ニュースレター(2022年11月4日)FOMCと米雇用統計を経て、金は週間の上昇へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1673ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.52%高と週間の上昇となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から3.7%高のトロイオンスあたり19.94ドルとやはり週間ベースの上げとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から0.2%安のトロイオンスあたり949ドルと週間で若干の下げとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は0.9%安のトロイオンスあたり1890ドルと2週連続の下げとなっています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属相場は、FOMCと米雇用統計と重要イベントをこなしながら、週間では上昇で終える傾向となっています。
週前半はFOMCで利上げ幅が緩む、ほぼ楽観的な観測で多少上昇していましたが、FOMC後の声明でその観測が多少固まる中で、パウエルFRB議長が記者会見で利上げ中断を議論するのは時期尚早とし、長期の高い金利が続くことに言及したことで、一気にこの観測が後退してドルと長期金利が強含み、ドル建て金相場は9月と10月にも達した2020年3月以来の低い水準へ下げていました。
しかし、本日の雇用統計がまちまちであったこと、そして近い将来の景気後退を示唆すると言われる米国債の長短金利の逆転幅が拡大して1981年以来となっていることもFRBの利上げペースが緩む観測を広げてドルを押し下げている模様です。
そこで、本日は米国債の長短金利差のチャートを下記に添付します。このチャートで灰色で示されている期間は景気後退であり、2年物と10年物利回りがマイナスに入った後に景気後退が起きていることを見ることができます。
日々の金相場の動きと背景について
今週は水曜日にFOMCで米政策金利、金曜日に米雇用統計が発表と重要指標が続くことからも、週明け月曜日に市場は様子見で、トロイオンスあたり1640ドルを挟んで10ドル前後と狭いレンジの動きとなっていました。
そのような中、ドルと長期金利が緩やかに上昇していたことからもドル建てでは1634ドルへと下げ、他の主要通貨では上昇と異なる動きを見せていました。
火曜日金相場は、ドルが若干弱含む中で、長期金利は4%を超えて高止まりしているものの、トロイオンスあたり1650ドルと前日終値から1%と3営業日ぶりに上昇していました。
同日の米JOLT労働調査では、求人数が増加していたことで、FRBによる大幅利上げ継続観測で長期金利が高止まりしていましたが、市場では12月以降の利上げペースが緩む楽観論もあったことでドルが若干下げたことが金を押し上げることとなりました。
水曜日FOMC後にFRBは予想通り4回連続の0.75%の利上げを発表し、フェデラルファンドレートの上限は4%と金融危機最中の2008年1月以来の高さへと引き上げていました。
発表された声明では「金融政策が経済活動や物価に影響を及ぼすのに時間差がある点を考慮する」が加えられ、今後の利上げペースが緩む可能性で、株価が上げ金価格も1669ドルまで上昇しましたが、パウエルFRB議長が記者会見で「利上げを一時停止することを議論するのは時期尚早」というコメントを繰り返していたことからも、金は上げ幅を削って1638ドルで終えていました。
木曜日金相場は、前日のFOMC後のパウエルFRB議長の記者会見でのよりタカ派的コメントでドルインデックスと長期金利が上昇する中で、トロイオンスあたり1616ドルとほぼ2週間ぶりの低さへ一時下げた後に前日終値比0.5%下げて1630ドルで終えていました。
これは、前日のパウエル議長コメントで高い政策金利が長期にわたって維持されるという観測が広がる中で、同日の米新規失業保険申請件数が予想を下回ったこともこの観測を固めることとなりました。
また、同日イングランド銀行は予想通り75ベーシスポイントの利上げを行ったものの、ベイリー総裁が英国が長期にわたって景気後退することに言及したことで、英国ポンドが対ドル下げていたことも、相対的にドルを押し上げることとなりました。
そこで、本日ポンド建て金相場はトロイオンスあたり1458ポンドと、前日終値比1.5%上げて終えていました。
本日金曜日金相場は、発表された米雇用統計がまちまちのものである中で、長期金利は高止まりしているもののドルが2020年3月以来の下げ幅を見せていることから、トロイオンスあたり1675ドルまで上昇して推移しています。
雇用統計の内容は、非農業部門雇用者数は26.1万人と予想の20万人を上回り、前回26.3万人から上方修正された31.5万人を下回っていたものの、 失業率は3.7%と前回の3.5%と予想の3.6%を上回っていました。また、平均賃金は前月比0.4%と前回と予想の0.3%を上回っていましたが、前年同月比では予想の4.7%と一致して前回の5%から下げていました。
そこで、FOMC後のパウエル議長のコメントで急激にタカ派に傾いていた市場の観測が本日のデータで多少調整されていること、そして近い将来の景気後退を示唆すると言われている長短金利逆転幅も本日広がり、2年物と10年物国債利回りの逆転は1981年以来の大きなものとなっていることも、FRBの利上げペースが緩まる観測を再び広げている模様です。
その他の市場のニュ―ス
- 今週ワールドゴールドカウンシルが発表した第3四半期の金需給レポートで、世界の中央銀行のこの四半期の需要が399トンと過去最多であったこと。詳しくは記録的な中央銀行の金購入にもかかわずイングランド銀行の保管量は変わらずを。
- 先週末に発表された先週火曜日のコメックスの先物とオプションのポジションは、ドルと長期金利がFRBが利上げペースを落とす観測が広がり若干下げている中で、金とパラジウムで弱気ポジションを増加させ、銀とプラチナは強気ポジションを増加させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションのネットポジションは2週連続でネットショートで、61%増の103トンであったこと。この間LBMA PM金価格は前々週比0.4%高で1659ドルと上昇し、建玉は前週比4.2%増で、4週ぶりの高さとなっていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、2週連続でネットショートであったものの20%減の943トンであったこと。この間LBMA銀価格はほぼ1%高で18.88ドルと上昇していたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションは、17週のネットショート後に3週連続でネットロングで、そのポジションは147%増の12.4トンと4月5日以来の高さ。LBMA PMプラチナ価格は1.1%安で911ドル。
- コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは2週連続でネットショートで326%増の2.8トン。LBMA PMパラジウム価格は6.7%安で1890ドルで7月19日以来の低さ。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに11トン(1.2%)減で912トンと2022年3月末以来の低さで、4週連続の週間で減少傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに2.4トン(0.5%)減で456トンと2020年7月初旬以来の低さで、10週連続の週間で減少傾向であること。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに188トン(1.23%)減の14,857トンで、3週連続の週間の減少傾向。
- 金銀比価は、FOMCを前に82台まで下げたものの、その後83台で終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週も徐々に下げて昨日698と2021年7月以来の低さで本日は713へと若干上昇。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、今週も下げて本日889と6月20日以来の低さへ下げていること。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。
- 上海黄金交易所(SGE)のロンドン金価格との差は、今週平均は33ドルと前週の29ドルから上げていたこと。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は9%増で4週ぶりの高さ、銀は15%増で3週ぶりの高さ、プラチナは14%減で9週ぶりの低さ、パラジウムは23%増で9週ぶりの高さとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は注目指標が多く、FOMC後の発表とパウエルFRB議長の記者会見の内容は市場を大きく動かしていました。
そこで、来週も引き続き主要国の金融政策に影響を及ぼすであろう経済指標やイベントが重要となり、木曜日の米消費者物価指数へ市場は注目することとなります。
その他、木曜日の米新規失業保険申請件数、金曜日のドイツの消費者物価指数や米ミシガン大学消費者態度指数等も重要となります。
詳細は主要経済指標(2022年11月7日~10日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
弊社日本市場責任者のホワイトハウス佐藤敦子が、11月10日日本時間午後7時(英国時間午前10時)にサンワード貿易株式会社主催の「金や海外資産への分散投資のススメ」というウェビナーに、日本貴金属マーケット協会の代表理事の池水雄一氏と登壇します。これは、無料で参加が可能ですので、よろしければ先のリンクでお申し込みください。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2022年10月31日~11月4日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2022年11月7日~10日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2022年10月31日)アジアの小売現物需要は増加する中で、投機家が強気ポジションを減少させ金ETF残高も縮小し、金はFOMC前にドル高で下げる
- 記録的な中央銀行の金購入にもかかわずイングランド銀行の保管量は変わらず
- 【金投資家インデックス】英国の政治と金融市場の混乱が金と銀の投資需要を記録的水準へと高める
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週も英国では、スナク首相がCOP27へ一転参加することを発表したこと、英仏海峡を違法に渡って英国に入る難民の急増による難民収容所の混雑や申請処理遅延問題、ウクライナ戦争の激化、韓国のハロウィーンを祝う人々の雑踏事故やインドの吊り橋崩落事故等についても大きく伝えられています。
そのような中、今月ニュージーランドで男子の準々決勝が始まったラグビーリーグ・ワールドカップについても大きく伝えられていますので、今週はラグビーリーグ・ワールドカップについてご紹介しましょう。
ラグビーリーグと一般に知られているラグビーユニオンは、起源は同じであるものの、1895年にプロ化を許容したラグビーリーグとアマチュアスポーツを堅持したラグビーユニオン(後にプロスポーツへ転向)が分裂して以来ルールが双方の規制で変更されていったために異なっています。
ラグビーリーグはより早く、より観客にわかりやすいスポーツを目指し、選手数は13人(ラグビーユニオンは15人)へと減らされ、試合がゴールに集中するよりもトライを目指して、得点の調整が行われたとのこと。(トライはリーグで4点、ユニオンで5点、ペナルティはリーグで2点、ユニオンで3点等)
それに対し、ラグビーユニオンはラグビーリーグよりも多くの規制を有して、より複雑な協議と説明されています。
今回ラグビーリーグのワールドカップが話題となっているのは、昨年開催予定であったワールドカップがコロナ規制等で今年に延期され、男子、女子、車いすのワールドカップが一斉に開催されており、そのインクルージョンがニュースで取り上げられています。
車いすのラグビーは、障害の程度によって持ち点が設定され、コート内の4名の合計点が8点以内になるように編成する必要があり、女性選手の場合は0.5点の追加ポイントが許されて男性チームでプレーできるなど、まさにインクルージョンが行われているスポーツであるようです。
今年英国ではイングランド女子サッカーチームがユーロ2022で優勝し、女子サッカーチームへの注目が増していますが、今回の大会でラグビーリーグ女子や車いすラグビーの認知度が更に高まる事となるのでしょう。
私自身もこのワールドカップを機会にリーグとユニオンの違いや車いすラグビーについて学び、楽しんでいるところです。