ニュースレター(2022年4月8日)米長期金利が3年ぶりの高さへ上昇する中で金価格が堅固に推移
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1941ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.6%高と1周間ぶりの高さへ上昇しています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から0.2%安でトロイオンスあたり24.63ドルと下げています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から2.3%安のトロイオンスあたり972ドルへと5週連続で下げています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は4.3%高のトロイオンスあたり2322ドルと4週ぶりに上昇して3月25日以来の高さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週は、FRB理事で、ハト派として知られているブレイナード理事とFOMC議事要旨が共にタカ派的であったことで、FRBによる金融の量的緩和引き締めの速いペースでの引き締め観測が一気に高まり、米長期金利が3年ぶりの高さへ上昇し、実質金利もマイナス数値でありながら、2020年3月の水準へと上昇していることで、金利を産まない貴金属価格の頭を抑えることとなりました。しかし、今週発表された好調な雇用状況は賃金インフレ懸念も高めることになり、高インフレの懸念は根強く、金の堅固さが目立つこととなりました。
そのような中で、本日は世界のプラチナとパラジウム業界を管轄しているLPPM(ロンドン・プラチナム・パラジウム市場)がロシア政府が保有する精錬会社で精錬された地金のグッドデリバリーバーステイタスを取り除くこと、つまりはロシア国外での流通ができなくなることが発表され、プラチナとパラジウム価格が反応し、パラジウムが大きく上昇に転じています。
パラジウム価格は未だ、ロシアがウクライナに侵攻した際の最高値のトロイオンスあたり3444ドルからは1000ドルほど下げていますが、本日の反転により2週間ぶりの高値を付けています。そこで、ボラティリティが高いパラジウムのチャートを今週のチャートとして下記に添付します。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日金相場は、長期金利が2019年5月以来の高い水準で推移する中、前週終値比若干上昇の1931ドルで終えていました。
金利上昇の背景は、FRBによる速いペースの利上げ観測でとなりますが、これを受けて金先物・オプションのネットロングがウクライナ危機以前の水準へ下げる中で、インフレ、景気後退、株価のボラティリティの高さへの懸念などから金ETFの残高が17ヶ月ぶりの高さへ上昇していることからも、金は堅固な動きを見せていました。
火曜日金相場は、高インフレや景気後退、そしてウクライナ情勢への懸念で一時トロイオンスあたり1944ドルまで上昇後、ロンドン時間午後にその上げ幅をほぼ失って更に下げ、1920ドルで終えていました。
これは、同日ブレイナード米FRB理事がイベントで、「FRBはバランスシートを早くで5月にも縮小する可能性が高い」と言及し、米国債相場が下落して長期金利が3年ぶりの高さの水準へと上昇し、ドルが対主要通貨で強含んだことで押し下げられることとなりました。
このニュースを受けて、すでにロシアへの新たな追加経済制裁の観測で下げていた株価も全般下げることとなりました。
水曜日金相場は、同日発表されるFOMC議事要旨を待つ中で、前日のブレイナード理事のタカ派的コメントが長期金利を引き上げて、前日終値の水準のトロイオンスあたり1920ドル前後で推移していました。
FOMC議事録では、0.5%の利上げを多くのFRBメンバーが支持し、資産圧縮も5月のFOMCで開始することが話されるなど、前日のこれまでハト派と見られていたブレイナード理事のコメントに沿ったものとなっていました。
そこで、議事録発表後に金は一時1915ドルまで下げる等、株式市場同様に下げて反応した後に、1923ドルまで戻して終えていました。
同日長期金利は一時2.66%と2019年3月以来の水準を付けていたことからも、世界株価も全般下げて、欧州のストックス欧州600指数はひと月ぶりの大きな下げを見せていました。
ちなみに、長期金利の上昇は実質金利もマイナスでありながら2年ぶりの高さの-0.232%へと上昇しており、金にとってはネガティブ要因となっていました。
木曜日金相場は、前夜のFOMCの議事録でよりタカ派的内容が確認されたことで、長期金利が3年ぶりの高さの2.65%で高止まりし、ドルインデックスもパンデミック最中の2020年半ば以来の高さへ上昇していたことからも頭の重い状況であったものの、トロイオンスあたり1933ドルと前日終値比では上昇して終えていました。
また、同日発表された米新規失業保険申請件数は予想を下回る1968年以来の低さで、これもFRBによる量的緩和縮小及び利上げペースが加速する観測が広がり、株価を下げていましたが、雇用の急激な改善は賃金インフレも進めることになり、金のサポートとなっていました。
本日金曜日金相場は、トロイオンスあたり1941ドルへと前日終値比上昇してロンドン時間午後に推移しています。
本日の大きなニュースは、ロンドン・プラチナ・パラジウム・市場(LPPM)がロシアの政府が所有している会社で精錬された地金をGood Delivery Barリストから削除することを発表したことでした。これを受けて、パラジウム価格はトロイオンスあたり200ドルほど上昇して、2週間ぶりの高さの2471ドルへと上昇し、プラチナは、10ドルほど上昇して977ドル前後を推移していました。そこで、金もこの動きにつられて上昇している模様です。
また、本日ロシア産の石炭輸入を禁止することを欧米、日本が発表しており、エネルギー価格高騰によるさらなるインフレ上昇の懸念も金をサポートしている模様です。
なお、本日世界株価は、前日まで下げが続いていた頃からも自律的反発狙いの買いなどからも全般上昇しています。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週29日火曜日にウクライナとロシアの停戦協議への楽観的観測が広がる中で、米長期金利が2019年5月以来の高さを維持しており、全ての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、2.9%減の405トンと3週連続で減少して、2月15日の週以来の低さへ下げていたこと。この間金価格は前々週比0.27%安。建玉においては、前週比7.3%減と3週連続に減少。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から1.8%価格が下げる中で、4.1%減で6,598トンと3週連続で減少していること。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が43.6%前々週比下げていた際に、ネットロングポジションは43.6%減の13.8トンと増加していたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは4週ぶりにネットショートに転換し、1.2トンと1月25日以来の規模のネットショートとなっていたこと。この間価格は15.7%安と3週連続で下げて、1月18日以来の低さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの週間で4.4トン(0.4%)減で1,087トンと2週連続の週間の下げとなっていること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週で0.42トン(0.08%)増で517トンと6週連続の週間の上昇傾向で2021年6月以来の高い水準。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに240トン(1.4%)増の17,616トンと、2021年6月半ば以来の高さで、4週連続の週間の増加傾向であること。 -
金銀比価は、週初めに78で始まり、週半ばで79まで上昇後に78台へ戻していること。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消) -
プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週935ドルから976ドルへと水曜日に上昇し、2021年11月以来の高さとなっていたこと。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。 -
プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、1300ドル台で始まり1200ドル台ヘ戻して終える傾向。過去の動きはウクライナ危機で3月初旬に2000ドルを超えた水準から下げていたものの、今年1月には1000ドルを割っていたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対してプレミアムで推移していたものの、本日ディスカウントとなり、週平均は2.37ドルと前週の1.49ドルのプレミアムから上昇していたこと。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。 -
コメックスの先物・オプションの取引量は、木曜日までで前週比金で34%、プラチナ28%、パラジウム47%減である中、銀は1%と多少ながら増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週金相場はFRBの金融政策関連コメント及び指標で動いていますが、来週も主要中央銀行の金融政策に影響を与えるイベント及び指標が重要となります。
そこで、注目指標は火曜日の米消費者物価指数となり、木曜日の欧州中央銀行の金融政策発表経も市場は注目することとなります。
その他、ウクライナ情勢は引き続き重要となりますが、他の指標の予定に関しては主要経済指標(2022年4月11日~17日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2022年4月4日~8日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2022年4月11日~17日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2022年4月4日)金ETFが17ヶ月ぶりの高さに増加する中、コメックスのネットロングはウクライナ危機以前の規模へ減少 -
【金投資家インデックス】金投資がコロナ危機以来の速いペースで急増
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週も英国ではウクライナ情勢が日々大きく伝えられ、ロシアの戦争犯罪の可能性、そしてさらなるロシアへの経済制裁、その他エネルギー価格高騰に対応すべく英国政府は原子力発電を拡大することを発表したことが伝えられています。
そのような中で、21年間行方不明になっていた自然科学者のチャールズ・ダーウィンのノート2冊が匿名で返還されたことが伝えられていましたので、ご紹介しましょう。
このノートは2001年に保管されていたケンブリッジ大学の重要書庫から、特別所蔵品写真撮影のために取り出されて以来行方不明になっていたとのこと。
ダーウィンの進化論についての著作の「種の起源」は有名ですが、このノートの一冊には、進化における複数の可能性を示す図が記されているとのことで、その価値は何億円にも上るとのこと。
このノートはケンブリッジ大学の図書館の公共エリアの床の上に、ピンク色のギフトバックに入った状況で、来週末の復活祭にちなんで、「ハッピーイースター」と司書宛のメッセージが入っていたとのことですが、保存状態は良好であるとのことです。
BBCのインタビューに答えていた大学の司書の方が、紛失した歴史的にも意味のある貯蔵品が戻ってきたことに関してコメントする中で、感極まり涙ぐんでいたのは微笑ましいものでした。
昨今暗い話が多い日々ですが、このような心温まるニュースは嬉しいものです。