ニュースレター(2020年11月27日)コロナワクチン早期実用化、円滑な米政権移行期待で金は4.5ヶ月ぶりの低さへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1780.20ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から5.09%安と4ヶ月半ぶりの低さへ3週連続で下げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり23.16ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4.16%下げて2ヶ月ぶりの低さで、やはり3週連続の下げ傾向となっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では949.7ドルと前週金曜日のLBMA価格から0.66%安でほぼ2ヶ月ぶりの高さへを維持しています。
今週も3週連続でコロナワクチンの良好な臨床試験の結果でリスクオン基調が高まり株価が急騰する中で、安全資産の金は押し下げられ、サポートラインを割ることでさらなる下げを見ることとなりました。この間、工業用途が半数を占める銀は金に引っ張られて下げているもののその下げ幅は金より狭く、プラチナは水素エネルギーでの需要増の期待などもあり堅固に推移し、金とプラチナの差であるプラチナディスカウントはトロイオンスあたり830へと前週比100ドル近く下げています。
なお、価格にも影響を与えている銀とプラチナの最新の需給レポートをまとめていますので、ご興味があれば記録的な投資需要が銀とプラチナの需給バランスを供給不足へをご覧ください。
それでは、今週の日々の価格の動きをその背景とともにまとめてみましょう。
週明け月曜日は、ロンドン時間朝一番で、オックスフォード大学とアストラゼネカが開発をしているコロナワクチンの臨床試験の結果が良好であったことが伝えられ、その後ロンドン昼過ぎに米国の製造業及びサービス部門のPMIが予想を上回ったことがきっかけとなり下げ始めると、下げが下げを呼んで直近のサポートラインのトロイオンスあたりの1850ドルを割って前週終値から2%安の1835ドルで終えていました。
翌火曜日は、前日のリスクオン基調が受け継げられる中、トランプ大統領が初めて政権移行を容認する姿勢を示したこと、そしてバイデン次期大統領が時期財務長官に前イエレンFRB議長を検討していることが明らかとなり、より積極的な財政出動観測からも、リスクオンの勢いに金は更に1.5%下げて終えていました。
水曜日は翌日が米国の感謝祭の休日であることからも、すでに薄商いで狭いレンジで推移していましたが、同日の米新規失業保険申請件数が2週連続で増加したことが嫌気され、また調整からも株価が下げたことで、金相場は多少ながら前日比上昇してトロイオンスあたり1809ドルで終えていました。
なお、同日発表のFOMC議事録は早ければ来月の会合で量的緩和政策拡大を検討、また金利上昇を抑える手段として米国債の買い入れペースの増加額検討などと全般ハト派的内容となっていました。
木曜日は、米国が祝日であることで薄商いでしたが、欧州株は新型コロナウィルス感染者数増加が嫌気されて、また前日のFOMC議事録の内容で金融株が下げて、今週上昇していた原油価格も調整の下げが入っていましたが、金相場は前日よりさらに狭いレンジでほぼ横ばいの取引となっていました。
本日金曜日は、金相場は直近のサポートラインのトロイオンスあたり1800ドルを割ったことで、下げが下げを呼び4ヶ月半ぶりの低さのトロイオンスあたり1774ドルまで一時下げて多少戻して推移しています。
この背景は多くの米国市場参加者が感謝祭後の休暇を取って薄商いの中で、トランプ大統領が選挙人による投票で敗れれば退任する意思を前夜表明したことが好感され、またワクチン早期実用化の期待からも世界株価が全般上昇して、金を押し下げている模様です。
なお、金相場がこの水準で終える場合、11月の月間の下げ幅は4.8%となり、安全資産と見られているドルの指標であるドルインデックスも2年半ぶりの低さへ下げ、それに対して世界株価指標のMSCI世界株価指数は今月13.3%上昇し史上最高値へと上げており、リスクオン基調が高まっていることが分かります。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日17日にモデルナのコロナワクチンのニュースで貴金属価格が下げた翌日までに、パラジウムを除き全ての貴金属で増加していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週前年5月以来の低さへ下げた水準から10.37%増の380トンへ3週連続の減少後に増加していたこと。また建玉は8週連続で100万枚を割っていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比6.1%増の6,830トンと2週連続の減少から増加して7月21日以来の高さとなっていたこと。
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コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比674%増の9.9トンと2週連続で増加して、9月1日以来の高さとなっていたこと。この増加率は2019年7月以来で、この間週間の価格の増加率は7.4%でトロイオンスあたり935ドルとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比10%減で12トンと前週の2月25日以来の高さから下げていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で25.4トン(2.1%)減で1195トンと3週連続の週間の減少傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で1.01トン(0.19%)増で529トンと、2週連続の下げ後に週間の増加の傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週472.87トン(2.67%)減で16,962トンと3週連続の週間の下げの傾向であること。 -
金銀比価は、77台後半を安定して推移していたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は-17.21と前週の6月末以来の低さから上昇していたものの、ほぼ同様な水準を維持していたこと。 -
コメックスの取引量は、今週3週連続のコロナワクチンのニュースで金価格が4ヶ月半ぶりの低さへ下げる中で、金の取引量は4ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。そして、銀は2ヶ月ぶりの低さに価格を下げ、プラチナ価格は2ヶ月ぶりの高さである中で、取引量も共に2ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週も3週連続で月曜日にコロナワクチンのニュースで市場が大きく動きました。そこで、ワクチン、その実用化日程及びCovid-19感染者数関連ニュースは重要となります。
そして、来週は米国雇用統計とパウエルFRB議長の議会証言が行われ市場は注目することとなります。
また、主要国の製造業及びサービス部門のPMI等と重要指標が多く発表されることとなります。その詳細日程は主要経済指標(2020年11月30日~12月4日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年11月23日~27日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年11月30日~12月4日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年11月23日)コロナワクチンの来月からの実用化の期待と良好な経済データで金は4ヶ月来の低さへ -
記録的な投資需要が銀とプラチナの需給バランスを供給不足へ
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では12月2日までのロックダウン後の地域ごとの警戒態勢を3段階に分けるシステムの規制に関して、またクリスマスに英国全土でこれらの警戒態勢が期間限定で多少緩和されることについてがトップニュースで伝えられています。
そのような中、この時期恒例のオックスフォード辞典の「今年の単語」が発表されたのでご紹介しましょう。
通常は今年の単語は一つなのですが、今年は複数にせざるを得なかったとして、「前例のない単語群」として次のよう言葉が含まれています。
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Bushfires(森林火災) -
Covid-19(新型コロナウィルス感染症) -
WFH(Working From Home在宅勤務) -
Lockdown(都市封鎖) -
Social Distancing(社会的距離の確保) -
Reopening(経済活動の再開) -
circuit-breaker(一時的な都市封鎖) -
support bubbles(一人暮らしの人をサポートするための異なる世帯が交流できる枠組み) -
keyworkers(医療関係者等のロックダウン中も働くことが必要な労働者) -
furlough(一時的に経済的援助を受けて自宅待機をすること) -
Black Lives Matter(黒人の命は大切だと言うスローガン) -
Moonshot(英国政府の大規模な新型コロナ検査プログラム) -
Superspreader(集団感染を起こした人やイベント)
ちなみに、昨年の単語は「Climate emergency(気候非常事態宣言)」で、2018年は「Toxic(有毒な)」でした。
今年は前例のない年でこの前例のないという単語(Unprecedented)も2020年に使用頻度が急激に上がった単語の一つであったようです。ほぼ全ての単語がコロナ禍の中で使われたものとなりますが、来年は前例のない年とならず、明るい話題の単語が選べる安定した年になることを祈りたいと思います。