設立した、反移民政党の「リフォームUK」が両選挙区で健闘し、もう一方の選挙区のイングランド南西部のキングスウッドでは保守党とリフォームUKの投票数を合わせると労働党を上回っていたため、必ずしも労働党に票が一気に流れているということでもないようです。

しかし、2019年の総選挙以来行われた21回の補欠選挙で保守党は4回のみ勝利しており、スナク政権になってからは、1960年代のどの政権よりも補欠選挙で多く敗北した政権という記録はできてしまったようです。

そこで、ほぼ次期総選挙で労働党が政権取ることは間違いが無い様相となっていますが、それが過半数を超える大きなものとなるのか、リフォームUKの動きも含めて興味深い戦いとなりそうです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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