金市場ニュース

ニュースレター(2020年9月11日)ECBによるユーロ高牽制が無かったことで金は上昇

私は来週休暇をいただきます。そこで、来週の弊社ニュースレターは翌週月曜日にお届けいたします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1951.59ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.31% 上げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.88ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から0.24%上げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では932.98ドルと前週金曜日のLBMA価格から3.32%上げています。

今週金相場は、木曜日の欧州中央銀行(ECB)の金融政策発表を待つ中で、ポンドが弱含んだことで相対的にドル高となり押し下げられていましたが、水曜日にドルが弱含んだこと、木曜日にECBの発表後更にその基調が進んだことで、週間としては上昇で終える方向となっています。

それでは、今週のドルの動きを誘引した要因を下記にリストアップして金の動きを解説してみましょう。


  • 月曜日に、12月末が期限のEU離脱移行期間に先立って、今週火曜日に英国とEUの協議がロンドンで始まる前に、首相官邸が欧州連合(EU)が10月15日までに新たな貿易協定に合意しない限り、両者はその理解を基に前に進むべきと伝えたこと、そして、今週水曜日には英国が欧州連合(EU)が既に承認した離脱協定の一部を破棄する国内法を議会に提出するとのニュースが伝えられ、為替市場でポンドが0.6%弱含み、相対的にドルインデックスが先週週後半の水準へと強含み、米国がLabor Dayの祝日で薄商いの中で金を多少押し下げていました。

  • 火曜日も先の英国Brexit関連ニュースでドルが強含んでいましたが、ニューヨーク時間に米国株式がハイテク株を中心に下げ幅を広げたこともドルを押上げて金を更に押し下げ、2週間ぶりの低さのトロイオンスあたり1906ドルまで一時付けていました。

  • 水曜日にその基調が、ECBの関係者が翌日の金融政策発表を前にECBは景気回復見通しに自信を深めていると伝えたことで、ユーロが強含みドルを押し下げることで、金をサポートし、一週間ぶりの高さのトロイオンスあたり1950ドルまで一時上昇することとなりました。

  • そして、市場注目の木曜日のECB金融政策発表では、先週ユーロを大きく下げてドル高を誘引したECBチーフエコノミストのレーン専務理事によるユーロ高に対する牽制のような発言がなく、ラガルドECB総裁会見前には関係者の話として「ユーロ高に過剰に反応する必要はない」と伝えられていたことでユーロが対ドル上昇し、ドルを下げる中で金は再び上昇し今週最高値のトロイオンスあたり1966ドルを一時付けていました。

  • 本日もドルが多少ながら弱含む中で、米国主要株価指数が下げており、2週連続の週間の下げを付ける動きを見せる中で、ドルインデックスは多少ながら下げ、また米国長期金利が下げていることは金のサポートとなっており、金相場は昨日の終値の1943ドル前後を推移しています。

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週1日にECBのチーフエコノミストのユーロ高警戒の発言前にドルが2年半ぶりの低さへ下げている際に金がトロイオンスあたり1990ドルまで上昇していた際に、プラチナを除く全ての貴金属でネットロングポジションが増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比9.17%増の470トンと上昇したものの、金相場が9年来の最高値の1920ドルを7月末に超えて以来2度のみの増加であること。そして建玉は9週連続で100万枚を超えていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.4%増の5,865トンと3週連続の増加で5週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比16.96%減で15.61トンと3週連続で下げて6週ぶりの低さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比8.74%減の10.68トンと、2週ぶりの上昇となっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で2.9トン(0.2%)増で1253トンと2週間ぶりに週間の増加傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で3.59トン(0.7%)増で517トンと過去最大を更新し、25週間連続の週間の増加傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週194トン(1.09%)減で17,373トンと、4週連続で減少傾向であること。

  • 金銀比価は、今週72台と1週間ぶりの銀割安傾向となっていること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が49と3週連続でそのディスカウント幅を最高値の75から狭めて、6週間ぶりの狭いディスカウント幅となっていたこと。

  • コメックスの金取引量は金価格がドル高で頭を押さえられながらも、株価の下げにサポートされる中で、平均量で前週比ほぼっ横ばいで、ロックダウン時の低い数値で推移していること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

昨日は欧州中央銀行の金融政策発表が行われ、政策金利及び資産購入プログラムは維持されましたが、ここで低水準で推移しているインフレについて言及されなかったこと、ユーロ高は懸念に至らないというコメントでユーロが強含みドルが押し下げられた結果金は上昇することとなりましたが、来週はFOMCの結果が水曜日、日本と英国の中央銀行の金融政策発表が木曜日に行われ重要イベントとなります。

また、Covid-19のワクチン開発進展状況や感染者数、米中貿易協議関連、米国議会の追加経済対策関連等のニュースは重要となります。

主要経済指標の詳細スケジュールは主要経済指標(2020年9月14日~28日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

また、弊社も会員となっている日本貴金属マーケット協会(JBMA)が共催でゴールド&プラチナカンファレンス2020年が9月14日~25日の期間にオンラインで開催されます。

貴金属投資家の質問に直接答えてくれるセクションや世界経済の金融とこれからの貴金属マーケット等興味深いセミナーが多く用意されています。参加は無料で、事前登録とアンケート回答でゴールドグッズも抽選でプレゼントされるとのことです。よろしければご登録ください。

ロンドン便り

今週英国では感染率が上昇し、来週から7人以上の集まりが禁止となること、また地域的なロックダウンが行われることなどがトップニュースで伝えられていますが、それとともに再びBrexit関連ニュースが見出しを飾っていますので、英国での伝えぶりについてご紹介しましょう。

すでに先の金市場の動きの解説においてもBrexit関連ニュースが為替市場を動かし金市場も動かしたことをお伝えしました。

そのような中で、英国主要メディアがこれらのニュースをどのように伝えたかをそれぞれのBrexitへのスタンスと共に簡単にまとめてみましょう。

ファイナンシャル・タイムズ

英国のEU離脱の是非を問う国民投票時から残留を指示。そこで、今回のジョンソン政権がEUとの離脱協定案の一部を否定する国内法を議会へ提出することを月曜日にスクープし、この議案は国際法違反と強く避難しています。

The Times

2016年の国民投票以前、またそれ以降も残留派と離脱派のスタンスをほぼバランス良く報道。

今回の法律に関しては、ジョンソン政権の大臣が「非常に限られた形で国際法に反する」と認めたことを伝えながらも、離脱派の「英国が主権を守ろうとする意志を尊重すべき」というコメントも紹介しています。

Daily Telegraph

離脱派として反EU的立場で報道。

今回の法律はあくまでもEUとの合意が年末までに行われなかった際に、保険として用意した法律であり、あくまでも離脱協定は守ることを約束するというジョンソン政権の大臣が説明しているビデオが記事のトップで紹介されています。

ちなみに、主要紙の中でもタブロイド紙と呼ばれるものの中では、Daily Mail、Daily Express、Daily Star、The Sun等は離脱を支持し、そのスタンスの記事を報道し、残留を支持する主要紙は、タブロイド紙ではDaily Mirror、主要日刊紙では先のファイナンシャル・タイムズに加えてGuardianとなっています。

このように、国民それぞれが愛読する日刊紙やタブロイド紙を持つ英国では、それぞれの購読する新聞がその立場に応じて強く意見を発信することからも、さらなる意見の分裂が進みがちになるようです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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