金市場ニュース

ニュースレター(2022年6月1日)速いペースの利上げ観測再燃で金価格は2週ぶりに下げる

今週英国はエリザベス女王の即位70周年記念の祝日で明日から4連休となります。そこで、一足先に今週のニュースレターをお届けします。

週間市場ウォッチ

今週水曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1843ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)からほぼ0.5%安と2週ぶりの下げとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から3%安でトロイオンスあたり21.61ドルとやはり2週ぶりの下げとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から3.8%高のトロイオンスあたり992ドルと3週連続の上昇で5月12日以来の高さへ上昇しています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は1.5%高のトロイオンスあたり2044ドルと2週ぶりの下げとなっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場はプラチナを除き2週ぶりの下げとなっています。これは、FRBによる利上げペースが、6月と7月に0.5%の引き上げ後、経済指標の悪化などから9月にペースを緩める観測が広がっていたものの、原油価格の高騰による高インフレ、FRB高官によるよりタカ派的コメント、今週発表された堅調な経済指標等からも、早い引き上げペースが続く観測が広がり、ドルが強含み、長期金利が上昇していることが背景となっているようです。

そのような中で、プラチナが上昇しているのは、本日から中国上海における対コロナのロックダウンが緩和され、中国における需要が高まる観測が広がっている模様です。

そこで、本日のチャートとしてプラチナ価格の過去一ヶ月の動きを見てみましょう。ここで、本日大きくトロイオンスあたり1000ドルを超えて上昇したことがご覧いただけます。なお、貴金属専門コンサルタント会社のMetals Focusが先月発表したレポートにおいては、今年のプラチナ価格の年間平均は990ドルと予想されています。

ブリオンボールト・リアルタイム・プラチナ価格チャート

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、米国が祝日で商い薄である中で、ドルインデックスがひと月ぶりの低さへ弱含み、原油が2ヶ月ぶりの高さへ急騰したことで、ドル建て資産としてのサポートが入り、またエネルギー高がもたらす高インフレ懸念からも金が購入されて、一時トロイオンスあたり1863ドルまで上昇したものの、その上げ幅をほぼ失って1852ドルで終えていました。

ロンドン時間午後の下げは、前週2020年11月以来の高い上昇率を見せた米株価指数を引き継ぎ、アジアと欧州の株価が同日全般上昇していたことでリスクオン基調で資金が流出した模様です。

なお、株価の上昇は週末に上海が6月1日から2ヶ月ほど行ってきた厳しい移動規制を緩めることを発表したこともセンチメントを好転する要因となっていました。

原油の上昇は、①欧州のロシアへの経済制裁としての原油禁輸合意が近いという観測、②OPEC+が欧米からの要請にも関わらず増産ペースを上げないという内部情報、③中国の需要がロックダウン解除等で戻る観測などからでした。

火曜日金相場は、米株式市場が7営業日ぶりに反落し、ドルが強含み長期金利が上昇したことからも、トロイオンスあたり1841ドルへと下げることとなりました。

株価の下げは、欧州連合が前夜ロシア産原油の禁輸を合意して需給逼迫懸念から原油先物相場が急騰し、インフレ懸念が高まったことが背景となりました。

また、同日FRBのウォーラー理事が「2%の物価目標に近づくまで0.5%の利上げを選択肢から排除しない」とよりタカ派的コメントを出したこと、そして同日日発表のユーロ圏の消費者物価指数も予想を上回りECBによる速いペースの利上げによる景気後退懸念を高めたことも、株価の下げとドル高・長期金利上昇の背景となりました。

本日水曜日金相場は、ロンドン時間午前中に一時トロイオンスあたり1828ドルと2週ぶりの低さへ下げた後、その下げ幅を削って前週終値比下げているものの1848ドルまで上昇しています。

この間、本日ロンドン時間午後に発表された米主要経済指標の製造業PMIとISM製造業景況指数が予想と同等もしくは上回ったことで、経済が堅調であることが示唆され、FRBによる利上げペースが緩むことなく速いペースで行われる観測が広がり、株価がが全般下げるとともにドルと長期金利が上昇していました。

そこで、前日のFRB高官によるタカ派的コメントで大きく下げていた金相場は、高インフレ継続の観測やFRBによる過度な金融引締めによる景気後退へのインフレヘッジ及び安全資産の需要が入っている模様です。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週24日火曜日に、テクノロジー株を筆頭に株価が全般下げてラガルドECB総裁のタカ派的コメントでユーロが強含み、ドルが弱含み長期金利が下げる中で、金と銀価格が上昇し、プラチナとパラジウム価格が下落する中で、金を除くすべての貴金属でネットロングポジションを減少、もしくはネットショートポジションを増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、42%増の241トンと5週ぶりに前週の2021年9月28日の週以来の低さから増加していたこと。この間金価格は前々週比2.3%高。建玉においては、前週比1.3%減。
  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から0.7%価格が上昇する中で、2019年6月11日以来初めてネットショートで、84トンと6週連続でネットロングポジションを減少させていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、5週連続のネットショートで、そのポジションは12.5%増の11トンとなっていたこと。この間プラチナ価格は0.2%安。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは9週連続でネットショートで、16%増の5.4トンと1月18日の週以来の大きさに増加していたこと。この間価格は3.9%安と1月18日以来の低さへ下げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週火曜日までに1.5トン(0.1%)減で1068トンと、2週ぶりの残高減少で、週間でも減少傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週火曜日までで動きはなく518.7トンと引き続き5月16日以来の高さ。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週火曜日までに60トン(0.35%)減の17,298トンと4週連続の週間での減少傾向で、3月29日以来の低さで、5月4日以来増加なしであること。
  • 金銀比価は、今週85台前半で始まって5月15日以来の高さ。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、900を割った水準で本日は855と3月7日以来の低さで推移していること。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、今週1000ルを超えているものの、本日1036と5月16日以来の低さ。
  • 上海黄金交易所(SGE)の水曜日までの週平均は4.20ドルのプレミアムと、前週の3.40ドルから増加して、2月7日の週以来の高さ。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの取引量は、火曜日に価格がプラチナを除き前週終値比下げる中で、金が23%増、銀が95%増、プラチナが67%増、パラジウムが11%増であったこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は米国が月曜日、英国が木曜日と金曜日が祝日であるために、今週金曜日に米雇用統計等の重要指標が発表される中で比較的薄商いの一週間となりそうですが、来週も引き続き主要中央銀行の金融政策に影響を与える指標やイベントへ注目が行くこととなります。

そこで、月曜日の中国と火曜日の英国のサービス部門PMI、水曜日のユーロ圏の第1四半期のGDP、木曜日のECBの金融政策発表、金曜日の中国と米国の消費者物価指数等が重要となります。

詳細は主要経済指標(2022年6月6日~10日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

ブリオンボールトは5月20日から大英図書館で始まる「金(Gold)」のエキジビションのスポンサーをさせていただいています。ご興味があれば下記のリンクでご覧ください。

http://bl.uk/events/gold

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、引き続きウクライナ情勢、ボリス・ジョンソン首相のパンデミック中のパーティー問題、フランスで行われたサッカーの試合のチャンピオンリーグの決勝戦でリバプールファンが仏警察に会場への入場の際に不当な扱いを受けたこと、また今週の4連休に海外旅行へ行く人々が急増している中で航空会社が人員不足で多くのフライトをキャンセルしたことなどが、大きく伝えられています。

そのような中で、今週のエリザベス女王の在位70年を祝う「プラチナ・ジュビリー」祝賀行事が木曜日からの4連休に行われますのでまとめてご紹介しましょう。

エリザベス女王は2022年2月6日に英国君主として史上初となる即位70周年を迎えましたが、25歳で即位して以来ウィンストン・チャーチル首相を始めとする14人の英国首相を支え、この間13人の米国大統領と会うなど、多くの功績を残されてきました。

そこで、今年は一年を通じて多くの行事が予定されていますが、この4連休に先駆けて行われたのは、女王陛下に捧げる新しいデザートを一般公募して決める「プラチナ・プディング・コンテスト」が行われ5月12日に優勝者が発表されています。

そして、「クィーンズ・グリーン・キャノピー」は、英国獣の人々に「ジュービリーを祝って木を植えよう」という運動で、今年初めから2ヶ月間ですでに6万本の木が植樹されたとのこと。

また5月にはウィンザー城にて「プラチナジュビリー記念:歴史を駆け抜けて」という16世紀のエリザベス女王1世から現在までの歴史を著名俳優と500頭の馬で綴られるショーが開催されていました。

それでは、明日からの4日間のイベントを下記にリストアップしてみましょう。

2日(木曜日)「トゥルーピング・ザ・カラー」と「ジュービリー・ビーコン」

これは、女王陛下の誕生日を祝うパレードで、ロイヤルファミリーがバッキンガム宮殿から馬や馬車に乗って列席し、その後バッキンガム宮殿のバルコニーで観衆に答え、英空軍による儀礼飛行が披露されます。

「ジュービリー・ビーコン」は英国王室の祝賀行事で行われる伝統のビーコン(かがり火)点灯で、1500か所にビーコンが設置されるとのこと。

3日(金曜日)セントポール大聖堂での特別礼拝

4日(土曜日)「エプソムダービー」とバッキンガム宮殿でのコンサートの「プラチナム・パーティー」

このダービーは英国競馬界で最も人気があるレースの一つの王室メンバーが列席するとのこと。その夜はに行われるパーティはコンサートでダイアナ・ロスや英国ロックバンドのクィーンなどの著名歌手が出演するとのこと。

5日(日曜日)「ビッグ・ジュビリー・ランチ」と「プラチナム・ジュビリー・パジェント」

このランチは、人々がそれぞれ近隣住人と路上にテーブルや椅子を置き、料理や飲物を持ちよるストリートパーティが行わる予定で、1000万人の人々が参加すると見込まれているとのこと。そしてこのパジェントは、バッキンガム宮殿周辺でパフォーマーや有名人や一般市民が参加してパレードが行われるとのことですが、4部構成で、①軍人のパレード、②英国文化を振り返るパレード、③全国から集まった大道芸人やダンスパフォーマンス、④バッキンガム宮殿前で著名歌手等による国家合唱等とのこと。

エリザベス女王は、ご高齢であることからも、最近は公務を休むことも多かったようですが、プラチナム・ジュビリーの祝賀行事ではご家族に囲まれて無理のない範囲で良い時間を過ごされることを心から願います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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