ニュースレター(2024年10月25日)金は史上最高値圏内でドル高と金利高の中で堅固に推移
週間市場ウォッチ
金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から0.6%高でトロイオンスあたり2729ドルと、金曜日のLBMA価格としては史上最高値で、週間で上昇しています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から3.3%高のトロイオンスあたり33.17ドルと、2週連続で上昇しています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から0.9%高のトロイオンスあたり1018ドルと2週連続の上昇で7月半ば以来の高値となっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から10.8%高でトロイオンスあたり1179ドルと年初来の高値で週間で上昇しています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週も金価格は史上最高値の更新を世界指標ベースではドル建てで火曜日まで5営業日連続で続け、水曜日は取引時間中でトロイオンスあたり2758ドルをつける強い動きをしていました。
しかし、長期金利とドルが7月末以来の高さへと上げる中で、調整の売りが出ていますが、下げでは買いが入り、その下げ幅は限られています。
なお、この長期金利とドルの上げの背景となった、全般予想を上回った米経済指標の中で、中東の地政学リスク、米大統領選の政治リスク、そして時期大統領がトランプ氏とハリス氏どちらとなっても公的債務がさらに増加する懸念などが金をサポートしている模様です。
なお、今週金と共に大きく上昇した銀価格は、水曜日金同様に急落したものの、その後の上げ幅は限られて、ロンドン時間夕方に今週の上げ幅をほぼ失って推移し、金銀比価も前日急落前の79台から81台へと銀の割安が進んでいます。そこで、この金と銀の動きの違いは、地政学や政治リスクによる金の安全資産の需要とその需要が限られる銀が背景と思われます。
それに対し今週最も大きく動いたのはパラジウムで、木曜日に米国がロシアの貴金属輸出の経済制裁をさらに厳しくすることをG7の国々に呼びかけたことで、年初来最高値のトロイオンスあたり1215ドルを本日つけて、週間の上げ幅は10%を超えています。
ロシアはパラジウムの最大産出国で世界の供給の40%となっているために、2022年にロシアがウクライナ侵攻を始めた際にも3444ドルへと急騰していました。そこで、今週のチャートは過去5年間のドル建てパラジウム価格の推移をお届けしましょう。
パラジウムと姉妹貴金属であるプラチナ価格は今週パラジウムに引っ張られて上昇をしていますが、この産出の7割は南アフリカであるために、その上げ幅は限られている模様です。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金価格は主要通貨建てで史上最高値を更新し、ドル建て金価格ではトロイオンスあたり2740ドルをつけて、円建てではgあたり13228円をつけた後に、利益確定もあり2722ドルで終えていました。
同日の背景は前週からの上げ基調を受け継いだモメンタム、また同日中国の人民銀行が利下げをしたことによる中国の景気回復及び金需要増加の期待(実際に中国金価格は同日プレミアムに転換)等もありますが、中東の地政学リスクや米大統領選を2週間後に控えた政治リスク、そして米中の公的債務が膨大な規模となっていることからも、通常金との負の相反関係が強いドルや実質金利が上昇する中で、上昇を続けていました。
火曜日金相場は前日までの4営業日連続の新高値を更新して、トロイオンスあたり2744ドルをつけて、2746ドルで終えていました。
この間ドルは引き続き8月上旬の高さを推移し、米長期金利は3か月ぶりの高さへ上昇する等、FRBによる利下げペースが落ちる観測が広がっていましたが、前日同様の背景で上昇をしていました。
そこで、同日も日本円建て金価格もgあたり13313円と史上最高値をつけ、他の主要通貨でも新高値を記録していました。
水曜日金相場は、前日の基調を受け継いでトロイオンスあたり2758ドルと取引時間中に最高値を更新後に、米株価が下げ、ドルと長期金利が上昇する中で、今週の上げ幅をほぼ失ってトロイオンスあたり2709ドルまで一時下げた後に、2721ドルへ戻して終えていました。
同日の動きのきっかけとなったのは発表された予想を下回った米中古住宅販売件数とされていましたが、S&P500種は今年47回史上最高値を更新し、金も前週水曜日から5営業日連続で年初来で36回高値を更新していることからも、調整でもあった模様です。
しかし、これはドルの動きに反応していたことからも、他の主要通貨では下げ幅は限られていました。
木曜日金相場は、前日までの史上最高値更新は無かったものの、前日7月末以来の高さへ上昇したドルと長期金利が若干下げる中で、トロイオンスあたり2743ドルまで一時上昇して2734ドルで終えていました。
この金の動きの背景は、前日の下げの調整であったようですが、同日発表された米新規失業保険件数と新規住宅販売件数は共に米国経済の堅固さを示しており、FRBによる利下げペースが遅れる観測からも、ドルと長期金利の下げ幅は限定的なもので、金も頭を押さえられる形となっていました。
本日金曜日金相場は、発表された米指標が堅固なものであったものの、ドルと長期金利の上昇ペースが緩んでいることからも、トロイオンスあたり2742ドルまで一時上昇後に2737ドル前後を推移しています。
本日発表された米ミシガン大学消費者態度指数は、6か月ぶりの高さで、米耐久財受注もまた予想を上回っていました。
しかし、今週金価格は史上最高値の更新を世界指標ベースでは火曜日まで5営業日連続で続け取引時間中も含めると、水曜日まで続いていた強い上げ基調からも、調整での下げでは買いが入っている模様です。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に10月15日までの一週間データが発表され、金価格が前日の3週ぶりの低さから予想を下回る米製造業関連データで反転していた際に、全ての貴金属でロングポジションが増加していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、4.0%増で732トンと2週ぶりに増加して前週の8月半ば以来の低さから増加していたこと。価格は0.4%高でトロイオンスあたり2646ドルと上昇していたこと。建玉は3.3%増と前週の9月初旬以来の低さから増加していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、2.3%増で5526トンと2週ぶりに増加して前週の9月上旬の低さから増加していたこと。価格は前週比0.4%安で、トロイオンスあたり31.16ドルと前々週の5月末以来の高さから2週連続で下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、9月17日からネットロングで、33.9%増で26.2トンへ増加していたこと。価格は前週比1.5%高でトロイオンスあたり979ドルと前週の9月上旬以来の低さから上げていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、14%減で21.5トンと2週ぶりに減少し、前週の9月初旬以来の高さからさげていたこと。価格は0.5%安でトロイオンスあたり1010ドルと下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で5.2トン(0.6%)増で893.80トンと昨年8月半ば以来の高さで、4週連続の週間の増加傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で2.6トン増(0.69%)増で379.72トンと8月6日以来の高さであり、10週連続の週間の増加傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに170.17トン(1.2%)増で14,936トンと昨年2月末以来の高さで3週連続で週間の増加傾向。
- 金銀比価は、今週80台半ばで始まり、週半ばに79台と7月半ば以来の低さまで下げて、本日金曜日に81台半ばまで上昇して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週月曜日と火曜日に1990年3月に世界指標が発表されて以来の史上最高の1717ドルまで上昇後に、1711ドルまで下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差は9月10日から再びディスカウントへ転換し、今週61ドルのディスカウントで始まったものの、昨日の米国のロシアへの経済制裁強化のニュースで、本日120ドルと9月半ば以来の高さへ上昇して終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格とのディスカウントは5.5ドルと9月初旬以来の低さへ前週の9.9ドルから下げていたこと。上海黄金交易所とロンドン金価格の差は今年8月19日からディスカウントで、2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は24%増で9月末以来の高さ、銀は60%増で6月末以来の高さ、プラチナは9%増で9月末以来の高さ、パラジウムは36%増で9月半ば以来の高さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は10月7日から正の相関関係で0.64と週間ではその関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金も10月7日から正の関係へ転換し、0.71と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は8月6日から正の関係で、前週から0.51とやはり関係を強めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週金市場は、米主要経済指標が予想を上回り長期金利やドルが上昇しているにもかかわらず先行き不透明な中東情勢や米大統領選が近づく中で堅固に推移することとなりました。
そこで、来週も中東情勢、FRBの利下げペースに影響を与えるニュースやイベントが重要となりますが、経済指標関連は重要指標が続き、米雇用関係データの火曜日の雇用動態調査(JOLTS)求人件数と水曜日のADP全国雇用者数と金曜日の雇用統計、そして木曜日には日銀金融政策決定会合とユーロ圏の消費者物価指数などへ市場は注目することとなります。
詳細は主要経済指標(2024年10月28日~11月1日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年10月21日~25日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年10月28日~11月1日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年10月21日)米中の公的債務規模の警告がされる中で実質金利が急騰しているにもかかわらず金価格は史上最高値を再更新
- 2024年米大統領選:共和党支持者のみが金と銀に投資をするのか?
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、中東の紛争及びウクライナ戦争が引き続き大きく伝えられていますが、チャールズ国王が連邦加盟国会議に出席するためにサモアに入ったこと、そしてそこで植民地時代の奴隷賠償請求を求める声が高まっていること、米共和党が英労働党の議員がハリス氏を支援していることを「外国の干渉」として反発したこと等が大きく伝えられています。
その様な中で、多くの主要メディアで伝えられていたのは、英国男性の友人達6人が1968年から56年間毎週木曜日に欠かさずにパブで会っているというニュースがありましたので、簡単にご紹介しましょう。
この男性グループはイングランド中部のシェフィールドという工業都市の近くのパブに集う友人達で、現在は皆80台前半とのことですが、56年間に新たな人が加わったり出たりしたものの中心となる人たちの顔ぶれは変わっていないようです。
この木曜日の会の始まりは二人の友人がゴルフの帰りに一杯飲んで帰ったことからとのことですが、休暇等でやむを得ない場合を除き皆が集まり、コロナ危機の最中はZoomで中心になるメンバーと英国国外や英国の他の地に移ったメンバーも加わりミーティングを続け、現在も週一回のパブで会うと共に、Zoomはひと月に一回続いているとのこと。
続いている秘訣は、皆が様々な異なる興味を持っているものの、基本的な価値観が同じであるということ。それは、パブの中で異なる意見を戦わせる議論をしたとしても個人的な批判ではなく、パブを出る際にはそれは後を引かないということのようです。
そして、毎週集い様々なことを話すことで、新たなことに興味も広がるとのことがプラスでもあるとのこと。
56年間で変わったことは、話す内容がサッカーや付き合っていた女性の話から、前立腺といった健康のことや年金のこととなったこと、そして飲む量が3パイントから2パイントに減ったことと茶目っ気たっぷりに話す男性たちの目は輝いていました。
80歳前半とは見えない健康でユーモア溢れて会話するグループの方々の姿に、彼らの56年という時間に思いを馳せ、その絆に心が温まるように感じました。