ニュースレター(2024年4月5日)地政学リスクの高まりからも金価格は史上最高値を6営業日連続で更新
週間市場ウォッチ
今週金価格は弊社チャート上の金曜日午後3時にトロイオンスあたり2297ドルと、前週木曜日のLBMA価格のPM金価格(午後3時)から3.7%高で、この世界指標で史上最高値を6営業日連続で更新する傾向であること。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週木曜日のLBMA銀価格(午後12時)から9.1%高のトロイオンスあたり26.77ドルと2021年6月以来の高い水準へ上昇していました。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週木曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から1.9%高のトロイオンスあたり924ドルと上昇していました。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週木曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から1.23%安でトロイオンスあたり1004ドルと下げていました。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週も金相場は、堅固な経済指標やタカ派的FRB高官のコメントが伝えられる中でも、地政学リスクの高まりもあり、史上最高値の更新を続けることとなりました。
そのような中、通常金との正の相関性が高い銀がこれまで出遅れていましたが、今週大きく上昇しており、本日も昨日に続き一時トロイオンスあたり27.32ドルと2021年6月以来の高値をつけ、昨日金銀比価は昨年12月半ば以来の低さの84台へと下げて銀の割安が解消されていました。
これは、銀の先物・オプション市場の取引高が水曜日2021年2月のSNSで行われたシルバーショートスクイーズ時以来の高さとなっていたこと、また銀のETFの最大銘柄のiShareシルバーの残高が今週4営業日連続増加して、週間での増加量が528トン(4%)とやはり2021年2月一週以来の高さであることからも、多くの投機的ポジションと共に投資資金も動いている模様です。
そこで、今週は今週終値ベースでほぼ10%急騰している銀の過去5年間のチャートをお届けしましょう。
金と銀が大きく上昇しているのに対し、プラチナは週間の上昇はしたものの、金に対してのディスカウントが史上最大を記録しており、パラジウムにおいては週間で下落となっています。これらは、中国の景気停滞からも需要減少懸念が背景となっている模様です。
今週の金相場の動きと背景について
英国イースター休暇明けの火曜日金相場は、世界株価と米国債価格が下げる中で、一時取引時間内でトロイオンスあたり2266ドルと史上最高値を前日に続き更新し、2249ドルへと上げ幅を削って終えていました。
米株価と米国債価格の下げは、前日発表された重要経済指標のISM製造業景況指数が昨年10月以来の高値、同日の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数も、前回修正値と予想を上回ったことで、FRBによる利下げが遅れる観測が広がったことが背景となっていました。
そこで、米10年物国債利回りは今年最高値で昨年11月以来の4.39%を一時つけていたことからも、株価を押し下げていました。
そのような中、金の堅固さは、イスラエルとイラン、米国とイラン等の中東、そして週末にウクライナとロシアが共にエネルギー施設の攻撃をドローンで行ったこと等の地政学リスクの高まり等にもサポートされて、ドル建てで4営業日連続で取引時間中の史上最高値を更新させて、トロイオンスあたり2279ドルで終えていました。
水曜日金相場は、堅調な米民間雇用データが発表される中、ISM非製造業景況は地政学リスクの高まり、それに伴うインフレ懸念もあり、再び全ての主要通貨で史上最高値を更新することとなりました。
そこで、同日はロンドンの世界指標ではドル建てが4営業日連続、ポンドが5営業日、そしてユーロ建てでは9営業日連続の史上最高値更新、それに加えて中国の指標では6営業日連続となっていました。
水曜日金相場は、前日に続き取引時間中にトロイオンスあたり2305ドルとロンドン世界指標で2293ドルと史上最高値を更新していましたが、終値ベースではトロイオンスあたり2288ドルと前日からは下げて終えていました。
この背景は、同日カシュカリ・ミネアポリス総裁が年内の利下げに否定的なコメントを発したことが伝えられ、株価が全般下げたことで、安全資産のドルや国債が買われ、金はそれに反応する形で下げたものの、その後低値で金が購入されて戻していました。
また、今週ウクライナがロシアの精油所を攻撃したこともあり、同日も原油価格が上昇していたことによるインフレヘッジ、そしてイランとイスラエル、イランと米国の緊張が高まる中での地政学リスクの高まりによる安全資産としての需要もあった模様です。
本日金曜日は、注目の米雇用統計が予想を上回るもので、ドルと長期金利が上昇する中で、一時トロイオンスあたり14ドルほど下げたものの、その後上昇に転じ、ロンドン午後6時前に2329ドルと、前日の取引時間内の史上最高値を20ドル近く上回る最高値をつけています。
本日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が30.3万人と予想の20万人、前回修正値の27万人を上回り、失業率も3.8%と前回と予想の3.9%を下回り、平均時給は前月比0.3%と予想と同水準で前回修正値の0.2%を上回っていましたが、前年同月比では4.1%と予想と同水準で前回の4.3%を下回っていました。
そこで、FRBによる金利引き下げ延期の観測が広がり、ドルと長期金利が上昇していますが、本日もイスラエルとイラン、そしてロシアとNATOの緊張が高まっていることがニュースで伝えられており、原油価格が昨年10月以来の高値を付けていることからも、この地政学リスクや、原油高によるインフレ上昇の懸念、そして高値が高値を呼ぶ状況もあり、前週同様に週末前に価格が急騰をしています。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に3月26日のデータが発表され、前週金曜日に史上最高値をつけて価格が多少下げていた際に、金とプラチナとパラジウムで強気ポジションを増加させ、銀で強気ポジションを減少させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、0.2%減で490.6トンと若干増加していたこと。価格はこの際1.2%高でトロイオンスあたり2179.80ドルと再びLBMAのPM価格で史上最高値を更新していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、4週連続ネットロングで20%減の4694トンと2022年4月19日以来の高さから下げていたこと。価格は0.4%安のトロイオンスあたり24.83ドルと昨年5月初旬以来の高さから下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは1月23日の週以来ネットショートで、28%減の4.3トンと減少していたこと。価格は1.1%高でトロイオンスあたり906ドルと上昇していたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートであるものの、0.6%減の31.4トンと1月初旬以来の低さへ下げていたこと。価格は1.9%高でトロイオンスあたり1005ドルと上昇していたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに、週間としては2.3トン(0.3%)増で832トンと週間の上昇で2月初旬以来の高さとなっていたこと。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに2.4トン(0.6%)減で384トンと、引き続きパンデミック最中の増加分を失って2020年3月末以来の低さで、9週連続の週間減少後に前週増減が無かったものの、再び週間の減少であったこと。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで528トン(4%)増で13,718トンと3週連続の週間の増加傾向で1月末以来の高さであること。この週間の増量は、2021年2月初旬のSNS投稿によって起こったシルバーショートスクイーズ時の大量の増加以来の規模。
- 金銀比価は、今週88台前半で始まり水曜日に85を下回る昨年12月以来の低さへ下げた後に、本日は85台半ばで終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、木曜日に1365ドルと再び1990年3月にLBMA価格が公表されて以来の最大の高さとなっていたこと。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは今週104ドルで始まり、木曜日に71ドルまで下げた後に、金曜日86へ多少上昇して終える傾向。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
- 上海黄金交易所(SGE)の金のプレミアムは、今週SGEの金価格が前週水曜日から6営業日連続で史上最高値を更新する中で、木曜日からの祝日前の週間の平均が36ドルと前週の40ドルから下げていたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週前週平均比で、金は2%減、銀は107%増で2021年2月一週のSNSの投稿によりシルバーショートスクイーズが行われて銀価格が急騰していた際以来の高さ、プラチナは9%減、パラジウムは13%増。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は昨年11月24日からの負の相関関係を4月27日から正の関係として0.36と週間で関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は昨年11月20日からの負の相関関係を3月28日から正の関係として本日は0.55と関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は正の相関関係に3月1日から転換して木曜日に0.31と今週その関係を弱めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は欧州がイースター休暇の月曜日から、前週発表指標によるインフレ鈍化、その後地政学リスクの高まり、そして、ISM製造業景況指数や米雇用動態調査(JOLT)求人件数、ADP全国雇用者数、米雇用統計等の米経済指標の強さ等も金価格に影響を与えていました。
来週は水曜日に米消費者物価指数とFOMC議事録、木曜日に米卸売物価指数と欧州中央銀行の政策金利発表と再び重要指標やイベントが続き、市場はこれらと共に、FRB高官のコメントや地政学リスク関連ニュースに注目することとなります。、
詳細は主要経済指標(2024年4月8日~12日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週発表された弊社の金投資家インデックスのデータと弊社リサーチダイレクターのエイドリアン・アッシュのコメントが主要メディアで伝えられています。
Jiji Commodity: 〔NY金分析情報〕下落=米雇用統計控え、ポジション調整の売り
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年4月1日~5日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年4月8日~12日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2024年4月3日)地政学的リスクが高まる中、堅調な米経済データにもかかわらず、金価格は史上最高値の更新を続ける
- 【金投資家インデックス】欧米の投資家は金価格高騰で利益確定を進める
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、イスラエル軍の空爆でガザ地区で活動していた人道支援の英国人3人を含む外国職員7人が亡くなったこと、その後米国の要求でガザ支援ルート2か所を開放を承認したこと等、引き続きイスラエルとガザ紛争がトップニュースとなっていますが、その他、チャールズ国王がイースターサンデーにウィンザー城内の教会の礼拝に出席し、その場に集まっていた国民と言葉を交わしていたこと等が伝えられています。
そのような中、私は昨日ロンドンで行われた、日英桜植樹プロジェクトが主催した桜まつりに、英国日本人会の副会長として参加してきましたので、簡単にこのプロジェクトについてお伝えしましょう。
このプロジェクトは、2017年に故安倍晋三首相と英国のテリーザ・メイ前首相が日本で会談した際に、150年にわたる2国間の友好親善と今後の継続的な友好関係を記念するものとして発表されました。
その後、日英桜植樹プロジェクトが「日英文化季間2019-2020」の一環として動き始め、日本においては日英協会が日本国内での資金調達を担当し、英国では英国日本人会も組織の中に入っているジャパン祭りカンパニーが英国の桜植樹のマネージメントを行い、2024年現在までに、すでに英国全土へ8500本が植樹され、2025年までに1500本を追加植えて、10,000本とすることを目標としています。
このプロジェクトで植樹が行われた場所は、スコットランド、ウェールズ、イングランド、及びイギリス領の島々も含めてほぼ英国全域となっており、ロンドン市内のロイヤルパークの一つであるリージェントパークには30本近いソメイヨシノと太白等が植えられており、すでに日本人コミュニティーの中ではお花見の良い場所となっています。
今年に入り、英国首相の公式別荘であるチェッカーズにも18本の太白が植樹され、スナク英首相からもこのプロジェクトは感謝状を受け取ったとのことです。
昨日のイベントでは、駐英国日本国大使の林肇氏も大使夫人の治子氏と共に参加され、同プロジェクトの共同委員長の佐野圭作氏、副委員長のビクトリア・ボルウィック女伯爵、駐英国日本国文化公使の岡崎泰之も参加されていました。
私の子供たちが通った小学校にもこのプロジェクトから桜を寄贈いただきましたが、これを機会に、桜が日本の国花であることが学校側から生徒たちに伝えられ、日本という国をより近く感じてもらえたようです。
植樹された桜の木々は、これからも日本と英国の良好な関係の象徴として、英国の様々な場所で長く咲き続けてくれることでしょう。