金市場ニュース

ニュースレター(2022年10月14日)40年来の高さの米消費者物価指数で金価格は2週ぶりの低さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1646ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.95%安と2週ぶりの週間の下落で2週ぶりの低さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から9.1%安のトロイオンスあたり18.75ドルとやはり2週ぶりに週間ベースで下げて2週ぶりの低さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から1.98%高のトロイオンスあたり911ドルと2週ぶりの週間の上げとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は7.2%安のトロイオンスあたり2094ドルと2週ぶりの下げで5週を超える低値となっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属は、米消費者物価指数の発表を待つ中で緩やかに下げ、消費者物価指数はエネルギーや食品を除くコア指数が未だ上昇して新たな40年来の高さとなったことで、長期のインフレとそれに対する中央銀行の長期に渡る大幅な利上げ観測で大きく下げることとなりました。

そこで、今週のチャートは将来のFRBによる金利予想のFedWatchツールから年末の金利予想をお届けしましょう。

昨日の米消費者物価指数発表後、利上げ幅がより大きく予想されていますが、11月1日と2日に行われるFOMCでの0.75%の金利引き上げはほぼ97%の確率とされ、前週の81%から上昇し、前週全く予想されていなかった1%の利上げも2.7%の確率となっています。

そして、下記のチャートでも見られるように12月13日と14日のFOMCにおいても0.75%の利上げ予想が75%と前週の23.4%から急激に増加し、年末の段階で最大4.75%の政策金利予想となっています。

この水準は2007年以来の高さでこの利上げペースは1980年代以降では最も積極的な引き締め策となります。

 

12月のFOMCにおける政策金利予想 出典元 CME FEDWatchツール

日々の金相場の動きと背景について

月曜日は、英国の中銀のイングランド銀行が小型補正予算発表後の混乱への緊急装置として28日に導入した今週金曜日までの国債購入上限を倍増することを発表していましたが、国債は引き続き売られて30年物国債の利回りが、介入前以来の水準へ上昇していました。

そこで、前週の堅調な米雇用統計後FRBの大型利上げペース継続の観測もあり、金価格は全ての主要通貨建てで下げて、ドル建てではトロイオンスあたり1670ドルと一週間ぶりの低さへ下げて終えていました。

しかし、ロシアが年間供給量の4割を占めるパラジウムはウクライナ戦争激化からも、銀とプラチナが金同様に下げる中で、トロイオンスあたり2272ドルへ一時上昇して、2187ドルで終えていました。

火曜日金相場は、米短期金利が3営業日ぶりに多少下げて長期金利が4営業日連続で上昇とまちまちであったものの、ドルインデックスが3営業日ぶりに下げる中で、1683ドルまで一時上昇後に1664ドルで終えていました。

これは、前日ブレイナードFRB副議長が、タカ派でありながらもハト派的要素もあるコメントをしたこと、また同日ニューヨーク連銀が発表した9月の消費者期待調査で、インフレ期待が3年先と5年先が多少上昇していたものの、1年先は低下したことも要因となったようです。

しかし、今週木曜日の米消費者物価への警戒感は強く、その上げ幅を失って終えていました。

水曜日金相場は、ドルインデックスが上昇していたものの、長期金利が下げる中で、トロイオンスあたり1674ドルと前日終値から多少上昇して終えていました。

同日は翌日の米消費者物価指数発表を前に米卸売物価指数が発表され、前回を多少下回ったものの前年同月比8.5%とコアが7.2%と高い水準であることから、近い将来のFRBの大幅な利上げ継続観測でドルが9月末以来の強さで短期金利が2007年以来の高さへ上昇することとなりました。

それに対し、長期金利は景気後退懸念もあり多少下げていましたが、9月半ば以来の高水準ではあり、金の頭を抑えていました。

なお、同日日本円は対ドル24年ぶりの低値を更新したことからも、円建て金価格はgあたり7891円とほぼ今週の下げ幅を削って推移していました。

木曜日は市場注目の米消費者物価指数が発表され、予想を上回ったことでFRBによる大幅な利上げ継続の観測からも、ドルと長期金利が急騰し、金価格は2週間ぶりの低値のトロイオンスあたり1642ドルへ一時下げていましたが、ドルと長期金利がその上げ幅を削る中でその下げ幅をほぼ取り戻して1663ドルで終えていました。

同日は米株価指数も先指標発表後2年ぶりの低い水準へ下げたものの、その下げ幅を取り戻して上昇していました。これは、FRBによる大幅な利上げ観測による下げが底を打ったという観測が背景にあったようで、金も株同様の反発をしていた模様です。

本日金曜日金相場は、ロンドン時間午後にドルと米長期金利が上昇に転じ、トロイオンスあたり1643ドルへと下げて推移しています。

これは、本日発表のミシガン大学消費者態度指数で将来のインフレ予想が前回から上昇していたこと、そして小売売上高も予想を下回ったことで、長期のインフレ観測、そしてそれによる長期の高い水準の金利継続観測が要因となった模様です。

そこで、ドルは前日比0.8%高、長期金利は心理的節目の4%を超えており、金にとっては向かい風となっているようです。

1週間のドル建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週27 日火曜日に米経済指標の悪化でFRBによる利上げペースが緩む観測ですべての貴金属で強気ポジションが増加していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションのネットポジションは3週ぶりにネットロングへ転換し15トンと、4年ぶりの高さへ増加していたショートカバーもあり前週から約144トンの金が買われていたこと。この間LBMA PM金価格は前々週比4.9%高で1714.85ドルと、前週の2020年3月末以来の低さから上昇していたこと。建玉は前週比0.6%増であったこと。
  • コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、13週ぶりにネットロングへ転換し1,113トンと、6月21日の週以来の大きさとなっていたこと。この間LBMA銀価格は12%高で20.93ドルと6月末以来の高さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、4月19日の週以来連続のネットショートで、そのポジションは69%減の3.3トン。LBMA PMプラチナ価格は7.7%高で925ドルと前週の下げ幅をほぼ取り戻していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは4週連続のネットロングで133%の2.4トン。LBMA PM価格は7.9%高で2256ドルと4月末以来の高さ。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに増減なく946トンと前週の14週ぶりの週間の増加以降横ばい傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.45トン(0.3%)減で475トンと2020年7月22日以来の低さで、7週連続の減少傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに367トン(2.5%)増の15,083トンと、8月17日以来の高さで2週ぶりの増加傾向。
  • 金銀比価は、今週84台で始まり本日88台後半と9月末以来の高さへ上昇。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週756と791の間を推移。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、今週1283で始まり、本日1183と9月初旬以来の低さへ下げていること。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。
  • 上海黄金交易所(SGE)は前週中国のゴールデンウィークで休場後。今週平均は31.51ドルと、休暇前の40.13ドルから下げていたこと。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は8%減で、銀は14%減、プラチナは1%減、パラジウムは0.3%減と、昨日の米消費者物価指数発表まで低い水準で推移していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は今後のFRBの金融政策を予想する上でも昨日の米消費者物価指数に市場は注目していましたが、来週も主要中央銀行の金融政策に影響を与える指標やイベントが重要となります。

それは、月曜日の米国ニューヨーク連銀製造業景気指数、水曜日の英国とユーロ圏の消費者物価指数、木曜日の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数、新規失業保険申請件数、また11月1日と2日のFOMCを前に発言が制限されるブラックアウト期間前のFRB高官のスピーチ等となります。

詳細は主要経済指標(2022年10月17日~21日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

弊社日本市場責任者のホワイトハウス佐藤敦子が、11月10日にサンワード貿易株式会社主催の「金や海外資産への分散投資のススメ」というウェビナーに、日本貴金属マーケット協会の代表理事の池水雄一氏と登壇します。これは、無料で参加が可能ですので、よろしければ先のリンクでお申し込みください。

 

11月10日のサンワード貿易主催ウェビナー募集ページ

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、激化するウクライナ戦争についても伝えられていましたが、9月23日のトラス政権の小型補正予算以降の世界金融市場を巻き込んだ英国債券危機とトラス政権の今後についてが、日々大きく伝えられていました。

本日は、トラス首相が小型補正予算による混乱からも、財務相のクワーテング財務相を解任し、小型補正予算の大規模減税策の一部である法人税減税も先日の高額所得者向け減税とともに撤回をすることを発表しています。

そこで、ここで小型補正予算以来の本日に至るまでの流れについて簡単にまとめてみましょう。

  • 9月23日トラス政権がエネルギー費用支援を含む大型減税の小型補正予算を発表。その後、ポンドは対ドル40年ぶりの安値をつけ、英国債は売られて利回りが急騰。詳しくは「英国政府の小型補正予算がなぜ英国国債市場を混乱に陥れたのか」へ。
  • 9月27日国際通貨基金(IMF)が「インフレ圧力が高まる中で大規模な財政措置は推奨しない」と異例の警告。
  • 9月28日イングランド銀行が市場安定化のために10月14日までの2週間に一日の上限を50億ポンドと設定して国債を購入することを発表。
  • 10月3日にトラス政権は高額所得者への減税の撤回を発表。
  • 10月10日に先の上限を倍増して100億ポンドとする。
  • 10月11日にはイングランド銀行は、物価指数連動英国国債も購入する国債に含めると発表。
  • 10月12日にワシントン訪問中のイングランド銀行総裁は14日の国債購入締め切りの延期は無いと述べ翌日国債価格が急落、利回りが2008年の金融危機以来の高さへ急騰。同日クワーテング財務相がイングランド銀行が14日で市場介入を中止することで国債市場が混乱した場合はイングランド銀行総裁に責任があると述べたことが伝えられる。
  • 10月13日に減税の一部が撤廃されるという噂が流れ、市場は若干落ち着きを取り戻す。
  • 10月14日ロンドン時間朝から、法人税減税の撤廃が示唆され、午後にトラス首相の記者会見があると伝えられ、クワーテング財務相解任の噂が流れた数時間後にその発表が行われる。

本日先のニュースを受けて国債市場は前日噂で買い戻されていたものが再び売られている模様で、10年物国債は4.4%と上昇し、ポンドは対ドルで前日比若干下げているものの、多少落ち着きを取り戻しているようです。

ちなみに、クワーテング財務相は在任期間が38日と歴代2番めに短いとのこと。しかし最短であった財務相は30日で在任中に死亡したIain Macleod氏。

本日記者会見に現れたトラス首相は先の発表後に数人のメディアの代表のインタビューに答えたのみで逃げるように会場を去っていました。その後、スコットランド自治政府のスタージュン第一首相がトラス首相の退任を求めるなど政情が落ち着きを取り戻したとは言えない状況で、しばらくはトラス首相は厳しい政権運営をすることになりそうです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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