金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2025年8月11日)関税懸念で金価格が記録的高値から下落、トレーダーはトランプ政権の決定を待つ

金地金価格は月曜日に1%以上下落しました。これは、市場のトレーダーたちが、米政府の金地金に対する関税方針について米大統領府からの明確な説明を待っている間のことでした。それは、トランプ政権が先週金曜日に、金の1キログラムおよび100オンスの地金に関税を課すことが明らかになったことを受けたもので、これにより金先物価格は史上最高値を更新していました。

「ホワイトハウスは近く、金地金やその他特殊製品の関税に関する誤解を正す大統領令を発出する予定である」と大統領府関係者は金曜日のNY時間に伝えていました。このコメントは、米税関・国境警備局(CBP)が7月31日付でスイスの精錬業者に非公式に通知していた決定を、初めて公にしたことを受けたものと、フィナンシャル・タイムズが報じていました。

ニューヨークのCOMEX市場での米国産金先物は、前日史上最高のトロイオンス3514ドルをつけた後、月曜日ロンドン昼過ぎまでに最大2.4%安の3408ドルまで下落していました。ロンドンの現物金価格も同日最大1.3%安のトロイオンス3353ドルと、先週木曜日の2週間ぶり高値から55ドル下げていました。

この下落により、ニューヨークの現物地金に対するプレミアム(ロンドンの地金価格との差額)は、先週金曜日に100ドルを超えていたものが55ドルへと通常の水準に戻っていました。

ニューヨーク金先物価格とロンドン金現物価格、その一月リースレート 出典元 ブリオンボールト

4月にはトランプ政権が「解放記念日(Liberation Day)」に貴金属の輸入関税を免除したことで、現物金価格は100ドル下落し、ニューヨークCOMEX先物とロンドン地金の価格差は縮小していました。この差額は、地金やインゴットに対する貿易関税の可能性を見越して広がり、その結果、史上最多の貴金属が米国に流入していました。

COMEXの納品認可を受けた米国の倉庫の金在庫は4月のピーク時から現時点までに約14%減少しているものの、年初在庫の70%以上がまだ保管されています。

スイス貴金属協会は金曜日に、今回の関税措置が世界の金の物理的流通に「悪影響を及ぼす」と警告していました。スイスは世界の精錬能力の約70%を占めるハブですが、今回トランプ政権から39%の関税を課せられています。これは、ブルームバーグの分析によれば、ワシントンが貴金属の輸送分を誤って貿易計算に含めたためであるとのことです。

ロンドン貴金属市場協会(LBMA)は金曜日の夜、米当局に対し「説明を求めている」と発表していました。

ANZのシニアコモディティストラテジスト、ダニエル・ハインズ氏は「これ(金への関税が明確になる)まではスイスと米国間の金取引は事実上停止するだろう」と述べていました。

トレーダーたちはまた、8月12日に期限を迎える米中間の関税交渉の延長があるかどうかの確認を待っています。一方、トランプ大統領はSNSで、本日中国に対して米国の大豆輸入を4倍にするよう呼びかけ、米中の貿易黒字削減を図っていました。

米中貿易戦争の90日間の休戦期間は、145%の中国製品に対する米関税と、125%の米製品に対する中国関税の双方停止を含み、明日火曜日に期限切れとなります。

中国は世界最大の金の生産国、輸入国、消費国、中央銀行買い入れ国であり、上海の金価格は民間流通の入口として重要となっています。上海黄金交易所の金価格は月曜日に1%下落し、1週間ぶりの安値となる1グラム776人民元に下がっていました。これはドル換算ではロンドン地金価格よりトロイオンスあたり11.99ドル安く、これは2月初旬の史上最高値時以来最大のディスカウントとなります。このため、価格に敏感な消費者の需要は抑制されていることを示していました。先週の平均はロンドン価格より4.35ドル高だったため、大きな変動といえるでしょう。

英国ポンドとユーロ建ての金価格も月曜日に1.2%下落し、それぞれ6セッションぶりの安値で、それぞれトロイオンスあたり2497ポンド、2884ユーロとなっていました。この間、英国と欧州の株価が上昇していました。これは、先週トランプ大統領とプーチン大統領が今週金曜日にアラスカで会談する計画が伝わり、ウクライナ紛争の早期解決への期待から欧米市場が好調となっていた基調を次ぐものでした。

原油は、ウクライナ戦争終結の見通しと供給増加により、前週6月末以来最大の週間下落を記録し、本日も下落していました。

工業用の割合が約60%を占める銀価格は1.9%下落し、37.68ドルとなり、先週の上昇分を半減していました。

銅価格も月曜日に0.8%下落しています。これは、トランプ大統領が7月末に輸入関税の免除を発表した後の下落が続いているものです。この政策転換で、米国銅先物は7月末に20%以上暴落していました。

ドイツの精錬グループ、ヘレウスは最新のレポートで、「もし金が政府や中央銀行の政策ミスに対する保険なら、さらなる上昇余地もあるだろう」と指摘する一方、「しかし、現状では金価格は持ち合いの動きを続けている」と述べている。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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