金市場ニュース

ニュースレター(2022年2月25日)ウクライナ情勢悪化で金は記録的高さへ上昇後に上げ幅を失う

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1890ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.2%安と、昨日2020年8月以来の高さの1973ドルをつけながらも、週間では3週ぶりの下げとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から1.9%高でトロイオンスあたり24.22ドルと4週連続の上昇となっています。なお、昨日銀価格は25.61ドルと2021年8月以来の高さをつけていました。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から3.3%安のトロイオンスあたり1055ドルと3週間ぶりに下げています。プラチナ価格も昨日2021年7月以来の高さのトロイオンスあたり1130ドルをつけていました。

弊社ではパラジウム投資サービスも今週から正式に始まりましたので、パラジウム価格の動向も今週からお伝えします。

パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は1.5%安のトロイオンスあたり2325ドルと、昨日2713ドルと2021年7月以来の高さをつけながらも、その上げ幅を失って、3週間ぶりの週間の下げとなっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属価格は、ロシアのウクライナ侵攻のニュースで昨日急騰し、金においては日本円とユーロ建てでそれぞれgあたり7279円とトロイオンスあたり1768ユーロと史上最高値をつけるなど大きな動きをすることとなりました。

しかし、昨日すでにパニック的な買いが収まると売りに転じ、リスク資産が急落から下げ幅を戻す中で、長期金利の上昇からもさらなる下げを見せていました。そして、本日ロシアがウクライナとの停戦交渉の用意があるとのニュースもあり、更に下げることとなりました。

また、本日はFRBがインフレデータとして注目する個人消費支出(PCEデフレーター)が発表され、前回と予想を上回る6.1%と40年ぶりの高さとなったことで、ウクライナ情勢悪化でFRBによる利上げの早いペース観測が後退していたものの、再度この観測が広がり、来週パウエルFRB議長の議会証言もあり市場の注目がインフレ及び金融政策に戻っている模様です。

なお、今週のチャートは、弊社にてパラジウム投資サービスが今週から正式に始まったことからも、パラジウムの過去20年間のチャートを添付します。

パラジウムの需要は8割以上がガソリン車の排ガス触媒で、少なくとも過去9年間は供給不足でもあり、2015年のフォルクスワーゲン社の排ガス不正によりディーゼル車の需要が減少してガソリン車の需要増加によるさらなる供給不足が予想され、2018年から大きく上昇を始め、2019年には金価格をも上回っていることがご覧いただけます。

そして、パラジウムの産出国として南アフリカと共に全供給量の3割以上を産出するのがロシアであることからも、ウクライナ情勢で供給不足が悪化することが予想されて今月に入り更に上昇しています。

ブリオンボールト・リアルタイム・パラジウム価格チャート

日々の金相場の動きと背景について

週明け月曜日は米国がプレジデント・デーで祝日の中、ウクライナ情勢を巡るニュースが週末の間も交錯する中で、市場明けとともに株式を含む金融市場が反応し、金相場は主要通貨建てで数カ月ぶりの高値、日本円建てでgあたり7048円と史上最高値をつけた後にウクライナ情勢のニュースで下げ、すべての通貨でほぼ前週終値の水準で堅調に推移することとなりました。

なお、ドル建てにおいては昨年6月初旬のトロイオンスあたり1908ドルを市場明け直後につけて、1907ドルで終えていました。

市場を動かしたニュースは、週末のロシアによるウクライナ侵攻が近いというもの、そして市場明け直後の米ロ首脳会談開催の可能性で緊張が緩和されたものの、その後ロシアが首脳会談のニュースを基本否定したことで再び緊張が高まったことからでした。

火曜日金相場は、前日の水準から下げてはいるものの、ウクライナ情勢の緊張は続いていたことからもトロイオンスあたり1900ドルを維持して終えていました。

これは、前夜ロシアがウクライナ東部の一部地域の独立を承認し、同地域への軍の派遣を決めたことからも、安全資産の需要で金は上昇していましたが、その後安全資産としてドルが買われ強含んだことで1891ドルまで一時押し下げられ、ドルと長期金利がその後下げたことで、1900ドルを戻していました。

水曜日金相場は長期金利が上昇する中でトロイオンスあたり1889ドルまで押し下げられたものの、1913ドルで終えていました。

長期金利の上昇は、欧州諸国のロシアへの制裁が予想を上回るものでなかったことで、経済への悪影響懸念が多少後退し、安全資産需要としての国債購入が抑えられたことからでした。

しかし、その後バイデン大統領がロシアへの制裁を強化したことやウクライナ政府や銀行へのサイバー攻撃、ウクライナが非常事態宣言を発令する等ウクライナ情勢の緊張が高まり、5営業日ぶりに反発して始まっていた株価が再び下げに転じたことで、安全資産として米国債が買われ長期金利が上げ幅を削り、金の安全資産としての需要もあり価格を引き上げることとなりました。

木曜日金相場は、ロシアのウクライナ侵攻のニュースを受けてトロイオンスあたり1973ドルと前日終値比60ドル(3.2%)高の昨年8月末以来の高さまで上昇したものの、その後1880ドルまで押し下げられた後に、1912ドルで終える激しい動きを見せることとなりました。

この動きは、株価等のリスク資産がウクライナ関連ニュースで大きく下げたように、安全資産として金が急激に買われたものの、パニック的な売りと買いに調整が入り、長期金利の上昇もあり金はより下げることとなりました。しかし、流石に1900ドルを下げた水準では買いも入った模様です。

本日金曜日金相場は、前日の終値から上げてトロイオンスあたり1921ドルまで上昇していましたが、本日昼過ぎにプーチン大統領がウクライナとの停戦交渉に応じる準備があると伝えられたことから、金価格は1900ドルを割って下げています。

また、本日FRBがインフレデータとして注目する米個人消費支出(PCEデフレーター)が市場予想と前回を上回り6.1%と40年ぶりの高さとインフレの高まりを示唆したことから、ウクライナ情勢悪化で多少後退していた速いペースのFRBによる利上げ観測が戻り、長期金利が上昇したことも金を押し下げることとなりました。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週18日火曜日にロシアが一部軍を撤退すると発表したことで、ウクライナ情勢の緊張が多少和らいでいた際に、プラチナ以外の貴金属で強気ポジションを増加させていたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、48%増の391トンと2週連続で増加し、11月16日の週以来の大きさへと増加していたこと。この間金価格は前々週比1.42%高。建玉においては、前週比11%増と2週連続で増加していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から1.9%価格が上昇する中で、74%増で2,744トンと2週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が1.4%前々週比下げていた際に、4週連続でネットロングであったものの、18%減の9.4トンと2週連続で減少し、3週ぶりの低さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは23週連続でネットショートであったものの、99.7%減で0.003トンと、直近で最小のネットロングであった9月7日の週以来の低さとなっていたこと。この間パラジウム価格は0.4%安。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの週間で5.2トン(0.51%)増で1,029トンと、8月2日以来の高い規模で、3週連続の週間の増加傾向であること。なお、残高は2月4日以来減少無し。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週で全く変化がなく498トンと、昨年9月末以来の高さであること。2月4日以来残高減少は無し。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに52トン(0.3%)減の17,113トンと、1月28日以来初めて昨日残高を減少させ、4週ぶりの週間の減少傾向であること。

  • 金銀比価は、79後半で始まり、昨日ウクライナ情勢悪化で価格が急騰した際に77台へ1月末以来初めて下げて、78台後半で終える傾向。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週815で始まり、徐々に上昇して855で終える傾向。2021年平均は708.82で5年平均は564.76。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、1280ドルで始まり昨日1501まで広がり、本日は1419ドルで推移していること。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対して今週プレミアムで、人民元が対ドル2018年4月以来の高さへ週後半強含み、人民元建て金価格が2021年1月以来の高さに昨日上昇する中で、週間の平均が4.11と前週の2.92から増加していたこと。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。

  • コメックスの金と銀とプラチナとパラジウムの先物・オプションの取引量は、今週ウクライナ情勢悪化で価格が大きく動く中で、週間平均が53%、102%、19%、153%へと前週比増加し、それぞれ4週ぶり、1年ぶり、5ヶ月ぶとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

ウクライナ情勢で金相場は今週大きく動きましたが、来週も引き続きウクライナ情勢は重要となります。それに加えて、主要中央銀行の金融政策は引き続き重要となり、その観測を動かす水曜日と木曜日のパウエルFRB議長の議会証言、金曜日の米雇用統計、その先行指標と見られている水曜日のADP全国雇用者数等に市場は注目することとなります。

その他、主要国の製造業及びサービス部門PMI、米国ISM製造業景況指数、ユーロ圏消費者物価指数、米地区連銀経済報告などが注目指標となります。

詳細は主要経済指標(2022年2月28日~3月4日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国ではウクライナ情勢が日々トップニュースで伝えられ、今週イングランドでほぼ全て解除されたコロナ規制とともに大きく伝えられています。

そこで、今週は発表された英国のロシアへの経済制裁が十分なものではないとのコメントも多く出ていますが、まずはこの制裁の内容と現在伝えられている状況をまとめて見ましょう。

今週英国は、ロシアのウクライナ侵攻に対して、主に下記の経済制裁をしています。


  • 英国内のロシアの保有資産凍結などの制裁対象としてロシア最大の銀行VTB銀行を含む6つの企業と5人の個人を即時追加。

  • ロシア連邦議会の議員571人も対象として追加。

  • ロシアの全ての金融機関が英国内に保有する資産の凍結。

  • 電子機器、通信、航空などのセクターを含む、高性能かつ重要な技術装置や部品の輸出禁止措置など、ロシアに対する輸出規制の強化。

先に加え、トラス英外相は、航空会社アエロフロートの英国領空へのアクセス禁止や、ロシアと近いベラルーシに対する制裁を発動する予定とし、さらにロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除するため、同盟国と協力しているとしています。

SWIFTから排除されることによるデメリットは大きいと個人的には思いますが、2014年のロシアによるクリミア半島併合後、ロシアは金準備を増加させるなど、ドル外貨比率を5年前の40%から16%へと引き下げ、より世界の既存の金融システムに依存しない体制を作りつつあったとも解説されています。

実際ロシアの金準備の増加は金の市場ではこの数年の大きなニュースでもあり、2014年から2019年までにロシアは金準備を年間200トンほど毎年増加させ、2022年2月の段階で世界5位の2,298.5トン、外貨準備高の割合も21.7%まで増加させています。

年間の世界の中央銀行による金準備増加総額が2014年からの同期間で平均500トンほどですので、その額が突出していることが分かります。

それに対し、欧州のエネルギー政策はロシアに依存して、天然ガスの供給の40%はロシアからとのこと。そこで、今回ドイツはロシアからの天然ガス輸送パイプラインのノルドストリーム2プロジェクト承認停止をしていますが、これによって痛手となるのはロシアはもちろんのこと、欧州であることは間違いないようです。

そこで、2014年のロシアによるクリミア半島併合後も、このようにロシアにエネルギー政策上依存を許した欧州諸国の甘さを指摘するアナリストは多いようです。

本日続々とウクライナ首都のキエフへとロシアが進軍していることが伝えられる中で、プーチン大統領が停戦交渉の応じる準備があるとも伝えられています。しかし、それはあくまでもロシアの要求をウクライナが受け入れた場合とも解説されています。

絶望的に見えるこの状況に何らかの明かりが見えることを切に祈るばかりです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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