金市場ニュース

ニュースレター(2020年5月29日)経済活動再開観測で金は2週間ぶり水準へ下げ、米中対立懸念で戻す

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1728.54ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.29% 下げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり17.61ドルと2月28日以来の高値で、前週のLBMA価格(午後12時)から3.59%上昇しています。そして、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では837.65ドルと前週金曜日のLBMA価格から0.32%上昇しています。なお、ドル建てLBMA金価格は月間終値としては2012年9月以来の高さとなります。

今週金相場は、経済活動再開の期待で2週間ぶりの低さへ売り込まれましたが、その後米中対立の懸念でその下げ幅を戻すこととなりました。この間、工業用途が60%ほどの銀は上昇を続け、今年2月末の高さへ上昇し、工業用途がやはり60%ほどのプラチナは金同様に前週終値の水準で終えることになるようです。

月曜日は米・英は祝日で、金相場は狭いレンジでの取引となりましたが、火曜日休暇明けの金相場は、トロイオンスあたり1712ドルと2週間ぶりの低さへ大きく下げることとなりました。

これは、経済活動再開の景気回復期待と新型コロナウィルスのワクチン開発進展が背景で、臨床試験中の新型コロナウイルスワクチン候補は10に至っているとのことで、近い将来の開発への期待が高まっていました。

これにより、同日世界株価はほぼ全般上昇し、ダウ平均株価やS&P500種株価指数は2ヶ月半ぶりの高さを付けていました。

水曜日金相場は、前日の下げ基調を受け継いだものの、トロイオンスあたり1700ドルを守ったことで、反発しトロイオンスあたり1711ドルへと上昇して終えていました。

これは、ニューヨーク時間にポンペオ米国務長官が中国が香港への統制強化に向けた新法制定により香港の高度な自治がもはや維持できないとコメントをしたこと、そして香港を巡り米中が共に制裁の可能性を示唆していたことからも、前日の下げの調整と共に金をサポートすることとなりました。

木曜日金相場はトロイオンスあたり1718ドルと今週火曜日と水曜日の2%近い下げから反発することとなりました。

この背景は前日金をサポートした米中の香港を巡る対立で、同日中国が全国人民代表大会で、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を採択し、トランプ米大統領が週内にも中国に制裁を科す可能性を示唆していたことからですが、ドルインデックスが2ヶ月ぶりの低さへ下げていることも金相場を押し上げていました。

ドルの下げは、経済活動再開の期待で株価が全般上昇していること等から安全資産としての需要が弱まっていた模様です。

本日金曜日は、昨夜トランプ大統領が中国への米国の対応措置を発表すると述べたことから米中対立への懸念が高まっており、世界株価が月間では2ヶ月連続の上げを記録する方向ですが、前日比としては下げており、金相場はトロイオンスあたり1731ドルとほぼ今週の下げ幅を取り戻して前週の終値へと上昇しています。

なお、本日市場が注目していたパウエルFRB議長は、ロンドン時間夕方に米国時間にQ&Aセッションに参加し、これまでに例のない水準の金融政策を正当化し、追加「Main Street facility(融資プログラム)」の発動が近いと述べたこと、しかし、マイナス金利に関してはこれまで通り導入が正しいことかは疑問だと述べたことが伝えられています。

その他の市場のニュ―ス


  • トランプ大統領のツィートにファクトチェック等の通知が付けられたことで、昨日ソーシャルメディア企業の規制強化に向けた大統領令にトランプ大統領が署名したこと。

  • EUの欧州委員会が7500億ユーロの基金創設を中心とした復興計画案今週日発表したこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週19日、貴金属価格がドル建てでほぼ8年ぶり、他の主要通貨で史上最高値を付けた翌日に、全ての貴金属で増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比7.64%増の539トンと増加していたこと。建玉は前週同様に7週連続で100万枚を超えていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比54.5%増の3284トンと2週連続の増加で8週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比77.77%増で18.34トンと4週連続で増加し、6週間ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比46.69%減の2.69トンであったこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までで2.9トン(0.25%)増で1119.6トンと、2013年4月19日以来の規模で、10週連続の週間の増加となる模様であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間2.53トン(0.58%)増で440トンと過去最大となっていること。また、引き続き4月6日以来減少無し。そして、10週間連続の週間の上昇の傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で1.5%増加して、4週連続の週間で増加傾向であること。

  • 金銀比価は今週100を割って、2月ぶりの低さ(銀割安傾向がやや解消)としていること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が15.82と3月最終週以来最も低くなっていること。

  • コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比23%増加していたこと。これは、今週火曜日に金価格が大きく下げた際に、ロックダウン以来の高さとなっていたことから。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は経済活動再開のリスクオン基調で下げた金相場を香港を巡る米中対立がサポートすることとなりましたが、来週も経済活動再開、新型コロナウイルスのワクチン関連ニュース、そして米中対立のニュースは重要となります。

そして、金曜日の米雇用統計、水曜日のその先行指標と見られているADP全国雇用者数、そして木曜日のECB金融政策発表へ市場は注目することとなります。

その他主要経済指標では、月曜日の英国と米国の製造業PMI、米国のISM製造業景況指数、火曜日のユーロ圏の製造業PMI、水曜日の中国のCaixinサービス部門PMI、ドイツの失業者数と失業率、英国と米国のサービス部門PMI、ユーロ圏失業率、米国のISM非製造業景況指数、木曜日のドイツとユーロ圏のサービス部門PMI、米国の貿易収支と新規失業保険申請件数等となります。

ブリオンボールトニュース

3月のコメックス先物金価格とロコ・ロンドン現物価格の乖離がブリオンバンクを先物市場から遠ざけていることをファイナンシャルタイムズがまとめ、ここで弊社リサーチ取締役のエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

この記事では、HSBCが価格の乖離から一日で2億ドルの損失を出しコメックスでの取引を縮小したこと、そのためにコメックスを避けてETFへの資金の流入が増加していることを取り上げた上で、エィドリアンは「通常人々はコメックスの先物市場で金現物在庫のヘッジを行うが、今回のような世界的な価格の乖離が見られると用心深くなる。」と述べています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週英国は、昨日ロックダウン解除の新たなステップが発表されるまで、ボリス・ジョンソン首相の上級顧問のドミニク・カミングス氏が、英国政府が3月下旬から実施しているロックダウンの規則に違反した疑いに関する報道一色となっていました。

カミングス氏は、上級顧問としてその手腕は評価が高く、英国のブレグジットを巡る国民投票での離脱派勝利、ジョンソン氏首相就任、保守党大勝に導いた立役者、そしてジョンソン首相の懐刀と見られています。

今回問題とされたのは、3月末に英国全土がロックダウンで移動の制限がある中で、カミングス氏の夫人がCovid-19 ではないものの病気になり、本人もジョンソン首相がCovid-19の陽性が明らかになり感染の恐れがあったために、9歳の息子の世話ができなくなった時に備えて、妹や姪がのサポートが受けられる両親の農場の敷地内の空きコテージがあるダラムへ滞在すべく、ロンドンから443キロ運転して移動したこと。そしてその後Covid-19から回復したカミングス氏がロンドンへ戻る前日に、病気によって影響を受けたカミングス氏の視力が再びロンドンへ運転できるかを確認するために、家族で50キロほど離れた場所へドライブをしたことでした。

昨日ダラム警察が、ダラムへ長距離移動をしたことは、幼い子供を持つ親に許されているチャイルドケアの目的で違法な行動ではないこと、視力を確認するドライブに関しては、途中で警察の検問があれば、ドライブを続けること無く滞在先へ戻るようにアドバイスをする、罰金の発生しない違法性があるものと判断をしていました。

英国メディアは通常は公平であることに厳格であるように努め、どのような人も有罪が証明されるまでは、無罪と推定するというものでしたが、今回のカミングス氏の扱いは、これまでになくメディアが感情的で驚くものでした。

これは、ロックダウンでストレスをためている人々が、多くの人が守っている規則を、規則を作った人が守らなかったと見たこと、一般の人が持てない別荘のような場所を使ったと見たことが心情的に許されなかったようで、メディアがその人々を代弁するような形になったようです。

コロナ危機は、英国の国民保険サービスを守るために人々を一つにまとめたものの、今回のケースは英国社会に潜在的に存在する貧富の差への鬱憤や離脱派が主体である政権への疑念などを表面化させてしまったようです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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