ニュースレター(2020年4月3日)悪化する雇用関連指標でドル高が進む中で金は堅固に推移
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1614.04ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.2%下げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.39ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.52%上昇しています。そして、プラチナも本日午後3時の弊社チャート上では720.96ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.84%下げています。
今週金相場は、四半期末の調整の売り、新型コロナウイルス感染拡大懸念高まりのドル高とネガティブ要因がある中で堅固に推移しています。
まず、それぞれの貴金属の第1四半期の価格の動きをLBMA価格ベースで見てみましょう。
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金:5.64%上昇 -
銀: 22.80%下落 -
プラチナ:25.13%
ちなみに、先はドル建て価格で、金は3月初旬に7年ぶりの高値を付けていましたが、ポンド建て金は3月に史上最高値を記録する中で12.01%上昇、ユーロ建て金は2月に史上最高値を付けて下げているものの8.16%上昇しています。
それでは、今週金価格を動かす要因となったものをまとめてみましょう。
四半期末の価格の調整
ダウ平均株価指数が第1四半期20%超える下げを見せるなど株価全般が下げる中で、期末の火曜日に利益を出している金を売る動きがあったこと。
新型コロナウイルス感染拡大への懸念の高まりでドル高が進む
ゴールドマン・サックスが今週火曜日に、米実質経済成長率が1~3月期に前期比年率9%減、4~6月期が34%減になると予想し、これまでの予想を引き下げ、失業率も年半ばまでに15%に高まるとしたことや、トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染拡大について「とても厳しい2週間に向かう」との認識を示したこと等は、ドル高を進めて金の頭を抑えたものの、大きな売却のきっかけとはならなかった模様。
経済指標悪化による安全資産への逃避は金のサポートとなる
水曜日の米ADP全国雇用者数は2017年以来初めてマイナスへ。木曜日の米新規失業保険申請件数は、先週の328.3万件からほぼ倍の664.8万件へと過去最大規模へ増加し、本日発表の雇用統計は10万人の減少予想が70.1万人減少と3月12日までのデータでありながら経済状況の悪化を示していたこと。
原油価格上昇
木曜日にトランプ大統領が「サウジアラビアとロシアは原油を巡る価格戦争を終わらせるだろう」と述べたことが伝わり、原油価格が一時35%を超えて上昇し、本日もロイターがOPECとロシア等の非加盟国が10%の減産を協議していると伝えられ、10%を超えて推移していることは株価を支え、資産の現金化(Cash out)は防ぐ要因となっていること。
ロシア中銀の金準備積み増し停止の発表
月曜日ロシア中銀が金準備を4月から積み増すことを停止するというニュースが伝えられていましたが、同国は過去5年間で400億ドル(約4兆3400億円)を投じてドル資産から無国籍通貨の金へと主要国による経済制裁を受ける中で移行していましたが、すでに外貨準備の20%と割合も高まっており、金がコロナ危機で高止まりしていることなども要因と解説されていました。このニュースによる金価格への影響は限定的でしたが、ロシアは世界最大の金の買い手で、過去2年間の中央銀行の金購入は史上最高の水準を維持してきていることからも、心理的な影響は出ていた模様です。
ちなみに、金同様に安全資産と見られている米国10年物国債利回りは、今週購入が進み0.581%まで下げています。この低値は0.3980%で3月にコロナショックが起きている際に付け、金が7年ぶりの高値を付けていました。この際に80を超えていた市場のボラティリティを表す恐怖指数と呼ばれているVIXは、本日49.04まで下げています。
その他の市場のニュ―ス
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世界の地金取引の中心であるロンドンにおける地金取引の決済をするクリアリングバンクが、新型コロナウイルス感染拡大で移動制限があることで、地金現物がロンドン市場に輸送できないことに対し、スイスや他の保管場所の地金も決済対象とすることについて話し合いが進んでいるとロイターが関係者の話として伝えていたこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週24日、金地金現物価格と先物価格にトロイオンスあたり100ドルほどの乖離が起きていた際に、金を除き全ての貴金属で減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比12.52%増の621トンと3週間ぶりに増加していたこと。なお、先週火曜日のショートポジションは、2009年9月以来の低さで、過去最も早いペースでそのポジションを減少させ、建玉は過去最高となっていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比35%減の2,321トンへと5週連続で下げて6月18日以来の低さへ減少していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比20.4%減で14.6トンと8週連続で減少して8月27日以来の低さへと下げていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比49.2%減の1.4トンと12週連続で下げて2018年8月21日の低さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週週間で56.6トンと6%増加し、週間の上げ幅としては10年ぶりの高さとなっていた基調を受け継ぎ、今週は木曜日までで週間で11.7トン増加して972トンと2016年8月11日以来の高い水準へ上昇していたこと。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.86トン(0.22%)増で392トンと過去最大となっていること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で0.36%増加し、2週連続の週間の増加の傾向であること。 -
金銀比価は今週も100を超えていたものの、本日111へと月曜日の115から下げて、銀の割安が多少改善していること。 -
今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週平均が16.46と2009年1月の過去最大と同水準となっていたこと。 -
金消費世界第2のインドに於いても、月曜日の現地通貨建て金価格とロンドン価格との差は、インド政府が3週間の外出禁止令を出したことで、6ヶ月ぶりの大幅なディスカウントとなっていたこと。 -
コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比52%減少し、昨年クリスマス前の週の取引量まで下げていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は金曜日から欧米はイースターの4連休の休暇となり、引き続き新型コロナウイルス感染拡大、それに対する各国の政府及び中央銀行の対策関連ニュースが注目されますが、主要経済指標関連は比較的少ないデーターの発表となります。
そのような中、火曜日はドイツの鉱工業生産、水曜日はFOMC議事要旨、木曜日は英国鉱工業生産、米国卸売物価指数と新規失業保険申請件数とミシガン大消費者態度指数、金曜日は中国の生産者と消費者物価指数、米国消費者物価指数となります。
ブリオンボールトニュース
先週ご紹介いたしましたが、先週日本貴金属マーケット協会(JBMA)のYouTubeチャンネルで、ロンドン現地報告というレポートに参加させていただきました。そして、先週の前編に続き後編が週末配信されていますので、このリンクもこ届けします。
この後編では、前編のコロナウイルス危機の中のロンドンの状況そしてポンド建て金価格に続いて、ブリオンボールトの顧客の動きや、コロナ危機で金市場で起きている異変について話をさせていただいています。
また、JBMAのYouTubeチャンネルを登録いただければ、JBMAが定期的に発信している金市場についてのレポートをご覧いただけます。
そして、先のロンドンレポートでもご説明していますが、弊社の3月の金需要が記録的な水準へと急増していたことを、日経グループのQuick社のQuick Money Worldで「英ブリオンボールトの顧客が持つ金地金が3月に急増、新型コロナで」と本日取り上げていただいています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年3月30日~4月3日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年4月6日~10日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年3月30日)コメックスのショートが記録的に減少後にコロナウイルスのロックダウンで金価格のプレミアムが下げる
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。
ロンドン便り
今週も英国では新型コロナウイルス感染拡大がトップニュースで伝えられていますが、本日はナイチンゲール病院が、新型コロナウイルス感染専門病院としてロンドンにオープンしたことが伝えられていましたのでご紹介しましょう。
この病院は、エクセルという2012年のロンドンオリンピックの卓球、柔道、フェンシング等の会場としても使われたロンドンの展示場で、英国軍の協力で9日間で設営がされて今日に至ったのでした。
この病院では、当初は500床が準備され、最大4000床まで増やすことが可能とのこと。
本日は今週コロナ感染症から回復したチャールズ皇太子がビデオで開設式典に参加していました。また、昨日コロナ感染から回復して仕事に復帰していたマット・ハンコック保健大臣は現地で式典に参加していました。
ロンドンのナイチンゲール病院は、全国に設営される同様なナイチンゲール病院の第一号であり、今後英国全土にロンドンのように展示場を利用して、イングランド地区ではバーミンガム、マンチェスター、ハロゲート、ブリストルへも設営される予定です。その他スコットランドにはグラスゴーに、ウェールズにはカーディフ、北アイルランドではベルファーストで設営され、最大11,730床が追加となるとのことです。
つまりは、これだけの病床が必要となる感染拡大を想定していると考えると、背筋が凍りつくように感じますが、周到な準備をすることは必要なのでしょう。
本日までで、英国においては感染者数が38,169で、そのうちの死亡者数は3,605人とすでに中国の3,322人を上回り、2週間先行して推移していると言われているイタリアの死亡者数は本日14,681人となっていますので、ありえる数なのかもしれません。
ロックダウンが行われて来週月曜日で2週間を経過することになり、この効果が感染者数や死亡者数にブレーキがかかるというように数値で現れることになるのか、人々は息を潜めて見守っているように感じます。
日本の皆様も、Social Distancing(人との距離を2メートル保つこと)、できる限り自宅待機をして外出を自粛するといった行動で、感染を欧米のように広がらせないように一人ひとりが努められることを、ロンドンの地から希望し、皆様の安全とご無事を祈っています。