ニュースレター(2020年8月7日)金価格は4営業日連続で史上最高値を更新後ドル高で調整が入る
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり2042.48ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.95% 上げ、再び金曜日のLBMA金PM価格としては最高値を更新し、9 週連続の上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり28.35ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から17.78%上昇し、2013年3 月以来の高さで9週連続の上昇となっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では982.64ドルと前週金曜日のLBMA価格から8.58%高と、今年2月の水準へ戻しています。
今週金価格は、ドル建てでは昨日まで4日連続で史上最高値を更新し、主要通貨建てでも史上最高値を繰り返して上昇することとなりました。この背景については日々の動きでご覧ください。
週明け月曜日は再び金価格は最高値を更新しましたが、その背景は週末に伝えられたCovid-19感染拡大や米中関係悪化関連ニュースに反応する中で、実質利回りが史上最低を記録したこともあり急騰することとなりました。その後先月2年ぶりの低さへ下げていたドルがやはり安全資産の買いで上昇したことで金は押し戻されることとなりました。
火曜日金相場は、先週金曜日に金先物価格がトロイオンスあたり2000ドルの大台を超えましたが、金現物価格もトロイオンスあたり2000ドルを超えて、再び最高値を更新し2009.27ドルを付けていました。
この背景は、同日米長期金利が再び史上再低値を付けたことで、インフレ考慮後の実質金利がマイナス1%から更に下げたことが要因となりました。
そこで、同日はユーロ、ポンド、日本円建てを含む主要通貨建てにおいても全て史上最高値を更新することとなりました。
なお、実質金利の下げは、米FRBによる近い将来の利上げは無いという観測の広がり、それに加え現在第4弾の財政出動が議会で協議されていますが、このような大規模な財政出動で、物価上昇率の見通しは高まり始めたことが背景となります。
水曜日金相場は前日の上げ基調を受け継ぎ、トロイオンスあたり2055.13ドルと再度史上最高値を更新していました。
この間世界株価は全般上昇しており、S&P500種はその最高値に2%まで迫っていました。
これは、経済対策に関する米国与野党の協議が進展していると伝えられていること、またコロナウイルスのワクチンの治験が良好に進んでいることが伝えられていることも要因とされていました。
そのような中でも金が堅固であるのは、前夜米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が、新型コロナウイルスの感染再拡大が成長の重しとなる中、米経済は当初考えられていたよりも多くの支援を必要としていると述べたことからも、米FRBによる緩和的政策は長期でさらなる規模で継続されるという観測が広がったことからでした。
なお、この間銀も金同様に上昇しており、同日はトロイオンスあたり27.17ドルを付け、金銀比価は76台を割る3年ぶりの低い水準へと銀割安が解消されていました。
木曜日もドル建て金相場は4日連続で史上最高値をトロイオンスあたり2075.09ドルと更新することとなりました。
この背景は、米議会で行われている追加経済政策の合意遅延への懸念ですが、これまで金を押上ている経済政策による財政悪化、インフレ懸念でドルインデックスが2年ぶりの低い水準へ下げ、米実質金利がマイナス幅を広げていたことからでした。
本日金相場は6営業日ぶりに前日比下げて、2.4%安のトロイオンスあたり2025ドル前後をロンドン時間夕方に推移しています。
この背景はドルが3営業日ぶりに対主要通貨強含んでいること、急激な上昇後の調整というところのようです。
ドルが強含んでいるのは、昨夜トランプ大統領が中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を運営する企業との取引を禁じる大統領令に署名し、本日は香港行政長官を含む香港政府高官や中国共産党幹部ら11人を制裁対象に指定したと発表したことで、米中間の緊張感の高まりが警戒されたことで安全資産としての需要からの模様です。
なお、本日市場注目の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前回修正値の479.1万人は下回っていますが、176.3万人と予想の160万人を上回り、失業率は、10.2%と前回の11.1%と予想の10.5%を下回る良好なものとなり、金の調整のきっかけともなった模様です。
また、米議会で協議されている追加経済対策は難航していますが、先の結果を受けて、合意することへの緊急性が失われる懸念も出ているようです。
その他の市場のニュ―ス
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金業界のマーケティング団体のワールドゴールドカウンシルが7月の金ETFのデータを発表し、世界全体の金ETF残高が166トン増加して、8ヶ月連続の増加で史上最高値3785トンを記録したとのこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週28日に金価格が史上最高値を更新した際に、金と銀は減少し、プラチナとパラジウムは増加していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比5.22%減の542.8トンと5週間ぶりの低さとなっていたこと。そして建玉は4週連続で100万枚を超えて4月14日以来の高さとなっていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比32.5%減の5,002トンと5週ぶりに減少し、4週間ぶりの低さとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比39.96%増で26.5トンと2週連続で増加し、2月末以来の高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比22.33%増の11.5トンと5週間連続で増加して3月3日以来の高さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で26トン(2.1%)増で1268トンと2013年2月26日以来の高さであること。そして、20週連続の週間の増加の傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で5.54トン(1.13%)増で497トンと過去最大を更新し、20週間連続の週間の増加傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週197トン(1.11%)増で17,867トンと史上最大で、14週連続の週間で増加傾向であること。 -
金銀比価は今週水曜日に70台へ下げて、本日は73台も割り3年ぶりの銀割安解消水準となっていること。 -
今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が-65.26と過去最大となっていること。 -
コメックスの金取引量は今週金価格が史上最高値を更新続ける中で週平均量で前週比29%減少し、2週ぶりの低さへ下げていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週のイベントとしては、未だ協議を続けている米国議会の追加経済支援策の行方、15日に行われる米中貿易関連協議の行方、また引き続きCovid-19感染関連ニュースは注目となります。
その他経済指標では主要国の消費者物価指数が発表され重要となりますが、詳細は主要経済指標(2020年8月10日~14日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週金価格は史上最高値を更新続けたことからも、弊社データ及びリサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが多く取り上げられています。
日経グループのQuick社のMoney Worldサイト「NY金、初の2000ドル突破 根強い先高感、投機マネーも集中」
ここでは、弊社の取引量が7月下旬から急増し、欧州を中心に新規顧客数も記録的な高さとなったと紹介されています。
ブルームバーグの「金が2000ドルを超え、さらなる上昇へ準備を行う」
ここで、米国債市場が金の上昇を支えているとし、米国債10年物の実質金利がマイナスへ下げ、消費者物価調整後では、過去の金最高値は更に高いことからも、トロイオンスあたり2000ドルを超えるさらなる上げがありうる」とエィドリアンはコメントしています。
英国主要日刊経済紙のCity AMの「金がパンデミック懸念で新たな記録へ急騰する中で、さらなる上げを予想」
ここで、1300人の顧客が回答したアンケートでは、年末までに25%上昇しトロイオンスあたり2500ドルを予想していると紹介しています。
週末のサンデー・タイムズの「金価格が2000ドルへ達するのか?」
ここで、弊社における需要が年間平均を190%上回っているとした上で、エィドリアンの「急騰後の当然調整の下げはあるものの、金価格は今後も上昇する。」そして、2011年8月の最高値を付けた際は1ヶ月で1500ドルから1900ドルへ急騰したが、今回はこのような乱暴な上げではない。
そして、1980年と2011年の金急騰の際の上げ率であれば、インフレ調整後でドル建てで、1980年の場合であれば29%更に上昇、2011年の上昇率であれば16%更に上昇することとなるという弊社リサーチを取り上げています。
最後に金への投資方法としても、金貨や小型の金地金、ブリオンボールトのようなオンラインで購入した金を保管する方法、金ETF,、金鉱会社等があると紹介しています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年8月3日~7日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年8月10日~14日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年8月3日)金価格はロックダウンと米中緊張の高まりで史上最高値を付け、米実質利回りは新たな底値を記録し、コメックス金先物は2000ドルを破る -
金価格ディリーレポート(2020年8月6日)金は4日連続で過去最高を更新する中、アナリストはさらなる上昇を予想 -
【金投資家インデックス】金投資はトランプ大統領選出以来の高さではあるものの価格の高騰で金投資家インデックスは下げる
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。
ロンドン便り
今週ロンドンではレバノンのベイルートでの爆発について、その後の状況、世界からの援助が必要とされていること等がトップニュースで伝えられています。
そのような中で、今週月曜日から英国では「Eat Out to Help Out(外食をして支援しよう)」という政府のスキームが始まったのでご紹介しましょう。
日本では、「Go To イート」という政府による支援策が始まるようですが、英国版は、補助金の上限は一人10ポンド(1300円ほど)で、レストランなどのアルコールを除く飲食代の半分を政府が補助するというものです。
これは8月の月、火、水曜日と比較的飲食店が混まない曜日に限り、ロックダウンで外食を控える習慣がついている人々を促し、飲食業を支え、この業界の雇用を守ることを目的としています。
政府はこれに拠り180万人の雇用が守られると見ており、これは、政府が先月発表した300億ポンドの雇用支援関連の対策の一つとなります。
私も家族で早速水曜日に近所のレストランへロックダウン解除後久しぶりに行ってみましたが、これまでよりも多くの人達が外食しているようで、多くのレストランが賑わっていました。
4ヶ月近い巣ごもりの生活から少し脱して、地元レストラン支援も兼ねてこのスキームをまた利用してみようと思います。