金市場ニュース

ニュースレター(2024年2月9日)金価格はリスクオン基調で下げる中、プラチナ価格とパラジウム価格が逆転

週間市場ウォッチ

本日金曜日の午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり2024ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.5%安の下落となっています。この間本日の弊社チャート上の午後12時の銀価格は、前週のLBMA価格(午後12時)から2.5%安のトロイオンスあたり22.66ドルと週間の下落となっています。本日の弊社チャート上の午後2時のプラチナ価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から2.5%安のトロイオンスあたり882ドルと週間の下落となっています。本日金曜日の午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMAのPM価格から8.1%安のトロイオンスあたり877ドルと週間の下げで2018年7月以来の低さとなっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、引き続きFRB高官による早期の利下げ警告のコメントが続く中で米株価は全般上昇してリスクオンとなる中で、金は緩やかに下げているものの、中国の中銀及び消費者の需要の強さが伝えられていることからも、底値は固い動きとなっています。

その間、工業用途需要の多い銀、プラチナ、パラジウムは下げ幅を広げることとなりました。特にパラジウムに関しては今週2018年7月以来の低さへと下げ、木曜日に2018年4月以来初めてプラチナ価格を下回っていました。また、プラチナ価格と金価格の差は世界指標が公表された1990年3月末以来最大のディスカウント(プラチナ価格が金に対して)マイナス1150ドルと広がり、白金族の弱さが際立つこととなりました。

これは木曜日に中国の消費者物価指数が4か月連続の低下でマイナス0.8%と14年4か月ぶりの大きさであったことからも、中国の経済低迷が続く観測が広がったことが、工業用途需要が多いこれらの貴金属の価格を押し下げていた模様です。

そこで、今週はプラチナ価格とプラチナと金価格の差を示すチャートとプラチナ価格とパラジウム価格の推移を示すチャートをお届けします。

プラチナ価格と金とプラチナ価格の差 出典元 ブリオンボールト

プラチナ価格とパラジウム価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

なお、パラジウムに関してはガソリン車の排ガス触媒需要が全体の8割を占めていることから、今後EV化が進むことで需要減少の懸念、そして今週行われた鉱山会社の会議で南アフリカが供給を減少させないと述べたことが伝えられ、供給過多の懸念も出ていた模様です。

今週の金相場の動きと背景について

月曜日金相場はロンドン時間昼過ぎに前週の上げ幅をほぼ失って一時トロイオンスあたり2015ドルをつけた後、2027ドルまで戻して終えていました。

これは、前週の強い米雇用統計、日曜日のパウエルFRB議長の近い将来の利上げを否定するコメント、そして同日の良好な米ISM非製造業景況で、市場が今年6回まで織り込んでいたFRBによる利下げ観測が一気に後退したことが背景となりました。

そこで、ドルが昨年11月、長期金利も先週の年初来の低値から一転上昇に転じていました。

火曜日金相場は、ドルインデックスと長期金利が多少下げる中で、前日の下げ幅を削ってトロイオンスあたり2035ドルで終えていました。

ドルと長期金利の下げは、前日それぞれ4か月とほぼ2週ぶりの高さへ上昇していたことからも、その調整の模様でしたが、同日もクリーブランド連銀のメスター総裁が「インフレ率が持続可能に2%に戻る十分な証拠がないまま金利を早急に引き下げるのは間違いだ」と述べたことが伝えられていたことで、金相場の頭は重たい状況となってました。

水曜日金相場は、重要指標が無いものの、同日FRB高官4人のスピーチがあることから、トロイオンスあたり2035ドルとほぼ前日の終値前後の狭い範囲で推移して2037ドルで終えていました。

そのような中、前日は金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が4トン減少していたことが明らかとなっていましたが、2022年11月以来毎月金準備を積み増している中国の中銀は1月も10トン金を購入していたことが明らかとなっていたこと、そして上海黄金交易所から271トンの金が引き出されていたことも、明らかとなっており、中国の消費者の需要も高まっていることが示唆されていたことは金のセンチメントを支えていた模様です。

木曜日金相場は、ドルと長期金利が前日の下落から反転する中で、トロイオンスあたり2032ドルと前日終値から下げて終えていました。

これは、同日昼過ぎに発表された米新規失業保険申請件数が前週と予想を下回たことやFRB高官による早すぎる利下げへの警告が続いていることによる利下げ観測の後退に加え、同日は過去2年間で最大の米30年物国債の入札が予定されていることも、国債の売りを誘い長期金利を上昇させていました。

そして、同日は日本銀行の内田副総裁のマイナス金利を解除しても緩和的金融環境を維持するというハト派的コメントが伝えられたことも円安を進めてドルを相対的に引き上げていました。

また、米株価指数はS&P500が心理的節目の5000を始めて超えるなど、高水準を続けていることからも、リスクオン基調は金の頭を抑えていた模様です。

本日金曜日金相場は、ドルは若干下げているものの、長期金利が上昇する中で、トロイオンスあたり2020ドルと前日終値から下げて推移しています。

本日は米労働省が2023年12月の消費者物価指数の前月比の数値をすでに発表していた0.3%から0.2%へ下方修正したことで、投資家心理の支えとなり、米株価が前日に続き全般上昇し、S&P 500株価指数が史上最高値を再び更新していることからも、リスクオン基調が、ドルと国債、そして金売りの背景の模様です。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に1月30日のデータが発表され、米国の雇用データ(JPLT)が強いもので金価格が上げ幅を削っていた際に、金を除く全ての貴金属において強気ポジションが増加していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6%減で224ンと引き続き10月半ば以来の低さとなっていたこと。価格は0.99%高でトロイオンスあたり2043.05ドルと1月初旬以来の高さとなっていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、前週のネットショートからネットロングへ再び転換し785トンとなっていたこと。価格は3.68%高のトロイオンスあたり23.08と前週の10月初旬以来の低さの22.26ドルから上昇していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは前週以来ネットショートであるものの、83%減少して1.8トン。価格は2.1%高でトロイオンスあたり925ドルと2週連続で上昇していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは引き続きネットショートであったものの、7.9%減の32.1トンと前週のこの記録が始まった2006年6月以来の高さから下げていたこと。価格は4.5%高で980ドルと前週の2018年8月以来の低さから上昇していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに8.1トン(0.9%)減で843.66トンと6週連続の週間の減少傾向。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに全く変化が無く394.61トンで1月半ば以来の低さを維持していたこと。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで152.27トン(1.13%)増で13,686.79トンと週間の増加傾向。
  • 金銀比価は、今週ほぼ90で始まり、今年3月以来の高い水準の91を超えた後に、本日は90を割って終える傾向。2023年年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週木曜日に1153ドルと1990年にLBMA価格が始まって以来の高さへと上昇し、若干下げて終える傾向。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは51で始まり、昨日2018年4月以来初めてプラチナがパラジウム価格を上回ったものの、本日は再び3ドルのディスカウントで終える傾向。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、明日から春節の休暇に入る前に、週平均は47ドルと前週とほぼ同じ水準。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇していたこと。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週前週平均比で、金は44%減で昨年末以来の低さで、銀は15%減、プラチナは11%増、パラジウムは45%増。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月27日に負の相関関係となり、本日-57と前週から弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は11月21日から負の相関関係へ転換して、本日-0.44と前週よりは関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は正の相関関係に2月6日に転換して0.11。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週市場は重要指標が少ない中で、FRB高官のコメントに市場は注目していました。

来週は中国が春節の休暇に入る中で、水曜日に米消費者物価指数、金曜日に米卸売物価指数が発表されて、FRBが注目するインフレが鈍化をしているのかに市場は注目することとなります。

その他、停戦交渉が行われている中東情勢、そして米国商業用不動産向け融資で経営が悪化した米地銀ニューヨーク・コミュニティー・バンコープについても引き続き市場は注目することとなります。

詳細は主要経済指標(2024年2月12日~16日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

NY先物金市場を解説するJiji Commodity記事で、ブリオンボールトが毎月まとめている金投資家インデックスのデータと弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが引用されました。

この記事では、弊社の1月の顧客金保有量も5カ月連続減少で約3年ぶりの低水準となってていたことに触れて、欧米の現物需要の弱さは、上値を抑える要因となっていると解説し、次のエィドリアンのコメントを紹介しています。 

「欧米投資家が金地金への新規投資を抑制し、ポートフォリオ調整の一環で保有地金を売却しているのとは対照的に中国では不動産市場暴落という厳しい経済状況に直面した貯蓄者が金を買い、中央銀行も地政学的緊張が高まる中で金を買い続けている。」

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週は英国ではチャールズ国王ががんと診断されたことが日々大きく伝えられていますが、それに加え北アイルランドの自治政府が2年ぶりに発足し、カソリック系シンフェイン党の党首が初めて首相となったことが、イスラエルとハマスの紛争やウクライナ戦争のニュースと共に大きく伝えられています。

そこで、日本ではあまり馴染みのない北アイルランドの政治に関するニュースを歴史を振り返って簡単にまとめてみましょう。

北アイルランドは1920年のアイルランド統治法でアイルランドが分割され、人口の大半を占めるイギリスからの植民者の子孫のプロテスタントの人々(ユニオニスト)が英国内に留まることを望んで1921年に分権政府として誕生しました。

しかし、少数派ながらアイルランドの統一を望むカトリック教徒のアイルランド民族主義者(ナショナリスト)が存在し、両者の紛争が1920年から1922年にかけて激化し500人以上が首都ベルファストでは亡くなっていました。

政治的にはユニオニスト政権が主導していましたが、同政権の少数派ナショナリストへの差別が批判される中、ナショナリストとユニオニストの戦いが1960年代に激化(北アイルランド問題)し3500人以上の人々が亡くなり、1998年にはGood Friday Agreementで和平プロセスが始まり、ナショナリストとユニオニストの政党が共に参加した自治政府が発足していたのでした。

しかし、2016年の英国のEU離脱の国民投票でEU離脱が行われたことで、EUに属するアイルランドと英国の一部である北アイルランドの間に、人や物資の動きが自由にできない国境(通関)ができることとなり、当時のユニオニストである民主統一党(DUP)の党首で自治政府首相が、2022年に反発して辞任をし、同年5月の議会選挙で、ナショナリストのシンフェイン党が初めて第一党となり、第2党へ落ちたDUPがボイコットをして自治政府が機能しない政治の空白が続いていたのでした。

しかし、スナク政権が英国本土との自由な物流を保証する法案を明らかにしたことで、ユニオニストのDUPも自治政府復帰へと動き、今週2年ぶりに自治政府が発足し、シンフェイン党の副党首であるミシェル・オニール氏が初のナショナリストの首相として就任したのでした。

私が英国に移住した1990年代はナショナリストの軍事組織のIRAによる爆弾予告がロンドン市内でも日々頻繁に行われていました。その間、IRAの政治的組織とされていた当時のシンフェイン党のジェリー・アダムズ元党首のインタビューはテロリストという位置づけで肉声ではなく常に吹き替えで行われていましたが、その党の副党首が北アイルランドの首相へ就任し、従来第一党であったDUPは副首相と議長のポジションを埋めたことは、歴史の流れを感じさせるものです。

異なる目的を持つ党が協力をせざるを得ない自治政府ではあるものの、北アイルランドの人々のためにも、主要2党が協力をして2年間の空白を埋めていく努力をすることを望みたいと思います。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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