金市場ニュース

ニュースレター(2024年11月8日)米国選挙を経て金価格は3週ぶりの低さへ下げる

週間市場ウォッチ

金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から1.9%安でトロイオンスあたり2691ドルと、10月半ば以来の低さへ下げています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から3.8%安のトロイオンスあたり31.54ドルと2週連続の下げで、やはり10月半ば以来の低さとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から1.8%安のトロイオンスあたり986ドルと2週連続の下げで、10月半ば以来の低さとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から10.3%安でトロイオンスあたり1009ドルと2週連続の下げで10月初旬以来の低さとなっています。

週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週金価格は、火曜日の米国の選挙を前に先行き不透明感からも上昇を続けていましたが、結果がトランプ氏の圧勝であったことで、調整からも上げ幅を削って3週ぶりの低さへ下げることとなりました。

この間ドルと長期金利は、トランプ氏の減税、経済刺激策といった政策がインフレを引き起こすとの観測で、FRBの利下げが遅延する見方からも上昇したことも、貴金属全般の価格を抑えるものとなりました。

また、トランプ氏の中国に対する関税引き上げ観測は中国の需要が高い、工業用貴金属の銀、プラチナ、パラジウムの下げ幅をより大きなものともしている模様です。

今週のチャートとしては、それぞれの大統領の任期間の金と銀の実質価格の変化のチャートをお届けします。

また、弊社のリサーチが発表したレポートでは、ニクソン大統領以来の金と銀の動きをまとめていましたが、共和党政権(ニクソン/フォード、レーガン、ブッシュH とブッシュW、トランプ氏)、では金は平均3.7%高、銀は平均0.9%安のパフォーマンスである中、民主党政権(カーター、クリントン、オバマ、バイデン氏)では金が5.3%高、銀は6.1%高となっています。

過去の米大統領下でのドル建て金・銀実質価格チャート 出典元 ブリオンボールト

今週の金相場の動きと背景について

週明け月曜日金相場は今週の米大統領選と米FRBの政策金利発表を控えて、動きづらい状況で、前週終値のトロイオンスあたり2736ドルを挟んで20ドル弱の狭いレンジでの取引となっていました。

翌日行われる米大統領選の事前予想では引き続きトランプ氏とハリス氏が僅差となっており、その結果が遅れる可能性、2000年のように法廷闘争となる可能性、どちらとなっても政府債務が肥大化する可能性などで、金は下げづらい状況でしたが、トランプ氏が勝利する観測でリスク回避で急上昇していた経緯からも、調整の下げは必要であるという狭間となっていました。

火曜日日金相場は、米国選挙日で先行き不透明感からもドルが下げる中、トロイオンスあたり2738ドルで終えていました。

今回の大統領選はかつてない僅差と予想されており、結果が出るのも投票数の再計算等で遅れる可能性もあり、金をサポートしていた模様です。

水曜日金相場は、トランプ氏の大統領選当選確実のニュースを受けてドルと長期金利が7月初旬以来の高さへと上昇する中で、トロイオンスあたり2660ドルと3週ぶりの低さへ一時下げて2661ドルで終えていました。

この間、テスラ株を筆頭に米株価は上昇し、米株価指数は史上最高値をつける等、トランプ氏の掲げる減税と規制緩和で米景気が押し上げられる期待のトランプトレードとなっていました。そして、トランプ氏の政策がインフレを上昇させるもので、それによるFRBの利下げが遅れる観測から、ドルと長期金利の上昇が起きていた模様です。

木曜日金相場は、同日夜のFOMC後の政策金利発表を待つ中で、ドルは前日の7月初旬以来の高さを保っていたものの、長期金利が7月初旬の高さから若干下げたことで、トロイオンスあたり2698ドル前後へ上昇し、前日の3%の下げのほぼ半数を取り戻して推移していました。

これは、同日発表された米新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数が共に前回を上回っていたことで、FRBの継続利下げ観測が広がっていた模様です。

FOMC後の発表では、市場予想通りフェデラルファンドレートの0.25%の利下げが発表され、パウエル議長が記者会見で近い将来に利下げを停止する可能性を強く示唆しなかったことからドルが弱含み、長期金利も下げたことで、金はトロイオンスあたり2710ドルまで上げて終えていました。

本日金曜日金相場は、ドルが若干強含んだこと、そして引き続き上昇を続ける米株価からも、前日の上げ幅を多少失いながらも、トロイオンスあたり2637ドル前後を推移しています。

米株価はトランプトレードで、今年6月以来の資金の流入となっている模様で、S&P500種が今年50回目の新高値を付ける勢いであることからも、金の影が薄くなっている模様です。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • 今週発表されたデータによると、10月に中国中銀は6か月連続で金準備を増加させていなかったものの、インド中銀は27トン、ポーランドの中銀は7トン金準備を増加させていたこと。
  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に10月29日までのデータが先週末に発表されて、翌週に米大統領選を控えて政治リスクからも2営業日連続で金価格の史上最高値が更新されていた際に、金と銀はネットロングポジションを減少させ、プラチナとパラジウムではネットロングポジションが増加していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、2%減で737トンと2週ぶりに減少していたこと。価格は1.2%高でトロイオンスあたり2769ドルと上昇していたこと。建玉は3.9%減と2週ぶりに減少して9月末以来の高さから減少していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、13%減で6402トンと2週ぶりに減少して3月中旬以来の高さから下げていたこと。価格は前週比0.8%安で、トロイオンスあたり34.15ドルと前週の12年ぶりの高さから下げていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、9月17日からネットロングで、23%増で48トンと2021年2月以来の高さへ増加していたこと。価格は前週比3.4%高でトロイオンスあたり1050ドルと5月末以来の高さへ3週連続で上昇していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週までに65%減で5トンと3週連続で減少して2022年12月末以来の低さへ下げていたこと。価格は13.5%高でトロイオンスあたり1222ドルと2023年9月半ば以来の高さへ上昇していたこと。週間の下げ幅は6月半ば以来の大きさ。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で8.0トン(2.9%)減で880.58トンと10月半ば以来の低さへ下げて、2週連続の週間の減少傾向。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.08トン(0.02%)減で380.84トンと週間で11週ぶりに減少傾向。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに86.95トン(0.6%)減で14,862.69トンと4週ぶりに週間の減少傾向。
  • 金銀比価は、今週83台半ばで始まり、水曜日から85台へ上昇して本日金曜日に85台半ばで終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1742ドルで始まり、本日1700ドルへ下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は9月10日から再びディスカウントへ転換し、今週109ドルのディスカウントで始まったものの、本日22ドルまで下げて終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格とのディスカウントはほぼ16ドルと10月初旬以来の高さへ前週の$15ドルから上げていたこと。上海黄金交易所とロンドン金価格の差は今年8月19日からディスカウント。2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は24%増で7月末以来の高さ、銀は8%増で2週ぶりの高さ、プラチナは2%増で2週ぶりの高さ、パラジウムは12%増で8月末以来の高さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は10月7日から正の相関関係で0.57と週間ではその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金も10月7日から正の関係へ転換しているものの、0.18と前週から関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は11月5日から負の関係で、前週から0.32と関係を強めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は米国大統領選と昨日のFOMCの結果に市場は注目し動いていますが、来週は水曜日に米消費者物価指数、木曜日に卸売物価指数が発表され、追加同日の米失業保険申請件数等と今後のFRBの利下げ観測に影響するデータに注目が行くこととなります。

詳細は主要経済指標(2024年11月11日~15日)ご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、米国の選挙、特に大統領選関連のニュースが大きく伝えられていましたが、英国野党保守党の党首選の結果、そして、本日は昨夜アムステルダムで行われたサッカーの試合で、イスラエルのチームのサポーターが、親パレスチナ派のデモ隊との争いとなり、攻撃を受けて負傷したことが大きく伝えられています。

今週は、英国野党保守党の新党首となったケミ・ベーデノック氏のことをご紹介しましょう。

ベーデノック氏は、ビジネス・貿易相を前政権で務め、党内右派としても知られており、今年44歳の黒人の女性です。

生まれは英国であるものの、幼少期はナイジェリアと米国で過ごし、16歳で正式に英国へ移ったとのこと。そこで、ナイジェリアで育った後に英国に移住したことからも、英国の安全性を改めて理解し、「言論の自由、自由な企業、自由な市場」といった保守党の原則を真に守るようになったと語っています。

そこで、ベーデノック氏は、スナック元首相やジョンソン元首相がこれらの原則を放棄してたことで前回総選挙で反移民を掲げる右派政党の「リフォームUK」等の他の党に票を失ったとし、「本物の保守主義」へ回帰することを誓い、政権復帰を目指すとしています。

ベーデノック氏はそのディベート力が高いことで有名ですが、今週初めて行った国会でのスターマ首相首相への質問においても、トランプ氏に批判的であったラミー現外務相についてや、新予算案での農家への増税などを批判し、その力を見せつけたようです。

彼女は黒人女性として初めての党首であることへのコメントを党首就任直後にインタビューで求められた際に、このような質問が出なくなるほど、黒人や女性やマイノリティーの政界進出が進むことを望みますと述べていました。

率直な物言いと好戦的な性格で知られいるベーデノック氏は、自分の意見を明確に発することで、過去に物議をかもしたこともありますが、新しい世代の政治家であるのかもしれません。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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