ニュースレター(2022年2月4日)タカ派的イングランド銀行とECB政策金利発表、良好な米雇用統計を経て金は週間の上昇を堅持
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1804ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.9%高と、前週の3週ぶりの低さから多少戻しています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり22.51ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.04%高とほぼ同水準でほぼ3週ぶりの低さを維持しています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1018ドルで1.5%高となっています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週貴金属相場は、木曜日のイングランド銀行と欧州中央銀行の政策金利発表と本日の米雇用統計とビックイベントをこなしながら狭いレンジながら上昇で終える方向となっています。
その動きの詳細は下記の日々の動きを参照いただき、今週は貴金属市場を動かしている要因をまとめることにしましょう。
長期に渡る緩和的金融政策とパンデミック後の需給バランス及びサプライチェーンの問題による数十年来の高インフレ
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高インフレを押さえるための主要中央銀行の緩和的金融政策への転換 |
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金利引き上げ観測による長期金利の上昇とインフレ観測が後退することによる実質金利の上昇 |
そこで、今週のチャートとして、実質金利と金価格の推移のチャートを下記に添付します。このチャートでご覧いただけるように、2020年8月に金価格が史上最高値を付けた際に、実質金利はマイナス1.08%と最低値を付けていましたが、本日この数値はマイナス0.47%と、年初にFRB議事録でFRBがよりタカ派的スタンスへ転換したことが明らかになって以来上昇していることがご覧いただけます。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日金相場は、前週18週ぶりの高さへと上昇したドルが多少下げていたことからも、前週の2ヶ月ぶりの大きな下げ幅を多少削り、狭いレンジでの動きながらトロイオンスあたり1796ドルで終えていました。
前週のタカ派的FOMCで、それ以前の火曜日までに2ヶ月ぶりの高さへと増加していたコメックスの金先物。オプションのロングの切り崩されるべきものは前週終えた模様で、堅固な動きとなっていました。
また、今週は木曜日にイングランド銀行と欧州中央銀行の金融政策発表と、金曜日に米雇用統計が控えていることからも、動きづらい状況ではあった模様です。
翌火曜日金相場は、長期金利が多少上昇しているものの、ドルが2営業日連続で下げていたことからも、トロイオンスあたり1801ドルと前日終値から0.3%上昇して終えていました。
なお、同日発表された米製造業PMIとISM製造業景況指数は共に若干ながら予想を上回る数値であったことからも、FRBによるより速いペースの利上げ観測が広がり長期金利を多少押し上げることとなりました。
なお、金のETFは前週の2.8%の価格の下げ時にも、最大銘柄のSPDRゴールドシェアが週間で5トン(0.6%)の増加を見せるなど、一月の増加量が42トン(4.3%)とパンデミック最中の2020年7月以来の高さと、株式市場のボラティリティからも金への資金の流入は見られており、このような動きは金をサポートしていました。
水曜日金相場は、ドルと長期金利が下げる中で、トロイオンスあたり1807ドルで終えていました。
これは、同日発表された米ADP全国雇用者数が2020年12月以来初めて前月比減少していたこと、そしてFOMC後速いペースの利上げ予想が広がっていた中で、今週発言したFRBメンバーによって初回50bpの利上げの可能性はサポートされていないこと、また最もタカ派と見られているセントルイス連銀のブラード総裁が今年5回の利上げを支持している事などが背景となりました。
木曜日金相場は、イングランド銀行と欧州中央銀行の政策金利発表が行われた後に、神経質な動きをした後に、トロイオンスあたり1806ドルへとほぼ前日終値の水準まで戻して終えていました。
同日イングランド銀行は事前予想通り、前回に続き0.25%上げて0.5%としたものの、この政策に反対をした9人中4人のメンバーは0.5%とより大きな利上げを主張したことが明らかとなり、欧州中央銀行は政策を維持したものの、インフレ懸念を強く打ち出したことで、よりタカ派との判断となりました。
この結果英国ポンドとユーロが対ドル強含み、ポンド建てとユーロ建て金価格は下げ、ドルを相対的に下げたことで金をサポートすることとなりました。
また、欧州中銀の発表とほぼ同時に発表された米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことで、FRBの利上げペース加速観測からも長期金利が再び2年ぶりの水準へ上昇したことで、ドル建て金価格も一時押し下げることとなりましたが、その下げは一時間ほどで取り戻すこととなりました。
本日金曜日は市場注目の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は予想の15万人と前回19.9万人(修正値51万人)を上回る46.7万人で、失業率は前回と予想の3.9%を上回る4.0%、また、平均時給も前月比で予想の0.5%を上回る0.7%となっていました。
そこで、このデータが発表され次第、FRBによるさらなる速い利上げペース観測からも、長期金利が2年半ぶりの高さへと急騰したことで、金相場はトロイオンスあたり15ドルほど下げた後に一時間ほどで10ドル戻して、ロンドン時間夕方にトロイオンスあたり1804ドル前後を推移しています。
本日のデータ発表後、FedWatchツール上のFRBによる年末までの利上げ回数予想では、5回が最多の割合で32%となっていますが、6回が31%と前日の24%から上昇し、7回と8回の予想もそれぞれ上昇しています。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週FOMC直前の25日火曜日までの週で、全ての貴金属で強気ポジションを増加させていたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、39%増の366トンと3週ぶりに増加して8週ぶりの高さとなっていたこと。この間、金価格は前々週比1.65%高。建玉においては、前週比3.9%と8週ぶりの高さ。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週銀価格が前々週比3.3%上昇していた際に、15%増で4,367トンと7週ぶりの高さとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が3.8%前々週比上昇していた際に、7週連続のネットショートからネットロングへ転換し、12トンとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは20週連続でネットショートであったものの、46%減の4.8トンと、11月23日の週以来の低さとなっていたこと。この間パラジウム価格は14.1%の上昇を記録。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの週間で0.6トン(0.1%)増で1,014.8トンと、3週間の増加傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週間で1.3トン(0.3%)減で489トンと、週間で2週連続の減少傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに168トン(0.1%)増で16,771トンと、2週連続の増加傾向であること。 -
金銀比価は、79台で始まり80台まで上げて終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消) -
プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週775で始まり、780台で終える傾向。2021年平均は708.82で5年平均は564.76。 -
今週中国は春節の1週間の休暇で上海黄金交易所(SGE)へ閉鎖中。 -
コメックスの金、銀、プラチナの先物・オプションの取引量は、今週価格のレンジが限られる中で、前週に比べてそれぞれ40%、31%、57%と減少していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週の主要経済指標の予定が弊社市場分析ページに掲載されました。
今週は本日発表された米雇用統計を含み、昨日のイングランド銀行とECBの金融政策と重大イベントが続きましたが、来週は春節で一週間の休暇であった中国が市場に戻り、木曜日の米消費者物価指数が注目指標となり、引き続きFRBメンバーのコメント等が今後の金融政策に絡み重要となります。
詳細は主要経済指標(2022年2月7日~13日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2022年1月31日~2月4日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2022年2月7日~13日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2022年1月31日)FRBの速いペースの利上げ観測でコメックスの増加していた強気ポジションが崩されてドルが高止まりする中で、金は安定的に推移 -
【金投資家インデックス】価格の上昇で1月に利益確定が進み金と銀の投資需要が減少
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、ジョンソン首相の側近の相次ぐ辞任、エネルギー価格の高騰、その政府対応が日々大きく伝えられています。
そこで、本日は英国のエネルギー問題について簡単にお伝えしましょう。
エネルギー価格高騰は、パンデミック後に経済活動が再開されることによる急激なエネルギー需要に供給が追いついていないことからであり、それに加えウクライナ問題によって欧米と対立しているロシアからのエネルギー供給も十分に得られていないためであり、英国に限らず世界の国々で起きています。
英国独自の問題は、消費者保護からも政府がエネルギー価格の上限を付けており、年に4月と10月に見直しをするものの、卸売のエネルギー価格の急騰の中で、小売価格を引き上げられない英国のエネルギー供給業者は、2021年以降すでに25社が廃業に追い込まれ、30社近くが経営難に陥っているとのことです。
そこで、ある一定の引き上げは認め上げざるをえず、昨日は4月からガス価格の上限価格が54%引き上げられ年間1971ポンド(約30万円)となることが発表されていました。
しかし、この水準は低所得者層にとっては厳しいもので、昨日スナク財務相は約80%の世帯に地方税の150ポンドを払い戻すという政府の介入を発表しています。
それに加え、エネルギー供給業者へは、国が保証する融資を提供し、コスト増を5年間にわたって分散させるとのこと。
世界は地球温暖化を防ぐために温室効果ガスを排出しない、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を図っていますが、英国においてはこの転換に至るまでの道のりは長く厳しいものとなりそうです。