ニュースレター(2020年12月18日)FOMCで2024年まで利上げなしが示唆され金は一月ぶりの高さへ
本年も弊社ニュースレターを購読いただきありがとうございました。英国は来週25日はクリスマスの祝日となり、私はその後年末から年初まで休暇をいただきますので、次回ニュースレターの配信は新年8日となることをご了承ください。
その間も弊社フェイスブックページとツィッターでは市場の動きをお届けしていますので、よろしければご覧ください。
それでは、2020年は前例のない年となりましたが、健康で素敵なクリスマスをお過ごしください。新年がより平穏で皆様にとって笑顔のあふれる年となることをお祈りしています。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1882.12ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.18%高と一月ぶりの高さへ上昇しています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり25.83ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から8.46%高とほぼ6週ぶりの高さとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1043.94ドルと前週金曜日のLBMA価格から3.46%高と前週上旬の水準へと戻しつつあります。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週は水曜日に発表されたFOMCの結果ですでに上昇基調であった金を勢いづけさせることとなりました。なお、上昇基調は米追加経済対策と英国とEUの貿易協定合意観測が広がり、リスクオンで株が買われ、当初は金は押し下げられていましたが、ドルが2年半ぶりの下げを見せることで資金が流入し始めたことが背景となっていました。また、今週開催されたFOMCでは政策金利を据え置いたものの、この金利引き上げがメンバーが予想するドットチャートで2024年までは無い事が示唆されたことも、金利を産まない貴金属にとって追い風となりました。
なお、今週銀相場が3ヶ月ぶりの高さのトロイオンスあたり26.13ドルを本日一時付ける強い上昇をしていることで金銀比価が73を割る3ヶ月ぶりの低さ(銀の割安が多少軽減)となっていました。これは、ワクチン実用化による移動制限解除、そして経済回復で工業用途が60%以上を占める銀の需要増観測が高まっていることからで、銅も数週間上昇を続けており本日7年ぶりの高さへ同様な要因で上昇するなど、コモディティ全般が上げ基調となっています。
プラチナは、先々週にやはり工業用途需要増の観測から4年ぶりの高さに上昇していたことからも、上げ幅は抑えられているようです。
日々の金相場の動きと背景について
月曜日英国時間午前中は、前週金曜日に米食品医薬品局によって承認され週末に月曜日から米国でコロナワクチン接種が始まると発表されたこと、また前日ブレグジット協議が継続されることも発表されて、リスクオン基調で株が買われ、ドルが弱含んでいた中で金相場はトロイオンスあたり1838ドルを付けるなど、1%ほど押し下げられていました。
特に英国ポンドは対ドル2ヶ月ぶりの高さへ上昇し、ポンド建て金相場は逆にトロイオンスあたり1355ドルと1.5週ぶりの低さへ2.5%下げていました。
火曜日金相場は、ドルが下げて株価が全般上昇する中で、一転トロイオンスあたり1855ドルを一時付ける上げを見せていました。
これは、同日からFOMCが始まり、翌日の発表で追加緩和の期待もあり、また米追加経済対策の合意が近いという観測、そして米英で始まっているワクチン接種、またモデルナのワクチンも米国食品医薬品局(FDA)が近々緊急使用許可を出すという観測もリスクオン基調をサポートしていました。
水曜日金相場は一時トロイオンスあたり1865ドルと1週間ぶりの高さへ上昇した後、1854ドルへと戻し、その後FOMCの結果で激しい上下運動をした後上昇基調で終えていました。
この背景はドルの動きで、午前中は前日の基調を受け継ぎ、その後発表された米国小売売上高が予想を下回るもので、株が売られドルが強含む中で押し下げられていました。
そして同日夕方に発表されたFOMCの結果が、一旦コンピューター取引では追加緩和無しでタカ派的と見られて下げたものの、2024年まで利上げ無しと示唆され、そしてパウエル議長の記者会見もハト派的と理解されて上昇をすることとなりました。
木曜日金相場は、米株価指数が史上最高値を更新しドルがほぼ3年ぶりの低さへ下げる中で、トロイオンス1895ドルと一月ぶりの高さへ一時上昇していました。
この背景は、前日のFOMCの結果と同日の新規失業保険申請件数が予想を下回ったことで、追加経済対策の必要性が確認され、さらなる資金の流入観測が投資資産を押し下げたことからでした。
本日金曜日金相場は前日終値の水準を維持してトロイオンスあたり1884ドル前後を推移しています。
本日は今週合意が近いとの観測が広がっていた英国とEUの貿易協定が再び難航していることが伝えられ、また前日の高値で利益確定で多少株が下げており、米追加経済対策の合意の遅れも嫌気されてドルが強含んでいることが動きを鈍くしている背景の模様です。
そして、本日米商務省が半導体受託生産中国最大手SMICと60に及ぶ中国企業に対して事実上の禁輸措置を発動すると発表し、米中関係悪化もドルを強含ませる要因となっているようです。
その他の市場のニュ―ス
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ビットコインが今週市場最高値の2万ドルを超え、今年上昇率が約3倍に達したこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日8 日に、米追加経済対策合意期待でドルが下げ貴金属が全般上昇する中で、パラジウムを除き全ての貴金属で増加していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、18%増の394トンと2週連続で増加して5週ぶりの高さとなっていたこと。しかし、未だ今年平均の28%減。また建玉は11週連続で100万枚を割っていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.4%増の6,791トンで、2週連続の増加。今年平均を24%上回る水準。
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コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比16%増の25.9トンと5週連続で増加し、7月28日以来の高さで、今年平均を2%下回る水準。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比16%減で10トンと4週連続の下げで、今年平均を6%下回る水準。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で8.2トン(0.7%)減で1168トンとファイザー・ビオンテックのワクチンニュース以来6週連続の週間の減少傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で2.7トン(0.51%)減で523トンと、ファイザーとビオンテックのワクチンニュース以来4度目の週間の減少傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週194トン(1.14%)増で17,238トンとファイザーのワクチンのニュース以来2度めの週間の増加傾向であること。 -
金銀比価は、今週76台から72台へと3ヶ月ぶりの銀割安解消傾向となっていること。 -
上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は-21.43と2週ぶりに減少していたこと。この間人民元建て金価格は一月ぶりの高さへ上昇。 -
コメックス及びNYMEXの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、週後半に価格が大きく上昇する中で、前週比それぞれ6%、17%、3%と増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週欧米はクリスマス休暇へ多くの人々が入るために、薄商いが予想され、主要経済指標も限られていますが、火曜日の英国と米国の第3四半期GDP、また水曜日の米国の個人消費支出等は重要となります。
また、合意が近いとされている米追加経済対策、また英国とEUの貿易協定のニュースもまた注目材料となります。
それに加え、新型コロナウイルスの感染者数、また新たなコロナワクチン承認、また実用化日程なども市場を動かす可能性があります。
それでは、主要経済指標の日程及び詳細は主要経済指標(2020年12月21日~25日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年12月14日~18日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年12月21日~25日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年12月14日)米国のワクチン接種開始とブレグジット協議継続のリスクオンで金は下落
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週がロンドン便りは今年最後となります。そこで、今年のロンドンからお届けした話題を1月からまとめてみました。
ご覧になってお分かりになるように3月以降はコロナ関連の話題、そして直近ではブレグジットも入り、その他王室関係が多かったようです。それぞれの月の大きな話題はリンクを貼ってありますので、よろしければご覧ください。
1月 ヘンリー王子とメガーン妃の主要公務一部引退、英国がEU離脱移行期間へ入ったこと。
2月 ジョンソン内閣改造で突然辞任したジャビド財務相、ロンドンがオリンピック代理開催を申し出たこと、ヘンリー王子とメガーン妃の引退について。
3月 ロンドン貴金属市場協会の年次パーティーご紹介、英政府の危機管理委員会のコブラミーティングの名前の由来、コロナ禍のロンドンの生活。
4月 Covid-19向け特別病院設立、コロナ禍で閉鎖中劇場が無料で公開しているストリーミング、退役軍人のトム・ムーア氏の新型コロナウイルスと闘う医療従事者のための募金活動、ウィリアム王子の次男ルイ王子を含めた人々の医療関係者へ感謝を示す様々な方法について。
5月 42億円を超えたトム・ムーア大尉の寄付活動(続編)、第2次世界対戦欧州戦勝記念日、ロックダウン解除について、英地方政府の異なるロックダウン解除方法、ジョンソン首相上級顧問のロックダウン規則破り。
6月 英国人のマスク着用嫌いについて、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)の抗議デモ、英著名サッカー選手による低所得者層の子供たちへの給食無料提供の活動、FreedomとLibertyという自由について。
7月 ロックダウン中の必需品店の欧州の相違、英国の対中国立ち位置の変化、英国のマスク着用率、ジョンソン政権支持率低下、日本人であるために英国音楽賞の受賞機会がないリナ・サワヤマ氏。
8月 Eat out to Help out(外食をして支援)、大学入学試験結果の混乱、著名米歌手の支援で大学へ進む学生、英国風物詩のクラシックコンサートのプロム。
9月 王室関連話題、英国離脱時に備えた英国内法についての英主要メディアの異なる立ち位置、新たな英国の経済支援策。
10月 バーチャルロンドンマラソン、環境問題に取り組むウィリアム王子とその家族、英国の新たな対コロナ警戒態勢、英労働党の反ユダヤ主義への対応。
11月 ロックダウンの規則、ジョンソン首相の側近の辞任劇、クリスマスコマーシャル、今年の単語。
12月 コロナ禍のクリスマスの王室の過ごし方、英EU離脱でジョンソン首相が使ったスローガン。
最後に今年のロンドンのクリスマス風景と共に弊社からのメッセージをお届けします。