金市場ニュース

ニュースレター(2022年4月14日)長期金利の高騰とドル高の中で円建て金は史上最高値を記録

英国は明日から月曜日までイースター休暇となりますので、一日早く今週のニュースレターをお届けします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1962ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.1%高と2週連続の上昇となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から4.1%高でトロイオンスあたり25.64ドルと下げています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から0.9%高のトロイオンスあたり981ドルへと5週ぶりに上昇しています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は2.4%安のトロイオンスあたり2382ドルと前週の3月25日以来の高さから下げています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週市場は火曜日発表の米消費者物価指数に注目していましたが、この数値が予想を上回る前年同月比8.5%と40年来の高さであったことで、長期にわたる高インフレ観測が広がり、長期金利が3年ぶりの高い数値をつけている中、ヘッジとしての金と銀の需要が高まり上昇することとなりました。

この間プラチナは、中国の上海におけるコロナ感染抑制のロックダウン、またFRBによるより速いペースの利上げと量的緩和縮小による景気後退による需要減少等の懸念もあり、金・銀に劣る上昇ペースとなっていました。

そして、パラジウムは、先週業界を管轄するLPPM(ロンドン・プラチナ・パラジウム市場)が新たにロシアで産出・精錬されたパラジウムをグッドデリバリーリストから削除するとの発表で、4.3%高と急騰していたことからも、その上げ幅を戻す形で下落していました。

なお、今週の貴金属市場のニュースは、日本円建て金価格が史上最高値を月曜日から3営業日連続で更新して、昨日はgあたり8,026円をつけていたことでした。

これは、日本円が対ドル20年ぶりの円安水準へと下げる中で、ドル建てにおいても上昇していた金の日本円建て価格が急騰したことからでした。

円安の背景は、下記の2点が主要因とされています。


  • 米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を引き締めへと転換する中で長期金利が高い水準で推移する一方で、日銀の緩和を続けるスタンスで長期金利を抑え込んでいることから、日米の金利差の拡大で円売り、ドル買いが起きていることから。

  • 原油等の資源が豊富でない日本は、エネルギー関連価格の上昇を受けて、今年経常赤字に転じるという観測もあり円売りの動きが加速。

そこで、今週のチャートとして、日本円建て金相場の過去20年の動きのチャートを下記に添付します。今週の円建て価格は最高値時に前週終値比3%高、前年終値比18.6%高となっています。

ブリオンボールト・リアルタイム日本円建て金価格

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場はロンドン昼過ぎに日本円建てで史上最高値のgあたり7956円を付けるなど、長期金利が3年ぶりの高さ、実質金利がよりゼロに近づく中で、ドル建てにおいても1952ドルへと上昇して終えていました。

同日の上昇の背景は今週火曜日に発表される米インフレの数値が40年ぶりの高さとなることが予想されていることからもインフレ懸念とされていました。

火曜日金相場は、市場注目の米消費者物価指数の発表を受けて、トロイオンスあたり1978ドルと1月ぶりの高さへ一時上昇後1966ドルで終えていました。

同日発表された指数は、前年同月比8.5%と予想の8.4%を上回り、40年ぶりの高さであったものの、コアは6.5%と予想の6.6%を若干下回り、前月比でも0.3%と予想の0.5%を下回ったことから、インフレがピークアウトして今後下げに向かうという観測が広がり、長期金利が前日2018年12月以来の高さの2.8%から下げに転じたことが金を押し上げることとなりました。

なお、昨日史上最高値をつけていた円建て金相場は同日もgあたり7960円を付けて高値を更新していました。

水曜日金相場は、長期金利が2営業日連続で、3年ぶりの高値から下げる中で、ロンドン時間午後にトロイオンスあたり1979ドルへと上昇していました。

同日発表された米卸売物価指数は、前年同月比11.2%上昇し、データの発表が開始された2010年11月以降で最大となっていました。これにより、インフレ高が意識される中で、長期金利が下げたことが金を押し上げることとなった模様です。

なお、同日日本円が20年ぶりの円安を記録したことから、日本円建て金相場はgあたり8026円と3営業日連続で史上最高値を更新していました。

本日木曜日金相場は、長期金利が再び上昇に転じて、米国債10年物で2018年1月以来の最高値の2.8%により近づき、ドルインデックスが2020年5月以来初めて100を超えて上昇したことからも、ロンドン時間夕方にトロイオンスあたり1964ドルと前日終値比下げて推移しています。

長期金利の上昇は、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が「0.5%の利上げは合理的な選択肢」と述べたことが伝わり、FRBによるより速いペースの利上げ観測が広がっていることからのようです。

また、ドルが強含んでいるのは、米長期金利の上昇もありますが、本日ラガルドECB総裁が「主にエネルギーコストの急上昇により、今後数カ月のインフレ率はなお高水準で推移するだろう」と述べ、しかもウクライナ情勢が記録的なインフレをより押し上げると述べたことが伝えられ、ユーロが対ドル弱含んだことも相対的にドルを引き上げた模様です。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週5日火曜日に、FRBでハト派と知られているブレイナード理事が早期のバランスシート縮小に言及したことで長期金利が3年ぶりの高さへ上昇する中で、パラジウムを除く全ての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、5.7%減の392トンと4週連続で減少して、2月8日の週以来の低さへ下げていたこと。この間金価格は前々週比2.2%安。建玉においては、前週比2.2%減と4週連続に減少。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から1.2%価格が下げる中で、7.3%減で6,115トンと4週連続で減少していること。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が0.8%と若干上げていた際に、ネットロングポジションは82.7%減の8.8トンと減少していたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは2週連続でネットショートであったものの、16.3%減で1トンと1月25日以来の規模のネットショートから減少していたこと。この間価格は8.7%高と3週ぶりに上昇していたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週水曜日までの週間で13.9トン(1.3%)増で1,104トンと2月24日以来の高さで、2週ぶりの週間の増加となっていること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週水曜日までの週で1.4トン(0.3%)増で518トンと前週9週間ぶりに週間で減少後に上昇傾向でその規模は3月1日以来の高さ。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週水曜日までに25.85トン(0.15%)減の17,590トンと4週ぶりの週間の減少傾向であること。

  • 金銀比価は、週初めに78で始まり、本日76台まで下げて終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週961ドルで始まり水曜日に2021年11月以来の高さの996ドルへと上げて、多少その水準を下げて終える傾向。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、1500ドル台で始まり1300ドル台後半ヘ戻して終える傾向。過去の動きはウクライナ危機で3月初旬に2000ドルを超えた水準から下げていたものの、今年1月には1000ドルを割っていたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対してプレミアムで推移していたものの、昨日から2営業日連続でディスカウントとなり、週平均は2ドルのディスカウントと前週の2.37ドルのプレミアムから下げていたこと。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。

  • コメックスの先物・オプションの取引量は、水曜日までの週平均で前週比金で21%、銀で63%、パラジウムで42%増加し、プラチナは9%減少していたこと。銀の週間平均取引量はウクライナへのロシア侵攻後価格が高騰した際の3月初旬ぶりの高さ。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は、前週同様にFRBや主要中央銀行の金融政策に影響を与える消費者物価指数等の指標に市場が注目していますが、来週もこの傾向は継続し、そしてウクライナ情勢も継続重要となります。

そこで、水曜日のベージュブック、木曜日のユーロ圏消費者物価指数、米国の新規失業保険申請件数、金曜日の主要国の製造業及びサービス部門PMI等が重要となります。

詳細は主要経済指標(2022年4月18日~22日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国ではウクライナを訪問したジョンソン首相及びウクライナ情勢、そしてエネルギー費用高騰を含む高インフレについて、そして以前お伝えしていたコロナ禍に首相官邸などで規則違反のパーティーが行われたことを捜査していた警察がジョンソン首相とスナク財務相へ罰金の通告を受けたこと、そして本日は英国政府が密航阻止を目的に不法移民をルワンダに移送すると発表したことについて大きく伝えられています。

そこで、密航阻止の英国の奇策は別途お伝えするとして、本日はパーティー問題によるジョンソン首相の退陣論が再燃していますので、ここでお伝えしましょう。

英国は新型コロナウィルスを抑え込むために2020年3月から7月まで、そして再び同年12月から翌年2月まで、都市封鎖と呼ばれるロックダウンが行われていました。

この間、同居していない家族ですらも室内で会うことは許されない、病院や老人ホームに入っている家族を訪問できない、葬式の参列者数すらも限られるなど、厳しい規制が行われていました。

このロックダウン中に、首相官邸や官庁で規則違反のパーティーが行われていたことが今年1月に英国メディアの報道で発覚し、野党からの強い非難の声はもちろんのこと、与党内そして国民からも怒りの声が上がっていました。

そこで、首相はまず内閣府による内部調査を決定し16件の規則違反の集会が確認されていたものの、その後警察が12件を捜査していたことから、首相の退陣論が棚上げされていました。

その後、ロシアのウクライナ侵攻が起こり、ジョンソン首相の得意とする国際舞台での動き、特に対ロ制裁やウクライナ支援を主導したことで、責任追及の動きは一旦下火となっていました。

そのような中、今週警察による捜査の結果ジョンソン首相とスナク財務相に罰金が課されたことが伝えられていました。

今回の罰金は6月のジョンソン首相の誕生に行われたパーティに関して課されたとのことですが、他の集会に関しても追加罰金が課される可能性も残っているとのことです。

ジョンソン首相及びスナク財務相共に謝罪をしていますが、調査会社ユーガブの緊急世論調査では、英国民の57%が首相は辞任すべきと回答し、続投支持は30%にとどまっていたとのことです。

現段階では内閣内のジョンソン首相支持は揺るぎないもののようですが、来月行われる地方選挙で、もし与党保守党が大敗することがあれば、党内からも退陣を求める動きが再燃することになるであろうとのことです。

1月の段階で、パーティー問題で退陣は時間の問題と思われていたジョンソン首相ですが、ウクライナ情勢がジョンソン首相への支持率を取り戻す要因になるのか、5月の地方選は興味深いものになりそうです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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