金市場ニュース

ニュースレター(2022年7月29日)FOMCと米GDPを経て金価格は2週連続の週間の上昇

週間市場ウォッチ

今週水曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1755ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.1%高と、2週連続で3週ぶり高さへ上昇しています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から6.6%高でトロイオンスあたり20.05ドルと、やはり2週連続で4週ぶり高さへ上げています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格からほぼ1.0%高のトロイオンスあたり891ドルと2週連続の上昇で3週ぶりの高さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は7.4%高のトロイオンスあたり2090ドルと2週連続の上昇でほぼ3週ぶりの高さとなっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属市場は、FOMCと米第2四半期GDPの発表等の重要イベントを消化しながら、週間で上昇で終える傾向となっています。

FOMCと第2四半期GDPの詳細は下記の「日々の金相場の動きと背景」で解説していますが、FOMCでは予想通りの0.75%の引き上げ、GDPは2四半期連続のマイナス成長でテクニカル的にリセッション入りが確認されることとなりました。

そこで、FOMCの結果は折込済みで、さらにパウエル議長の利上げペースが緩む可能性を示唆するコメントもあり、発表後長期金利が下げてドルが弱含み貴金属は上昇基調に転じ、米GDPの結果でさらにFRBによる利上げペースが緩む観測が進んだことが共に金のサポートとなりました。

しかしながら、7月としてみると、FOMCを前に高インフレによるFRBのより速いペースの利上げ観測が広がる中で、20年来のドル高からも貴金属は、今週大きく上昇した銀と前週から上昇を続けているパラジウムを除き、貴金属のパフォーマンスは下記のように抑えられることとなりました。

7月の貴金属の価格の変化比較 出典元 ブリオンボールト

 日本円金の下げ幅が他の通貨建てより広がっているのは、今週日本円が対ドル強含んだことが背景となります。

また、銀は先物・オプション市場のショートカバー、パラジウムは自動車需要増が伝えられて、この排ガス浄化装置の需要増観測が背景と分析されています。

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場はロンドン時間午前中に3営業日連続のドル安もありドル建てで上昇して推移していましたが、その後ドルが上昇し、長期金利も上昇したことでその上げ幅を失って、前週終値比多少下げてトロイオンスあたり1719ドルで終えていました。

前週のドル安はECBによる予想を超える0.5%の利上げが要因となりました、今週は水曜日FRBの政策金利が発表を待つ中で、0.75%の利上げが織り込み済みであったことから、景気の後退への懸念がドルと長期金利を多少押し上げていた模様です。

火曜日金相場は、翌日のFOMCの結果を待つ中様子見の状態で、ほぼ前日の終値の水準で狭い範囲での動きをした後、トロイオンスあたり1718ドルで終えていました。

同日世界株価は、米小売大手のウォールマートが業績見通しを下方修正するなど消費の先行きに懸念が強まるなど景気後退の懸念からも全般下げていました。

水曜日金相場は夕方発表のFOMCの結果を待つ中、トロイオンスあたり1719ドルと前日終値とほぼ同水準で狭いレンジでの取引でした。

そして、FOMCの声明で予想通り0.75%の利上げが確認されて、またパウエルFRB議長の記者会見で利上げ原則の可能性が示唆されて上昇し、トロイオンスあたり1739ドルで終えていました。

なお、同日世界株価は前夜のアルファベットとマイクロソフトの決算結果が好感され、また同日発表の米耐久財受注が予想を上回ったことなどもあり、景気後退観測が後退して全般上昇し、FOMC後にさらに上昇して終えていました。

木曜日金相場は、FOMC後の上昇基調を受け継ぐ中で、米GDPが2四半期連続でマイナス成長でテクニカル的にはリセッション入りしたことが明らかとなり、株価が全般下げてリスクオフ基調もあり、トロイオンスあたり1754ドルと3週ぶりの高さへ上昇して終えていました。

同日の米GDPは予想の+0.5%を下回る-0.9%と、前四半期の-1.6%に続き2四半期連続のマイナス成長となり、米景気への懸念が強まることとなりました。

そこで、前日FOMC後大きく上げていた米株価が下げて反応し、米長期金利が下げていたことも金のサポートとなっていました。

本日金曜日金相場は、ドルと長期金利が上昇する中で、前日までの上げ基調が多少緩む中でも、トロイオンスあたり1761ドルと前日終値から0.4%上昇しています。

このドルと金利上昇は、昨日の米第2四半期GDPがマイナス成長で米国のリセッション入りの懸念が、その後同日発表されたアマゾンとアップルの決算が予想を上回り後退したことで、本日ハイテク株を含めて米株価が全般上昇していることで、再び米FRBによる利上げペースが早まる観測が多少広まっていることが背景の模様です。

ブリオンボールト・過去1週間のドル建てリアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • インドがインド国際地金取引所(India International Bullion Exchange)を立ち上げたこと。

  • ワールドゴールドカウンシルが最新の金受給レポートを今週発表し、第2四半期に金の需要は前年同四半期比8%減であったものの、上半期では前上半期比12%増となっていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週19日火曜日欧州中央銀行の政策金利発表を前に米ドルが20年来の高さから多少下げたものの、長期金利が上昇する中で、プラチナを除く全ての貴金属で弱気ポジションを増加させていたこと。

  • コメックス金の先物・オプションのネットポジションは2019年4月23日の週以来初めてネットショートへ転換して30トンとなっていたこと。この間LBMA PM金価格は前々週比1.02%安。建玉においては、前週比2.4%減。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、3週連続でネットショートで35.7%増の2,098トンと、2019年6月4日の週以来の高さとなっていたこと。この間LBMA銀価格は0.16%高と前週の2020年7月以来の低さから上昇していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、6週連続のネットショートで、そのポジションは9.8%減の26.7トン。LBMA PMプラチナ価格は3.5%高で前週の2020年7月半ば以来の低さから上昇していたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは3月29日の週以来ネットショートで、69%増の8.4トンであったこと。この間LBMA PM価格は11.8%安。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに0.6トン(0.06%)減で1005トンと1月20日以来の低さで、6週連続の週間の減少傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.6トン(0.32%)減で501トンと、3月1日の週以来の低さで、9週連続の残高減少傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに523トン(3.4%)減の15,043トンと、12週連続の減少傾向となっていること。

  • 金銀比価は、今週92 台で始まり2020年7月以来の高さへ上昇後、FOMC後に減少して本日88台とひと月ぶりの低さへ下げていること。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週も前週に続き850前後を推移していたものの、本日864と2週ぶりの高さへ上昇していること。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、今週1100ドルを超える水準で始まり、本日1200を超えて2週間半ぶりの高さ。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。

  • 上海黄金交易所(SGE)の週平均は、前週の7.82ドルのプレミアムから今週は9.70ドルと10ヶ月ぶりの高さへ上昇。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。

  • コメックスの先物・オプションの取引量は、FOMC後にプラチナを除き価格が大きく上昇したことで、週間で前週比金が4%、銀が34%、パラジウムが9%と増加。特に銀は4.1%昨日価格が上昇したことからも、ひと月ぶりの高さへと取引量が増加。それに対しプラチナは今週11% 減。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は水曜日のFOMC、木曜日の米GDP、金曜日の米PCEデフレータと主要経済指標及びイベントが続きましたが、来週もイングランド銀行の金利発表が木曜日、金曜日には米国雇用統計と市場注目のイベントが続きます。

その他重要指標は、月曜日の主要国の製造業PMIと米ISM製造業景況指数、水曜日の主要国サービス部門PMIと米ISM非製造業景況指数などとなります。

詳細は主要経済指標(2022年8月1日~5日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

ブリオンボールトは5月20日から大英図書館で始まる「金(Gold)」のエキジビションのスポンサーをさせていただいています。ご興味があれば下記のリンクでご覧ください。

http://bl.uk/events/gold

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、引き続き次期首相を決める保守党党首選について、ウクライナ情勢、そしてUEFA欧州女子選手権(サッカー)でイングランドチームが決勝に進出したこと、昨日から始まった4年に一度イギリス連邦に属する国と地域が参加して行われるスポーツの大会コモンウェルスゲーム等がトップニュースで伝えられています。

そこで、本日は今週日曜日に行われるイングランドとドイツの決勝を前に、イギリス国内で大きく盛り上がっているUEFA欧州女子選手権についてお伝えしましょう。

今月6日から今週末31日まで行われているこのトーナメントは、本来2021年の7月に行われる予定でしたが、昨年東京オリンピックとUEFA欧州男子選手権2020が一年延期されて行われていたことから、今年に延期になっていました。

イングランドでの開催は2005年以来の4大会ぶりとのことですが、決勝はイングランドのサッカーのメッカでもあるウェンブリー・スタジアムで行われます。

この大会に参加できる権利を得るための予選は事前に行われて16チームが選出されていましたが、その後ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、選出済のロシアが除外されてポルトガルが代替出場となっていました。

大会ではグループステージを経て、イングランド、スペイン、スゥエーデン、ベルギー、ドイツ、オーストリア、フランス、オランダが決勝トーナメントへ勝ち進み、イングランドは、スペインを2対1、スゥエーデンを4対0で下して31日の決勝へ2009年以来2大会ぶりに進出していました。ちなみにイングランドチームは1984年と2009年に準優勝をしていますが、未だ優勝の経験はありません。

それに対し、ドイツは大会参加回数が11回(イングランドチームは9回)でそのうち8回優勝をするなど、参加チームの中では最も経験豊かなチームと言えるようです。

しかし、2009年の段階では欧州には女子のプロリーグがありましたが、イングランドに女子のプロリーグがなかったことから、イングランドチームの選手はほぼ皆セミプロでしたが、その後2011年に英国にもプロリーグが設置されて、今回の選手は皆プロで活躍をして大舞台の経験も積んでいるとのこと。

また、イングランドチームの監督は、オランダ人のサリーナ・ウィーグマン(Sarina Wiegman)氏で2017年に監督としてオランダチームをUEFA欧州女子選手権で優勝、2019年のFIFA女子ワールドカップで準優勝に導いた人物で、2021年9月からイングランドチームを率いて現段階までで負けなしと素晴らしい結果を残しています。

そこで、女子チームに対して国中の期待が高まっています。

そのような中で、昨年のUEFA男子Euroでイングランドチームが決勝でイタリアにペナルティー戦で負けたことが頭をよぎりますが、ライオネス(雌ライオン)というニックネームで呼ばれるイングランド女子チームの選手たちにはプレッシャーに負けることなく決勝を楽しんでもらいたいものです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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