金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2024年12月23日)米政府閉鎖懸念で金ETFが過去3年で最大の残高増加した後につなぎ予算案可決で金は下落

 
米上下院が金曜の深夜に、米政府閉鎖を回避するためのつなぎ予算案を可決した後、米ドルが2年ぶりの高値に向かって上昇したため、金価格は早朝の上昇から反落することとなりました。
 
金曜日深夜に行われた米政府機関一部閉鎖を回避するためのつなぎ予算案の上下院の議決を待つ中、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェア(GLD)へは、 2022年初頭のロシアによるウクライナ侵攻の直前以来の一日あたりの最大の資金流入が行われていました。
 
ドナルド・トランプ次期米大統領は、この議決を前に、自身のプラットフォーム「Truth Social」で、「馬鹿げた債務上限を撤廃するか、おそらく2029年まで延長すべき」と述べていました。
 
月曜日のロンドン時間昼過ぎまでに、金のスポット価格は先週終値から0.3%下落し、トロイオンスあたり2615ドルで取引されていました。
 
これは、10月末の金価格の史上最高値からは175ドルを下回りますが、先週水曜日の米国連邦準備制度理事会(FRB)が予想通りドル金利を引き下げたものの、 2025年の更なる金利引き下げの見通しを半減させたことによるひと月ぶりの低値を30ドル上回っていました。
 
ワシントンの国債利払い費が国防費を上回る中、金曜の深夜、米上下院は一時的な資金調達策を可決し、3月中旬までの「政府閉鎖」(国が資金を借り入れることができないため、一部の政府機関が閉鎖される)を回避していました。
 
米公的債務の推移 出典元 ブリオンボールト
 
2013年から2023年にかけて、米国の議会は米債務上限を2013年の16.7兆ドルから2023年の31.4兆ドルに引き上げることに合意していました。
 
最後にして最長の連邦政府閉鎖(2018年12月に35日間続いた)は、共和党と民主党が2019年度予算で合意できなかったトランプ大統領の1期目に起こっていました。
 
その後また共和党と民主党が対立し、ジョー・バイデン現大統領の「財政責任法案(Fiscal Responsibility Act)」によって2025年1月1日までこの上限を停止していました。
 
トランプ大統領の選挙前の税制・歳出計画は、2期目に実施された場合、個人税と法人税を引き下げ、輸入品に重い関税をかけ、数百万人の移民を強制送還することで、連邦債務をさらに7.5兆ドル増やす可能性があると、独立政府機関であ る連邦予算責任委員会が試算していました。
 
「タカ派的な(そして混乱した)FRBは、トランプ大統領の継続的な関税の脅威と相まって、年末に向けてさらなる不確実性を生み出し、米ドルを季節的に過去20年間で最も強い水準に押し上げている」と、スイスの地金精錬・金融グループMKSパンプの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は述べていました。
 
米ドルインデックス(米ドルの主要通貨に対する価値を示す指標)は月曜日に0.5%上昇し、2022年5月以来の高さの水準に達していました。
 
「短期的なドル不足は流動性を低下させ、ボラティリティを高め、金と銀は流動性の低いマクロ市場では、特にドル高環境ではうまく機能せず、ディフェンシブな取引になる可能性が高い。」とシールズ氏は続けていました。
 
その様な中、先週金曜日のデッドライン間際の深夜の議会での合意によって回避された一部政府閉鎖が迫る中、金ETFで世界最大銘柄のSPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)の残高は、2%近く増加し、約3年間で最大の1日の資金流入を記録した。
 
それに対し、世界第2位の金ETFであるiShareゴールド・トラスト(NYSEArca: IAU)は、金曜日の規模に変化はなかったものの、iShareのシルバー・トラスト(SLV)は1.3%増加し、過去3ヶ月で最大の一日あたりの残高の増加を記録していました。
 
しかし、これは前週に記録した過去8ヶ月で最大の週間の減少に続くものでした。
 
銀の価格は、トロイオンスあたり29.60ドルまで0.3%上昇し、先週木曜日の3ヶ月ぶりの安値から85セント回復していました。
 
ユーロ建て金相場は月曜日ロンドン時間昼過ぎまでに、トロイオンスあたり2516ユーロと堅調に推移し、英国金相場は、第3四半期のGDPが横ばいであったとする英国の経済成長率の改定値を受けて、ポンドが為替市場で弱含んだことから、トロイオンスあたり0.2%高の2090ポンド前後を推移していました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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