金市場ニュース

ニュースレター(2022年4月1日)FRBの速いペースの利上げ観測で金相場は下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1928ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.3%安と下落しています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から3.0%安でトロイオンスあたり24.65ドルと下げています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から1.5%安のトロイオンスあたり996ドルへと4週連続で下げています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は7.0%安のトロイオンスあたり2322ドルと4週連続で下げています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、ウクライナ情勢においてロシアとウクライナの停戦協議が進展しているという観測からリスク資産が上昇し、またFRBによる速いペースの利上げ観測も広がり長期金利が2019年5月の高さへ上昇したことからも下落することとなりました。

しかし、市場が景気後退のサインと見ている長短金利の逆転が起きていることからも、その懸念は金をサポートする中で、パラジウムに関してはウクライナ危機の供給懸念が後退して下げ幅を広げている模様です。

今週のチャートとしては、米長短金利の差が今週ほぼ0へと下げて、本日は少ないながらもマイナスをつけていますので、それを示すチャートを下記に添付します。

金と米長短金利の差の推移 出典元:ブリオンボールト

 

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、長期金利が2019年5月以来の高さへと急騰し、また日銀の指値オペで金利上昇を抑え込むことを試みたことで日本円が対ドル急落し、その結果ドルインデクスが上昇したことで、金はトロイオンスあたり1918ドルへと大きく下げて、前週終値比1.7%安の1924ドルで終えていました。

これは、利上げペースを早める米国中銀とあくまでも現行の低金利政策を継続する日銀の政策の差によるもので、日本円は2015年来の円安となっていたことからも、日本円建て金相場の下げ幅は抑えられて、gあたり7,646円と前週終値比0.5%安で終えていました。

同日はウクライナ情勢においてロシアとウクライナの協議への楽観的観測が広がり、上海におけるロックダウンが原油価格を含むコモディティー価格の下げの背景となり、リスク資産が上昇したことも金を押し下げることとなりました。

火曜日金相場は、前日に続きロシアとウクライナの停戦交渉の進展の期待で株価が上昇する中で、トロイオンスあたり1890ドルへと2月末以来の低さへ一時下げて、ロンドン時間夕方に1916ドルで終えていました。

また、ロシアのウクライナ侵攻以来上昇していた原油価格も下げて、10年後のインフレ予想のブレークイーブンインフレ率はも今週の史上最高値から下げて世界株価を押上げていました。

しかし、2019年5月以来の高さへ上昇していた米長期金利は多少下げていたこと、また1900ドルを割るとバーゲンハンター的買いも入り同日後半の上昇となっていたようです。

水曜日金相場は、欧米株価が4営業日続伸後に全般下げる中で、トロイオンスあたり1933ドルへ上昇し、前日の一月ぶりの低値から2.1%、前日終値比0.8%上昇していました。

これは、ロシアとウクライナの停戦協議への楽観的な見方が後退していたこと、そして長短金利差が縮小していることで景気後退の懸念が広がっていた中で、同日バンク・オブ・アメリカが、株価の昨今の上昇はベアトラップと弱気市場に見られる反転と述べたこともあり、景気の先行きへの懸念が高まっていた模様です。

なお、同日発表の米ADP全国雇用者数は予想とほぼ同水準の45.5万人と堅固なものとなっていました。

木曜日金相場は世界株価が全般下げる中で、トロイオンスあたり1949ドルまで一時上昇し、1936ドルで終えて、前週終値比0.1%高、前週終値比1.1%安まで下げ幅を戻していました。

同日は月末と四半期末で、株においては買いを手控えられていたこと、そして原油価格が米政府が日量100万バレルの戦略石油備蓄を最大180日間にわたって放出すると伝えられて下げていることも石油関連株を押し下げていました。

ちなみに、米株価指数のS&P500種は四半期ベースで4.9%の下げを記録する傾向で、これは2020年3月以来の下げ幅となっています。

金曜日金相場は、良好な米雇用統計後に米長期金利が上昇する中で、トロイオンスあたり1930ドルへと下げています。

発表された米雇用統計は、非農業部門雇用者数は43.1万人と予想の49万人、前回修正値の75万人を下回っていました。しかし失業率は3.6%と前回の3.8%と予想の3.7%を下回り、平均時給も前年比5.6%と前回修正値の5.2%と予想の5.5%を上回っていました。

そこで、前週のパウエルFRB議長のコメントもあり、FRBによる50ベーシスポイントの利上げ観測が広がり、米長期金利が上昇している模様です。

FedWatchツールによると、5月の50ベーシスポイントの利上げ予想は、本日75%を超えており、前日の70%、ひと月前の0%から上昇しています。

しかし、10年物の利回りが2.434%で2年物の利回りが2.440%と逆転しており、将来の景気後退懸念は金をサポートしている模様です。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週22日火曜日に前日パウエルFRB議長が50ベーシスポイントの利上げの可能性を否定しなかったことで価格が下落した際に、プラチナを除く全ての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、9%減の417トンと2週連続で減少して、4週ぶりの低さへさげていたこと。この間金価格は前々週比0.08%高。建玉においては、前週比3.1%減と2週連続に減少。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週から1.8%価格が上昇する中で、8.7%減で6,880トンと2週連続で減少していること。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、前週プラチナ価格が1.4%前々週比上昇していた際に、ネットロングポジションは1.5%増の24.4トンと増加していたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは4週連続でネットロングであったものの、42%減の0.9トンと2週ぶりの低さとなっていたこと。この間価格は3.6%安と2週連続で下げていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの週間で1.7トン(0.16%)減で1,091トンと7週ぶりに週間の下げとなっていること。しかし、月間ベースでは、67.4トン(6.6%)増と2020年4月以来の増加量となっていたこと。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までの週で1.3トン(0.26%)増で517トンと5週連続の週間の上昇傾向。月間では18.3トン(3.7%)増と2020年7月以来の増加量。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに197トン(1.2%)増の17,376トンと、2021年7月半ば以来の高さで、3週連続の週間の増加傾向であること。月間の増加量は392トン(2.3%)増と2021年2月以来の増加量。

  • 金銀比価は、本日78に上昇するまで77台を推移。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週930ドルから940ドルへと上昇し、2021年11月以来の高さとなっていたこと。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、1200ドル台で始まり1300ドル弱へと上昇して終える傾向。過去の動きはウクライナ危機で3月初旬に2000ドルを超えた水準から下げていたものの、今年1月には1000ドルを割っていたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対してプレミアムで推移していたものの、本日ディスカウントとなり、週平均は1.69と前週の1.64ドルのプレミアムからたしょうながら上昇していたこと。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドルのプレミアム。

  • コメックスの先物・オプションの取引量は、木曜日までで前週比金で6%、銀14%、プラチナ8%、パラジウム78%増となっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

本日は市場注目の米雇用統計が発表されたものの、市場の反応は限定的となっていますが、来週も引き続き主要中央銀行の金融政策に影響を与える指標、及びウクライナ情勢に市場は注目することとなります。

そこで、市場は水曜日の米国FOMC議事要旨に注目することとなりますが、火曜日の主要国のサービス部門PMI、水曜日の中国のCaixinサービス部門PMI、木曜日の欧州中央銀行理事会議事要旨等も重要となります。

詳細は主要経済指標(2022年4月4日~8日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国ではウクライナ情勢がやはりトップニュースで伝えられていますが、本日からエネルギー価格の上限が引き上げられたことから、このニュースも大きく伝えられています。

そのような中で、今週私はロンドン貴金属市場協会(LBMA)とワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が主催した、Sustainability & Responsible Sourcing Summit 2022(持続可能で責任のある調達サミット2022年)に参加してきましたので、そのことについてお伝えしましょう。

貴金属業界団体は、近年ESG(Environment Social Governance:環境、社会、ガバナンス)に注目し、貴金属業界全体、特にASM(Artisanal small-scale mining:人力小規模採掘)のESG観点における改善を目指しています。

ASMの問題点は発展途上国で多く見られ、非合法な状態で採掘が行われていることから、これを如何に合法に、業界が認める採掘方法で行うように導くことが出できるのかということを協議しています。

このサミットは2日間でオンラインと対面のハイブリッドで行われました。そのプログラムでは、持続可能で責任のある調達の現状、投資家の立場から見た「持続可能で責任のある調達」とは、より前向きなESGの取り組み、ASMへの取り組み、「持続可能で責任のある調達」の今後、というセッションでそれぞれ専門家が現状を説明し、参加者からの質問に答えていました。

そして、一日目の最後のセッションでは、LBMAとWGCが新たに4月から試みる「Gold Bar Integrity」の発表がありました。

これは、世界の市場で最も流通し、より偽物も作られる事が多い1キログラム金地金バーをブロックチェーン技術を使い、製造から流通、保管している間の全ての工程を記録し、公開するというものです。

当初の数ヶ月はボランティアで参加する企業とともにこのシステムの稼働状況を確認するという施行期間を設けています。

この試みが順調に動いた際には、専門市場で取り扱われている400トロイオンス(12.5キロ)のグッドデリバリーバーも同様なシステムに含んでいくとのことです。

これを行うことで、取引される金の品質を保証し、しかも採掘から製造そして保管に置いて、常に責任を持った企業によって行われていることを公表することができることとなります。

この新たな試みについては、LBMAとWGCから随時進行状況が発表されると思いますので、ここでもお伝えするようにいたします。

最後にこのサミットで興味深く思ったのは、ESGに真剣に取り組むには費用が発生すると言うのは一般的な理解ですが、アセットマネージメント会社のアナリストの言葉が心に残りましたのでご紹介しましょう。

「ESGに取り組まないことによるマイナスを考えるべきで、それはStranded Asset(投資対象とされなくなる資産)となるリスクだ。」

今回のサミットの写真を下記に添付いたします。

LBMAサミットの写真

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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