金市場ニュース

ニュースレター(2024年9月13日)FRB利下げ幅0.5%観測の広がりで主要通貨建てで史上最高値を更新

週間市場ウォッチ

金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から2.8%高でトロイオンスあたり2575ドルと週間で上昇し、LBMA金価格で史上最高値をつけています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から4.0%高のトロイオンスあたり29.99ドルと週間の上昇でLBMA価格では7月半ば以来の高さとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から6.7%高のトロイオンスあたり996ドルと2週ぶりの週間の上げでやはりLBMAのPM価格では7月半ば以来の高さとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から10.8%高でトロイオンスあたり1057ドルと週間の上げで、4月半ば以来の高さとなっています。

週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、米消費者物価指数と生産者物価指数、そして欧州中央銀行の利下げに反応しながら動いていましたが、結局はこれらが来週のFOMCでの利下げ幅の与える影響を予想する中で、昨日一気に0.5%の利下げ観測が進み、金価格ではほぼ全ての通貨建てで史上最高値をつけ、銀価格とプラチナ価格は2か月ぶりの高さ、パラジウムにおいては5か月ぶりの高さへと上昇しています。

米消費者物価指数と生産者物価指数は必ずしも強いものではないものの、FRBが利下げ幅を0.5%とするものではないとの判断であったようですが、欧州中銀の利下げ後、価格に織り込み済みの利下げでドルが対ユーロ弱含み、レジスタンスの2530ドルを超えて更なる上げとなり、またロンドン時間昨夜発信されたウォールストリートジャーナルのFRBに近いとされている記者の記事が0.5%の可能性に触れたことや、ファイナンシャルタイムズの記事等もあり、本日一気に0.5%への観測は広がった模様です。

FEDWatchツールで示されている市場の利下げ観測は、9月のFOMCで0.25%の予想が主要である際も年末までに1%を超える利下げが予想されており、どこで0.5%に踏み切るかが、来週という観測となっている模様です。

ちなみに、昨日の価格の動きは、コメックス先物・オプションの取引量が金においては前日比約40%増、オプションにおいては90%増で、両者を合わせると8月5日の株価急落時以来の規模となっていたことからも、派生商品市場が先導していた模様です。

今週のチャートは主要通貨の月末LBMA金価格(9月は本日の午後3時の価格)の推移をお届けします。米ドル、英ポンド、ユーロ建てが今週史上最高値を更新したものの、日本円建ては円が対ドル強含んだことから下げていますが、未だ年初来の上げ幅は23%と、他の主要通貨の米ドルとユーロ建てと同様もしくは英国ポンド建てにおいては20%であることからも未だ上回っています。

主要通貨建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

今週の金相場の動きと背景について

月曜日金相場はロンドン時間午前中に金価格は下げたものの、その後トロイオンスあたり2506ドルへ戻して終えていました。

当初の下げは、9月のFRBによる政策金利の利下げ観測が0.50%から0.25%へと金曜日のまちまちな雇用統計後進んでいることで金利とドルの上昇が背景となっていましたが、年内の利下げ幅は引き続き1.25%であることからも、金のサポートとなっていました。

なお、中国中銀は金準備を8月も4か月連続で増加させていませんでしたが、その評価額は価格上昇からも4%弱増加して、1996年以来の高い外貨準備全体の割合の5%となっていることが明らかとなっていました。

火曜日金相場は、ドルは若干上昇していたものの、長期金利が昨年5月以来の低さへと下げる中で、トロイオンスあたり2518ドルへと上昇して終えていました。

同日夜にはハリス米副大統領とトランプ前大統領のテレビ討論が予定されており、また翌日は米消費者物価指数の発表た予定されていたことからも、動きずらい状況の中で緩やかに上昇していました。

水曜日金相場は、ロンドン午前中に市場注目の米消費者物価指数を待つ中でトロイオンスあたり2528ドルまで上昇後、発表されたデータが来週のFOMCでの0.5%の利下げを正当化するものでないという判断となり、ドルが強含む中で2501ドルまで一時下げたものの、2512ドルまで戻して終えていました。

米インフレ指標は、前年同月比は2.5%と予想の2.6%と前回の2.9%を下回っていましたが、コアの前月比が0.3%と予想と前回の0.2%を上回っていたことに反応することとなりました。

そこで、ドルが強含み、長期金利も昨年5月以来の低い水準から若干上昇したことが、金を当初押し下げたものの、下値の買いで下げ幅を削ることとなりました。

なお、翌日の欧州中央銀行の金融政策決定会合で6月に続く利下げが予想されていることからも、同日ユーロが対ドル下げて、ユーロ建て金相場はトロイオンスあたり2289ユーロと史上最高値をつけていまそた。

木曜日金相場は、欧州中央銀行(ECB)が予想通り0.25%の利下げを行い、利下げが織り込み済みで下げていたユーロが対ドル強含み、トロイオンスあたり2560ドルと8月20日の最高値を20ドル強上回る新高値を付けていました。

同日ECBは市場の予想通り6月に続く0.25%の利下げを発表し、中銀預金金利を3.75%へと下げ、今後の利下げは「データー次第」としていました。この発表を受けて、ドルが3営業日ぶりに下げたことが、金の上昇のきっかけとなっていました。

その後、直近のレジスタンスの2530ドルを超えたことで、更なる上昇をすることとなりました。

この間米生産者物価指数は前月比で0.2%と予想の0.1%と前回修正値の0.0%を上回り、コアも同様に0.3%と予想の0.2%と前回修正値の‐0.2%を上回り、新規失業保険申請件数も若干上回っていましたが、FOMCの利下げ観測を大きく変えるものとはなっていた模様です。

なお、ユーロ建て金価格はトロイオンスあたり2314ユーロと前日の最高値2289ユーロと25ユーロほど急騰していまいた。

本日金曜日は、来週のFOMCでの利下げ幅が0.5%となる観測が広がり、ロンドン昼過ぎにトロイオンスあたり2583ドルと前日の史上最高値を更新し、日本円とスイスフラン建てを除くほぼすべての主要通貨で史上最高値を付けています。

この背景は、昨夜FRBに近いとされているウォールストリートジャーナルの記者と、また別途ファイナンシャルタイムズが0.5%の利下げの可能性についての記事を出したことともされています。

そこで、ロンドン時間午前中に前日28%であった0.5%の利下げの確率が一気に43%へと増加し、年末の利下げ幅も、1%を超えて今年2月初旬以来の幅となっていました。

そのために、ドルインデックスは8月下旬以来の低さ、長期金利は2023年7月以来の水準へ下げています。

過去1週間のドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に9月3日までの一週間データが発表され、予想を下回る米ISM製造業景況指数と製造業PMIで米景気後退の懸念で株価が8月初旬以来の下げ幅を見せたことで貴金属価格も現金化等から下げた際に、パラジウムを除くすべての貴金属でロングポジションが減少していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、4%減で705トンと3週ぶりに減少して、前週のコロナ危機下の2020年3月10日の週以来の高さから下げていたこと。価格は1.2%安でトロイオンスあたり2480ドルと前々週のLBMA価格としては史上最高値から2週連続で下げていたこと。建玉は4%減で2週連続で減少して8月6日の週以来の低さへ減少していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、25%減で4121トンと2週ぶりに減少して8月13日の週以来の低さとなっていたこと。価格は前週比5.3%安で、トロイオンスあたり28.32ドルと、8月13日の週以来の低さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、8月20日から2週連続でネットロングであったものの、ネットショートへ転換して16.8トンと3月5日の週以来の大きさとなっていたこと。価格は前週比4.9%安でトロイオンスあたり912ドルと2週連続で下げて8月6日週以来の低さとなっていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートであったものの、7.0%減で39.6トンと4週連続で減少して7月16日の週以来の低さへ下げていたこと。価格は1.0%安でトロイオンスあたり956ドルと3週ぶりに下げて前週の7月9日の週以来の高さから下げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で8トン(0.9%)増で870.87トンと1月初旬以来の高さで週間の増加傾向。ちなみに前週は9週連続の週間の増加後に週間で全く変化なし。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で全く変化がなく367.98トンと8月14日以来の高さであり、前週までは3週連続の週間の増加。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに45.4トン(0.31%)増で14,545.76トンと週間の増加で4週間連続の増加傾向であること。
  • 金銀比価は、今週88台後半で始まり、本日85台前半まで下げて終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1559ドルで始まり本日1627ドルと記録が残っている1990年3月以来最大となっていたこと。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は前々週火曜日から再びディスカウントへ転換し、今週一日12ドルのプレミアムとなっていたものの、その後ディスカウントで本日は109ドルと、今年3月半ば以来の高さへ上昇して終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は8月19日からディスカウントとなり、今週の平均は7.35ドルと本日人民元価格が史上最高値を付ける中で8月末以来の高さへ上げて、前週の5.20ドルから上昇していたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は13%減で8月下旬以来の低さ、銀は13%減で3月末以来の低さ、プラチナは7%増で6月21日の週以来の高さ、パラジウムは40%増で8月29日の週以来の高さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は6月27日から負の相関関係で-0.41と週間では負の関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は6月10日から負の関係へ転換し、-041.と前週から関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は8月6日から正の関係で、前週から0.39と関係を弱めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は市場注目の米消費者物価指数と生産者物価指数への反応は限られていましたが、欧州中央銀行の利下げを受けて大きく金価格は急騰することとなりました。

来週は、いよいよFOMCの金利発表が水曜日にあり、木曜日にはイングランド銀行、金曜日は日本銀行の金利発表と重要イベントが続くこととなります。

詳細主要経済指標(2024年9月16日~20日)ご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、ウクライナ政府が長距離ミサイルの制限解除を求めていることに対する英米外相の議論とそれに対するプーチン露大統領の牽制的なコメント、スターマ新政権が年金受給者へ支払われていた冬季燃料支援金を基本廃止すること、そして、キャサリン妃が化学療法を終了し公務復帰すること等が大きく伝えられています。

そこで、本日は一部低所得層を除いた国家年金受給者の冬季燃料支援金を廃止する法案が今週議会で可決されたので、ご紹介しましょう。

冬季燃料支援金は、2022年にパンデミックを経てインフレ率が最大11%を超えて40年来の高さとなっていた際に、生活費上昇への家計支援の目的で導入され、金受給者世帯に所得の額を問わずに80歳以上は一律月額300ポンド(約55000円)、66歳から80歳は200ポンド(約37000円)を最も光熱費がかさむ11月と12月に支給をしていたのでした。

当時エネルギー代は急騰し、政府が設定していた額の上限はこの支援が導入された2022年10月には年間2817ポンド(約52万円)と4月の1971ポンド(約36万円)から846ポンド(約16万円)引き上げられ、前年10月から同年3月までの2倍超となっていました。

そして、今年の10月から12月までの上限は1717ポンド(約31万円)と当時から若干下げていますが未だ高水準となっています。

そこで、新政権の決定に対し、野党保守党が反対をするのはもちろんのこと、与党労働党の議員も不満を表明し、労働党の支援団体である労働組合もまた再考を求めていました。

しかしスターマ新政権は、前保守党政権が避けてきた困難な決定を、悪化している財政立て直すためにも行う必要があると述べていました。

今回の決定で前年1080万人が受給していた冬季燃料支援金は、150万人ほどへと減ることとなり、これによる予算削減額は15億ポンド(約2770億円)となるとのこと。

2024年7月の時点で、英国の政府債務は約2兆7,400億ポンド(約506兆円)で、国内総生産(GDP)の99.4%と、2023年7月末から3.8ポイント増加して、1960年代初頭以来の債務水準となっています。

そこで、議会においても新政権が財政再建を行おうとすることは理解が示されているようですが、新政権がジュニアドクターやロンドン地下鉄従業員の賃上げ要求をほぼ受け入れたことからも、どこに優先順位をつけるべきかについての議論ともなっているようです。

新政権は7月の総選挙で過半数をとっており、ハネムーン期間である早い段階で、大きな変革を行おうとしているのでしょう。

ちなみに、英国の対GDP債務は、IMFのデータによると2022年の段階で日本の214%、米国の110%、イタリアの140%との比較では100%前後と若干低いものではあるものの、その金利支払いは政策金利が日本の0.25%に対して5%と高いものであることからも、より緊急性があるということなのでしょう。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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