ニュースレター(2022年4月22日)FRBの速いペースの利上げ観測で金は2週間ぶりの低値へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1943ドルと、前週木曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.0%安と2週ぶりの下げで4月8日以来の低さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から5.24%安でトロイオンスあたり24.31ドルとやはり2週ぶりの下げで4月6日以来の低さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から3.68%安のトロイオンスあたり941ドルへと1月10日ぶりの低さへ下げています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は1.1%高のトロイオンスあたり2408ドルと先の貴金属の中で唯一上昇しています。
今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週パラジウムを除く貴金属相場は、昨日のパウエルFRB議長のよりタカ派的発言(詳細は下記の日々の金価格の動きと背景を参照)からも、FRBが高インフレに対するために、より速いペースの利上げを行うという観測が一気に広がり、長期金利が2018年11月以来に高さ、ドルインデックスが2020年3月以来の高さへ強含み、大きく下げることとなりました。
そこで、CMEの将来のFRBによる利上げを予想するFedWatchによると、今年9月までに200ベーシスポイントの利上げが行われる観測が高まっており、つまりは5月から9月までの4回のFOMCでそれぞれ50ベーシスポイント(0.5%)の利上げが行われると予想されていることとなります。
そこで、今週のチャートとしては、FedWatchの今年9月時点でのFRBの政策金利を予想しているチャートを添付します。
このチャートで、250~275ベーシスポイントの予想が、ひと月前に0%で、一週間前でも3.1%であったものが、本日40.6%へと急上昇していることがご覧いただけます。
ちなみに、金利を産まない貴金属は金利上昇は通常ネガティブ要因となり、他の主要国より速いペースの米国の利上げによるドル高はドルで値がつけられる貴金属にとっては、やはりネガティブ要因となります。
日々の金相場の動きと背景について
英国イースター休暇中の月曜日金相場は、欧州が休暇中で薄商いの中でロンドン時間昼過ぎのトロイオンスあたり1998ドルをつけたものの、その後NY市場が開けるとともに長期金利が上昇し、ドルが強含む中で、トロイオンスあたり1977ドルと前週末比かろうじて上昇して終えていました。
これは、セントルイス地区連銀のブラード総裁が同日インフレ抑制のために政策金利を一回あたり0.75%の引き上げる可能性、年内までに3.5%引き上げるという見方を示し、FRBによるより速いペースの利上げ観測が広がっていたことからでした。
火曜日イースター休暇明けの金相場は、長期金利とドルが共に上昇する中で、トロイオンスあたり1949ドルへと下げて終えていました。
これは、前日のブラード総裁のコメントからも5月のFOMCでの0.5%の引き上げ観測が固まることで、長期金利が2018年暮れ以来の高さの2.9%へと上昇し、ドルインデックスも2020年3月の100を超える水準へと上昇したことからでした。
そのような中、日本円は日米の金利差からも同日1ドル=128円台まで下落し、日本円建て金価格はgあたり8174円と再び史上最高値を更新していました。
水曜日金相場は、欧米長期金利の上昇が一服する中で、トロイオンスあたり1956ドルと前日終値から上昇して終えていました。
同日は実質金利が2020年3月以来初めてマイナスからほぼ0へと上昇していたことからも、金の頭を抑えていました。
なお、同日日銀は指しオペを行いましたが、日本円は対ドル上昇し、日本円建て金相場はgあたり8016円と前日の史上最高値から1.9%下げていましたが、前週終値からは未だ0.4%上げていました。
木曜日金相場は、長期金利の上昇でドルが上昇したこともあり、前日終値比から下げてトロイオンスあたり1951ドルで終えていました。
長期金利の上昇は、同日パウエルFRB議長が講演し、これまででも最もタカ派的とも言える、早期に大きな利上げを行うメリットがあること、5月のFOMCでの0.5%の利上げの可能性、そして一回あたり0.5%利上げを数回繰り返す可能性を示唆し、市場のFRBの利上げ予想で5月の0.5%の利上げが97.5%とほぼ確実視され、次回6月においても0.5%以上の予想が99%を超えるなど、一気に利上げペースが速まる観測が広がっていることが背景となりました。
しかし、米株価が長期金利の上昇で全般下げていたため、またロシアがウクライナのマリウポリ掌握宣言をするなど、この紛争が長期化することも嫌気されて、リスクオフの資金も入っていたようで、金は比較的堅固な動きとなっていました。
金曜日金相場は、世界株価が全般下げる中で、米長期金利は高止まりしているものの、ロンドン時間夕方にトロイオンスあたり1934ドル前後へと2週間ぶりの低さへ下げています。
本日は恐怖指数とも呼ばれている株価のボラティリティを表すVIX指数がひと月ぶりの高さに上昇するなど、現金化も進んでいる模様です。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週12 日火曜日に、米インフレが40年来の高さを付ける中で、金と銀で強気ポジションを増加させ、プラチナとパラジウムで強気ポジションを減少させていたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、18%増の451トンと4週ぶりに増加していたこと。この間金価格は前々週比0.9%高。建玉においては、前週比6.7%増と4週ぶりに増加。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から1.3%価格が上げる中で、8.9%増と6,659トンと4週ぶりに増加していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が0.5%と若干下げていた際に、ネットショートへとネットロングから10週ぶりに転換し、そのポジションは0.16トンとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは3週連続でネットショートで、17.9%増で1.2トンと増加していたこと。この間価格は2.4%高と2週連続で上昇していたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの週間で4.6トン(0.4%)増で1,104トンと2021年2月23日以来の高さで、2週連続の週間の増加となっていること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週で1.01トン(0.2%)増で518.5トンと2週連続の増加では2021年2月26日以来の高さ。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに386トン(2.2%)増の17,976トンと6週連続の週間の増加傾向で2021年3月30日以来の高さであること。 -
金銀比価は、週初めに76台で始まり、本日80台と2月初旬以来の高さて終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消) -
プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週952ドルで始まり本日980まで広がって終える傾向。これは2020年11月以来の水準。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。 -
プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、1300ドル後半で始まり1400ドル台半ばまで上昇して終える傾向。過去の動きはウクライナ危機で3月初旬に2000ドルを超えた水準から下げていたものの、今年1月には1000ドルを割っていたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対して6営業日連続でディスカウントで、週平均は1.6ドルと前週の2ドルのディスカウントからは下げていること。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。 -
コメックスの先物・オプションの取引量は、木曜日までの週平均で前週比金で3%、銀で9%、パラジウムで19%減少し、プラチナは6%増加していたこと。銀の週間平均取引量は今週もウクライナへのロシア侵攻後価格が高騰した際の3月初旬ぶりの高さ。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週もFRB高官の発言、主要中央銀行の今後の金融政策へ影響を及ぼすであろう主要経済指標とイベントで市場は動いていますが、来週もこの傾向は継続します。
そこで、来週は木曜日に日銀の金融政策決定会合終了後の政策金利発表があり、市場は注目します。また、同日米国の第1四半期GDP、第1四半期GDP個人消費、翌金曜日のFRBがインフレ指標として注目する個人消費支出PCEデフレーター、ユーロ圏の消費者物価指数の発表があり、これら指標が重要となります。
ちなみに、翌週5月3日と4日はFOMCとなり、この週の前週は土曜日、つまりは今週土曜日からFRB高官の発言ができない期間となるために、来週高官の発言は無いこととなります。
主要経済指標詳細は主要経済指標(2022年4月25日~29日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2022年4月18日~22日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2022年4月25日~29日)来週の予定をまとめています。 -
金価格の高騰で世界2大金消費国の需要が減少
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、前週に引き続きジョンソン首相のパーティー問題、ウクライナ情勢、そして昨日21日はエリザベス女王の96歳の誕生日であったことからそのニュース等が大きく伝えられています。
そのような中で、テニスのウィンブルドン選手権の主催者がロシアとベラルーシの選手を今年の大会から除外すると発表したこと、それに対する反応などが伝えられていますので、ご紹介しましょう。
今年のウィンブルドン選手権は6月27日から開幕しますが、主催者のオールドイングランド・クラブの決定で、男子で世界ランキング2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)、女子で同4位のアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)らが出場できないこととなります。
同会長の。ヒューイット氏は英国政府の指針に沿って検討したとし、「ロシア政府の宣伝にスポーツを利用させないことの重要性、観客と選手の安全への懸念から、これ以外に大会を進めるのは不可能だ」とコメントしています。
これを受けて、男子プロテニス協会(ATP)は「一方的な決定は不公平。有害な前例を作る可能性がある」と批判する声明を出し、「国籍に基づく差別は、選手のエントリーは世界ランキングのみに基づくとするウィンブルドンとわれわれの合意への違反」と指摘しています。
また、女子テニス協会(WTA)も「非常に失望している。選手は出身地やその国の政府の決定によって罰を受けたり、競技を妨げられたりしてはならない」と異議を唱えているとのこと。
過去に国籍を理由とした出場禁止措置は、ロイターによると第2次世界対戦直後にドイツや日本の選手が除外されて以来とのことです。
ウクライナのテニス選手は、ロシアやベラルーシの選手であっても、ロシアのウクライナ侵攻を非難すれば出場は認められるべきともコメントしていますが、これは選手にとって厳しい選択を強いることになるのかもしれません。
英国政府のロシアのウクライナ侵攻に対する対応は経済制裁などを見ても米国同様に強いものがあり、クラッシクバレエにおいても今年行われる予定のボリショイのロンドン遠征は中止となる等、ウィンブルドン選手権の主催者の決定をメディア全般でも肯定する意見が多いようにも見受けられます。
ちなみに、今年8月29日に開幕する全米オープンはロシアとベラルーシの選手を除外するかは未定とのことです。
昨年はコロナ禍でワクチン接種をしていないジョコビッチ選手の対応でテニス界は揺れましたが、今後行われる様々な大会の主催者にとっても、ロシア、ベラルーシ選手を除外するか否かの判断は難しいこととなるのでしょう。