ニュースレター(2024年11月29日)米感謝祭の祝日で薄商いの中、金価格は前週の上げ幅の3分の1を失う
週間市場ウォッチ
金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から1.6%安でトロイオンスあたり2651ドルと週間の下げで、前週の今年3月一週以来の大幅な上げ幅の3分の1を失って下げています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から1.3%安のトロイオンスあたり30.71ドルと週間の下げとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から1.7%安のトロイオンスあたり943ドルと週間の下げで前週の上げ幅を削っています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から2.9%安でトロイオンスあたり991ドルと前週の7.9%の上げ幅の半分弱を失って週間の下げとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属相場は、前週の大幅な上げ幅を削って下げることとなりました。この背景の一つはトランプ次期大統領が、財政規律重視、大幅な関税へ懐疑的である、スコット・ベッセント財務長官を指名したことで、トランプ次期大統領の財源なき減税や関税引き上げなどによる、米国債市場の需給バランスが崩れることや貿易戦争による高インフレの懸念が後退したことですが、インフレが根強く続く観測でFRBによる利下げペースが落ちるということもあるようです。また、金においては10月から直線的な上昇をしていたので、調整も入っている模様です。
そのような中、米国株価は、トランプ次期大統領がビジネスを重視するという観測、それに加えベッセント時期財務長官が米財政問題を悪化させず貿易戦争を起こさずに経済成長を支えるという観測で、今週最高値の更新をしていますので、安全資産としての金の需要が減少していることも背景と思われます。
そこで、今週は金(黄色)とS&P 500種(青)の年初からのチャートをお届けしましょう。
今月の上げ幅は、金は3.5%安ですが、S&P 500種は3.4%高となっています。しかし、年初からを見ると、金は未だ29.5%とS&P 500種の27.3%を上回っています。
なお、金以外の他の貴金属が下げていたのは、一つには金の動きに影響を受けていたことからですが、トランプ次期大統領の貿易戦争的政策が、すでに不動産や株価が急落して経済成長が滞りつつある貴金属の最大消費国の中国の先行き不透明性を作ることへの懸念も背景となっている模様です。
今週の金相場の動きと背景について
週明け月曜日金相場は、前週のLBMA価格ベースで3月以来の大幅な上げ幅の半分ほどを失い、トロイオンスあたり2620ドルで終えていました。
この背景は先週金曜日に時期トランプ大統領が次期財務長官として財政規律を重視する、ヘッジファンド会社を経営するスコット・ベッセント氏に指名したことによって、米債務問題の悪化が避けられるという観測、またイスラエルとイランが支援するレバノンの武装組織であるヒズボラが近い将来停戦するという地政学リスクの後退等が背景となっていました。
火曜日金相場は、前日の大きな下げを持ちこたえて前日終値から若干上昇して2628ドルで終えていました。
月曜日はトランプ次期大統領の次期財務長官が財政規律を重視し、更なる関税にに懐疑的と伝えられて米財政赤字問題や貿易戦争懸念が軽減していましたが、同日トランプ氏は対中国、カナダ、メキシコに対する新たな関税を表明していました。
しかし、ドルと長期金利は若干上昇していたものの、米株価は同日も上昇して、S&P500種においては今年52度目の史上最高値をつけ、リスクオン基調は続いていました。
なお、同日発表されたFOMCの議事録においては、緩やかな利下げに対して幅広い支持があったことが確認され、特にサプライズは無しと、市場への影響は限定的でしたが、12月のFOMCでの25ベーシスポイントの利下げの確率は増加して、一週間前の55%強から60%弱となっていました。
水曜日金相場は、FRBが注目する米インフレ指標が引き続き根強いインフレを示し、前日から一時トロイオンスあたり2658ドルまで上昇していた上げ幅を削って、2635ドルで終えていました。
発表された個人消費支出PCEコア・デフレーターは、前年同月比2.8%と前回の2.7%を上回り、米第3四半期GDPは2.8%増と予想と同水準、米新規失業保険申請件数も21.3万件と市場予想の21.5万件を下回るなど、経済と労働市場の堅調さを示していました。
そこで、前日のFOMC議事録でも緩やかな利下げをメンバーが支持していたことが示されており、12月のFOMCの利下げの確率はFEDWatchツールでは同日7割弱と高く維持されていたものの、長期的な利下げベースの遅れの観測が背景となっていた模様です。
また、翌日は米感謝祭の祝日で、多くの市場関係者は長期休暇に入るために、ポジションの調整も起きていた模様です。
なお、イスラエルとレバノンのイランが支援する武装集団ヒズボラの停戦は同日から60日間ということで行われていましたが、すでに月曜日に価格に織り込まれていたことからか、この影響は限定的でした。
木曜日金相場は、米国が感謝祭の祝日で薄商いの中、狭いレンジでの取引で前日から若干上昇してトロイオンスあたり2636ドルで終えていました。
本日金相場は、米国が前日の感謝祭の祝日後市場は開いているものの、米株価市場は短縮取引でもあり、多くの市場参加者が長期休暇を取って引き続き薄商いの中で、トロイオンスあたり2666ドルまで上昇して、2658ドル前後をロンドン時間夕方に推移しています。
先の動きは米ドルと米長期金利が若干下げていることに反応している模様ですが、この背景はトランプ次期大統領が引き起こすであろうという貿易戦争や財政赤字拡大への懸念が、ベッセント次期財務長官指名で財政規律重視と関税縮小観測となり、後退していることへの反応とされています。
その他の市場のニュ―ス
- 中国宝飾品大手のChow Tai Fook社は、9月末までの半期の売り上げが20.4%急落し、中国国内の7000店舗の内240店舗を閉鎖し、香港を拠点とする宝飾店のLuk Fookもまた上半期の売り上げが25%減で、175店舗を閉鎖したとのこと。
- 香港証券取引所の宝飾品会社の周泰福の株価は37.5%下落し、六福は29%減となり、中国の商業銀行は金現物投資のリスク分類を引き上げ、そこで、香港証券取引所の宝飾品会社の周泰福の株価は37.5%下落し、六福は29%減となり、中国の商業銀行は金現物投資のリスク分類を引き上げ、金のポジションを増やすことができなくなっていると伝えられていたこと。
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に11月19日までのデータが発表されて、米国が米国製長距離ミサイルのロシア国内への攻撃の利用を認めたことで、ロシアが核兵器使用基準の引き下げを行い、緊張が高まっていた際に、金とパラジウムでネットロングポジションが減少し、銀とプラチナでネットロングが増加していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、3.6%減で591トンと4週連続で減少していたこと。価格は0.6%高でトロイオンスあたり2623ドルへと上昇していたこと。建玉は2.4%減と4週連続で9月初旬以来の低さへと減少していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、7.6%増で4027トンと3週ぶりに増加して3月初旬以来の低さから若干増加していたこと。価格は前週比2.8%高で、トロイオンスあたり31.26ドルと3週ぶりに上昇していたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、9月17日からネットロングで、6.8%増で19トンと2週ぶりに9月半ばの低さから増加していたこと。価格は前週比1.4%高でトロイオンスあたり970ドルと2週ぶりに前週の9月初旬以来の低さから上昇していたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週までに11.6%増で24トンと3週連続で増加して2022年12月末以来の低さから10月初旬以来の大きさへ増加していたこと。価格は6.5%高でトロイオンスあたり1030ドルと前週の9月初旬以来の低さからじょうしょうしていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で0.6トン(0.1%)増で878.55トンと11月初旬以来の高さへ増加し、2週連続の週間の増加傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.18トン(0.05%)増で392.77トンと今年2月初旬以来の高さで、3週連続で週間の増加傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに45.36トン(0.3%)減で14,754.96トンと11月半ば以来の低さで週間の減少傾向。
- 金銀比価は、今週86台後半で始まって徐々に上げて木曜日に88を超えて9月初旬以来の高さの後に、本日金曜日に86台後半へ戻して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1718ドルで始まり、火曜日に1700を割ったものの、本日1721ドルへと上昇して終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差は9月10日から再びディスカウントへ転換し、月曜日53ドルで始まり、本日46ドルと下げて終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格とのディスカウントは15.44ドルと前週の11.46ドルから幅を広げて2週ぶりの大きさとなっていたこと。上海黄金交易所とロンドン金価格の差は今年8月19日からディスカウント。2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は5.8%減で11月初旬以来の低さ、銀は19.9%増で11月初旬以来の高さ、プラチナは33.9%増で10月下旬以来の高さ、パラジウムは21.3%減で11月半ば以来の低さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月13日から負の相関関係で-0.60と週間ではその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金も11月11日から負の関係へ転換し、-0.66と前週から関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は11月5日から負の関係で、前週から-0.67とほぼ前週と同じ水準の相関関係であったこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週は先週金曜日のトランプ次期大統領が財政規律重視派のスコット・ベッセント氏を指名したことで、金の安全資産の需要が減少する観測で金が下げ、他の貴金属もつられて下げて始まり、米感謝祭の前の火曜日の米FOMC議事録、水曜日のFRBがインフレ指標として重視する米個人消費支出コア・デフレーターへ市場は注目し動いていました。
来週は月初の米国雇用統計が金曜日に発表され、その他雇用関係データとして、火曜日の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、水曜日のADP全国雇用者数等も重要となり、その他、月曜日の主要国の製造業PMIと米ISM製造業景況指数、水曜日の主要国のサービス部門PMI等へも市場は注目することとなります。
詳細は主要経済指標(2024年12月2日~6日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年11月25日~29日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年12月2日~6日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年11月25日)金価格は財政規律重視派の時期米財務長官への期待で下落
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、緊張が増すウクライナ情勢やイスラエルとイランが支援するレバノンのヒズボラ武装勢力の休戦について、トランプ次期大統領の政権主要人事の指名について、英国を襲った暴風雨「バート」による洪水の被害、そして本日金曜日に英国議会で「安楽死を選ぶ権利を認める」法案の投票が行われ、この法案の賛成が反対を上回ったこと等が大きく伝えられています。
そのような中、私は先週末土曜日に日本ブラインドラグビー協会の代表選手がイングランドの視覚障害ラグビー協会から招待された、イングランドとアイルランドと日本の3か国対抗の大会の応援に行きましたので、その模様をお伝えしましょう。
ブラインドラグビーというのは、視覚障害者のスポーツで、1チームあたりの選手人数は7名で、使用するグラウンドは、通常のラグビーよりも小さく縦70~100メートル、横50~65メートル以内で、試合時間は前、後半それぞれ10分でハーフタイムが3分となっています。
その歴史は、2015年にイギリスで考案されて2018年に日本に紹介されたという、とても新しいスポーツとのことです。
今回の大会では基本視覚障害の方々が参加し、全盲の選手は参加されていなかったとのことですが、その視覚障害の度合いについては、世界統一の基準が未だ確立していないために、今回の大会では、それを含むスポーツの世界統一基準を作るためのミーティングも行われたとのことです。
ちなみに、今回の大会はイングランドの視覚障害ラグビー協会のルールで行われたために、ラグビーボールは日本ラグビー協会同様に鮮やかな黄色でしたが、同協会で使っている鈴入りのボールではなかったとのことです。
当日は英国を襲っていた暴風雨「バート」の影響で、ほぼ1日中小雨が降り強風という天候の中で、各国の代表の方たちはグループステージの3試合と順位決定戦の1試合、計4試合を力強く戦っていました。
結果はイングランドが1位、日本が2位、アイルランドが3位というものでしたが、多くの試合は僅差であり、試合終了後に皆がお互いの健闘を称えあうスポーツ精神一杯のものでした。
私は今回日本ブラインドラグビー協会のアドバイザーをしている友人の紹介で、日本代表の初海外遠征のブラインドラグビーのサポートをさせていただくことで、協会の関係者の方々ともお話をする機会をいただきましたが、この遠征を機会に日本での認知度も高めて、近い将来に世界大会を日本で運営することが夢であると、力強く語ってくださいました。
ブラインドラグビーの選手の皆さんの一生懸命に戦う姿と、関係者の方々のブラインドラグビーの発展を願う真っ直ぐな心持に、初めてこのスポーツに触れる中で応援をしていた人々の多くが感動と力をいただく1日となりました。
下記に日本ブラインドラグビー代表の選手の方々の今回の大会資料の中の写真を添付します。