ニュースレター(2022年2月18日)ウクライナ情勢悪化懸念でドル建て金価格は8ヶ月ぶり、円建て金は史上最高値以来の高さへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1895ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.5%高と、昨年6月以来の高さへと上昇しています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり23.78ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から3.9%高と今年1月以来の高さへ上昇しています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1091ドルで6.7%高と昨年11月以来の高さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週金相場はウクライナ情勢で安全資産としての需要で大きく上昇し、銀もまた金に引っ張られる形で、プラチナは水曜日にバイデン政権が水素エネルギーへの投資を高めるという発表をしたことで、水素エネルギーに不可欠であるプラチナが上昇し、パラジウムはロシアが最大の産出国であることからウクライナ情勢への警戒から上昇することとなりました。
なお、今週主要通貨で全て金価格は上昇していましたが、本日ロンドン時間早朝に日本円建てではgあたり7030円を一時つけ、2020年8月の最高値7039円以来の高さへと上昇していました。
そこで、今週のチャートとして、日本円建て金相場の過去20年間の動きのチャートをお届けします。
日々の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、前週の基調を受け継ぎ、トロイオンスあたり1872ドルへと上昇して終えていました。
この背景はウクライナ情勢懸念によるリスク資産の急落からも、安全資産の需要の高まったことからであり、セントルイス連銀のブラード総裁が同日米CNBCのインタビューで、インフレへの強い懸念からも「想定よりも金融引き締めを前倒しで進める必要がある」と述べたことで、高インフレ懸念も要因となっていたようでした。
火曜日金相場は、ロシアのウクライナ国境からの一部撤退ニュースで欧米株価が反発する中で、ロンドン早朝にトロイオンスあたり1879ドルまで上昇していた水準から1844ドルまで下げて、1852ドルで終えていました。
先のニュースを受けて、やはり安全資産として買われていた米国ドルと米国国債も売られて米長期金利が再び2%を超えて上昇したことも、金を押し下げていました。
しかし、ロンドン時間午後に発表された米国卸売物価指数は、予想を上回っていたことからも、インフレヘッジ需要もあり、金をサポートすることとなりました。
水曜日金相場は、市場が同日発表のFOMC議事録を待つ中で、前日の下げ幅を削りながら上昇し、トロイオンスあたり1871ドルで終えていました。
これは、同日バイデン政権と北大西洋条約機構(NATO)が共にロシアによるウクライナ侵攻が依然ありうると述べたことが伝えられ、前日ウクライナ情勢への懸念が後退して反発した欧米株価が全般再び下げるなど、安全資産の需要が再び増加したことが背景となりました。
また、同日発表の米小売売上高は10ヶ月ぶりの速いペースであったこと、またロンドン時間夕方に発表されたFOMC議事録も、予想以上のタカ派的内容ではなかったことで、市場センチメントはリスクオフで継続された模様です。
木曜日金相場は、地政学リスクの高まりでトロイオンスあたり1902ドルと昨年6月以来の高さで前日終値比1.7%上昇して終えていました。
この背景は、ロシアは前日クリミア半島からロシアの軍用車が撤退する動画を公開していましたが、米政府がウクライナ国境付近でロシア軍が増兵されていると述べるなど、欧米とロシアの対立激化が警戒されていたからでした。
そこで、欧米株価は全般下げ、安全資産とされている米国国債、日本円、スイスフランが買われ、米長期金利が前日の2%超えた水準から下げていました。
本日金曜日金相場は、ウクライナ情勢で交錯するニュースが伝えられて、ロンドン早朝にトロイオンスあたり1902ドルをつけた後に1886ドルまで下げてロンドン時間午後に1891ドル前後を推移しています。
これは、ロシアが18日にプーチン大統領が指揮する軍事演習を19日に実施すると発表したこと、しかしその後ロシアのラブロフ外相と米国のブリンケン国務長官が来週会談する見通しが伝えられたことで金には売りが出た模様です。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、FOMCと米雇用統計後の8日火曜日までの週で、金以外の貴金属で強気ポジションを減少させていたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、36%増の264トンと前週の9月28日の週以来の低さから増加していたこと。この間、金価格は前々週比1.26%高。建玉においては、前週比1.5%増と前週の10月19日の週以来の低さから増加していたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から0.09%価格が下げる中で、12%減で1,582トンと7週ぶりの低さとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が1.3%前々週比下げていた際に、3週連続でネットロングであったものの、24%減の11.5トンとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは22週連続でネットショートで、63%増の1トンと、9月7日以来の週以来の低さから増加していたこと。この間パラジウム価格は5.2%安。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの週間で全く変化なく1,019トンで、引き続き昨年8月半ば以来の高さであること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週間で3.7トン(0.74%)増で497トンと、昨年11月末以来の高さで2週連続の増加傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに175トン(1%)増の17,113トンと、昨年1月半ば以来の高さで、4週連続の増加傾向であること。 -
金銀比価は、78台で始まり79台半ばで終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消) -
プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週829で始まり、徐々に下げて803で終える傾向。2021年平均は708.82で5年平均は564.76。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対して今週プレミアムで、人民元が対ドル強含んだものの、人民元建て金価格が昨年6月以来の高さへ上昇し、週間の平均が2.92と前週の4.55ドルから下げて、11月半ばの中国の規制強化の懸念でディスカウントへと転換していた以来の低さ。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。 -
コメックスの金とプラチナの先物・オプションの取引量は、今週価格が大きく上昇する中で、それぞれ週間平均で22%と23%増加していたものの、銀は15%下げていたこと。金とプラチナは2週と3週ぶりの高さ。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は水曜日発表のFOMC議事録要旨に市場は注目しながらも、ウクライナ情勢で動くこととなりました。FOMC議事録要旨は予想以上のタカ派的内容でなかったことで市場への影響は限定でしたが、来週も引き続きウクライナ情勢と主要中央銀行の金融政策に影響を与える指標やイベントに市場は注目することとなります。
そこで、FRBがインフレ指標として注目する金曜日発表の1月個人消費支出(PCE)関連データが重要となり、その他月曜日と火曜日の主要国の製造業とサービス部門のPMI、水曜日のユーロ圏の消費者物価指数、木曜日の米第4四半期GDPと新規失業保険申請件数等となります。
その他詳細は、主要経済指標(2022年2月21日~25日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
米主要経済サイトのMarket Watchが今週の金の8ヶ月ぶりの速いペースの急騰を伝える記事で弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが引用されています。
ここでエィドリアンは「パニック的な見出しで投機家筋がコメックスのオプションポジションを増加させる中で、現物地金の取引では利益確定の売却が進んでいる」とした上で、「(金上昇)の基本要因は継続している」として、「アジアの需要はコロナ危機のロックダウン後順調に回復していること、中央銀行の金購入も継続している」と述べています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2022年2月14日~18日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2022年2月21日~25日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ニュース(2022年2月14日)ウクライナ情勢への懸念から世界株価が下げ、経済の見通しが悪化する中で、金価格は上昇 -
ウクライナ情勢によるゴールドラッシュ?金価格1900ドルでは購入ではなく利益確定が進む。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、ウクライナ情勢、英国を立て続けで襲っているストーム(強風)による被害、アンドリュー王子の性虐待訴訟が示談となったこと、そして冬季オリンピックについてが大きく伝えらています。
先週は英国の冬季オリンピックのメダル記録をお伝えしましたが、今週は今オリンピック英国チームで初のメダル獲得が確実となった英国のカーリングチームについてご紹介しましょう。
英国のカーリングの歴史は古く、冬季オリンピックで初のカーリングの金メダルを1928年シャモニーで英国男子は獲得し、2014年のソチオリンピックでは銀メダルを得ています。その後カーリングの女子種目がオリンピックに加えられた1998年の翌冬季オリンピックの2002年のソルトレイクシティーでは金メダルを、そして前回の平昌オリンピックでは銅メダルを獲得しています。
昨日すでに男子は準決勝で米国に勝ったことで、土曜日の決勝でのスウェーデンとの対決で金もしくは銀のメダルを得ることが確実となり、本日女子もまた接戦で前回優勝のスウェーデンを負かし決勝進出が決まっています。
そのために、カーリング女子は英国と日本の決勝となり、個人的には複雑な気持ちですが、どちらもメダルが取れることが決まったことは素晴らしいニュースとなりました。
英国のこれまでの冬季オリンピックのメダル獲得数は平均1.4個ですが、オリンピック閉会を20日に控えて、未だメダル数0の英国チームにとって、そして英国の人々にとって、カーリング男女のメダルが確定したことによる喜びはお分かりになることでしょう。
週末に行われる決勝戦でそれぞれチームが力を最大限に発揮し、心残りのない試合となることを心から祈りたいと思います。