ニュースレター(2022年12月30日)2022年の金市場のまとめ
今週は2022年最後のニュースレターとなりますので、今年一年の貴金属の動きをまとめたレポートをお届けします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午前10時半の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1815ドルと、前週金曜日のLBMA価格のAM価格(午前10時半)からほぼ1.0%高と週間の上昇となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から0.82%高のトロイオンスあたり23.93ドルと週間の上昇となっています。プラチナは本日午前10時半の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのAM価格から6.52%高のトロイオンスあたり1059ドルと週間の上昇となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムAM価格と比較して、本日午前10時半の弊社チャート上での価格は8.05%高のトロイオンスあたり1791ドルと週間の上昇となっています。
2022年の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今年一年の貴金属相場について、年間の価格の動きをまとめて、その背景について解説してみましょう。
まず、今年の最高値と最低値を見てみると、ドル建てにおいては史上最高値の2020年のパンデミック時の2075ドルには至らなかったものの、今年2月末のロシアによるウクライナ侵攻で安全資産の需要の高まりでほぼ2044ドルをつけています。
注 先の価格はブリオンボールトのチャートからのもの。日本円はgあたりの価格で、その他はトロイオンスあたりの価格。
最低値をつけた背景は、主要中央銀行が高インフレ対応の金融引締めを急激に行うことで、ドルが強含み、年間の上げ幅としては2015年以来の大きさで、長期金利については1980年以来の上げ幅となったことからも、ドル建て資産で金利を生み出さない貴金属は大きく押し下げられたことからでした。
そこで、前年末比で見るとドル建てにおいては金は若干下げていますが、他の主要通貨建てにおいては、対ドルでの通貨安からも、40年来の低値をつけた日本円を筆頭に大きく上昇していることがご覧いただけます。
注 先の価格は、LBMA価格の12月最終日のAM価格を利用
そのような中、今月に入りドル建て金価格も1800ドルを超える強い動きをしています。それは、急激な政策金利上昇による景気後退懸念で株価が下げていることからも、安全資産としての需要がでていることが背景の模様です。
なお、景気後退時に低迷する工業用途の需要が高い銀とプラチナが前年末比上昇しているのは、今月に入り中国政府のコロナ規制緩和関連のニュースを受けて、今後の中国からの需要期待がある模様です。
パラジウムに関しては、コロナ以前とウクライナ戦争による需給逼迫で急騰していたことからも、価格の調整が入っている模様です。
なお、最後に貴金属の金と銀の年間平均価格の推移を表すチャートも添付します。ドル建て金価格は、3年連続で年間平均価格は史上最高値を記録していることもご覧いただけます。
今週の金相場の動きと背景について
今週金相場は、火曜日英国が祝日の際に、トロイオンスあたり1832ドルと6ヶ月ぶりの高さへ一時上昇後に1810前後で推移していましたが、本日金曜日新年の祝日を前に株価が全般下げていることで、安全資産の需要もでているようで、1815ドルへと上げて推移しています。
なお、火曜日の上げはドルが多少弱含んだことに薄商いの中で反応した模様ですが、それとともに前日26日に中国政府が新型コロナ対策の入国時の隔離措置を1月8日から撤廃するという発表を受けて、世界最大の金の消費国中国の需要の高まり観測も背景となっていた模様です。
その他の市場のニュ―ス
今週は年間の貴金属関連金融商品やデータの年間の動きについてお届けします。
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、2022年は全ての貴金属で前年比で弱気基調であるものの、12月にパラジウムを除きその基調が強気へと変化が見られていること。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションの年間平均は12月20日までのデータにおいて、前年末から37%減の177トン。しかし、12月20日の段階で182トンとその平均を上回っていること。パンデミックで価格が急騰した2020年の平均は538トン。5年平均は313トン。建玉の平均は前年とほぼ同水準んぼ668,822枚。2020年の平均は百万枚をこえていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションの年間平均は、前年比63%減の1623トン。しかし、12月20日野段階で4665トンと年間平均を187%上回っていること。5週連続でネットロングで、0.3%減で2279トンと減少していたこと。2020年の平均は5599トン。5年平均は2834トン。
- コメックスのプラチナ先物・オプションの年間平均は、ネットロングで2.1トンと、前年比84%減。しかし、12月20日の段階で27.3トンへと増加していること。2020年の平均は23トン。5年平均は8.9トン。
- コメックスのパラジウム先物・オプションの年間平均ネットポジションはネットショートで2.7トン。そして、12月20日の段階でネットショートが5.8トンと弱気基調。2021年の平均はネットロングで3.9トンで、2020年平均は10.5トン。5年平均は17トン。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに年間で57.2トン減(5.9%)で919トンと年間で減少傾向。2021年は195トン(17.8%)減。しかし、12月は7ヶ月ぶりに月間の増加傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに年間で42トン(8.9%)減の449トン。2021年は36トン(7%)減。しかし、12月は減少しているもののその量は0.5%と減少傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに2022年通年で1937トン(12.2%)減で14,574トン。2021年は年間で867トン(4.2%)減。12月においては、2.1%減と引き続き月間の減少傾向。
- 金銀比価は、2022年平均は83.39と前年の71.83からは増加していたこと。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、2022年平均は839.64。2021年平均は708.82ドルで5年平均は670.16ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、2022年は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
- 上海黄金交易所(SGE)のロンドン金価格との差は、2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は9%減と2021年末以来の低さ、銀は16%減で5月末以来の低さ、プラチナは25%減で12月初旬、パラジウムは9%減で5月半ば以来の低さと休暇モード。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は欧米はクリスマス休暇で主要経済指標は限られていましたが、来週は2日以降多くの重要指標が発表されることとなります。
最も注目されるのは、水曜日のFOMCの議事録とFRBの金融政策に影響を与える金曜日の米雇用統計となります。
その他、月曜日と火曜日の主要国の製造業PMI、水曜日の米ISM製造業景況指数、木曜日の米ADP全国雇用者数と新規失業保険申請件数、そして金曜日のユーロ圏の消費者物価指数などとなります。
詳細は主要経済指標(2023年1月2日~6日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
中央銀行が55年ぶりの大量の金購入を行ったことを伝えるファイナンシャル・タイムズの記事で、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここでエィドリアンは、「米国とその同盟国がロシアのドル準備を凍結した後に、中央銀行の金需要が増加しているのは、地政学的背景によることを示唆している」と述べています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2022年12月26日~30日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2023年1月2日~6日)来週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週は弊社ニュースレターのロンドン便りは今年最後となりますので、今年お届けした内容をリストアップしてみました。
ここでは、年初は新型コロナウィルス対応について、2月末以降はウクライナ関連、3月からエネルギー高騰、6月はプラチナジュビリー関連、9月はエリザベス女王崩御と国葬について、そして9月末から12月までには、ジョンソン元首相辞任、トラス首相就任と辞任とその政治的、経済的混乱についてが多くなり、年末はストライキ関連となっています。
来る年もエネルギー高騰、高インフレはしばらく続きそうですが、少しでも明るい話題をお届けできればと思います。
1月 英国の新型コロナウィルス対応について、首相官邸でのパーティ疑惑について、解除されたコロナ規制について、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)について、
2月 英国のエネルギー問題について、冬季オリンピックの英国のメダル獲得数について、冬季オリンピックの英カーリングチームについて、ウクライナへの経済制裁について
3月 英国内で行われているウクライナサポートについて、プレミアリーグのチェルシーのオーナーがロシア人実業家であることから経済制裁の対象へ、イランで拘束されていた英国人の解放について、英国のエネルギー高騰対応策
4月 金業界の持続可能で責任のある調達サミット2022年について、行方不明になっていたチャールズ・ダーウィンのノートが返還されたこと、パーティー問題によるジョンソン首相の退陣論が再燃、ウィンブルドン選手権のロシアとベラルーシ選手除外について、チェルシーFCの所有権獲得関連のニュース
5月 英統一地方選挙について、癌の啓蒙活動を行っていたデボラ・ジェームズさんについて、プラチナ業界関係者が一同に介するプラチナウィークについて、英政府のエネルギー費用高騰への支援策について、
6月 プラチナジュービリーのイベント詳細、プラチナムジュビリーのハイライトについて
7月 ジョンソン元首相の辞任の背景について、次期首相候補について、英国の猛暑について、UEFA欧州女子選手権
8月 コモンウェルスゲームズについて、英国のエネルギー高騰について、英国のインフレ急騰について、英国の銃犯罪について
9月 エリザベス女王崩御について、エリザベス女王の国葬について、チャールズ新国王の「ロイヤルサイファー(紋章)」等について
10月 ロンドンマラソンについて、小型補正予算以来の英政権と市場の混迷、混迷を続けたトラス政権の最後の週について、スナク新首相の一週目の話題
11月 ラグビーリーグワールドカップについて、看護師のストライキについて、英秋季財政報告について、偽物とされていたローマ時代の金貨が本物であったこと
12月 今年を代表する言葉、英国のストライキ状況、英国経済の一年を振り返って
本年も弊社ニュースレターを購読いただきありがとうございました。
素晴らしい新年をお迎えください。