金市場ニュース

ニュースレター(2022年9月23日)FOMCを経て長期金利とドルが急騰する中で金価格は再びパンデミック以来の低値へ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1664ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)とほぼ同じ水準と、引き続き2020年3月末以来の低値となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から0.1%高のトロイオンスあたり19.20ドルでかろうじて3週連続の上昇傾向で、金曜日のLBMA価格ベースでは8月26日以来の高さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から1.9%安のトロイオンスあたり875ドルと2週ぶりの週間の下げとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は0.2%高のトロイオンスあたり2093ドルと上昇しています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

貴金属相場は、前週に続き急騰するドルと長期金利に全般押し下げられる事となりました。

ドルインデックスは今週更に上昇して20年来の高値を更新し、米長期金利は今週一時3.8%を超えるなど12年ぶりの高水準をつけています。

貴金属は米国ドル建てで価格がついていることからドルが強含むと下げる傾向があります。また、金利を産まない貴金属は金利上昇はネガティブ要因となります。

ドル高は、FRBによる金利引き上げ観測がFOMC後の声明と記者会見で長期化するという観測が広がり、また欧州がウクライナ戦争によるエネルギー問題を抱えている中で、米経済の強さも見られていることから、相対的にドルの一人勝ち状態となっています。

そのために、今週為替市場で大きく弱含んでいる英国ポンドの影響で、英国ポンド建て金相場はLBMA価格ベースで2.25%高で3ヶ月ぶりの高さとなっています。

また、今週日銀が為替介入を行うことによって、24年ぶりの円安が多少解消された日本円建て金相場は今週1.8%安でgあたり7567円とひと月強ぶりの低値となっています。

そこで、今週のチャートとして、過去3ヶ月の日本円建て金相場の動きのチャートを下記に添付します。

3ヶ月間の円建て金価格のリアルタイムチャート 出典元 ブリオンボールト

今週の長期金利の動きは、既にFRBや主要中央銀行が金利引き上げに向かうことで上昇していたものの、本日英トラス政権が大規模な減税策と国債の増発計画を打ち出し、財政悪化懸念が強まり、国債の需給バランス悪化観測で、世界的に国債が売られる事となった模様です。

 

日々の金相場の動きと背景について

英国祝日明け火曜日金相場は、翌日のFOMC後の発表を待つ中で、ドルがほぼ20年ぶりの高さ、長期金利が2011年4月以来の高さへと上昇する中で、トロイオンスあたり1659ドルと前週に達した2020年3月の水準へ一時下げた後に1666ドルで終えていました。

水曜日金相場はFOMCの結果を待つ中で、米2年物国債の利回りが2007年以来の高さの4%を超え、10年物国債利回りは高止まりしていたものの、ドルインデックスも上昇していたことで、頭は重くトロイオンスあたり1667ドルと前日の終値前後を推移していました。

FOMC後の金利発表は0.75%と予想通りでフェデラルファンドレートは3.00~3.25%と2008年1月以来の高い水準となりました。また、FOMC参加者の22年末時点での政策金利見通しは4.4%と6月の3.4%から上昇していました。

そこで、発表後に10年物国債利回りが3.6%を超えて上昇したこともあり金はトロイオンスあたり1654ドルまで下げましたが、その後長期金利が3.5%に下げる中で金もその下げ幅を取り戻して1687ドルまで上昇するなど神経質な動きをした後に1667ドルで終えていした。

なお、同日はロンドン時間朝一番でロシアのプーチン大統領が国営テレビで戦闘継続のために部分的な動員令に署名したこと、また核兵器使用の可能性も示唆をする演説したことで、ドルが強含み、安全資産として金も買われて1676ドルまで一時上昇していました。

しかし、地政学リスクの上昇は通常短期的であることなどからも、その後上げ幅を削っていました。

木曜日金相場は、ロンドン午前中は前日のFOMCが予想通り0.75%の利上げであったものの年末の金利見通しが4.4%と6月の3.4%を上回るタカ派的内容であったことで、長期金利が2011年2月以来の高さとドル20年来の高さへ上昇し、2020年3月以来の低い水準のトロイオンスあたり1655ドルまで押し下げられていました。

その後、ドルが若干弱含んだことで、1684ドルまで上昇後に1672ドルで終えていました。

ドルが多少下げたのは、同日英イングランド銀行とノルウェー銀行が0.5%、スイス国立銀行は0.75%の利上げを発表するなど、他の中央銀行も高インフレに対応すべく金利を引き上げたこと、また日銀が24年ぶりに為替介入をしたこと等が背景となりました。

しかし、同日発表された米新規失業保険申請件数は予想を下回っていたことからも、FRBのより大幅な利上げ観測も広がリドルと金利のが再び上昇に転じた模様です。

本日金曜日金相場は、ドルインデックスが20年来の高さへと上昇し、米長期金利が10年来の高さへと上昇する中で、トロイオンスあたり1641ドルへと直近のサポートラインの1640ドルを試して1643ドル前後を推移しています。

本日のドルと長期金利の動きは、本日英国政府が大幅減税を含む補正予算案を発表し、この予算を賄うためのさらなる国債発行が明らかとなり、国債需給バランスの崩れ懸念からも英国債が売られて金利が上昇したことで、他の国々の金利も引き上げている模様です。

また、昨日イングランド銀行は英国既に景気後退に入っていると述べており、本日の補正予算によるさらなる景気懸念も広がっており、ポンドが対ドル20年ぶりの安値をつけたことで、ドルインデックスが更に引き上げられているようです。

また、本日世界株価が全般下げて、ストックス欧州600指数が弱気市場に入るなど市場センチメントが悪化していることで、現金化も進んでいる模様です。

ブリオンボールトのリアルタイムドル建て金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週13 日火曜日に米消費者物価指数が予想を上回る数値でより早い大幅なFRBによる金利引き上げ観測が広がる中で、金を除くすべての貴金属で弱気ポジションが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションのネットポジションは6週間のネットロングからネットショートへと転換し、31.5トンと7月26日の週以来の高さとなっていたこと。この間LBMA PM金価格は前々週比0.13%高で4週ぶりの上昇と2020年5月以来の低さから若干上昇し、建玉は前週比0.23%減であったこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、11週連続でネットショートで70%減の1160トンと、3週ぶりの低さへと2019年5月末の大きさから減少していたこと。この間LBMA銀価格は8.3%高と4週ぶりの上昇で、2020年7月以来の低さから3週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、14週連続のネットショートで、そのポジションは46%減の17トンと2019年6月以来の高さから2週ぶりの低さへ減少していたこと。LBMA PMプラチナ価格は4.7%高と3週ぶりの高さへ、前週の7週ぶりの低さから上昇していたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションはネットロングへと転換し0.23トンで、LBMA PM価格は5.8%高で3週ぶりの高さ。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに10.7トン(1.1%)減で950トンで8週連続の週間の減少で、2020年3月25日の週以来の低さであること。週間の増加は6月17日の週以来無し。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに3.4トン(0.68%)減で489トンと2020年7月28日の週以来の低さで、4週連続の減少傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに130トン(0.88%)増の14,990トンと、3週連続の週間の増加傾向となっていること。

  • 金銀比価は、今週水曜日に85台とほぼ2ヶ月ぶりの銀の割高解消へ下げてその水準を維持していること。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週742と11ヶ月ぶりの低さで始まり、本日805と5営業日ぶりの高さへ上げていること。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、今週1245ドルで始まり、本日1295ドルへと5営業日ぶりの高さへ上げていること。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。

  • 上海黄金交易所(SGE)の週平均は、前週の30.68ドルから34.79ドルと2016年以来の高さ。この間人民元が対ドル2020年7月以来の低さへ下げている中で堅固な動き。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。

  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は13%減で2週ぶりの低さ、銀は21%減で15週ぶりの低さ、プラチナは2%増で11週ぶりの高さ、パラジウムは13%減で14週ぶりの低さ。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はFOMC、日銀、イングランド銀行等の金融政策の発表に市場は注目していましたが、来週も主要中央銀行の金融政策に影響を与えるイベントやデータが重要となります。

そこで、最も注目されるのはFRBがインフレデータとして重要視する金曜日の米国個人消費支出PCEデフレーターですが、その他火曜日の米耐久剤受注、水曜日のドイツの消費者物価指数や米GDPなどとなります。

詳細は主要経済指標(2022年9月26日~30日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

ブリオンボールトは5月20日から大英図書館で行われている「金(Gold)」のエキジビションのスポンサーをさせていただいています。ご興味があれば下記のリンクでご覧ください。

http://bl.uk/events/gold

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では今週月曜日に行われたエリザベス女王の国葬について、ロシアのウクライナ関連動きと国連での議論、そして本日発表された英国政府の小型補正予算案について大きく伝えられています。

そこで、先週は休暇をいただきロンドン便りをお休みさせていただきましたので、エリザベス女王の国葬についてお伝えしましょう。

今週月曜日19日はエリザベス女王の国葬のために英国は祝日となり、エリザベス女王が戴冠式を行い、フィリップ殿下とご結婚されたウェストミンスター寺院で同日11時から葬儀が行われました。

まず、葬儀が始まるまで一般弔問が行われていた議会議事堂ホールに安置されていた女王の棺は、142人の衛兵によってウェストミンスター寺院へ移動されました。

そして、1965年のチャーチル元首相以来の国葬には、天皇・皇后両陛下やバイデン米大統領等の各国の元首や首脳約500人を含む2000人が参列していました。

葬儀後に棺を運ぶ葬列が組まれ、衛兵らの先導で少なくとも1650人の葬列が組まれて、チャールズ国王やウィリアム皇太子に付き添われて、ウェストミンスター寺院からバッキンガム宮殿前を通って、ハイドパーク近くのモンのウェリントン・アーチまで行進をしました。

その後、棺は車でロンドン近郊のウィンザーに運ばれて、再び葬列を組んでウインザー城ヘ向かい、同日午後4時から追悼の儀式が行われ、夜にはプライベートな儀式で城内の聖ジョージ礼拝堂にエリザベス女王のご両親のジョージ6世とエリザベス皇太后、そして妹のマーガレット王妃、フィリップ殿下と共に安置されたとのことです。

この国葬は世界の人々がテレビやインターネットで見ることができたようですが、英国では2900万人の方々がテレビで視聴したとのことです。

そして、ロンドン市内のバッキンガム宮殿やウエストミンスター寺院には夜中から人々が列をなして沿道を陣取り、ロンドン市内からウィンザーへの沿道の約50キロの道のりもまた絶えることなく人々が最後のお別れのために集まっていました。

ちなみに、議会議事堂ホールで行われていた一般弔問へは国葬前の4日半の間に少なくとも25万人が訪れ、8キロと延々と伸びた訪問者の列は真夜中も続いていました。

国葬の行われた日は、ロンドン市内の多くの道路は封鎖され、ロンドン上空を飛ぶ飛行機もキャンセルされていたことからも、国葬が行われている間はロンドン市内は静けさに包まれていました。

喪が明けた火曜日からは一般の人々にとっては日常が始まっていますが、王族はさらなる1週間が喪中とのことで、チャールズ国王とカミラ王妃は私的に過ごすためにスコットランドに向かったとのことです。

このような英国が新たな時代へ踏み出す歴史に残る日々を経験し襟を正す思いでしたが、そのような中で、国葬でカンタベリー大司教のジャスティン・ウェルビー氏が語った言葉が心に残りましたので、ここに記させていただきます。

大司教はエリザベス女王がコロナ禍でロックダウン下にあり家族や友人に会えない国民へ向けた演説で触れた英国の国民的歌手の子ベラ・リンの曲「We’ll Meet Again(また会いましょう)」を引用し「私たちは再び必ず会うことができます」と述べたことに触れて、この言葉が人々に希望を与えたとして次のように話されていました。

「私たちは皆、神の慈悲深い裁きを受けることになります。しかし私たちは皆、生においても死においても、女王が抱いておられた希望を分かち合うことができます。それは、生においては奉仕、死においては希望という、女王の仕える指導力(servant leadership)を呼び覚まさせるものでした」

「女王の模範に従う者は皆、女王と共に、『また会いましょう』と言うことができるのです」

 

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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