金市場ニュース

ニュースレター(2020年1月24日)新型コロナウイルス肺炎感染拡大への懸念で金価格は2週ぶりの高さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1564.67ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.5%上昇し、銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり17.82ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から1.3% 下げています。また、プラチナも本日午後3時の弊社チャート上では1012.85ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.3%下落しています。

今週は中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎感染拡大への懸念の高まりで株価が下げる中で、金は上昇することとなりました。

月曜日は、週末行われた親イラン反政府組織フーシ派によるイエメンモスクへの空爆で中東の地政学リスクの高まりや、高止まりしている株価への懸念からの金需要も出ることで、一時1562ドルと10日ぶりの高さを付けた後にトロイオンスあたり1560ドルまで下げたもののと先週末から上昇して終えていました。

また、先週金曜日には金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が6か月ぶりの一日の増加量となるなど、株高が続く中で金も上昇するという、ポートフォリオの保険としての金の役割も高まっていることをアナリストが指摘していました。

なお、先週金曜日に史上最高値のトロイオンスあたり2500を超える値を記録したパラジウムの陰にありながらも、プラチナ価格は同日もトロイオンスあたり1000ドルを超えて推移していました。

火曜日金相場は世界株価が全般下げる中で、ロンドン早朝にトロイオンスあたり1568ドルまで上昇した後、1546ドルへと22ドルほど下げて、先週末の終値に近い1556ドルで終えていました。

この株価の下げは、中国で発生した新型ウイルスが人から人へも感染すると伝えられ、今週金曜からの中国春節を前に、この間の多くの人が移動することなどから肺炎感染拡大への懸念からアジア・欧州株が総じて下げ、米国市場でも売りが出ていたことが背景にある中、米株価は過去最高値を更新していたことからも、利益確定の売りも出ていました。

なお、中国の需要の減少が懸念される銀とプラチナの下げ幅は、それぞれ1.3%と1.8%と先週末終値から広げていました。

水曜日金相場は世界株価が全般上昇する中、一時トロイオンスあたり1551ドルまで下げた後に1561ドルで終えていました。

株価が戻し上昇しているのは、中国の新型肺炎の感染を巡り中国政府が拡大阻止に動いているとの見方が投資家心理を上向けていたとのことです。

また、金は1550ドル以下では十分な買いがあると地金大手MKSパンプ社が述べるように、サポートラインとなっていました。

木曜日金相場は世界株価が全般下げる中で、トロイオンスあたり1567ドルへと上昇して終えていました。

株価の下げは新型肺炎の感染拡大が中国景気を減速させるとの懸念が投資家心理を冷やし、翌日から春節の休暇に入る中国・上海株式相場が大幅安となったことが背景となりました。

なお、同日市場注目の欧州中央銀行の金融政策発表では、主要政策金利のリファイナンス金利は0.00%、限界貸出金利は0.25%、中銀預金金利はマイナス0.50%にそれぞれ据え置き、金融政策について幅広い見直しを行う「政策再評価」に着手することを決めたことを受けて、市場では緩和政策が長引くとの観測が広がり、ユーロは対ドル一か月半ぶりの安値を付け、ユーロ建て金相場は年初の米国とイラン情勢の緊張が高まっていた際のトロイオンスあたり1419ドルまで一時上昇していました。

本日金相場は、ドルが上昇し、長期金利が下げ、株価は全般今週の下げから反発する中で、ドル建てにおいても、年初のイランがイラクの米国基地を米軍によるイラン革命防衛隊司令官の殺害への報復として攻撃した際の高さのトロイオンスあたり1575ドルまで上昇しています。

この株価の動きは、世界保健機関(WHO)が新型肺炎について緊急事態宣言を見送り、世界経済に対する悪影響への警戒感がやや後退したことが背景のようですが、その後米国でも感染者が2名と伝えられたことで、米国株価指数は4営業日ぶりの反発で始まっていましたが、その上げ幅を削って推移しています。

その他の市場のニュ―ス


  • パラジウムの上げに関しては、ブリオンバンクのINTL FCStoneの代表市場アナリストのRhona O'Connellによると、中国の排ガス規制が2023年に厳しくなることで、触媒としてのパラジウムがより多く必要となり、パラジウムの多くが中国へ輸送されるなど、需要が高まっていることが要因とのこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、今月14日に米国と中国の貿易協議で第一段階が合意が行われ、米国が中国を為替操作国の認定を解除したことで米株価指標が史上最高値を更新していた際に、プラチナを除くすべての貴金属で減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比3.66%減の816トンと史上2番目の高さから4週ぶりに減少していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.6%減の9088トンと2週連続で減少していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.92%増の79.7トンと再び史上最高値の高さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.74%減の36.8トンと2週連続で下げていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに1.8トン増で900.6トンと11月11日以来の高さとなっていたこと。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに2日続けて増加し、2.23トン(0.61%)減で367トンと史上最高値となっていたこと。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで0.17%減少していたものの、水曜日に0.03%と少ないながら増加していたこと。

  • 金銀比価は今週86台から木曜日に88.30と昨年8月末以来の銀割安の高さへと上昇していたこと。

  • また、今週の上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差のプレミアムは、本日から春節の休暇へ入る中で週間平均で5.59と前週の6.87から下げていたこと。

  • コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比18%増加していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は新型コロナウィルスの肺炎拡散が市場を揺るがしている中国は春節の休暇で木曜日まで休場となりますが、その間水曜日に米国、木曜日に英国の中央銀行の金融政策発表が行われ、これらに市場は注目することとなります。

また、引き続きコロナウイルス関連のニュースへも市場を動かすこととなるため重要になります。

また、その他の主要経済指標も重要指標が続きます。それは、月曜日の米国新築住宅販売件数、火曜日米国耐久財受注とケースシラー住宅価格指数と消費者信頼感指数とリッチモンド連銀製造業指数、木曜日のドイツ失業率と失業者数と消費者物価指数、ユーロ圏の消費者信頼感指数と失業率、米国の第4四半期GDPとコアPCE、金曜日のユーロ圏第4四半期GDPと消費者物価指数、米国の個人支出と個人消費支出(PCE)とシカゴ購買部協会景気指数とミシガン大学消費者態度指数等ととなります。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国では、中国のコロナウイルス関連ニュースがトップニュースとして伝えられています。そのような中、英国総選挙で与党保守党が過半数を取り大勝したことで、すっかり英国EU離脱関連ニュースが影を潜めていましたが、今週22日に英国議会で最終的な手続きが終了し、23日に離脱関連法案がエリザベス女王の裁可を経て成立し、欧州議会でも本日24日にEU離脱案が承認され、1月29日の欧州議会本会議とEU理事会の採決を経て、EU側の批准手続きは完了することとなります。

これにより、来週31日23時(GMT)に英国はEUを離脱し、貿易協議を行う移行期間と呼ばれる激変緩和措置が今年12月末まで適用されることとなります。

この間英国とEUは離脱前の通商関係が保たれ、新たなFTA締結を目指すこととなりますが、12月末の移行期間終了後ハードブレグジットと呼ばれる、合意なき離脱環境を避けるためには、協定案の翻訳作業や批准手続きを考慮すると、10月半ばまでに通商関連の合意が行わなければならないとのことです。

ちなみに、EUとカナダの通商協定には7年の月日を要し、EUと韓国は9年が費やされていることからも、今年中に協定が合意されることは不可能という意見も多くあります。

ジョンソン首相は年末の移行期間を延長することはないと言い切っていますので、再びハードブレグジットの危機が訪れることになるのか、ビジネス界はまずは夏までのEUと英国の貿易協議に注目することとなりそうです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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