ニュースレター(2024年12月20日)FOMC後発表の2025年の利下げペース半減で金価格は2週間ぶりの下げへ
私は来週火曜日から休暇に入ります。そこで、来週の弊社ニュースレターは、30日月曜日に今年のまとめに絞ってお送りいたします。
週間市場ウォッチ
金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から1.5%安でトロイオンスあたり2618ドルとほぼ2週ぶりの低さとなっています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から6.1%安のトロイオンスあたり28.85ドルと週間の下落で9月半ば以来の低さとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から0.2%高のトロイオンスあたり929ドルと3週ぶりに若干ながら週間で上昇しています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から4.6%安でトロイオンスあたり921ドルと4週連続の下げで5週ぶりの低さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属市場は水曜日に発表された今年最後のFOMCの結果、特に来年以降の利下げペースに注目をしていました。その結果、今月は予想通り利下げは行われたものの、来年のFOMCメンバーによる利下げ予想が前回9月の4回から2回に減らされていたことで、ドルと長期金利が上昇し、株価が全般急落する中で、貴金属も大きく下げることとなりました。
そこで、今週のチャートは2025年末のFOMCメンバーの政策金利予想(赤)と市場の予想(青)とドル建て金価格(深緑)をお届けします。
FOMC前にすでに市場は利下げペースの遅れを予想していたことから金は下げ幅を広げていましたが、発表されたメンバーの金利予想が上昇し、金価格が大きく下げたことが見られます。
なお、銀は金を超える下げで本日金銀比価は90と今年3月以来の高さとなっています。また、今週価格を維持したプラチナに対して、パラジウムは大きく下げたことから、水曜日からプラチナ価格がパラジウムを上回るプレミアムに転換しています。
これは、全般貴金属へのセンチメントが悪化していることが背景となりますが、安全資産の需要のある金の下げ幅が抑えられている中で銀の下げ幅が広がっていること、パラジウムはロシアが4割の供給をし、ウクライナ戦争以降経済制裁で輸出が制限されて供給不安がありましたが、トランプ次期大統領のウクライナ戦争の終結を急ぐという政策による懸念の緩和や、工業用途、特にガソリン車の排ガス触媒の需要が8割であることから、中国の景気停滞による需要懸念なども背景となっている模様です。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、今週年内最後のFOMCが行われることからも、動きにくい状況でトロイオンスあたり2649ドルと2664ドルの狭いレンジで推移して2655ドルで終えていました。
同日は今週発表されるFOMC後の同メンバーによる来年の金利予想に注目される中で、日はフランスとドイツの政情不安からも、金はサポートされていました。
火曜日金相場は米長期金利が3週ぶりの高さに上昇する中で、一時トロイオンスあたり2633ドルと一週間ぶりの低値をつけて2650ドルで終えていました。
この背景は同日発表された小売売上高が予想を上回り、米国の堅調な経済を示したことで、来年のFRBによる利下げペースが遅れる観測が広がっていました。
なお、一部市場関係者の話では、来年の次期トランプ大統領が包括的な貿易関税を課することの影響への懸念もあるとし、金と銀に関税が課せられることによるプレミアムからも、顧客の先物取引の決済するために地金を調達するリスクをカバーするためにNYのディーラーが必要とする現物との交換契約費用であるEFPレートが急騰していたことが要因で先週上昇していた金価格が、このレートが下げたことも今週の価格の下げの要因とされていました。
水曜日金相場は、FOMC後の発表で予想通り0.25%の利下げが行われたものの、来年の利下げ予想が2回と前回9月の4回から下げたことで、トロイオンスあたり2583ドルとひと月ぶりの低さへ下げて、2596ドルで終えていました。
市場は今月の利下げをタカ派的利下げと呼び、来年以降の利下げに慎重な姿勢を示したことで、長期金利が7か月ぶりの高さへ上昇し、ダウ工業株30種平均も2.9%の下げと金の2.4%よりも大きな急落をしていました。
その様な中、ドルは2年ぶりの高値をつけており、対ドル弱含んだ主要通貨建て金価格の下げ幅は、ある程度抑えられ、日本円建てでは前日比1.7%の12867円と一週間強ぶりの低値で抑えられていました。
木曜日金相場は、前日のFOMCでの来年の利下げ回数が半減したことによるひと月ぶりの下げから、ロンドン午前中に反発してトロイオンスあたり2626ドルまで戻したものの、同日の堅調な米経済指標でFRBの利下げペース遅延観測で再び下げ基調となり2591ドルまで下げて終えていました。
同日発表された堅調だった指標は米第3四半期GDP(前回2.8%->結果3.1%)、GDP個人消費(3.5%->3.7%)、コアPCE(2.1%->2.2%)、新規失業保険申請件数(24.2万件->22.0万件)等で、同日発表の日銀とイングランド銀行の政策金利発表は共に据え置かれていました。
同日CMEのFEDWatchツールでは来年末の金利予想は3.99%と、前日の4.04%よりは若干下げていましたが、FOMCメンバーの3.9%を上回る水準で、ドルインデックスは2022年10月以来の高さ、米長期金利が高止まり5月以来の高さとなっていることが金を押し下げることとなりました。
本日金曜日金相場は、本日発表された米FRBが重視するインフレ指標が若干ながら下げたこと、また米つなぎ予算案が昨夜否決されたことで、一部政府機関の閉鎖が迫ったことなどからも、トロイオンスあたり2627ドルへと上昇して推移しています。
本日発表の個人消費支出PCEコア・デフレーターは、前月比0.1%と前回の0.3%と予想の0.2%を下回り、前年同月比も2.8%と前回と同水準で予想の2.9%を下回っていました。
また、米議会のつなぎ予算案承認に関しては、本日何らかの進展がないと週末から一部政府機関の閉鎖が行われることとなります。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に12月10日までのデータが発表されて、米消費者物価が発表される前に金が上昇していた際に、金と銀はネット強気ポジションを増加させ、プラチナとパラジウムはネット弱気ポジションを増加させていただこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、9.3%増で685トンと3週連続で増加して11月初旬ぶりの高さとなっていたこと。価格は1.9%高でトロイオンスあたり2690ドルへ上昇し、建玉は6.9%増と6週ぶりに増加して前週の3月初旬以来の低さから増加していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、23.3%増で4772トンと11月初旬以来の高さへ増加していたこと。価格は前週比3.2%高で、トロイオンスあたり31.90ドルと上昇していたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、9月17日からネットロングであるものの、58.3%減で4.5トンと10月上旬以来の低さへ減少していたこと。価格は前週比1.7%安でトロイオンスあたり939ドル下げていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに7.8%増で23.7トンと8月上旬の高さへ増加していたこと。価格は2.4%安でトロイオンスあたり969ドルと11月半ば以来の低さへ下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で3.2トン(0.4%)減で860.74トンと8月29日の週以来の低さへ減少して、3週間連続で減少傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.71トン(0.2%)減で393.28トンと12月半ば以来の低さで週間の減少傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに14.17トン(0.1%)減で14,232.86トンで2週連続で週間の減少傾向。
- 金銀比価は、今週86台後半で始まって徐々に上げて本日90台前半と3月初旬以来の高さへ上昇して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1735ドルで始まり、本日1674ドルと11月半ば以来の低さへ下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差は8月27日からディスカウントで、月曜日37ドルで始まりったものの、水曜日にプレミアムに転換して本日15ドルと8月23日以来の高さへ上昇して終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格は本日プレミアムに転換し4.7ドルとなり、今週の平均は未だディスカウントであるものの9.6ドルと前週の16.2ドルから幅を狭めて10月末以来の低さとなっていたこと。上海黄金交易所とロンドン金価格の差は今年8月19日からディスカウント。2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は25%減で12月初旬以来の引くさ、銀は41%減で2月初旬以来の引く、プラチナは5%増で9月末以来の高さ、パラジウムは2%増で11月末以来の高さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月13日から負の相関関係で-0.48と週間ではその関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は12月19日から負の関係で、0.44と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は12月9日から正の関係で、0.42と前週から関係を弱めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週は米国、日本、英国の中央銀行が金融政策を発表し、市場は注目し動いていました。来週は欧米がクリスマス休暇に入るために、指標やイベントは最小限となり、火曜日の米耐久財受注やリッチモンド連銀製造業指数や木曜日の米新規失業保険申請件数等となりますが、薄商いの中で狭いレンジの取引となると思われます。しかし、地政学リスクや政治リスクでボラティリティも高まる可能性もありますので注意も必要であるかもしれません。
詳細は主要経済指標(2024年12月23日~27日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年12月16日~20日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年12月23日~27日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年12月16日)FRBの2025年利下げと見通しを控え、金価格は堅調に推移
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では引き続き前週のシリアの政局が大きく伝えられていますが、次期米国大使として、ブレア政権で黒子役として力を振るったマンデルソン男爵が就任するということ、チャールズ国王の癌の治療が来年も続くということ、昨夜の米議会がつなぎ予算案を否決したことによる米政府機関の一部閉鎖の可能性について、そして、スターマ首相の支持率が急落していること等が伝えられています。
そこで、本日は14年ぶりに政権を握った労働党やスターマ首相の支持率とその背景について簡単にお伝えしましょう。
今年7月の総選挙で労働党が、スナク前首相率いる保守党に圧勝して5か月を経て行われた、最新の世論調査によると、スターマ首相の支持率は、1970年代後半以降のどの首相より低いものであったとのことです。
YouGoveという世論調査の会社が行ったデータでは、支持率は26%で、支持をしないが53%、またイプソス社によると支持が27%で不支持が61%で、同社がこれらのデータから算出する不満足度は-34と5か月間の首相の満足度としては、1970年代後半までさかのぼるっても最も低いものとのことです。
背景としては、首相就任直後に、労働党支持者からプレミアリーグの切符やサングラスやスーツなど総計10万ポンド(約2億円)相当を受領していたことが発覚したこと。そして、労働党が政権を取った後に最初に行った政策が、財政規律を改善するために年金受給者に対する冬季燃料費を廃止したこと、そして、10月末の新予算案での400億ポンドの増税予算等とされています。
ちなみに同社のデータでは、スターマ首相に次いで不人気であったのは金融危機直前に首相となった労働党のブラウン元首相-23で、3位は-22のスナク元首相であったとのこと。
なお、就任後5か月間にマイナスの満足度をつけたのは、先の3人の首相とジョンソン元首相の-20とサッチャー元首相の-3のみとのこと。
それでは、二大政党のライバルである保守党が新党首のキミ・バーデノック氏が支持率を高めているかというとそうではないようで、就任後ひと月を経過したバーデノック党首の評価は、保守党有権者では支持が43%と高いものの、44%はよく分からないと答え、全体では同様によく分からない47%と未だ彼女の政策が見えていないようです。
英国では政権の任期は5年で、首相は任期途中で議会を解散して早期選挙を行うこともできますが、スターマ首相は、現在の支持率よりも選挙の結果を重視するとし、支持率が低いことに対するメディアのインタビューには答えています。
解散が行われなければ2029年となる総選挙までの期間に、議会の過半数を持つ労働党政権及びスターマ首相が、導入する政策によって満足度を高めることができるのかについては、腰を据えてお手並み拝見ということになるようです。
それでは、素晴らしい週末とクリスマスをお過ごしください。