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プラチナ需給レポート:プラチナの供給不足は価格を1200ドルへ押し上げる可能性がある

プラチナ・ウィーク、排ガス処理触媒用需要の減少にもかかわらずセンチメントはポジティブでした。
 
主要アナリストによると、プラチナ価格は今月急騰して記録した2年ぶりの高値からさらに上昇する可能性があるとのことです。
 
新規鉱山の供給は3年連続で需要に至っていないものの、プラチナ市場の供給不足は工業用貴金属の潤沢な備蓄量によって満たされ続け、2025年のプラチナ投資の可能性に上限が設けられるとのことです。
 
コンサルタント会社のSFA(オックスフォード)は、貴金属精錬会社ヘレウスが発表した分析レポートの中で、「2025年のプラチナ市場は3年連続の赤字になると予想される。しかし、これは価格には反映されておらず......2025年には十分な在庫が残っている。」と述べています。
 
「プラチナの長期需要見通しは穏やかであるため、投資家は下落局面で買いを入れるだろう。しかし、十分な在庫の規模は上昇幅を抑えるであろう。」と、先週最新の需給レポートを発表した専門コンサルタント会社メタルズフォーカスは、SFAの意見に同意しています。
 
プラチナの化石燃料エンジンからの有害な排出ガスを削減する自動車触媒に使用される需要は、未だに工業用途需要では最大であるものの、前週に、鉱山会社、精錬業者、銀行家、ディーラー、トレーダー、アナリストがロンドン・プラチナ・ウィークに先週月曜日に参加した際に10.5%上昇し、2023年5月以来初めてトロイオンスあたり1100ドルを突破していました。
 
これは昨年のプラチナ・ウィーク時の急騰を上回るものでした。
 
ロイターは、ある貴金属トレーダーの言葉の「中国は、950ドル前後のプラチナ価格では非常に良い現物の買い手だった。」を、世界最大の製造国である中国が、先月4月に過去一年間で最もプラチナを輸入し、その増加率は3月の1.5倍であったことを伝えるレポートで引用していました。
 
「1000ドルを超える急騰は、この需要を鈍らせるだろう。」というコメントもまた伝えていました。
 
また先週は、CMEのデリバティブ取引所のナイメックス・プラチナ先物・オプションを取引するヘッジファンドなどの投機筋が、4月に入ってから初めて全体でネットロングに転換していました。
 
「3年連続の供給不足、4月の中国からの輸入の大幅な増加、地上在庫の減少に後押しされ、NymexのCOTR(Commitments of Traders Report)でも投資家のロングが力強く伸びている」と、 日本貴金属マーケット協会(JBMA)の池水雄一氏は最新のノートでプラチナ市場の変化に注目していました。
 
 
Nymexのプラチナの先物・オプションの資金運用業者のネットポジションとプラチナ価格 出典元 ブリオンボールト
 
2006年からのデータによると、2015年9月に発覚したディーゼルゲート・スキャンダル(排ガス検査データを不正に操作していたこと)以前は、資金運用業者のネットポジションが、プラチナでショートになることはありませんでしたが、それ以来、このカテゴリー全体で31.3%の割合でプラチナをネットショートとしています。
 
ドイツ・ブラウンシュヴァイクの裁判所は今週、自動車メーカー、フォルクスワーゲンの元幹部2人にそれぞれ懲役2年と4年と判決を言い渡し、排ガス検査システムを不正に操作した 「ギャング 」と呼ばれる他の2人の社員に対し、1年以上の執行猶予付き判決を下しました。
 
フォルクスワーゲン(ETR:VOW3)の株価は現在、ディーゼルゲート・スキャンダルがディーゼルエンジン乗用車の販売に打撃を与え始め、プラチナに対するセンチメントに打撃を与えた2015年の60%暴落時につけた急落時の安値で取引されています。
 
プラチナ・ウィークに発表された、数々のアナリストの新予測では、2025年にプラチナとその姉妹品であるパラジウムの自動車セクター需要が再び減少すると予想されています。
 
これは、鉱山業界の ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシルによると、バッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数の伸びが鈍化して、今年の生産台数は20%以下の増加率となることが予想されているにもかかわらずです。
 
英国を拠点とする自動車触媒とPGM精製のスペシャリストであるジョンソン・マッセイは先週、触媒技術(CT)事業を18億ポンド(24億ドル)でハネウェル・インターナショナルに売却することで合意しました。このニュースにより、ジョンソン・マッセイの株価(LON: JMAT)は30.7%上昇し、12ヶ月ぶりの高値をつけました。
 
JMATと同様、ベルギーの自動車製造・精製スペシャリスト、ユミコア(EBR:UMI)の株価は先月、2009年初頭以来の最低水準を記録し、UMIの過去最高値であった2021年半ばから87.6%下落していました。
 
しかし、今月のプラチナ・ウィークでは、貴金属の見通しに対するセンチメントが「かなり前向き」になっていると、南アフリカの証券会社SBG証券の貴金属・石油・ガス担当エグゼクティブ・ディレクター、エイドリアン・ハモンド氏は述べています。
 
「保管庫の在庫が多少減少してきていることからでしょう。(製造業者は)在庫調整の段階を経ており、新規鉱山からの 一次的供給も 、二次的供給のスクラップも かなり減少しています。」と続けています。
 
「地上在庫の着実な減少は、プラチナリース料の高騰とさらなる上昇に反映される可能性が高く、供給不足が本格的に価格に反映されつつあるも言えるだろう。」と池水氏は同意しています。
 
ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシルは、2025年のプラチナ新規生産量は6%減少し、昨年の増加率の2倍以上減少すると予測しています。
 
メタルズフォーカスは、「プラチナの2年来の高値近辺で利食い売りが出て、価格が調整されると予想している。しかし、プラチナは1200ドルまで上昇する可能性がある。」と述べています。

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

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