ニュースレター(2024年2月23日)エヌビディアにけん引されてリスクオン基調となる中でも、金価格は上げ幅を広げる
週間市場ウォッチ
本日金曜日の午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり2028ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.5%高の2週ぶりの上昇となっています。この間本日の弊社チャート上の午後12時の銀価格は、前週のLBMA価格(午後12時)から1.3%安のトロイオンスあたり22.72ドルと週間の下げとなっています。本日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から1.0%高のトロイオンスあたり904ドルと週間の上昇となっています。本日金曜日の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から3.6%高のトロイオンスあたり979ドルと2週連続の週間の上昇となっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属市場は注目のFOMC議事録の内容は想定内で影響を受けなかったものの、米AI関連企業エヌビディアの予想を大幅に上回る決算発表を好感してリスクオン基調となり、日経株価指数が史上最高値をつけるなど世界株価を引き上げる中、前週週間の上昇をしていた金はレンジ内ながら若干上昇、それに対し前週上昇していた銀とプラチナは下げ、史上最高のネットショートポジションを積み上げていたパラジウムは前週に続き上昇して終える傾向となっています。
FOMCの議事録では「物価目標の達成に向けて強い自信を得るまで利下げは適切ではない」と参加者が述べていたことが明らかとなったものの、FRB高官が12月のFOMC以降述べてきている内容と変化がなかったこと、また市場もFRB高官が前年12月のドットチャート(金利予想)で示していた年末までの3度の利下げ観測へと、年初には7回の利下げ観測を巻き戻してたことからも水曜日の発表後の影響が限定的となっていました。
なお、今週金融市場はエヌビディアに注目し、この株価高騰にけん引されて世界株価も上昇して、日経株価指数が史上最高値を記録していましたが、日本円建て金価格もまた、ロンドンの世界指標(午後3時)ベースでは今週市場最高値をつけていますので、今週のチャートとして、日経株価指数と日本円建て金価格の推移のチャートをお届けしましょう。
ご覧になってお分かりになるように、株価指数と共に日本円建て金価格が対ドル円安が進んでいることもあり、大きく上昇していることがご覧いただけます。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は前週の上昇基調を受け継いでロンドン時間昼過ぎまで上昇していましたが、その後ドルが若干強含んだことからもその上げ幅を緩やかに失ってトロイオンスあたり2016ドルと前週終値を多少上回る水準で終えていました。
同日は中国が春節の休暇から戻ったものの、米国が大統領の日で休日であることからも薄商いで、水曜日に発表されるFOMC議事録を待つ中で動意薄となっていました。
火曜日金相場は、ドルと長期金利が若干下げる中で、トロイオンスあたり2030ドルを一時超えて上昇後に2023ドルへ下げて終えていました。
米国祝日明けの同日はAI関連株として米株価を牽引して上昇していた画像処理半導体のエヌビディアの決算発表を前に下げていたこともあり、ナスダック100種が下げてS&P500種も下げ多少リスクオフ基調となっていたこと、そして中国は前週の春節後に引き続き上海黄金交易所のロンドンとのプレミアムはトロイオンスあたり50ドルを超えるなど需要の高さを示していたこと等が金のサポートになっていた模様です。
水曜日金相場は、市場注目の今晩発表のFOMCの議事録を前に、ロンドン時間日中にドルと長期金利が下げる中でトロイオンスあたり2032ドルへと一時上げたものの、その後長期金利が上昇に転じて上げ幅を削り、FOMC議事録発表後は大きな動きとはならず、前週終値から上昇して2026ドルで終えていました。
これは、FOMC議事録の予想を上回るタカ派的内容への警戒感で事前に下げていたものの、内容はほぼ市場の想定内でよりタカ派ではなかったことの安ど感からも上昇して終えた模様です。
木曜日金相場は、前日のエヌビディアの決算発表で一株利益と業績見通しが共に市場予想を大幅に上回り、株価が前日比15%高と上昇して、日経平均が史上最高値をつけるなど、世界株を軒並み引き上げる中、トロイオンスあたり2034ドルまで一時上げたものの、その後米雇用関係データが良好で2024ドルまで下げて終えていました。
この米雇用関係データは新規失業保険申請件数で、予想と前回修正値を下回り、昨年10月以来の歴史的にも低い水準となったことで、FRBの利上げ先送りの観測が広がった模様です。
なお、同日日本円建て金価格は、日本円が対ドル弱含んだことからも、gあたり9819円と12月4日の史上最高値以来の高値を一時つけていました。また、LBMAの午後の価格を日本円に換算した価格においては、gあたり9790円と史上最高値をつけていました。
本日金曜日金相場は、ドルインデックスは若干上昇しているものの、米株価が再び史上最高値をつける中で前日上昇していた長期金利が若干下げていることで、トロイオンスあたり2037ドルへと上昇して推移しています。
株価の上昇は、エヌビディアが本日セミコンダクター企業としては初めて2兆ドルの評価となり、AI関連企業の株価がけん引しているようです。しかし、ナスダック総合指数はその後下げて、S&P500種も上げ幅を削って推移しています。
そこで、長期金利の下げと株価が多少下げていることが金を押し上げている模様です。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に2月13日のデータが発表され、予想を上回る数値となった米消費者物価指数後に貴金属価格が大きく下げる中で、全ての貴金属において強気ポジションが減少していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、44%減で144トンとイスラエルとハマスの紛争が激化した10月17日以来の低さとなっていたこと。価格は1.7%安でトロイオンスあたり1996ドルと、予想を下回る米消費者物価指数で価格が上昇する前の昨年12月中ばの以来の低値へ下げていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、2週連続でネットショートで101%増の1498トンと、昨年のシリコンバレーバンク破綻で米地銀への懸念の高まりで価格が上昇する前の高い規模となっていたこと。価格は米消費者物価指数が発表前につけられたことから、2.5%高のトロイオンスあたり22.87ドルと前週の大幅な下げを削って上げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは4週連続ネットショートで、195%増加して22トンと昨年11月半ば以来の高い規模。価格は2.76%安でトロイオンスあたり882ドルと昨年10月初旬以来の低さへ下げていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは引き続きネットショートで、24%増の41トンと記録が始まっていら最大の規模へ増加していたこと。価格は7.9%安で876ドルと、LBMAの火曜日の価格では2017年7月末以来の低さへ下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに10トン(1.2%)減で827.81トンと8週連続の週間の減少傾向で2019年7月末以来の低さ。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.65トン(0.2%)減で389.46トンと4週連続の週間の減少傾向で2020年3月末の低さ。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで103.87トン(0.8%)減で13,426.40トン2週連続の週間の減少傾向と今週20日に達した2020年5月半ば以来の低さ。
- 金銀比価は、今週87で始まり、本日89と2月半ば以来の高さに上昇して終える傾向。2023年年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1110で始まり木曜日1138と上昇して、本日1127下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは今週60ポンドで始まり、昨日74ドルまで上昇後に本日は66ドルへ下げて終える傾向。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
- 上海黄金交易所(SGE)の金のプレミアムは、前週春節の1週間の休暇後に、週間の平均が49ドルと1月末以来の高さ。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週前週平均比で、金は12%減、銀は12%減と前週の2022年11月半ば以来の高さから下げ、プラチナは31%増で12月半ば以来の高さ、パラジウムは56%増で少なくとも2021年12月末以来の高さ。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月24日に負の相関関係となり、本日-0.68と前週からその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は11月20日から負の相関関係で、本日-0.85と前週より負の関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は負の相関関係に2月14日から転換して-0.41。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は水曜日のFOMCの議事録に市場は注目していたものの、想定内で動きが無く、エヌビディアの強い決算で世界の株価が引き上げられ、日経インデックスやS&P500が史上最高値をつける等、株式市場のニュースが注目されて、その他の経済指標や金が陰に隠れることとなりました。
来週も株価市場の動きは重要となりますが、それに加えてFRBや他の中央銀行の利下げ時期観測で為替及び長期金利が動く可能性があり、主要中央銀行の政策金利に影響を与える指標やイベントに市場は引き続き注目することとなります。
そこで、木曜日のFRBがインフレ指標として注目する米個人消費支出PCEコアデフレーターが注目の多いものとなりますが、その他、火曜日の米耐久財受注、水曜日の米GDP、金曜日の主要国の製造業PMI、ユーロ圏消費者物価指数、米ISM製造業景況指数等も重要となります。
詳細は主要経済指標(2024年2月26日~3月1日でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年2月19日~23日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年2月26日~3月1日来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年2月19日)金価格はショートカバーの上げを維持し、銀は中国が春節の休暇明けに反落
- プラチナが金との価格差を広げる中で、パラジウムの価格との差を狭める
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、イスラエルとハマスの紛争への停戦決議をめぐる英国議会の混乱、ウィリアム皇太子がこの紛争の一日も早い停戦を訴えたこと、英国内のエネルギー費用の上限が今年4月から下がること等が大きく伝えられています。
そのような中、本日は軽い話題で、ロンドンでも著名なヴィクトリア・アルバート博物館が、米ポップ歌手のテイラー・スウィフト氏の熱望的ファンを同美術館の公式アドバイザーとして迎えるために応募していることがニュースになっていたのでお伝えしましょう。
ヴィクトリア・アルバート博物館は、ロンドン市内に1981年のロンドン万国博覧会の展示品を基に産業博物館として翌年開館したとのこと。この近くには英国歴史博物館、英国科学館があり、博物館を目指す人の流れで週末に賑わいます。
ヴィクトリア・アルバート博物館は、絵画、彫刻、写真、陶磁器、宝石、衣装等多岐にわたり、多くのコレクションが収蔵されていますが、アートやデザインに特化した特別展を行っています。近年では、日本の古代から現在までの着物を展示したKyoto to Catwalkと題した着物エキジビション、韓国の文化を紹介したKorean Wave、ガブリエル・シャネルの作品と人生を見せているシャネル展などが行われています。
今回は、スイフト氏のファンの文化や熱狂的なファンが収集、制作する記念品について専門的な見解を持っているイギリス人のファンを探しているとのこと。特にファンによる手作りのサインやフレンドシップ・ブレスレットの職人芸に興味があるとのこと。
スイフト氏のすでに完売している今年後半のヨーロッパでのERASツアーが行われる前にこのアドバイザーを任命したいようです。
なお、すでにヴィクトリア・アルバート博物館にはポケモンカードやレゴの専門家がアドバイザーとして勤務しているとのこと。
スイフト氏のこの最新の世界ツアーは2023年に開始されて、前年行われた60のコンサートですでに10億ドル(1500億円)とこのようなコンサートとしては史上最高の収益で、すでに経済への影響がエコノミストが分析するような水準となっています。
社会現象を起こすスイフト氏に関する講義が米ハーバード大学で行われていることも今週伝えられていましたが、熱狂的なファンが著名博物館のアドバイザーとなり、また経済や社会的側面で研究がされるスイフト氏の今後を興味深く追っていきたいと思います。