金市場ニュース

ニュースレター(2020年10月30日)コロナ感染拡大懸念で3月以来の株価の急落でドル高の中、現金化で金も1ヶ月ぶりの低値へ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1879.58ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.26%安とほぼ先週の水準を維持しています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり23.61ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から4.64%下げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では854.02ドルと前週金曜日のLBMA価格から6.87%下げています。

今週金相場は、欧米のCovid-19感染拡大、米追加経済対策合意先送り、米大統領選及び連邦議会選後の混乱への懸念などで世界株価が3月以来の週間の下げと急落し、ドルが買われる中で現金化が進み、一月ぶりの低さへと下げることとなりました。

それでは、先の要因や他の主要イベントも含めて日々の動きを解説してみましょう。

月曜日と火曜日は、市場が来週の米大統領及び連邦議会選挙前の米追加経済対策合意への期待が後退する中で欧米の感染率拡大からも、世界株価は下げていたものの、下げ幅は限定的であったことから、トロイオンスあたり1900ドルを挟んだ狭いレンジでの取引となりました。

水曜日は、世界株価が急落する中で、ドルが強含み金も現金化の売却からトロイオンスあたり1870ドルと一月ぶりの低値を一時付けていました。この背景は、Covid-19の感染率拡大で、ドイツがバーとレストランを1ヶ月閉鎖し、フランスが何らかのロックダウンに入る可能性が伝えられていたことでドイツ株式指標DAXが4%を超えて下げるなど欧州株が大きく下げて米国株も4ヶ月ぶりの下げ幅と急落し、恐怖指数と呼ばれるVIX指数も6月以来の高さへ上げていたことからでした。

また、米追加経済対策の米選挙前の合意はほぼ無いとの観測ですが、選挙後も結果が最高裁の判断に任される可能性も改めて認識され、これによる政治的空白への懸念も高まって来ていました。

木曜日は、米株価が前日の急落から反発する中で、ドルが一月ぶりの高さへと上昇し、金は頭を抑えられる形となりました。

この背景は、同日行われたECBの金融政策決定会合で金融政策は据え置かれたものの、その後のラガルド総裁の記者会見で、「Covid-19の感染第2波による主要国のロックダウンによる景気の2番底懸念から、次回12月の会合で追加緩和策導入を示唆する可能性が示唆されている」としたことから、ユーロが下げてドルを相対的に押し上げたことも要因となっていました。

なお、株価の反発は同日発表された米第3四半期のGDPが予想の31%を上回る33.1%で、全四半期の-31.4%をほぼ取り戻していたこと、新規失業保険申請件数は75.1万件と予想の77.5万件と前回修正値の79.1万件よりも改善したことが要因となりました。

本日金曜日は、米株価が週間の下げとして3月以来の下げ幅となる基調の中で、金相場は若干上昇しトロイオンスあたり1880ドル前後を推移しています。

本日の株価の下げは昨夜市場終了後発表されたハイテク主要企業のアップル、アマゾン、フェイスブック、ツィッターが、予想を下回る決算内容であったことから売られ、また昨日の米国のCovid-19の感染者数が過去最大となったことも要因であるようです。

しかし、ドルは昨日の一月ぶりの高い水準を維持しており、米長期金利も6月以来の高さへ上昇していることからも、金の上げ幅も限定的となっています。

ロンドン夕方の段階で週間の動きをまとめると、金相場はLBMA価格ベースで-1.26%、ドルインデックスが+1.36%、米10年物国債利回りが+4ベーシスポイント、欧州株式指標Stoxx Europe 600が-5.56%、ダウ平均株価が-7.13%、S&P500種が-6.16%、ナスダック-5.81%となっています。

その他の市場のニュ―ス


  • ワールドゴールドカウンシルが第3四半期の金の需給レポートを発表し、前年同期比では需要は19%減の892トンで2009年第3四半期以来の低さであるものの、堅固な投資需要がコロナ禍による他の需要の減少をほぼ埋め合わせたとのこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週20日に米追加経済対策の与野党協議の合意観測が広がり、ワクチンへの期待も高まり、ドル安から価格が上げる中で、プラチナを除き全ての貴金属で増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比12.93%増の421トンと増加していたこと。これは、ロングポジションが7%増加し、ショートポジションが前週の6月初旬以来の高さから6%減少していたことから。また、建玉は4週連続で100万枚を割っていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比16.2%増の6231トンと2週ぶりの増加で、7月21日以来の高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットショートポジションは、前週比180%増で3.46トンと4週連続でネットショートを増加させ、引き続き2019年7月16日以来のネットショートの規模となっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.76%増で12.93トンと2週連続の増加で2月25日以来の高さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で5.5トン(0.4%)減で1258トンと週間の減少傾向であること。そこで、8月の史上最高値以来の13週間で8週の週間の下げとなる傾向。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で0.7トン(0.13%)増で527トンと6週連続の上昇傾向で、引き続き3月の金価格急落以来一度も週間の下げを記録していないこと。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週43.40トン(0.25%)減で17,412トンと週間の下げの傾向で、8月の7年ぶりの高値以来13週間で9度めの週間の下げの傾向であること。

  • 金銀比価は、70台後半を週前半推移していたものの、昨日80台を超えて9月末以来の高い水準(銀割安傾向)となっていたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は31.71と先週より上昇したものの引き続き今年7月半ばの低さであったこと。この背景は人民元が対ドル先週の19ヶ月ぶりの強さを維持していることから。

  • コメックスの金取引量は、今週金価格が現金化の動きで木曜日に大きく下げたことから、9月末以来の高い取引量となり、今週平均量は前週比11%増加となっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は米国の大統領及び連邦議会選挙が火曜日に行われ、その開票結果が翌日以降発表されますので、明確な結果は、大量な郵便投票の開票に時間がかかる、またトランプ大統領、もしくはバイデン前副大統領が異議を唱えることで時間がかかるかもしれませんが市場は注目することとなります。

また、今週懸念が広がった欧米でのCovid-19の感染拡大とそれに対する主要諸国の移動制限などのニュースは引き続き重要となります。

そして、来週は木曜日にFOMCとイングランド銀行が政策金利発表を行い、米国雇用統計が金曜日、そしてその先行指標のADP全国雇用者数が水曜日に発表されるなど、大きなイベントが続きます。 その他、経済指標の詳細は主要経済指標(2020年11月2日~11月6日)をでご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週英国は、Covid-19の感染拡大による地域的な制限強化の拡大、また全国的にサーキットブレーカーと呼ばれる短期間のロックダウンを行うべきかの議論がメディアでは伝えられています。

そのような中で、今週は英国最大野党労働党の前党首のジェレミー・コービン氏が労働党によって党員停止とされ、その労働党内の反応等が大きく伝えられていますのでご紹介しましょう。

昨日イギリス平等人権委員会はコービン氏が党首時代に労働党内で行われた反ユダヤ主義的な言動を批判する報告書を発表したのですが、これに対しコービン氏が、この内容が「劇的に誇張されたもの」と反論したことが問題視されたのでした。

キア・スターマー現労働党党首は党首就任当初から、党内の反ユダヤ主義的行動を理由に多くの労働党議員が離党していたことからも、反ユダヤ主義を労働党から一掃する、そして全ての人種差別を一切容認しないとしていることからも、コービン氏が報告書を批判するコメントを発して3時間以内の速攻の党員資格停止判断となったようです。

本日は、コービン氏を支持する党員が離党する意向を伝えていること、それに対して労働党の支援団体の労働組合の代表が先の党員資格停止の再考と党員へ離党をしないことを呼びかけていることも伝えられています。

ちなみに、なぜ労働党内に反ユダヤ主義的行動があったのかについては、要約すると、コービン氏がその代表格となる労働党左派は、長年にわたり反シオニズム(イスラエルのユダヤ国家建設に反する運動)の傾向があると言われており、左派系知識人の中には、イスラエルを強者、パレスチナを弱者と見てイスラエルの政策を批判する人たちがいるところ、反シオニズムと反ユダヤ主義的行動が混同されている部分もあるとのことです。

人種差別はまずそのような差別が存在することを認めることが第一歩となりますが、労働党がこの一報を踏み出せるかについて英国の人々は注目しているようです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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