金市場ニュース

ニュースレター(2020年7月3日)8年ぶりの高値更新後良好な雇用統計後も金へ堅固に推移

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1774.30ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.53% 上げ、再び金曜日のLBMA金PM価格としては、2012年10月以来の高さで、4週連続の上昇となります。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.02ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から1.07%上昇しています。そして、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では811.50ドルと前週金曜日のLBMA価格から1.56%上げています。

今週は良好な米雇用統計等の経済指標でリスクオンとなり世界株価が上昇する中で、新型コロナウイルスの感染拡大の懸念も引き続き強く、金相場はドル建てでほぼ8年ぶりの高さを付けることとなりました。それでは、日々の動きについては下記をご覧ください。

月曜日金相場は、週末に世界でのCovid-19の感染者数が1000万人を超え、死者数が50万人を超えたことが伝えられる中、欧米株価は先週の下げから反発で始まったものの上値を抑えらていることから、ほぼトロイオンスあたり1770ドルの前後を狭い範囲で推移することとなりました。

火曜日金相場は、トロイオンスあたり1785ドルを一時付け、2012年9月以来の高さの7年9ヶ月ぶりの高さへ上昇することとなりまいした。

この間、コメックス金先物価格は1800ドルを超え、2011年8月以来の8年8ヶ月ぶりの高さを付けてきました。

この背景は、米国や世界各地で新型コロナウイルスの感染者が再び増加し、再開された経済活動が再び制限されることへの懸念、また直近のレンジを抜けたことで上昇の勢いがついたこと、また同日発表の米国消費者信頼感指数が2011年以来最大の一月の上昇幅となったことで、米国株価が上昇しドルが弱含んでいること等が要因となりました。

なお、同日は第2四半期、前半期の最終日ということで、ナスダックは今四半期2001年以来もっとも大きな上げ幅の30%、S&Pは19%、ダウは17%の水準となっていましたが、米株価は3月に一日でそれぞれ12.3%、12%、12.9%と1987年以来の大幅な下げを記録したことからも、年初からの上げ幅は、11.3%、-4.8%、-10.5%となっていました。

それに対し金は今四半期LBMA価格ベースで10%、終値ベースで12%となっていましたが、年初からの上げ幅は17%となっていました。

水曜日金相場は、前日の7年9ヶ月ぶりの高さを再び更新しトロイオンスあたり1789ドルへと一時上昇した後に、1770ドルへと押し戻されることとなりました。

この背景は、まず同日発表された翌日の米雇用統計の先行指標のADP全国雇用者数が236.9万人と予想の250万人を上回り、前回数値は276万人減から306.7万人増と大幅に上方修正される良好なものであったこと、またISM製造業景況感指数も予想の49.5を上回る52.6と好不況の分かれ目の50も上回ったこと、それに加えて、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験で好結果がでたと製薬大手ファイザーが発表したことで、リスクオン基調となったことからでした。

しかしテキサス州やアリゾナ州、サウスカロライナ州などで新型コロナウイルスの感染者数の増加が続いていることからも、リスクオンや利益確定の売りで下げても、買いが入りトロイオンスあたり1770ドルへ戻す動きを見せていました。

木曜日金相場は良好な米雇用統計でトロイオンスあたり1757ドルまで一時下げたものの、その後下げ幅を取り戻して1775ドルで終えていました。

同日発表された米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想の300万人を上回る480万人、前回数値も250.9万人から269.9万人に上方修正されて、失業率も前回の13.3%から11.1%へと下げ、予想の12.3%よりも改善していたことから、株価が上昇しリスクオン基調が強まる中で金は押し下げられることとなりました。

しかし、前日同様に1770ドルを割ると買いが入り、その後更に上昇して前日終値を0.5%上回っていました。

同日も米国の感染者数は増加しており、一日あたりの新規感染者数が5万人を超えて過去最多となったこと、また明日からの独立記念の祝日を控えて感染拡大の懸念が高まっていたこと、そして、カリフォルニア州知事はロサンゼルスなどの感染が拡大していいる地区のレストランに店内営業中止を命じ、ニュージャージ-週も予定していた店内飲食再開を延期するなど、経済再開の難しさも明らかとなってました。

本日金曜日は、明日の米独立記念日を米国市場が休場で薄商いであることからも、前日の終値を挟んで5ドルほどの狭いレンジの動きとなっています。

この間米国の新型コロナウイルスの感染者数は、5月9日以来の高いものとなったことが伝えられ、フロリダの感染者数と入院者数は最多となり、ヒューストンの救急病棟入院者数も最多となったと伝えられ、欧州の株価指標は全般下げています。

その他の市場のニュ―ス


  • ベネズエラのマドゥロ政権がイングランド銀行で保管している10億ドル相当のベネズエラの金準備の返還を要求して提出した法的請求を、ロンドン高等裁判所が本日退けたことが伝えられていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週23日に金価格が7年8ヶ月ぶりの高値を付けた際に、パラジウムを除き全ての貴金属で増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比22.8%増の546トンと2週連続の増加で、2ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。建玉も4週ぶりに100万枚を超えたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比5.8%増の4,537トンと4ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.8%増で14.3トンと3週ぶりの増加となっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比85.5%減の0.4トンと、2006年にこのフォーマットでデータが発表されて以来最小となっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までで12.6トン(1.1%)増加し1191トンと、2013年4月9日以来の規模で、3週間連続の二桁の増加で、15週連続の週間の増加の傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で1.1トン(0.24%)増で457トンと過去最大を更新し、15週間連続の週間の増加傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週124トン(0.81%)増で15,614トンと史上最大で、9週連続の週間で増加傾向であること。

  • 金銀比価は今週火曜日に99台を付けた以外は98台を推移して多少ながら銀割安傾向が緩和されていること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が22.87と再び直近の7週で最も高くなっていたこと。

  • コメックスの金取引量は今週は週平均量で前週比5%減少し、引き続きロックダウン後の低い取引量となっていること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週も良好な経済指標やワクチン開発関連ニュースと新型コロナウイルス感染拡大のニュースのせめぎあいで市場は動いていましたが、来週もまた、引き続き新型コロナウイルス感染拡大やワクチン開発関連ニュースが注目されます。

また、中国による香港国家安全維持法の施行を受けて、米中の緊張も高まっていることから、この関連ニュースへも注目が行くこととなります。

そして、その他指標では月曜日ユーロ圏小売売上高、米国サービス部門PMIとISM非製造業景況指数、火曜日のドイツ鉱工業生産、木曜日の中国の消費者物価指数、新規失業保険申請件数、金曜日の米国卸売物価指数等が重要となります。

ブリオンボールトニュース

今週も多くの主要メディアで弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが紹介されています。

インド主要経済サイトEconomic Times「下半期に銀の上昇を予想」

弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが銀の金に比較した割安傾向に注目し、金を押し上げている主要国の経済政策、そして株式市場が予想する経済のV字回復があるのであれば、工業用途の高い銀を押し上げることになるとコメントしています。

インド経済番組ET Now「インドルピー建てで金が史上最高値を付ける中、どの貴金属をポートフォリオに入れるべきか」

ここでエィドリアンがインタビューを受けて、コロナ危機下の米株価の強さは、主要国の経済政策等からだが、金は既に20%上昇している中、銀は産業用途があるからも金ほどの上昇を見せていない。そこで銀の上昇可能性は高いとしています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

英国では新型コロナウイルス感染者数が日々減少していることからも、明日7月4日から新たなロックダウン解除が行われることになっており、「スーパーサタデー」と既に呼ばれているなど人々の気持ちの高ぶりが感じられるようです。

今回の解除の最大のポイントは、ソーシャルディスタンスとして設定されていた2メートルが、困難な場合はフェイスカバー等を使用した緩和策を条件に1メートルを許容するということ。これは、レストランなどにとっては売上に直結することからも業界を上げてこの距離の規制緩和を求めていました。

そして、今回営業開始となるのは、レストランやパブの着席での飲食に限る店内営業、ヘアサロン、宿泊施設、映画館や美術館等ですが、ネイルサロンやナイトクラブや屋内ジムやプールは未だ閉鎖が必要とのこと。

それに加え、2世帯間での屋内集会が人数制限無く可能となり、離れて暮らしている家族や友人達と久しぶりにゆっくり会えることとなります。

そこで、英国人にとっては特別な場所であるパブが3ヶ月ぶりに開くことからも、多くの人々が殺到する懸念もあり、本日ボリス・ジョンソン首相は人々に「安全に賢明に」動くことを呼びかけています。

ちなみに、今週弊社ウィスキー部門の同僚と話をしていて、ドイツの輸入代理店によると、本屋はドイツではロックダウン下も必需品とみなされて営業を許されていたとのこと。そこで、国によってロックダウン下の必需品の概念が異なるようだと言う話になりましたので、欧州における必需品を提供するとして認められていたお国柄を表すお店の一部をご紹介しましょう。

フランスにおいては、ワインショップ。ドイツでは自転車屋と自転車レンタルショップ。オランダは大麻を売る店。そして、ベルギーにおいては(国民食とも言われている)ポテトフライを売るスタンド。

英国でも酒屋と自転車屋は生活必需品を提供するとして、ロックダウン初日からも営業が続けられていました。

何を必要と見るかは文化や習慣で多少異なるかと思いますが、英国にとってはパブは友人達や家族と待ち合わせる場所、田舎のビレッジパブであればそこに行けばご近所の人達と会える場所という位置づけですので、スーパーサタデーへの気持ちの高鳴りも分かるような気がします。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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