金価格ディリーレポート(2020年12月14日)米国のワクチン接種開始とブレグジット協議継続のリスクオンで金は下落
金価格はロンドン午前中にドルが弱含む中で下げていました。
この間、アジアとヨーロッパの株式市場が、ワクチン接種が進むことによる景気回復への期待と英国とEUがBrexitの貿易協議を延長することで合意したことで上昇していました。
金現物価格は、月曜日ロンドン時間午前中にトロイオンスあたり1820ドルと1.0%下落し、2週間ぶりの安値となりましたが、他の主要通貨比の価値を測るドルインデックスも0.4%下落して、2018年4月以来の安値の水準へと下げていました。
それに対し、米長期金利のベンチマークである米10年物国債の利回りは、先週2営業日連続で下げていたものの、本日は上昇していました。この価格は常に利回りと反比例して動くことから下げていました。
金曜日に米食品医薬品局(FDA)による緊急認可がファイザー・バイオンテック社のCovid-19ワクチンにおり、米国の全50州の病院では本日から投与が開始される予定となっています。
「1億人以上、つまり米国の人口の 約30%が3月末までに接種される可能性がある」と、米国のワープ・スピード作戦の最高顧問であるMoncef Slaoui博士は日曜日のインタビューで語っていました。
そして、英国の予防接種はすでに進行中で、ロンドンは、新型コロナウイルスの感染者数の急増を受けて、 近い将来に「Tier 3」の警戒レベルに入る可能性が高い(レポート発信後に今週水曜日からTier 3に入ると伝えられています)と伝えられていますが、ユーロ圏の最大経済規模を誇るドイツは、新型コロナウイルスの死亡者数や感染症数の増加の中でクリスマス期間中に国全体で必需品以外の店や学校を閉めるロックダウンに水曜日から入ることが伝えられていました。
金価格については、「Covid-19のワクチンによる楽観的観測は、近い将来の連邦準備制度理事会(FRB)の 更なる緩和と追加経済対策の世界経済へ長期的悪影響を相殺しています。」と、シンガポールのOCBC銀行のエコノミストのHowie Lee氏は述べています。
「しかし、ワクチンへの楽観論が落ち着き、投資家の関心が米国経済がまだ必要としている大規模な金融緩和・景気刺激策によるインフレ期待の高まりが戻った際には、2021年に金は上昇する可能性があります。」と続けています。
9,080億ドル相当の超党派のCovid-19の追加経済対策が、承認を勝ち取るために2つに分割され、早ければ本日米国議会に提出される予定です。
金のアナリストの亀井幸一郎氏は、「世界がパンデミックからある程度回復することができたとしても、金価格の上昇を支える構造的要因が存在することには変わらない。」と同意しています。
一方、英国ポンド建て金価格は、ボリス・ジョンソン英首相と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が「更に努力する」ことで合意したことで、本日ポンドが対ドル約2ヶ月ぶりの高さに急騰したことから、2週間ぶりの安値のトロイオンスあたり1356ドルへと2.5%下落していました。
昨日日曜日は、貿易協議を終了する直近の期限でしたが、今回延期された新たな期限は設定されていません。しかし、英国は12月末で 貿易協定を合意するための「移行期間 」を終了することとなります。
4年前の国民投票時に離脱派を率いたジョンソン氏は先週、英国とEUは、漁業権や公平な競争のルールに関して「未だ協定は遠い」ままであると述べ、政府筋が英国の新聞に語ったところによると、英国海軍は、取引が成立しなかった場合にEUの船が 英国領海で操業するのを阻止するために待機していると伝えていました。
ユーロ建て金価格は、月曜日午前中に1.3%一時下落してトロイオンスあたり1497ユーロへと下げ、2020年の上げ幅は8月初旬のピーク時の29.3%から10.9%に縮小していました。
午前中の取引では、米国株先物は先週の週間の下げから反発して上昇していました。
アジア太平洋地域の株式に続いて欧州株も上昇し、欧州のほぼ全ての主要株式市場がプラス圏に入っていました。ストックス欧州600指数は、月曜日昼過ぎに1%上昇していました。
年間需要の60%近くが工業用途である 銀の価格は、ロンドン午前中に失った1%を取り戻して、トロイオンスあたり23.95ドルへ先週終値から多少上昇して推移していました。
プラチナは、グリーン水素の生産の際に使われる等の工業用需要が3分の2を占めており、本日昼過ぎに1.1%上昇して1023ドルを付けていました。