金市場ニュース

ニュースレター(2024年3月22日)FRBが年内利下げ3回を維持し、金価格は全ての主要通貨建て史上最高値を更新

週間市場ウォッチ

本日金曜日の午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり2172ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)からほぼ0.4%高で、今週木曜日にこの世界指標で史上最高値を更新して2170ドルを付けていますが、再び更新する傾向です。この間本日の弊社チャート上の午後12時の銀価格は、前週のLBMA価格(午後12時)から2.5%安のトロイオンスあたり24.60ドルと前週の昨年5月初旬以来の高値から下げています。本日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から4.3%安のトロイオンスあたり904ドルと前週同価格の1月初旬以来の高さから下げています。本日金曜日の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から6.2%安でトロイオンスあたり1011ドルと前週の1月初旬以来の高値から下げています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、主にFRBと他の主要中央銀行の金融政策発表で動くこととなりました。

まず、日銀の金融政策発表でマイナス金利が解除されたものの、緩和的環境継続で対ドル円安が進み、日本円建て金が史上最高値をつけ、FRBが1月と2月のインフレデータが根強いインフレを示していたにもかかわらず2024年末までの利下げ予想を3回と維持したことで、全ての主要通貨建てで史上最高値を更新することとなりました。

そこで今週のチャートは米国ドル、英国ポンド、ユーロ、日本円建て金価格を指数化して2001年から月末価格のチャートを本日の午後3時の価格を利用して作成しましたので下記に添付します。

全ての通貨建てで金価格は上昇していますが、ドルが他主要通貨比強いことからも、通貨安が進んでいる日本円を筆頭にユーロと英国ポンドの金価格の上昇幅が大きいことが明らかとなっています。ちなみに、日本円建てで金価格は今年ドル建てが5.3%高であるのに対してほぼ12%上昇しています。

2001年から2024年3月22日までの主要通貨建て月末金価格チャート 出典元 ブリオンボールト

銀、プラチナ、パラジウムは、工業用途需要の高さからも、金のように中央銀行の政策金利の影響よりも、中国などの需要によってより動き、前週まで2週間需給バランスが崩れる懸念もあり大きく上昇していたことからも、今週調整が入っている模様です。

今週の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、今週日銀、米中銀のFRB、イングランド銀行を含む多くの主要中央銀行の金融政策決定会合が行われことからも、前週終値を挟んでトロイオンスあたり15ドルほどの幅で推移して、トロイオンスあたり2160ドルで終えていました。

そのような中、過去9か月月間で減少を続けていた金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が前週金曜日に15トンと昨年10月のイスラエルとハマスの紛争が激化した際以来の最大の量増加し、前週までのコメックスの金先物・オプションのネットの強気ポジションが2年前のロシアがウクライナに侵攻した際以来の規模に増加して、金へのセンチメントに変化が表れていました。

火曜日金相場は、日銀がマイナス金利解除の発表をし、日本円建てで大きく動いていました。それは、植田日銀総裁の「緩和的緊急環境継続」のコメントに反応したもので、日本円が対ドル弱含んだことからも、gあたり10463円と史上最高値を更新していました。

この間ドル建て金相場は、翌日のFRBにの金融政策発表を待つ中で、前日同様前週終値の前後を狭いレンジで推移し、トロイオンスあたり2157ドルで終えていました。

水曜日金相場は、今晩発表されるFOMC後の米政策金利と将来の金利予想のドットプロットチャート、またパウエルFRB議長の記者会見を待つ中、ニューヨーク時間開始と共に米長期金利が下げたことに反応してトロイオンスあたり2164ドルまで一時上昇していましたが、FOMCの声明で急騰をはじめ、パウエルFRB議長の記者会見でもさらに上げ幅を広げ、トロイオンスあたり2222ドルと史上最高値をつけて、2199ドルで終えていました。

そこで、全ての主要通貨建てでも史上最高値を更新していました。日本円建てでは、gあたり10,795円の史上最高値を更新していますした。

同日のFOMCでは市場予想通り政策金利は据え置かれたものの、年末までのメンバーによる金利予想によると、前週のデータでインフレが高止まりしていたにもかかわらず、利下げ3回と維持されたことで、この回数が減ることに警戒していた市場は一気にリスクオンモードとなり、株式も大きく上昇して米株価指数はすべて史上最高値を更新していました。

木曜日金相場は、ロンドン時間午前中に前日の基調を受け継いで上昇していましたが、同日スイス中銀が先進国の中銀では初めて利下げを行い、イングランド銀行は金利を据え置いたことで、対ドルこれらの通貨が下げることでドルが相対的に上昇したことがきっかけとなり、金が下げ幅を広げて、トロイオンスあたり2185ドルで終えていました。

ちなみに、金の消費国として世界5番目のトルコは他の主要中央銀行とは異なる動きで、同日金利を引き上げていました。これは、同国はインフレが直近のデータで67%と急騰していることからも、このインフレ抑制のためですが、すでに高い水準の政策金利を50%と5%引き上げていました。なお、同国の通貨価値の急激な下げていることからも、金の投資需要は2022年比で昨年倍増していることを金の業界団体のワールドゴールドカウンシルは需給レポートで伝えていました。

本日金曜日金相場は、前日の大幅な価格の動きもあり、ドルが前日の基調を受け継ぎ2月半ば以来の高さへ上昇する中、長期金利は3月半ばの水準へ下げており、トロイオンスあたり2167ドルと若干前日終値から下げていますが、狭い範囲で推移しています。

なお、本日予定されていたパウエルFRB議長のスピーチにおいては、金融政策は含まれていなかったために市場への影響はありませんでいた。しかし、本日夕方にはバーFRB副議長とボスティック・アトランタ連銀総裁のスピーチが予定されており、主要経済データが無いことからも注目されているようです。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • 世界最大の運用資産を保有する日本の公的年金の積立金の管理・運用を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、運用多様化へビットコインや金の情報を募ることを火曜日に発表していたこと。
  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に3月12日のデータが発表され、月曜日に史上最高値を更新後に予想を上回る米消費者物価指数が発表されて価格を下げていた際に、金と銀で強気ポジションを増加させ、プラチナとパラジウムでも弱気ポジションを減少させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、22%増で496トンと4週連続で増加してロシアがウクライナへ侵攻して安全資産の需要が急増していた2022年3月8日以来の高い水準となっていたこと。価格はこの際1.3%高でトロイオンスあたり2161.25ドルと4週連続で上昇していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、2週連続ネットロングで72%増の4146トンと昨年5月初旬以来の高さとなっていたこと。価格は1.9%高のトロイオンスあたり24.38ドルと11月下旬以来の高さへ上昇していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは1月23日の週以来ネットショートで、88%減の3.8トンと前週の2019年6月25日以来の高さから1月末以来の低さへと下げていたこと。価格は3.4%高でトロイオンスあたり915ドルと1月末以来の高さ。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年11月初旬からネットショートであるものの、15%減の32トンと1月末以来の低さへ、前週の2月13日の週の史上最高値以来の高さから減少していたこと。価格は8.6%高でトロイオンスあたり1022ドルと1月初旬以来の高さへ上昇していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日まで前週金曜日から4営業日連続で増加し、週間としては6.7トン(0.8%)増で839トンと前週に続き週間の増加傾向とこれまでの減少基調に変化が見られていたこと。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.5トン(0.13%)減で387トンと、パンデミック最中の増加分を失って2020年3月末以来の低さで8週連続の週間の減少傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで293トン(2.3%)増で13,216.トンと2週ぶりの週間の増加傾向であること。
  • 金銀比価は、今週85台後半で始まり緩やかに上昇して本日88台前半と2週ぶりの高さへ上昇して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、昨日1302ドルと再び1990年3月にLBMA価格が公表されて以来の最大の高さとなり、本日は1263ドルへと下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは今週146ドルで始まり、91ドルまで下げた後に、本日103ドルへ上昇して終える傾向。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
  • 上海黄金交易所(SGE)の金のプレミアムは、今週SGEの金価格が昨日史上最高値を更新する中で、週間の平均が22ドルと先週の19ドルと昨年中国中銀が金の輸入の制限を始めたと思われる7月半ば以来の低さから上昇していたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇していたこと。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週前週平均比で、金は13%増で、それは木曜日価格が前日の史上最高値から下げ幅を広げて、米地区銀行危機時以来の高さとなっていたことが要因、銀は7%減、プラチナは36%増、パラジウムは8%増となっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は昨年11月24日に負の相関関係となり、その相関関係を弱めて本日-0.25まで下げていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は昨年11月20日から負の相関関係で、昨日若干負の関係を強めていたものの、本日-0.67と弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は正の相関関係に3月1日から転換して昨日までに0.66と今週その関係を弱めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はFRBを筆頭に主要中央銀行の政策金利発表に市場は注目し市場は動きましたが、来週は欧米が金曜日からイースターの休暇に入りますが、FRBがインフレデータとして注視する米個人消費支出コア・デフレーターが金曜日に発表され、今後のFRBの金利引き下げ観測にかかわる重要な指標となります。

その他、火曜日の米耐久財受注、水曜日の米第4四半期GDP、米シカゴ購買部協会景気指数やミシガン大学消費者態度指数なども注目することとなります。

詳細は主要経済指標(2024年3月25日~29日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国ではイスラエルとハマスの紛争における休戦への動き、英国年金受給年齢が女性も男性同様65歳に引き上げらた際の英国政府の対応に関する補償関連報告書について、英国のインフレ率が予想を下回ったこと、イングランド銀行が再作金利を据え置いたこと等が大きく伝えられています。

そこで、今週は今週報告書が発表された、英国政府の女性の年金受給年齢を引き上げた際の対応が問題とされている件についてお伝えしましょう。

今週議会の医療サービスオンブズマン(PHSO)が発表した報告書によると、1995年に立法化された年金法により、1950年4月6日以降に生まれた女性の年金受給年齢が60歳から65歳に引き上げられた際の政府の対応を批判し、政府は誤りを認めず、影響を受けた人々のために事態を収拾することもしなかったと非難していました。

先の法律で2010年から当初2020年(その後2018年へと期間が短縮)に、段階的に年金受給年齢が引き上げられることとなりましたが、その際にその変更を影響を受ける年金受給予定者へ説明などが十分い行われていなかったとのこと。

そこで、今回の報告書では謝罪として1000ポンドから2950ポンドの補償がされるべきとされていました。しかし、被害を受けた人々を中心とした団体は、一人当たり最低でも1万ポンド(約1100万円)を求めています。

政府は先の勧告に従う義務はなく、最大105億ポンド(約2兆円)と予想される補償金の支払いを拒否していることからも、報告書を作成したPHSOは国会議員に介入を求める例外的措置を取るとしています。

年金年齢を女性も男性同様65歳としたことは、高齢化社会を考えればやむを得ないと思われますが、その変更は段階的とはいえ、1950年4月6日以前に生まれた女性とそれ以降に生まれた女性の差は大きなものとなり、そのことを十分に時間をかけて伝えていなかったことが今回の批判の対象となっているようです。

ゆりかごから墓場までを目指し社会保障を整えていた英国の姿は遠い昔のものであり、国民年金の支給額は35年間働いて国民保険を支払っていれば、2024年4月から週あたり221.20ポンド(約42000円)となっていますが、インフレが進んでいる英国では生活するための最低額です。

とはいえ、60歳で年金を受給できると思い人生計画をしていた女性が、変更に関して十分に連絡を受けることなく突然数年間待たなければならなかったのであれば、何らかの補償が必要であるのかもしれません。

最後に、このニュースレターを書き終わる時間にキャサリン妃が初期の癌で現在治療中であることが正式に発表され、大きくメディアで伝えられています。キャサリン妃と彼女のご家族がこの大変な時期にプライバシーが守られ、治療と回復に専念できることを祈っています。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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