ニュースレター(2024年5月10日)重要指標が少ない中で金価格はほぼ3週ぶりの水準へ上昇
週間市場ウォッチ
今週金価格は弊社チャート上の金曜日午後3時にトロイオンスあたり2369ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM金価格(午後3時)から3.3%高で3週ぶりに上昇しています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から8.1%高のトロイオンスあたり28.67ドルとやはり3週ぶりに上昇しています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から2.8%高のトロイオンスあたり989ドルと2週連続の上昇で4週ぶりの高さとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から4.0%高でトロイオンスあたり992ドルと3週ぶりに上昇しています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属相場は、前週のFOMCや米雇用統計等の重要指標やイベント等が比較的少ない中で、金と銀は4月4週目の水準へ上昇し、プラチナは4月2週の水準、パラジウムは4月最終週の水準へと上昇することとなりました。
この背景は4月2週後半に金価格はトロイオンスあたり2431ドルの史上最高値を付けた後に、中東の地政学リスクが3週目以降に後退したことで、価格調整と米インフレ高止まりによるFRBの利下げ遅延観測の広がりで下げ幅を広げていたものの、前週の米雇用統計や今週の米新規失業保険申請件数が雇用市場逼迫の緩和を示したことで下げ幅を削っている模様です。
また、中国の需要も本日取引量が上海黄金交易所(SGE)が倍増、上海先物取引所の取引量も6割増と増加し、SGEのロンドンとのプレミアムも34ドルと4月の需要が高い時期に戻っていますので、中国の動きもある模様です。
そこで、今週はSGEの人民元建て価格とロンドン価格との差(プレミアム)のチャートをお届けしましょう。ここで、今週に入り人民元建て金価格が上昇する中で、プレミアムも上昇しているのが分かります。
今週の金相場の動きと背景について
火曜日英国連休明けの金相場は、ドルは若干上昇していたものの4月上旬以来の低い水準で、長期金利も4月上旬以来の低さへ下げていたことから、トロイオンスあたり2315ドルと前日終値から下げていたものの、前週終値からは上昇して終えていました。
この背景は、前週の米雇用統計が予想を下回る等、労働市場の逼迫が改善されていることで、FRBによる年内利下げ観測が再び広がっていたことからでした。
そこで、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは金曜日と月曜日続けて残高を増加させていました。
また、前週水曜日から祝日で市場が閉まっていた中国が、今週再開され、上海黄金交易所のプレミアムもトロイオンスあたり30ドルへと証拠金が引き上げられる前の水準へ戻りつつあったため、中国の需要も背景にあった模様です。
しかし、同日今年FOMCで議決権を持っていないものの、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が年内利下げに否定的なコメントを述べたことも伝えられており、金の頭を抑えることとなりました。
水曜日金相場は、重要指標の発表がない中で、長期金利とドルが若干上昇しているものの、トロイオンスあたり2304~2321ドルの狭い幅で推移して、2309ドルで終えていました。
この間、金のETFの最大銘柄と第2銘柄は前日共に残高を0.2%と0.1%減らし、上海黄金交易所のロンドン価格とのプレミアムも若干下げていたことから、市場は何らかのきっかけ待ちとなっていました。
木曜日金相場は、同日発表された米雇用データが労働需給のゆるみを示していたことで、トロイオンスあたり2346ドルと1.5週ぶりの高さへ上昇して終えていました。
このデータは米新規失業保険申請件数で、23.1万件と昨年8月以来の高さで、前回修正値の20.9万件と予想の21.5万件を上回っていました。
そこで、金価格は前日ボストン連銀総裁のコリンズ氏のタカ派的発言「物価上昇圧力を提言するために従来の想定以上に長く金利を高水準で維持する必要がある」での下げ幅を取り戻し、さらに上昇することとなりました。
なお、同日イングランド銀行は予想通り政策金利を6会合連続で5.25%で据え置いたものの、利下げに票を入れたメンバーが2人と予想を上回り、より利下げに近づいたという観測が広がり、ポンド建て金価格もトロイオンスあたり1873ポンドと4月末以来の高さへと上昇して終えていました。
本日金曜日金相場は、前日の上げ基調を受け継ぎ2378ドルとほぼ4週ぶりの高さへ上昇後、ロンドン時間夕方に2363ドルへ戻して推移しています。
本日発表されたミシガン大学消費者態度指数は5か月ぶりの低さへ下げ、短期のインフレ予想と雇用環境への懸念が高まっていたことが明らかとなり、スタグフレーション懸念から長期金利が上昇して、金の頭を抑えることとなりました。
また、本日もFRB高官の発言が伝えられており、FRBのボウマン理事はインフレ目標の2%を達成するまで(利下げ)は慎重であるべき、そしてダラス連銀のローガン総裁は利下げを考えるには時期尚早と述べています。
その他の市場のニュ―ス
- インドのヒンドゥー教の吉日でこの時期に貴金属を購入すると良いと言われているアクシャイ・トリティヤに際して、この時期の金販売量は前年比10~20%下げるものの評価額では堅固となると予想されているとのこと。ちなみに、第一四半期のインドの金宝飾品と金貨や金地金の投資は、評価額で前年同期比18.4%高。
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に4月30日のデータが発表され、FOMCと米雇用統計の発表を前に金価格が下げていた際に、プラチナを除くすべての貴金属で強気ポジションを減少させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、5%減の520トンと減少し、価格はこの際0.9%安でトロイオンスあたり2307ドル。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、16%減の5250トンと2週連続で減少して3月26日の週の水準へ減少していたこと。価格は1%安のトロイオンスあたり26.66ドルと3週ぶりの低さへ下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、2週連続でネットショートであったものの、21%減で6トンと前週の3月初旬以来の大きさから下げていたこと。価格は3.8%高でトロイオンスあたり939ドルと前週の3月中旬以来の低さから上昇していたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、22%増の36.8トンと3月上旬以来の高さへ増加していたこと。価格は5.5%安でトロイオンスあたり942ドルと3月上旬以来の低さへ下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに、週間としては変化がなく830.47トンであること。ちなみに前週は3週ぶりの週間の下げを記録。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで1.3トン(0.34%)減で382.61トンと、2週連続の減少傾向で、4月半ば以来の低さであること。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで130.79トン(0.98%)減で13,209.52トンと4月19日以来の低さで、週間の減少傾向であること。
- 金銀比価は、今週84台後半で始まり本日82台後半まで下げて終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、1333ドルで始まり、1375ドルと4月末以来の高さへ上げていること。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは今週水曜日からプレミアムに転換し、昨日は30ドルと2017年9月以来の高さとなり、本日は7ドルまで下げていたこと。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
- 上海黄金交易所(SGE)の金のプレミアムは、今週の平均が29.50ドルと2週ぶりの高さへ24.67ドルから上昇していたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までで前週平均比で、金は5%増で9週ぶりの低さから増加し、銀は9%減で6週ぶりの低さ、プラチナは12%減で4週ぶりの高さから下げ、パラジウムは1%増で11週ぶりの高さ。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は昨年3月28日からの正の相関関係であったものの、5月3日から負の相関関係へ転換し-0.21。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は昨年3月28日から正の関係で本日は0.49と前日の0.63からは関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は負の相関関係に4月12日から転換して木曜日に-0.27と今週その関係を若干強めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は前週比重要指標が少ない週となり、FRB高官のコメントなどで市場は動いていましたが、来週は水曜日の米消費者物価指数がもっと重要となりますが、火曜日の米卸売物価指数、水曜日の米小売売上高、木曜日の米鉱工業生産、そして金曜日の中国の小売売上高と鉱工業生産やユーロ圏の消費者物価指数等も重要となります。
詳細は主要経済指標(2024年5月13日~17日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週、時事通信の「金価格、高値圏で推移 中国の買いで急騰」の記事でブリオンボールトの分析が取り上げられています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年5月6日~10日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年5月13日~17日)来週の予定をまとめています。
- 【金投資家インデックス】欧米の金投資が過去最安値から反発
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、イスラエルとハマスの停戦協議やバイデン米大統領がイスラエルがラファ侵攻した場合武器供与の一時停止を行うという警告について、そして前週行われ週末にも発表された統一地方選挙の結果で与党保守党が大敗したこと、また保守党から離党して労働党へ合流したエルフィケ議員について、王室関係ではチャールズ国王とカメラ王妃のガーデンパーティーの模様やヘンリー王子が渡英していたこと等が取り上げられています。
そのような中、欧州で人気のある音楽祭であるユーロビジョン・ソング・コンテストが、今週7日から5日間の日程でスウェーデンで開催され、大きく伝えられているのでご紹介しましょう。
ユーロビジョンは、1956年から毎年開催され、欧州各国の代表のアーティストが生放送でそれぞれの楽曲を披露し、その参加国が他国に投票して大会の優勝者を決定します。
この大会では過去にABBAが1974年に「恋のウォータールー(Waterloo)」で優勝するなど、著名なアーティストも参加しています。
今年は50年の節目とのことですが、欧州と周辺国の37か国の代表が出場するとのこと。視聴者数もこれらの国々で放映されることから一億から6億人程度と見積もられているようです。
近年は、ロシアのウクライナ侵攻でロシアが2022年以降参加を禁じられ、2022年大会では戦禍のウクライナが多くの票を集めて優勝していました。
今年はイスラエルとハマスの戦争の中、ガザ地区侵攻や同地区の人道支援を妨げていることで批判が高まっているイスラエルの代表の参加を反対するデモンストレーションが多く行われいることも伝えられています。
このデモンストレーションには環境活動家のグレタ・トゥンベリさんも参加したとことも、ニュースの材料となっている模様です。
世界で紛争が起こるたびに、スポーツの大会やこのような音楽の祭典なども政治的な動きが入ることはやむを得ないことなのでしょう。