金市場ニュース

ニュースレター(2022年11月25日)FOMC議事録で利上げ減速観測は広がったものの金の上げ幅は限られる

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1752ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.03%高とほぼ前週終値と同水準となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から0.97%高のトロイオンスあたり21.30ドルと上昇しています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から0.25%安のトロイオンスあたり984ドルと週間の下落となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は7.1%安のトロイオンスあたり1827ドルと週間の下げとなっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週は米国が木曜日感謝祭の休暇でその前後休暇を取る市場参加者も多く、薄商いの中で水曜日に発表されたFOMC議事録で利上げ減速観測は広がったものの、動きづらい相場となっているようです。

そのような中で、中国のCOVID-19感染拡大による移動規制による経済停滞懸念から、中国の自動車需要が大きく影響するパラジウムの価格が今週7%強と大きく下げています。

しかし、トロイオンスあたりの価格は未だ1827ドルと金の1752ドルを上回るなど、引き続き高い水準であることは確かです。

そこで、本日はパラジウムの過去20年間の価格の推移を表すチャートをお届けしましょう。

ドル建てパラジウム価格チャート 出典元 ブリオンボールト

 

ここでご覧になってお分かりになるように、今年2月末にロシアがウクライナに侵攻し、西側諸国による経済制裁でロシアで4割産出されているパラジウムの供給懸念からも、トロイオンスあたり3444ドルの史上最高値が記録されていますが、2018年頃までは1000ドルを超える水準と、当時金が1300ドルを超える水準でしたので低い価格で推移していました。

その後、2015年にフォルクスワーゲンのディーゼル車の排ガス不正処理が発覚し、ディーゼル車の需要が急減し、ガソリン車の需要の高まり、その排ガス触媒の需要が全体の8割というパラジウムの需要の高まりと供給懸念もあり、価格が急騰を始めたのでした。

日々の金相場の動きと背景について

月曜日は中国のCovid-19感染の拡大による経済への悪影響懸念からもドルが強含み、金相場は一時トロイオンスあたり1733ドルまで下げて、1741ドルで終えていました。

先週ここでもお伝えしたように11月に入り先週末までにドル建てで6.9%と、コメックス金の先物・オプションのショートカバーからも価格大きく上昇していたことからも利益確定の売りもあった模様です。

火曜日金相場は、ドルと長期金利が若干下げる中で、ほぼ前日の終値の水準の1741ドル前後の狭いレンジで推移して終えていました。

これは、翌日のFOMCの議事録発表を前に、また木曜日からの米国の感謝祭の祝日を前でもあり、動きづらい状況ではあったようです。

この間株式市場は、米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁とクリーブランド連銀メスター総裁は高インフレからも利上げの必要性は認めながらも、その幅が緩む可能性に言及したこと等で上昇していました。

水曜日金相場はFOMCの議事録の発表を待つ中で狭いレンジの取引でしたが、発表後トロイオンスあたり1753ドルと前週終値の水準まで上昇して終えていました。

これは、同日ロンドン時間夕方に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、多くの参加者が利上げ減速を支持していることが明らかとなり、ドルと長期金利が下げる中で、リスク資産と共に金が上昇したことからでした。

ちなみに同日は翌日からの感謝祭祝日を前に米指標が一斉に発表され、新規失業保険申請数は予想を上回り、耐久財受注、製造業とサービス部門PMIは下回っていたことからも、FRBの早いペースの利上げ緩和観測が広がった模様です。

木曜日金相場は米国が感謝祭の休暇で薄商いの中で、ドルが多少ながら3営業日連続で弱含んでいることから、トロイオンスあたり1754ドルと前日の終値から若干上昇して3営業日連続の上昇で終えていました。

これは前日のFOMCの議事録がハト派的内容との解釈で米FRBによる利上げ減速観測がドルを弱含めていたようですが、同日欧州中央銀行の10月の理事会の議事要旨では利上げ幅は0.75%が多くのメンバーの支持を得たとされたものの、0.50%利上げの可能性等の様々な意見があり、影響は限定的となっていました。

本日金曜日米市場は感謝祭の祝日後で短い商い時間でもあり参加者が少なく薄商いの中で、ドルと長期金利が3営業日ぶりに上昇していることで、金相場はロンドン時間午後にトロイオンスあたり1750ドルへと下げています。

ドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス


  • 今週月曜日に発表された先週火曜日のコメックスの先物とオプションのポジションは、米消費者物価指数と卸売物価指数が予想を下回りインフレのピークアウト、つまりはFRBの利上げ減速観測からもドルと長期金利がげている中で、全ての貴金属で弱気ポジションを減少させていたこと。

  • コメックス金の先物・オプションのネットポジションは4週ぶりにネットロングへ転換し、126.7トンと8月半ばの規模まで急増していたこと。この間LBMA PM金価格は前々週比5.5%高で1771ドルと上げ、建玉は前週比6%増で、7月半ば以来の高さ。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、2週連続でネットロングで、27%増で2,472トンと増加していたこと。この間LBMA銀価格は5.7%高で21.94ドルと上昇していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、17週のネットショート後に6週連続でネットロングで、そのポジションは19%増の31.2トンと3月8日以来の高さ。LBMA PMプラチナ価格は5.2%高で1031ドルと3月8日以来の高さ。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは5週連続でネットショートで90%減の0.5トント5週ぶりの低さ。LBMA PMパラジウム価格は11.4%高で2084ドルで5週ぶりの高さ。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに2.3トン(0.3%)増で907トンと、週間の増加傾向。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.5トン(0.1%)増で452トンと12週ぶりに週間の増加傾向。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに730トン(5%)増の14,922トンで、2週連続の週間の増加傾向。

  • 金銀比価は、週初めの84台から81台へと下げて終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)

  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、週初めに773で始まり徐々に減少して739まで落ちた後に764で終える傾向。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、今週913で始まって800台へ下げていたものの、本日再び904と900台に戻していること。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。

  • 上海黄金交易所(SGE)のロンドン金価格との差は、今週人民元建て金価格が上昇する中で、平均は16ドルと前週の15ドルから上げていること。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。

  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は9%減、銀は13%減、プラチナは33%減である中で、パラジウムは63%増と2月末以来の高さへ増加していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はFOMCの議事録発表後は米国が感謝祭の祝日で商い薄となっていますが、来週はFRBがインフレ指標として注目するPCEコア・デフレーションが木曜日、そして米雇用統計とが金曜日に発表される等、重要指標が続くことになります。

詳しくは主要経済指標(2022年11月28日~12月2日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、引き続きエネルギー危機、生活費高騰が大きく伝えられていますが、その他カタールで行われているワールドカップ、ここでもお伝えした106年歴史で始めて行われる予定の看護師のストライキ、そしてラーブ副首相兼大法官のパワハラ疑惑などが大きく伝えられています。

そのような中で、今週英国で伝えられてい偽物とされていた金貨が本物と鑑定され、そこで描かれているローマの天皇もまた架空の人物ではなく実在であるとされたとののニュースが興味深かったのでご紹介しましょう。

このスポンシアンという名前の肖像が入った金貨は、300年以上前に東ヨーロッパのルーマニア中部のトランシルバニアで発見されていました。

そして、19世紀半ばまでは本物のローマの金貨と考えられていたものの、その粗雑なデザインから偽物と疑われ、フランス国立図書館の当時のコイン専門家の第一人者のヘンリー・コーエン氏が偽物と認定されたことから、博物館の戸棚にしまい込まれていたのでした。

しかし、ロンドン大学のポール・ピアソン教授が研究中にこの金貨の写真を見た際に、その表面に流通した際にできたと思われる傷があったことから、本物である可能性があると考えたとのこと。

そこで、金貨が保管されていたグラスゴーのハンタリアン博物館から取り寄せて、強力な顕微鏡で確認したところ、その傷がおそらく当時の財布の中でついたものであるとされ、化学分析の結果でも、この金貨が何百年もの間土に埋もれていたことが明らかとなったとのことです。

そこで、金貨に描かれていたスポンシアンが実在した人物となり、研究者によるとローマ帝国で最も遠く防衛が困難なダキアと呼ばれる地域の皇帝となった軍司令官であろうとのこと。

ダキアは紀元前260年頃にローマ帝国からパンデミックや内戦などで切り離され、その混乱から秩序を取り戻すために、スポンシアンが最高司令官となり、その地域の経済を構築するためにこの金貨が鋳造されたのだろうとのこと。

現代のテクノロジーと化学で、これまで偽物とされていた金貨が本物と金貨が鑑定されたことから、肖像画の人物とその歴史が明らかになるという、今から2300年近く前の紀元前のローマと東ヨーロッパの世界が垣間見られたようで、とても興味深いニュースとなりました。

スポンシアンという名前の肖像が入った金貨 出典元 BBC

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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