金市場ニュース

ニュースレター(2022年5月20日)株式市場のボラティリティの高さで金は4週ぶりの上昇へ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1834ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)からほぼ1.3%高と4週ぶりの上昇となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から5.7%高でトロイオンスあたり22.02ドルと4週ぶりの上昇となっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から2.2%高のトロイオンスあたり967ドルへと上昇しています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は4.9%高のトロイオンスあたり2027ドルと3週ぶりの上昇となっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場、LBMA価格ベースで金と銀においては4週ぶり、プラチナは1週間ぶり、パラジウムは3週ぶりの上昇となっています。

これは、世界株価が高インフレと主要中央銀行の速いペースの利上げによる景気後退懸念で全般下げる中で、安全資産として国債が買われて長期金利の上昇が一服していることで上昇に転じ、また金と銀に関しては安全資産の需要もでていたようです。

本日米株価指数は中国の金融緩和策が好感されて3営業日ぶりに反発して始まる中で、金は一旦押し下げられたものの安全資産の需要で下げ幅を取り戻していますが、銀、プラチナ、パラジウムは今週の上げ幅も大きかったことで、ロンドン時間夕方にその上げ幅を削って推移しています。

昨日までの米株価指数の状況は、ダウ平均株価は昨日今年最安値の更新をして、昨年3月以来の安値をつけて8週連続の下げの傾向であること、S&P500種は昨日までで1月の最高値から19%下げ、20%下げることで弱気市場入りとなることから、ほぼその水準となっています。そして、ナスダックも7週連続の下げの傾向と荒れた市場となっています。本日は、中国中央銀行の緩和策が好感されて反発していますが、今週のチャートとしてはダウ平均株価とS&P500種の動きを示すものを添付します。

ダウ平均株価とS&P 500 種の推移 出典元 セントルイス連銀

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、英国時間午前中に中国の鉱工業生産と小売売上高がそれぞれ2020年1月~2月、3月以来の低さと予想を大きく下回ったことで中国経済の減速懸念でドルが強含んだことから、トロイオンスあたり1793ドルと3ヶ月半ぶりの低さまで下げていました。

その後、自律的反発とドルが高止まりながら米長期金利が若干下げたこと、欧米株価が全般下げる中での安全資産の需要もあり、その下げ幅をほぼ戻して前週終値から0.8%高の1826ドルで終えていました。

火曜日金相場は、ロンドン昼過ぎにトロイオンスあたり1836ドルまで上昇後、長期金利が上昇したこともあり、1814ドルまで押し戻されて終えていました。

この長期金利の上昇は、同日パウエルFRB議長がFRBは必要であれば中立金利を超えて利上げを行うことに躊躇しないと述べたことが背景となりました。

水曜日金相場は、ロンドン時間夕方にトロイオンスあたり1824ドルまで上昇後に1816ドルで終えていました。

同日は米株価指数が大きく下げる中で、ドルは多少強含んでいたものの米長期金利が高い水準ながら下げ、金をサポートしていました。

米株価の下げは、小売大手のターゲットの決算結果ががコスト上昇を理由に予想を下回るものであったことで、同社株が20%近く下げるなど、消費関連株が売られることとなりました。

そこで、安全資産としてドル、米国債、金が買われ、日本円とスイスフランも買われて強含むこととなりました。そこで、日本円建て金相場は前日終値、前週終値比下げて、gあたり7489円と前月半ばの史上最高値の8174円から8%ほど下げていました。

木曜日金相場は、世界株価が前日に続き大き下げる中で、トロイオンスあたり1849ドルを一時付けた後に1842ドルと前日比1.4%高と大きく上昇して終えていました。

株価の下げは、同日発表の米百貨店のコールズの決算も今週の小売大手ウォールマートとターゲット同様にコスト高が企業収益を圧迫していることを示し、フィラデルフィア連銀製造業景気指数も予想を大幅に下回る数値であったことが背景となりました。

ちなみに、前日S&P500種は2020年6月以来最も大きな一日あたりの下げ幅を見せ、ダウ平均株価は今年の最安値を更新し、ナスダックも4.7%下げと急落していました。

そこで、金も米国債と共に安全資産として買われ、国債価格が上げて長期金利が下げていたことも金のさらなるサポートとなっていました。

本日金曜日は、長期金利は3週ぶりの低さで推移する中でドルが前日の2週間ぶりの低さから多少ながら上昇しており、金相場は一時トロイオンスあたり1832ドルへ下げたもののその下げ幅を戻してほぼ前日終値の水準の1841ドル前後を推移しています。

本日は、中国人民銀行が住宅ローン向け金利の目安とされる最優遇貸出金利の5年物を引き下げると発表し、その下げ幅も0.15%と市場予想を上回ったことで、景気刺激効果が見込めるという観測から株価が全般上昇しており、リスクオンセンチメントが金を多少押し下げていた模様です。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • 今週はプラチナグループの貴金属を取り扱う業界関係者が年に一度ロンドンに集まって様々なセミナーやネットワークイベントに参加するプラチナウィークが月曜日から開催されていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週10日火曜日、FRBによる速いペースの利上げとそれによる景気後退懸念が広がる中で、ドルと米長期金利が上昇して、貴金属価格が押し下げられる中で、プラチナを除きネットロングポジションを減少させていたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、11%減の230トンと4週連続で2月1日の週の低さへと減少していたこと。この間金価格は前々週比1.3%安。建玉においては、前週比1.4%減。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から2.8%価格が下げる中で、89%減で265トンへと2021年9月21の週以来の低さへと減少していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、3週連続のネットショートであったものの、そのポジションは40%減の9.8トンと3月22日の週以来の低い規模となっていたこと。この間プラチナ価格は2.6%高。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは7週連続でネットショートで、81%増で3.9トンと1月25週以来の大きさへと増加していたこと。この間価格は7.7%安と1月18日以来の低さへ下げていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週水曜日まで9営業日連続で減少していたものの、木曜日にひと月ぶりに増加して週間で0.3トン(0.03%)増で1,056トンと4営業日ぶりの高さで、3週ぶりの週間の増加傾向となっていること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週で1.3トン(0.25%)減で517.5トンと3週連続で減少の傾向で、4月14日以来の低さ。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに192トン(1%)減の17,493トンと2週連続の週間での減少傾向で、4月1日以来の低さ。

  • 金銀比価は、週初めに85台前半で始まり本日は83台後半と下げ傾向で、2週ぶりの低さ。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、850から900の間を推移していたこと。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、今週1000ル弱で始まったものの、その後1000台前半を推移。引き続きウクライナ危機で3月初旬に2000ドルを超えた水準からそれ以前へと戻っていること。

  • 上海黄金交易所(SGE)の週平均は1.88ドルのプレミアムと、前週の3.40ドルのから減少していたこと。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。

  • コメックスの先物・オプションの取引量は、木曜日までの週平均で金が34%減、銀が47%減、プラチナが25%減、パラジウムが33%減と、前週大きく増加していたことからも下げていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は水曜日の小売大手の決算結果が悪かったことや木曜日の米新規失業保険申請件数の悪化で、リスクオフ基調となっていますが、来週も引き続き主要国の経済状況を表す指標、また主要中央銀行の金融政策関連のニュースや指標に市場は注目することとなります。

そこで、来週の重要指標は、水曜日のFOMC議事録要旨となりますが、その他にも火曜日の主要国の製造業とサービス部門のPMI、水曜日の米国耐久財受注、木曜日の米国GDPと新規失業保険申請件数、金曜日の米国個人消費支出は注目されることとなります。

詳細は主要経済指標(2022年5月23日~27日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

ブリオンボールトは5月20日から大英図書館で始まる「金(Gold)」のエキジビションのスポンサーをさせていただいています。ご興味があれば下記のリンクでご覧ください。

http://bl.uk/events/gold

大英図書館「ゴールド」エキジビションイメージ

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では引き続きウクライナ情勢に加えて、英国のEU離脱時の協定で新たに設けられた英国に属する北アイルランドとEUに属するアイルランド間の国境管理に関する問題、そして40年ぶりの高水準の9%をつけた消費者物価について大きく伝えられています。

そのような中、今週は毎年この時期ロンドンで行われるプラチナグループ業界関係者が一堂に会するプラチナウィークが行われていましたので、それについてお伝えしましょう。

このプラチナウィークのメインイベントは火曜日に行われるセミナ-とカクテルパーティ。そして翌日の夜のディナーとなり、その他多くの業界関連企業がネットワークイベントやディナーを月曜日から水曜日の3日間に催しています。

私は月曜日のプラチナグループ業界で働く女性の会のWomen in PGMsのブレックファーストミーティング、同夕方のMetals Focusのネットワーキングミーティング、火曜日のセミナー及びカクテルパーティに参加してきました。

Women in PGMsの会では「プラチナグループの将来を形成するにあたり」とし、世界でも有数のプラチナ鉱山会社のAnglo AmericaのCEOのNatascha Viljoen氏、世界でも有数の精錬会社Johnson Matthewの技術部門の取締役のLiz Rowsell氏、そしてテクノロジー会社のHeraeusのサスティナビリティの責任者のSvea Scherleithner氏がパネリストとして登壇しました。

ここでは、それぞれの会社が鉱山会社、精錬会社として、環境問題にどのように対応し、CO2排出を限りなくゼロにするために実際に行っていることについて、そしてこれらは有能な人材を得るために企業が行っていかなければならないことであるとし、鉱山や精錬会社の男性中心の企業というイメージもそのような技術力を高めることで変えていくことができるはずと話されていました。

翌日のセミナーは2部形式になっており、前半はS&P Global MobilityのGraham Evans氏とJohnson MattheyのSam French氏によるEV車のサプライチェーンと技術状況、そしてCo2排出に関してネットゼロを実現するための水素エネルギーの役割と、将来のプラチナグループメタルの需要を予想するための新たな技術革新に注目をした話となりました。

そして後半は著名アナリストによるプラチナグループメタルの需給全般に関して、今後注目すべき要因等が議論されました。

前半の技術関連の話を要約すると、自動車業界のCo2排出に関するネットゼロを達成するためにはインフラストラクチャーが整わなければならず、これらの投資無くしては難しく、継続的な政府主導のトップダウンの動きが必要ということ。また、EV車用のバッテリーのためのレアメタルの供給懸念があり、これが燃料電池自動車への移行を進める可能性があるとも話されていました。

欧州諸国の多くは2030年までにガソリン車やディーゼル車などの内燃機関車の新車販売が禁止されることとなります。そこで、これらで排ガス触媒として利用されているプラチナやパラジウムの需要は、この流れによって影響を受けることとなります。しかし、プラチナは燃料電池自動車やネットゼロのための再生可能エネルギーで注目されている水素エネルギーでも使われることから、長期的にはガソリン車やディーゼル車の需要減少は、新たな分野の需要で賄われるであろうとのこと、それに対しパラジウムについてはガソリン車の排ガス触媒需要が減少後、現段階ではその需要の代替需要先は見いだされていない模様です。

後半の今後のプラチナグループに影響を与える要因としては、ウクライナ戦争、高インフレ、主要中央銀行の政策、景気後退等とファンダメンタルなものとされていました。

2年ぶりの対面でのプラチナウィークは、日本も含めた世界各国からプラチナグループメタルにかかわる企業の方々が参加され、またパンデミック中にオンラインのみで話をしていた人々と実際に会える機会ともなり、有意義な時間となりました。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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