金市場ニュース

ニュースレター(2024年9月20日)FRBの0.5%の利下げと将来の更なる利下げ観測で金価格は史上最高値を更新

週間市場ウォッチ

金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から1.2%高でトロイオンスあたり2605ドルと週間で上昇し、LBMA金価格で前週に続き史上最高値をつけています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から4.6%高のトロイオンスあたり31.34ドルと週間の上昇でLBMA価格では7月半ば以来の高さとなっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から0.7%安のトロイオンスあたり988ドルと週間の下げとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から1.4%高でトロイオンスあたり1075ドルと週間の上げで、4月半ば以来の高さとなっています。

週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、プラチナを除き上昇し、金においては前週に続き史上最高値を更新し、銀とパラジウムも前週のそれぞれ2か月、5か月ぶりの価格から上昇することとなりました。

この背景は金と銀においては、FRBが2020年3月以来初めての利下げを今週行い、その幅も通常の倍の0.5%で、メンバーによる今年年末と2025年末の金利予想も、前回6月からそれぞれ0.7パーセントポイントずつ下げていたことで、金利を生まない貴金属を押し上げることとなりました。

本日のチャートは今回のFOMCメンバーの今年年末の金利予想(赤)と、市場の予想(青)、そしてドル建て金価格をお届けしましょう。ここで分かるように、本日の市場予想は4.13%とFOMCメンバーの予想の4.4%を0.25%以上下回り、11月と12月にも0.5%の利下げが予想されています。そこで、ドル建て金価格(深緑)が大きく上昇していることも分かります。

FRBと市場の金利予想とドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

プラチナの価格が押し下げられているのは、中国株価が5年来の低値をつけている等、中国の経済懸念が背景となっている模様です。それに対し、パラジウムが堅固なのは、今年プラチナを下回る価格まで一時大きくすでに下げていたこと、そしてパラジウムの産出量の4割以上がロシアであることからも、ウクライナ戦争が継続する中で、価格が支えられている模様です。

今週の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は前週金曜日に続き、史上最高値を主要通貨で更新し、ドル建てにおいてはトロイオンスあたり2589ドルと、心理的節目の2600ドルを狙ったものの超えることができず、2583ドルで終えていました。

この背景は今週水曜日の米連邦公開市場委員会での利下げ幅の観測が0.25%から0.50%へと前週後半から一気に動いていたことから、ドルが8か月ぶり、長期金利が14か月ぶりの低さへ下げていたことからでした。なお、過去の利下げ開始後の6か月後の金の上げ幅は平均で7.9%となっていました。

火曜日金相場は、前日の史上最高値のトロイオンスあたり2589ドルから29ドルほど一時下げた後に、2574ドルまで上昇して終えていました。これは、同日から始まったFOMCの結果が翌日出ることからも、前週金曜日から一気に広がった0.5%の利下げ観測で上昇していた金に調整が入っていた模様です。

また、同日発表された米小売売上高が0.1%と前月比予想の-0.2%を上回り、前月は1.1%と上方修正され、鉱工業生産も予想を上回る等、米経済停滞への懸念が後退していることも背景となっていました。

なお、同日のFEDWatchツールでは0.5%利下げが59%と前日の62%から若干下げており、3営業日連続で下げていたドルインデックスと2営業日連続で下げていた長期金利が共に若干ながら強含んでいました。

水曜日金相場はロンドン時間19時に発表される米政策金利と、19時半からのパウエルFRB議長の記者会見を待つ中で、トロイオンスあたり2565ドルまで一時下げていましたが、発表と共に2600ドルと史上最高値にタッチした後に、2547ドルへ一時下げて2589ドルまで戻して終える等と、荒い動きをしていました。

同日びFOMCの結果は、市場が6割がた予想していた0.5%の利下げと、将来のメンバーの金利予想では、年内は4.4%と、11月と12月のFOMCで共に0.25%の利下げが行われる可能性が示唆されていました。

発表直後の下げは、「噂で買ってニュースで売る」の利益確定の売却等であったようです。

ちなみにCMEのFEDWatchツールでは市場の予想は引き続きFOMCメンバーの予想を下回る4.15%と、11月か12月のFOMCで0.5%の引き下げが再度行われるというものになっていました。

なお、同日発表された米住宅着工件数は予想を上回り、前日の小売売上高と鉱工業生産同様に米経済の堅固さを表していました。

木曜日金相場は、前日のFOMC後の下げ幅を徐々に取り戻して、トロイオンスあたり2587ドルで終えていました。

同日は世界株価も全般上昇し、S&P500種とダウ工業株30種平均は史上最高値を更新していました。

本日金曜日はロンドン時間夕方にトロイオンスあたり2624ドルと再び史上最高値を記録して、米株価指数が前日の最高値から反落し、欧米株価が全般下げる中で、ドルと長期金利が若干上昇する中で高値を更新しています。

本日は、日本銀行が金融政策決定会合後に政策金利を0.25%で据え置くことを発表し、円が対ドル下げていました。

そのような中金価格が上昇しているのは、FOMCメンバーによる予想では、年末の金利は4.4%、2025年末は3.4%と、前回6月の予想よりもそれぞれ0.7パーセントポイント引き下げられていたことからも、金を押し上げている模様です。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に9月10日までの一週間データが発表され、米消費者物価指数が発表される前に、次回FOMCでの利下げ幅が0.25%と7割がた予想して際に、すべての貴金属でロングポジションが減少していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、0.05%増で705トンと若干増加して、前々週の2020年3月10日の週以来の高さに次ぐ高さとなっていたこと。価格は1.1%高でトロイオンスあたり2506ドルと3週間前にLBMA価格として史上最高値を付けた後に2週連続で下げた後に上昇していたこと。建玉は2.3%増で2週ぶりに増加していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、2.2%増で4213トンと増加していたこと。価格は前週比0.4%高で、トロイオンスあたり28.44ドルと前週の8月13日以来の低さから上げていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、9月3日から2週連続でネットショートで、54.6%減で7.6トンと前週の3月5日の週以来の大きさから下げていたこと。価格は前週比4.0%高でトロイオンスあたり978ドルと2週ぶりの上昇となっていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートであったものの、3.2%減で38.3トンと5週連続で減少して7月16日の週以来の低さへ下げていたこと。価格は0.6%高でトロイオンスあたり962ドルと上昇していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で3.5トン(0.4%)増で873.96トンと1月初旬以来の高さで週間の増加傾向。一週変化がなかった週を含めて12週連続で減少無し。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.97トン増
  • (0.26%)増で369.51トンと8月13日以来の高さであり、5週連続の週間の増加傾向。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに279.51トン(1.92%)減で14,298.78トンと4週ぶりの週間の減少傾向で週間の減少量としては4月半ば以来の大幅な量。
  • 金銀比価は、今週83台後半で始まり、木曜日に83台前半と7月末以来の低い水準となったものの、本日83台半ばへ戻して終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1591ドルで始まり本日1619ドルと記録が残っている1990年3月以来最大となっていたこと。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は前々週火曜日から再びディスカウントへ転換し、78のディスカウントで始まり、水曜日に131と3月半ば以来の高さとなった後に、本日は92ドルまで下げて終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は8月19日からディスカウントとなり、今週の平均は今週月曜日と本日人民元建て金価格が最高値をつける中で、11.64ドルと前週の7.35ドルからも増加し、2021年6月半ばの週以来の高さへ上昇していたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週、今週木曜日までの週の平均は前週比で、金は0.4%減で8月末以来の低さ、銀は1%減で7月半ば以来の低さ、プラチナは15%減で8月末以来の高さ、パラジウムは6%減で9月上旬の週以来の低さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は6月27日から負の相関関係で-0.87と週間では負の関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は6月10日から負の関係へ転換し、-0.68と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は8月6日から正の関係で、前週から0.57と関係を強めていいたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はFOMC、イングランド銀行、日本銀行の金融政策決定会合が行われ、FOMCの結果で価格が大きく動くこととなりました。

来週は、米FRBがインフレ指標として注目する個人消費支出PCEコア・デフレーターが金曜日に発表され、前日の米耐久受注と共に重要となります。

詳細は主要経済指標(2024年9月23日~27日)ご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

 

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、レバノンのテロ組織ヒズボラのメンバーをターゲットとしたイスラエルによる小型通信機の爆発を含む緊張が高まる中東情勢、そしてウクライナ戦争について、また英物海峡を渡る違法難民関連では、ボートの座礁で難民が死亡したこと、スターマ首相が違法難民を減少させることに成功したイタリアを訪問して同国首相とミーティングをしたこと、米高級デパートのハロッズデパートの旧オーナーで昨年死亡したモハメド・アルファイド氏の性的暴行疑惑について、そして、本日は英国の公的債務が1960年代以来初めてGDP比100%を超えたこと等が大きく伝えられています。

そのような中、今週は米エミー賞で「Shogun将軍」が史上最多の18部門を受賞したこと、そして、本日は大谷翔平選手が大リーグ史上初の「51本塁打、51盗塁」に到達したことも大きく伝えられ、日本人として誇らしく感じるニュースが続いていました。

今週英国からお伝えするニュースとしては、今週ロンドンで行われた日本の朝日焼の16代松林豊斎氏の講演と展覧会に行ってきましたのでご紹介しましょう。

朝日焼は京都の宇治にある窯元で、宇治川をはさんで平等院の対岸で、朝日山のふもとで、400年前の慶長年間に窯が築かれたとのこと。

これは茶人の千利休が茶の湯を大成して、茶人小堀遠州が活躍した時代で、朝日焼の窯名は、初代豊斎氏へ小堀遠州より与えられたものとのこと。

現松林豊斎氏は16代目として、2016年に30台で襲名し、400年を超えて続いている朝日焼の歴史を息づかせながらも、ご自身の感性で生み出した新たな作品制作も行い、そして、「Go on」というプロジェクトを同様に京都等の伝統芸能を受け継いでいる人々と13年前に立ち上げて、様々なコラボレーションをルイヴィトンやパナソニック等の日本国内外の企業と行うなど、伝統文化を守りながら新たな挑戦も続けています。

今回の講演は、私が属しているロンドンのビジネスネットワークの会で行われ、展示会はロンドン市内の著名ファッションブランドが集うボンドストリートに近いPostcard Teasというお茶専門店で今週末まで行われています。

今回の展示会では豊斎氏作の初代から先代までのそれぞれの代の特徴と様式を彼の感性で再生したお茶碗15客と、彼の最新の月白(水色)やゴールドを使ったお茶碗5客が展示され、昨日は特別イベントとして、豊斎氏が近年の作品でお茶を振る舞ってくださいました。

16代豊斎氏は一度は家業ではない仕事をしてみたく、一度は企業に勤めたのことですが、改めて自分の進む道として家業を考えた時にそれ以外の道はないと思われたとのこと。

朝日焼は古くから50年寝かした土を使って作り上げるとのことです。それは、時間をかけることで土により良い粘みが出ることからとのことですが、限りのある土を無駄なく大切に使うという気持ちが生まれるとのこと。

そして、窯に火を入れる際は、働く全ての方が窯の前で祈るのが慣習となっているとのこと。

効率や費用対効果等が重視される現代に、400年を超えて続く伝統の別世界に引き込まれ、緩やかな時間を改めて楽しませてもらいました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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