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金価格ディリーレポート(2026年3月16日)金価格、戦争によるスタグフレーション懸念の高まりにもかかわらず5000ドル割れ

 

金価格は月曜日、トロイオンスあたり5000ドルを下回り、約4週間ぶりの安値圏に下落しました。米国とイランがエネルギー関連インフラを標的とした攻撃を行い、中東での新たな戦争が拡大する中、欧州の原油価格が1バレル100ドルを超えて上昇し、スタグフレーション懸念が高まっているにもかかわらず、金は下落しました。

スポット金価格は月曜早朝の取引で一時4969.34ドルまで下落しましたが、ロンドン昼頃までには下げ幅を縮小しました。金が5000ドルを割り込んだのは、米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まって以降、金が2週連続の週間下落を記録した後の動きとなりました。

カナダの銀行BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は、「米国経済はこの1年の間に2度目のスタグフレーション的ショックに直面しています」と述べました。この一回目は昨年春のトランプ政権による貿易関税ショックを指しています。

日本貴金属マーケット協会のチーフディレクター、池水雄一氏は次のように述べています。
「先行きの不確実性が続く限り、『現金化』への動きが続く可能性があり、その結果、あらゆるリスク資産(ゴールドを含む)で売りが広がるリスクがあります。」

また、経済学者でドイツの保険大手アリアンツの顧問でもあるモハメド・エルエリアン氏は次のように警告しています。
「戦争がエスカレートすればするほど、その経済・金融面での影響は、単なるエネルギー価格の急騰や借入コストの上昇にとどまらず、インフレ圧力の拡大、成長率の低下、失業率の上昇、さらには金融システム不安のリスク増大にまで及ぶ可能性が高まります。」

過去のエネルギー危機時の米インフレ指標と米GDPの推移 出典元 セントルイス連銀

金曜日に発表された最新データによると、米連邦準備制度(FRB)が重視するインフレ指標であるコア個人消費支出(PCE)物価指数は、1月時点で前年比3.1%となっていました。これは、2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃後に原油価格が100ドルを超える前の段階での数値です。

コアPCEインフレ率はすでに6年間にわたりFRBの目標である2%を上回っています。

一方、米国の2025年第4四半期のGDP成長率は0.7%にとどまり、従来推計の半分の水準に下方修正されました。これは中東紛争が始まる前の時点での数字です。

ゴールドマン・サックスは、米国とイスラエルによるイラン攻撃直後に次のように警告しました。
「原油価格が一時的に1バレル100ドルに上昇した場合、世界の総合インフレ率は0.7ポイント上昇し、世界の成長率は0.4ポイント低下する可能性があります。」

歴史的に見ると、金は石油危機などの大規模なエネルギーショック時に強いパフォーマンスを示してきました。特に、エネルギー価格の急騰が高インフレと低成長を伴うスタグフレーションを引き起こした場合に顕著です。

1973~1974年のオイルショックでは、アラブ産油国による供給削減により原油価格が急騰し、西側諸国の経済はスタグフレーションに陥りました。インフレが加速し経済活動が鈍化する中で、投資家は価値保存手段として金に資金を移し、金価格は1973年から1974年の間に約140%上昇しました。

同様のパターンは、イラン革命による第2次オイルショックでも見られました。イランの石油生産が混乱し原油価格が上昇したことで、世界的なスタグフレーション圧力が強まりました。

その結果、金価格は1979年初めの226ドルから年末には524ドルまで上昇し、投資家がインフレと地政学リスクからの防衛を求める中、1980年初頭には過去最高値を記録しました。

1990年の湾岸戦争では、中東の供給混乱懸念から原油価格が一時的に倍増し、金価格も約1カ月で約10%上昇しました。ただし、1970年代のような長期的スタグフレーションは発生しませんでした。

より最近では、ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー市場に衝撃を与え、対ロシア制裁によって石油・ガス市場が混乱しました。投資家がインフレと地政学リスクへのヘッジを求める中、金価格は8.5%上昇し、2022年3月にはトロイオンスあたり2039ドルと過去最高値に迫りました。

BMOのグアティエリ氏は次のように述べています。
「貿易戦争に続き、今回のイラン戦争はインフレと債券利回りを押し上げ、エネルギー供給網を混乱させ、投資家と企業の信頼感を揺るがし、世界需要を弱めるでしょう。」

主に工業用途で使われる銀価格も月曜日に下落し、トロイオンス78ドルを下回る約1カ月ぶりの安値を付けた後、ロンドン昼頃には81.42ドルまで回復しました。

一方、原油価格は週末に米国がイランのハルグ島石油輸出拠点を攻撃した後、1バレルあたり100ドルまで上昇しました。これを受けてイランは地域のエネルギーインフラへの攻撃を示唆し、世界の石油供給へのリスクが高まっています。

さらにトランプ大統領は、重要な石油輸送ルートであるホルムズ海峡のタンカー航行を確保するため、NATO同盟国にも協力を求めました。

今週は、米連邦準備制度(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、日本銀行(BOJ)など主要中央銀行が金融政策会合を予定しています。市場ではいずれも政策金利の据え置きが広く予想されており、特にFRBが公表する四半期ごとのドットプロット(政策金利見通し)が、今後の米金利の方向性を示す手掛かりとして注目されています。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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