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【金投資家インデックス】欧米のの金投資、4年ぶりの高水準に―強気相場が継続

金価格の上昇トレンド、2011年以来の強さに…

金価格が再び最高値を更新する中、個人投資が6月に急増し、買い手が売り手を上回った比率は過去4年間で最大となったと、世界有数の貴金属オンライン市場を提供するブリオンボールトのエイドリアン・アッシュは最新の金投資家インデックスについて解説しています。

同社のオンラインプラットフォーム利用者(現在、合計60億ドル相当の貴金属を保有しており、その9割が西ヨーロッパまたは北米在住)は、6月に売却した量を250キロ以上上回る金を購入し、2022年7月以来最大のネット増加量となっていました。

今春には日次記録を更新し続けた金価格は、2025年の下半期に入っても上昇トレンドを維持し、実質的な史上最高値を記録し続けています。

米ドル建てでは、6月の月間平均で金価格は2.3%上昇し、トロイオンスあたり3352ドルと、14年ぶりに6ヶ月連続で過去最高値を更新しました。

ドル安が進んだ影響で、他通貨建てでの上昇はやや控えめとなりましたが、英ポンド建てでは、ほぼ20年ぶりに12ヶ月連続で平均価格が上昇。ユーロ建てでも過去1年で11回上昇し、これは2009~2010年の欧州債務危機時と並ぶ記録となっていました。

現在、欧米の個人投資家たちも中央銀行やアジアの富裕層と同様に、金の保有を拡大しており、トランプ氏のホワイトハウス復帰による地政学的・経済的衝撃が継続する中、金の強気相場に乗っています。

金投資家インデックスと金の月間平均価格 出典元 ブリオンボールト

新規ユーザーを含め、6月末に「月初よりも多くの金を保有していた」投資家数は前月比12.0%増。一方、月間で購入を上回る売却をしたネット売却者数は7.5%減少していました。

これにより、ブリオンボールトの世界の顧客の取引データを基に算出されている金投資家インデックスは1.4ポイント上昇し56.9となり、2021年6月以来の高水準を記録。2022年の株価暴落や欧州財政不安時のピークも上回りました。

この指数で50.0という数値は、買い手と売り手が完全に均衡していることを示します。

ただし、最近数年間の利益確定の流れから転じて、欧米の個人投資家の間で金投資が回復傾向にあるとはいえ、パンデミック時や世界金融危機時のような一方的な買い相場にはなっていません。

特に、米国の金現物需要は依然として西ヨーロッパを下回っており、ドル安や株高の中で、安全資産である金に対して慎重な姿勢が続いています。

この間、貴金属への新規投資は6月にも増加し、ブリオンボールトでの新規顧客数は2021年3月以来2番目の多さを記録。

ブリオンボールトの上位10カ国すべてで、新規顧客者数は5月から増加していました。5月は4月の50ヶ月ぶりの記録から一転して37.2%減少していました。

ユーロ圏では、6月の新規顧客数が過去5年間の月平均を47.0%上回り、英国でも45.6%上回っていましたが、米国では7.9%下回っていました。

おそらく米国の投資家たちは、S&P500指数が年初来の上昇率は5.7%にとどまりながらも、2025年上半期の終盤に新高値を記録したことに気を取られていたのでしょう。

実際、主要な資産クラスの中で、金は銅(CME先物で+27.4%)とドイツ株(DAX指数、米ドル建て総収益+36.6%)に次ぐ成績を記録し、年初来で+26.0%と、2007年後半以来で最も強い6ヶ月の上昇となっていました。

これは、世界金融危機が始まった当時の水準であり、金にとっては980年以来の最強の上半期でもあります。1980年は冷戦の混乱により金が急騰し、30年近く破られない高値を記録した年となっていました。

重量ベースで見ると、6月のブリオンボールトにおける金の純需要(256kg)は、顧客の保有量を3ヶ月ぶりの高水準となる44トン超に押し上げ、金額では46億ドル(34億ポンド、39億ユーロ、6710億円)と過去最高に到達。今年前半の純流出も0.2%(108kg)にとどめる事となりました。

銀の保有額も13億ドル(9億7200万ポンド、11億ユーロ、1920億円)で過去最高、PGM(プラチナ族金属)も1億700万ドル(7800万ポンド、9100万ユーロ、1500億円)と記録更新。

しかし、これら産業用貴金属は全体的に大幅な利益確定売りが出ていました。銀は月間平均で9.9%上昇(ユーロ建てで+7.6%)、プラチナは21.5%(ユーロ建てで+18.9%)、パラジウムは8.1%(同+5.9%)上昇。

そのため、銀投資家インデックスは2.5ポイント下がり50.5となっていました。これは、1月の49.7以来の最低水準で、4月にトランプ氏の関税ショックで価格が急落して、銀投資家インデックスが急騰した時の高水準から大きく後退していました。

ただし、その時の価格急落は一時的であり、ETF(上場投資信託)の残高増やデリバティブ市場での投機的取引の拡大を背景に、銀の現物投資は後退していました。

一方で金投資は、金価格の上昇と連動する動きを2ヶ月連続、過去6ヶ月中3回見せており、これは2011年末以来で最も強い相関関係を示しています。

つまり、2025年春の金価格の静かな上昇トレンドと同様に、現在の力強くも落ち着いた新規投資家の動きは、この強気相場が当面過熱する心配が少ないことを示唆しています。

それは、4月の一時的な「1日で3500ドル」への急騰以降、金の月間平均価格は2ヶ月連続で上昇中となっています。これは、近年における5回の主要な価格の天井で、その直後に月平均価格が翌月はもとより2か月連続で上昇した例はないこととは異例なものとなっているのです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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