ニュースレター(2024年8月30日)月末価格で2か月連続で史上最高値を更新
次回ニュースレターは9月6日ではなく、9日以降にお届けします。
週間市場ウォッチ
金曜日の弊社チャート上の午後3時の金価格は、前週金曜日のLBMAのPM金価格から0.2%高でトロイオンスあたり2515ドルと、月末のLBMA価格として2か月連続で史上最高値へと上昇しています。この間本日の午後12時の弊社チャート上の銀価格は、前週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から0.1%高のトロイオンスあたり29.46ドルと3週連続の週間の上昇となっています。金曜日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から0.8%安のトロイオンスあたり940ドルと週間の下げとなっています。また弊社チャート上の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から4.4%高でトロイオンスあたり983ドルと週間の上げで7月半ば以来の高さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属市場は、英国が月曜日が祝日で米国が来週月曜日が祝日であることからも、未だ薄商いの中、水曜日の金融市場が注目していたエヌビディアの決算、本日のFRBがインフレ指標として重要視する米個人消費支出(PCE)コア・デフレーターを待つ中動意が無く、発表後もレンジ内の動きとなっています。
本日の米インフレ指標は予想と同じ水準で、エヌビディアの決算は予想を上回るものであったものの、もっとも楽観的な予想を下回るもので、大きく市場を動かすものではなく、来週の米雇用統計へと注目は移っている模様です。
金は、先週の史上最高値後、レジスタンスのトロイオンスあたり2525ドルとサポートの2500ドルの間に留まっており、それぞれのラインを超えるきっかけを待っている状況となっています。
ちなみに、今週は米2年物国債と10年物国債の利回り差(イールドカーブ)が、近い将来の不況を示唆するという逆転(長期国債の利回りが短期国債の利回りを下回る)をほぼ解消しています。これは、FRBによる近い将来の利下げが背景となりますが、下記のチャートでも見れるように、利回りの差がマイナスからプラスへ転換した後に失業率(赤線)が上昇し、不況(チャートの灰色で表されている期間)が訪れていることが分かり、過去の例を周到すると米経済停滞が近い将来に訪れるということとなります。
なお、銀は金とは異なり地政学リスクによる需要や中央銀行の需要が無く、金の上げ幅に劣る動きが続いており、今週心理的節目のトロイオンスあたり30ドル維持できなかったことで、金銀比価は火曜日のひと月ぶりの83台後半から85へと上げています。
プラチナは、対金及びパラジウムで下げており、金とのディスカウントは史上最大、パラジウムとの価格はディスカウントに再び沈んでいます。パラジウムは他の貴金属よりも良し小さな市場となり、値動きが激しい中で、現段階では7月半ば以来の高さへと上昇しています。
今週の金相場の動きと背景について
英国祝日明け火曜日金相場は、英国時間昼前にトロイオンスあたり2511ドルへ一時下げた後に、2525ドルまで戻して終えていました。
今週は金曜日にFRBがインフレ指標として重要視する米個人消費支出PCEコア・デフレーターが発表され、前週史上最高値を記録して大きく下げる等と荒い動きをしていたために、比較的狭いレンジの15ドル内の動きとなっていました。
なお、月曜日発表の米耐久財受注は前月比予想を上回り、輸送機を除く数値は予想を下回るまちまちであったものの、金価格を押し下げていましたが、同日の米ケースシラー住宅価格指数は予想を上回り、米消費者信頼感指数も予想を上回る中、価格はじわじわと上昇していました。
このような中、9月の利下げ幅は0.50%が3割を超える水準で、0.25%が7割と1週間前の水準とほぼ変わらず推移していました。
水曜日金相場は、世界有数のチップメーカーのエヌビディアの決算を金融市場が待つ中で、株価が下げて、ロンドン時間昼過ぎにドルが強含んだことに反応してトロイオンスあたり2493ドルまで下げた後に、ドルが多少上げ幅を削ったことで2508ドルへ戻して終えていました。
同日のロンドン時間夜に決算が発表されるエヌビディアの株価は今年すでに166%高と急騰し、他のアップル等のマグニフィセント・セブンと呼ばれる主要7銘柄の一角としてテクノロジー株を牽引していることからも、この決算結果が金融市場を動かすとされていましたが、結果は予想を上回るもので、市場は安堵からもリスクオフ傾向となっていました。
木曜日金相場は前日の下げ幅をほぼ取り戻し、一時トロイオンスあたり2528ドルまで上昇して、2521ドルで終えていました。
エヌビディアの決算結果後の翌営業日の同社株価の反応は、予想を上回る結果であったものの材料出尽くしでエヌビディア株は下げていたものの、同日発表の米第二四半期GDPが3.0%と速報値の2.9%から若干上方修正され、FRBの早期の大幅な利下げは若干後退しドルと長期金利は上昇し、金価格は2504ドルまで一時下げたものの、その後は株価の上げと共に上昇に転じていました。
本日金曜日金相場は、市場注目のFRBがインフレ指標として重視する米個人消費支出(PCE)コア・デフレーターがほぼ予想の水準となる中、トロイオンスあたり2514ドル前後へを維持して推移しています。
米インフレ指標では、前月比0.2%と予想と前回と同じで、前年同月比で2.6%と前回と同様で、予想の2.7%を下回っていました。
そこで、9月の利下げ幅は0.25%がほぼ7割と前日の66%を若干上回り、年末の金利は4.38%と前日からは上昇しているものの、年末までのほぼ1%の利下げ観測となっています。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に8月20日までの一週間データが発表され、FRBによる早期の大幅な政策金利引き下げ観測でドル建て金価格が史上最高値を付けた同日までの1週間に、全ての貴金属でロングポジションが増加していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、3%増で705トンと2週連続で増加して、コロナ危機下の2020年3月10日の週以来の高さに増加していたこと。価格は2.4%高でトロイオンスあたり2529ドルとLBMA価格としては史上最高値を記録していたこと。建玉は7.0%増で2週連続で増加して前回の史上最高値前日の7月16日の週以来の高さへ増加していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、32%増で4976トンと4週ぶりに増加して7月16日の週以来の高さとなっていたこと。価格は前週比7.5%高で、トロイオンスあたり29.77ドルと、7月16日の週以来の高さとなっていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、5月7日の週以来ネットロングから8月6日から2週連続でネットショートであったものの、再びネットロングへ転換して0.13トンとなっていたこと。価格は前週比2.2%高でトロイオンスあたり960ドルと前々週の4月23日の週以来の低さから2週連続で上昇していたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートであったものの、0.7%減で46.2トンと2週連続で減少して前々週の2006年6月以来の高さから下げていたこと。価格は0.5%高でトロイオンスあたり942ドルと2週連続で上昇して7月9日の週以来の高さとなっていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までで、週間としては1.15トン(0.13%)増で857.27トンと9週連続の週間の増加傾向ではあるものの、8月22日以来の高さであること。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで週間で0.59トン(0.16%)増で366.56トンと2週連続の週間の増加傾向で8月15日以来の高さであること。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で36.91トン(0.25%)減で14,453.59トンで、8月26日以来の低さで、週間の減少傾向であること。
- 金銀比価は、今週火曜日に83台後半と7月末以来の低さで始まり、その後85台へ戻して本日85台半ばへと上げて終える傾向。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週火曜日に1547ドルで始まり、水曜日以降本日の1578ドルまで日々記録が残っている1990年3月以来最大へ上昇して終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差は今週火曜日から再びディスカウントへ転換し、本日41ドルと今年4月末の水準まで上昇して終える傾向。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は8月19日からディスカウントとなり、今週の平均は5.36ドルと前週の7.46ドルの中国がコロナ禍のロックダウン中の2021年6月以来の大きさからは下げていたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は今週木曜日までで、前週平均比で、金は11%減で6月末の週以来の低さ、銀は8%減で8月2日の週以来の低さ、プラチナは1%増で8月16日の週以来の高さ、パラジウムは17%減で8月16日の週以来の低さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は6月27日から負の相関関係で-0.66と週間では負の関係を若干弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は6月10日から負の関係へ転換し、-0.87と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は8月6日から正の関係で、0.92と関係を強めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週はFRBがインフレ指標として注目する米個人消費支出PCEコア・デフレーターへ市場は注目し動くこととなりました。
来週は前回予想を大きく下回った米雇用統計が金曜日に発表され、FRBの政策金利引き下げのタイミングとその幅を予想する上で市場は注目することとなります。
その他、火曜日の主要国の製造業PMI、水曜日の米ISM非製造業景況指数、木曜日の米雇動態調査(JOLT)求人件数と米地区連銀経済報告、木曜日の米ADP雇用統計と新規失業保険申請件数なども重要となります。
詳細は、主要経済指標(2024年9月2日~6日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年8月26日~30日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年9月2日~6日)来週の予定をまとめています。
- 金ETFの資金流入、アジアから欧米投資へ転換
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、引き続きハマスとイスラエル及びレバノンの武装組織ヒズボラの紛争、ウクライナ戦争について伝えられていますが、それに加えて、スターマ首相のドイツ及びフランス訪問について、パラリンピック開催、そして2009年に解散した英バンドのオアシスの再結成ツアー等が大きく伝えられています。
そのような中、昨日は英国政府が屋外での喫煙に対してより厳しい規制を行う可能性につてい報道されていますので、ご紹介しましょう。
英国では、2007年以来飲食店を含む公的場所は室内ではその規模に関わらず禁煙となっています。
しかしながら、屋外での喫煙に関しては現段階までは規制はなく、ビアガーデンなどパブの庭での喫煙は認められていました。
今回検討されているのは、パブやレストランや大学、子供の遊び場や小さな公園などの屋外スペースや外の歩道でも規制を課すというもののようです。
なお、先週お伝えしたように、この規制はイングランドのみに適用され、他の自治区のスコットランド、ウェールズ、北アイルランドはそれぞれが決定権を持つようです。
スターマ首相は、年間喫煙が理由の死亡者数は8万人に達しているとし、喫煙に絡む病気はNHS(国民健康サービス)に大きな負担となっており、つまりは納税者の負担であることから、予防の意味でも行動を起こすべきと述べています。
ちなみに、喫煙関係の病気によるNHSの費用は年間で26億ポンド(約5331億円)で、全ての費用の2%に相当すると推定されています。
すでに飲食業界はこの規制による経済的な悪影響等からも強い懸念を示しており、人々の権利とその自由を守ることが重要と考えるリベラル派の人々は法律で認められている喫煙に対する更なる規制を問題視しているようです。
健康に害があると立証されている喫煙を政府がどのように制限をしていくのかは世界の全ての国が直面している問題かと考えますが、英国の新政権がどのように世論を巻き込んでどのような規制を導入するのかは興味深いところです。