ニュースレター(2024年9月27日)金価格は史上最高値を今年29回更新
週間市場ウォッチ
金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から2.2%高でトロイオンスあたり2663ドルと週間で2週連続で上昇し、LBMAの金曜日の金価格で前週に続き史上最高値をつけています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から2.0%高のトロイオンスあたり31.93ドルと週間で2週連続で上昇しLBMA価格では5月末以来の高さとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から2.7%高のトロイオンスあたり1014ドルと週間の上昇で7月半ば以来の高さとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から3.0%安でトロイオンスあたり1034ドルと週間の下げで2週間強ぶりの低さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
金相場は本日下げていますが、週間では2%を超える上げ幅と今週も強い動きをすることとなりました。そこで、金地金現物価格は今年に入り、LBMA金価格ベースで、29回最高値を更新しています。これは、1979年にイラン革命が起こり、第2次石油危機、ソ連によるアフガニスタン侵攻があった際の54回と2011年の金融危機後欧州債務危機の最中の38回を除けば最高となります。
今年の金価格の上昇は、FRBを筆頭に主要中央銀行が利下げを始めるという観測が背景ですが、それに加えて年初は株価や不動産が低迷する中国の需要が急増していたこと、そして中東の紛争やウクライナ戦争等の地政学リスクと根強い中央銀行の金の購入がサポートとなっています。
本日の下げは、今週先の要因に加えて中国の景気刺激策が発表されて更なる上昇を続けていたことからも、本日の市場注目の米インフレデータ後に調整が入っている模様です。詳しくは下記の「今週の金相場の動きと背景について」をご覧ください。
今週のチャートとしては、1968年からの年間の史上最高値更新回数のチャートをお届けしましょう。
なお、今年LBMAベースで金価格は今週までの39週中22週で上昇し、2022年同時期までの週間の上昇数26以来の高水準となっています。ちなみに過去50年間の年間の週間上昇回数は20となっていることからも、今年は早いペースでその数をすでに超えていることが分かります。
産業用途需要が多い銀も金の上昇に引っ張られると共に、中国政府及び中央銀行が景気刺激策を発表したことで上昇をし、プラチナも同様に上げていましたが、パラジウムは今月前々週までで年初来の高さまで大きく上昇をしていたことからも、調整もあり下げている模様です。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、日本円を除く主要通貨で史上最高値を更新し、ドル建てにおいて最高値のトロイオンスあたり2634ドルをつけ、2626ドルで終えていました。
この背景は、先週FRBが4年ぶりに0.5%という大幅な利下げを行ったことと、今年年末から来年においても利下げが継続されることへの期待からも、金先物市場でのネットロングポジションが積みあがっていること等からですが、ロンドン午後の上昇は、原油などのエネルギーが同日上昇していることからも、イスラエルとレバノンの武装組織ヒズボラの紛争激化による地政学リスクの高まりによる安全資産の需要等も影響されていました。
火曜日金相場は、前日に続きドル建てとユーロ建てにおいてそれぞれトロイオンスあたり2664ドルと2384ユーロと史上最高値を更新していました。
午前中の上げは、同日貴金属の世界最大の消費国である中国が追加の金融緩和、株式・不動産市場の支援策を発表したことを好感したことからですが、午後の上げは発表された米消費者信頼感指数が2021年8月以来の低さであったことで、米FRBの更なる大幅な利下げ観測が広がった模様です。
そこで、CMEのFEDWatchツールでは、年末の金利が4.09%と、11月もしくは12月に0.5%の利下げがあるという観測となっていました。
なお、イスラエルとレバノンの武装組織ヒズボラの紛争は激化し、金の安全資産の需要もまた高まることとなりました。
水曜日金相場は、前日の史上最高値を再び更新してトロイオンスあたり2670ドルをつけた後に、2656ドルで終えていました。
この背景は前日の基調を受け継ぎ、FRBの大幅な利下げ観測、中国の金融緩和の好影響期待、イスラエルとレバノンの武装組織ヒズボラ紛争激化となりますが、ドルと長期金利が2023年7月以来の低値水準で推移していることは、ドル建て資産で、また金利を生まない金にとっては追い風となります。
ちなみに、同日の史上最高値でドル建て金価格は年初から29回最高値をLBMA価格で更新したこととなります。これは、1979年と2011年を除き最も多い年間の史上最高値更新となります。
なお、FRBの利下げ観測やテクノロジー株の高騰もあり、S&P500種は昨日までで年初来41回終値で最高値を更新しています。
木曜日金相場は、6営業日連続で史上最高値を更新し、ロンドン時間昼前にトロイオンスあたり2685ドルをつけた後、2672ドルへ下げたものの、前日比上昇して終えていました。
同日は中国の政治局会議が、昨日の人民銀行の金融緩和政策に続き、5%の経済成長目標を達するために「必要な財政支出を行う」と述べたことが好感されたことが一つの要因となりました。
そして、米GDPが発表され、前回と予想と同水準でしたが、米耐久財受注が予想を上回り、米新規失業保険申請件数は下回ったことで、FRBの金融政策を変更させるものではないという判断で、長期金利は若干上げたものの、ドルが下げたことが金を押し上げることとなりました。
なお、同日は中国の今週の経済刺激策からも、工業用途需要が高い、銀が一時トロイオンスあたり32.71ドルと5月末以来の高さへ上昇していました。そこで、金銀比価は同日82台と7月24日以来の低さへと下げいます。
金曜日金相場は、市場注目のFRBがインフレ指標として注目する米個人消費支出(PCE)コア・デフレーター発表後、トロイオンスあたり2653ドルと下げて推移しています。
このデータは、前年同月比2.7%と予想と同水準で若干前月2.6%上回ったものの、前月比では0.1%と前月と予想の0.2%を下回っていました。
そこで、米FRBが継続利下げを行うという観測が広がり、ドルと長期金利は前日比下げて2022年3月以来の水準となっていますが、材料出尽くしということで、金は調整の下げとなっている模様です。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に9月17日までの一週間データが発表され、同週のFOMCで0.5%の利下げが行われるという観測からもその前日にはドル建て金価格で史上最高値が2営業日連続で更新され、翌日にFOMCの結果が出る際に、すべての貴金属でロングポジションが増加していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、11%増で786トンと2020年3月初旬以来の水準へ増加していたこと。価格は2.7%高でトロイオンスあたり2574ドルと史上最高値を記録していたこと。建玉は9.1%増で2週連続で増加して8月20日の週以来の高さとなっていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、56%増で6580トンと2022年4月初旬以来の高さへ増加していたこと。価格は前週比7.9%高で、トロイオンスあたり30.68ドルと7月半ば以来の高さへ上昇していたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、2週ぶりにネットロングへ転換し16.2トンと7月半ば以来の高さとなっていたこと。価格は前週比3.6%高でトロイオンスあたり982ドルと2週連続の上昇で7月半ば以来の高さとなっていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートであったものの、47%減で20.2トンと6週連続で減少して1月初旬以来の低さへ下げていたこと。価格は12.9%高でトロイオンスあたり1086ドルと火曜日のLBMA価格では1月初旬の高さへと上昇していたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で1.73トン(0.2%)増で877.12トンと1月初旬以来の高さで週間の増加傾向。一週変化がなかった週を含めて13週連続で減少無し。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.71トン増
- (0.19%)増で370.69トンと8月6日以来の高さであり、6週連続の週間の増加傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに393.18トン(2.55%)増で14,602.21トンと週間の増加傾向で週間の増加量としては7月末以来の大幅な量。
- 金銀比価は、今週83台半ばで始まり、木曜日に82台後半と7月末以来の低い水準となったものの、本日83台後半へ戻して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1661ドルと記録が残っている1990年3月以来最大で始まり水曜日に1668まで上昇後、本日1653ドルまで多少下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差は9月10日から再びディスカウントへ転換し、86のディスカウントで始まり、火曜日に96と前週水曜日以来の高さとなった後に、本日は29ドルと9月10日以来の低さまで下げて終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は8月19日からディスカウントとなり、今週の平均は今週火曜日以外連日人民元建て金価格が最高値をつける中で、13.91ドルと前週の11.64ドルから拡大して、2021年6月半ばの週以来の高さへ上昇していたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は9%増で8月初旬に最高値をつけた際以来の高さ、銀は34%増で6月半ば以来の高さ、プラチナは35%増で少なくとも私が記録を始めた2020年6月以来の高さ、パラジウムは41%減で4月初旬以来の低さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は6月27日から負の相関関係で-0.64と週間では負の関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は6月10日から負の関係へ転換し、-0.85と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は8月6日から正の関係で、前週から0.86と関係を強めていいたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週は、本日金曜日発表の米FRBがインフレ指標として注目する個人消費支出PCEコア・デフレーターを市場が待つ中で、FRBのさらなる利下げ観測、中国の景気刺激策、地政学リスク等で価格が動くこととなりました。
来週は米雇用統計が金曜日に発表され、火曜日には雇用動態調査(JOLT)求人数、水曜日にはその先行指標のADP全国雇用者数と労働市場関連のデータが多く発表され、市場は注目することとなります。
詳細は主要経済指標(2024日9月30日~10月4日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年9月23日~27日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024日9月30日~10月4日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年9月23日)コメックスの先物・オプションのネットロングが4年ぶりの高い水準となる中で、金価格は再び最高値を更新
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、今週行われていた与党労働党の党大会、イスラエルとレバノン武装組織のヒズボラの紛争、そして本日は英著名女優のマギー・スミス氏が亡くなったことが大きく伝えられています。
そこで、本日は与党となって初の労働党の党大会についてお伝えしましょう。
14年ぶりに政権奪回をした労働党の党大会は古くは製造業が栄え港湾都市でもあったことから、労働者の街でもあるリバプールで行われ、23日には英国初の女性の財務大臣となった、レイチェル・リーブス氏が演説をし、翌24日にはキア・スターマー首相が演説をしていました。
この労働党大会を前に、先週スターマー首相や、首相夫人が裕福な労働党後援者から高級な洋服やメガネやサッカーの試合の切符を寄付してもらっていたことが明らかとなり、メディアが大きく伝えていました。
労働党政府は、年金生活者への冬季暖房費補助を財源不足を理由に大幅に削減することを発表した後だったことからも、野党保守党はもちろん、労働党サポーターの中からも、ダブルスタンダードと批判が起きていました。
また、労働党政権は、政権を引きついだ当初から保守党が220億ポンドの財政のブラックホールを残したと非難をし、財政を立て直すためには厳しい選択をしなければならないと繰り返したことで、英国の消費者のセンチメントを悪化させていたこともビジネス界からは批判されていました。
そこで、この大会ではそれら批判を経て、どのような演説を行うかが注目されていました。そのため、党大会では、これまでの財政赤字やそれによる厳しい選択に触れたものの、総選挙戦で訴えていた「国家の再生」にも焦点を当て、より明るいトーンを作り出してはいたようです。
党大会前にすでにスターマ首相の評価はガーディアン紙によると7月の総選挙から大きく下げて、評価しないが5割へと増加していたとのこと。
労働党政権の最初の予算は10月30日に発表されます。すでに、選挙戦で公約した法人税、所得税、国民保険料、付加価値税(VAT)は引き上げないことを明らかにしていますが、譲渡所得課税や遺産相続税が引き上げられるという憶測もあり、富裕層は警戒感を強めています。
ウクライナ戦争やイスラエルとガザ地区のハマス武装組織、レバノンの武装組織ヒズボラとの紛争の外交による解決策などへの英国の存在感を見せることができるのかなど、スターマ首相と労働党政権は、内政と共にすでに多くの課題を抱えて厳しいスタートとなっているようです。