金市場ニュース

ニュースレター(2020年6月12日)新型コロナ第2波と経済低迷長期化懸念で金は一週間ぶりの高さへ上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1741.44ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.44% 上げ、3週間ぶりの週間の上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり17.63ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から0.28%上昇しています。そして、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では830.88ドルと前週金曜日のLBMA価格から0.96%上昇とやはり3週ぶりの週間の上昇となっています。

今週金相場は、新型コロナウイルス感染収束に伴う経済活動回復を見込んだリスクオン基調が、OECDやパウエルFRB議長の経済活動の早期回復への慎重な見方や米国の感染が一部地域で拡大とのニュースで、株価が大きく下げる中で6月初旬の高さへ上昇することとなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日金相場は先週金曜日の大きな下げの後でもあり、また今週FOMCも水曜日に控えていることからも、狭いレンジでの動きとなっていました。

その中でも目立ったのは先週の大きな価格の下げからも中国の金需要の高まりで中国受け渡し金価格とロコ・ロンドン金価格との差が3ヶ月ぶりの低さへ下げていたことでした。そしてロックダウン解除後の中国経済活動開始を示唆する記録的な原油需要の高まりで、原油価格も急騰していました。

火曜日金相場は先週金曜日の下げ幅を取り戻し、トロイオンスあたり1720ドルへと一時上昇していました。

この間ドルインデックスは9日連続で下げており、世界株価も前日ナスダック総合株価指数が過去最高値を更新しS&P500種株価指数も年初来プラスに転じたことで、利益確定の売りなどで下げていたことが、金をサポートしていました。

水曜日金相場は、同日株価が全般下げる中で昼過ぎにトロイオンスあたり1727ドルと1週間ぶりの高さに上昇した後に、今晩のFOMCの発表を待つ中で1715ドルへと下げていました。

同日の株価の下げはロンドン時間今朝ほどに発表された経済協力開発機構(OECD)で2020年の世界実質経済成長率がマイナス6%まで下げ、21年にプラス5.2%回復としたものの、年内に感染が拡大した場合は、先の数値がマイナス7.6%と2.8%とかなり厳しいものになるとしたこと、そして、米国の新型コロナウイルス感染関連責任者のファウチ所長が、流行の終わりには程遠いとの見解を示したことが背景となっていました。

その後、FOMCでは金融政策と金利は据え置かれましたが、パウエルFRB議長の記者会見で、経済の下振れリスクが大きいこと等から「利上げについて考えることすら考えていない。」としたことで、経済活動早期正常化への慎重な見方が浮上し、時間外取引で株価が下げる中で、金は1739ドルまで上昇することとなりました。

木曜日金相場は、世界株価が前日時間外取引の基調を継いで下げる中でトロイオンスあたり1744ドルと一週間ぶりの高さへ一時上昇し1726ドルで終えていました。

株価の下げは、前夜のFOMC後パウエル議長のコメントなどからですが、同日米テキサス州やアリゾナ州で新型コロナウイルス感染が拡大していることも伝えられ、第2波への警戒感から投資センチメントを悪化させたことからでした。

また、今週は米株価はナスダックが最高値、ダウ平均が3ヶ月半ぶりの高値をつけていたことで、利益確定や調整の売りも進んでいましたが、それ故にダウ平均の同日下げ幅は7%と、ロックダウン直前の3月16日の下げ幅に次ぐ、過去4番目に大きいものであったとのことです。

本日金曜日金相場は、昨日終値からトロイオンスあたり1742ドルまで上昇後、1732ドルまで戻して推移しています。

この間欧米株価は昨日の大幅な下げから反発や下値拾いで全般多少ながら上昇していますが、リスクオフ基調も依然残っているようで、リスクオン基調で5月末から連続で下げていたドルインデックスと、この一週間ほど下げていた長期金利は昨日同様上昇しています。

また、昨日44へと2ヶ月ぶりに上昇していた恐怖指数とも呼ばれるVix指数は本日も40を超える高い水準で推移しています。

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週2日、金価格がトロイオンスあたり1700ドルを一時的に割る下げを見せた際に、銀以外の全ての貴金属で減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比8.3%減の425トンと昨年6月4日以来の低さへ減少し、建玉も前週に続き100万枚を割って、一年ぶりの低さとなっていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.3%増の4226トンと4週連続の増加で引き続き12週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比13.16%減で18.4トンと5週ぶりの減少となっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比41%減の1.92トンと2週ぶりに減少していたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週火曜日まで4営業日連続で減少したものの、木曜日までに6.9トン増(0.6%)で1135トンと、2013年4月16日以来の規模で、12週連続の週間の増加となる模様であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で5.19トン(1.17%)増で448トンと過去最大となっていること。なお、先週金曜日には4月6日以来初めて減少したものの、その後は増加を続けて12週間連続の週間の上昇の傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、木曜日までに261トン(1.77%)増で14,933トンと史上最大で、6週連続の週間で増加傾向であること。

  • 金銀比価は今週木曜日まで96台を推移していたものの、本日98と(銀割安傾向)となっていること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が8.12と3月20日で終わる週以来最も低くなっていること。

  • コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比12%減少し、引き続きロックダウン後の低い取引量であること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は、FOMC後のパウエルFRB議長の発言で経済活動の早期正常化への懸念や、新型コロナウイルス感染の米国における第2派への懸念で大きく上げた金相場ですが、来週も新型コロナウイルス感染関連ニュースは市場が注目することとなります。

それに加え、来週は火曜日に日銀金融政策決定会合後の政策金利発表、木曜日にはイングランド銀行の政策金利発表、これらもさらなる緩和策があるのか、それぞれどのような経済見通しをしているのかなど、今後の政策を予想する中で重要となります。また、火曜日と金曜日にパウエルFRB議長の発言にも注目が入ることとなります。

その他経済指標では、月曜日の中国小売売上高と鉱工業生産、米国のニューヨーク連銀製造業景気指数、火曜日のドイツの消費者物価指数、英国の失業保険申請件数及び失業率、ドイツとユーロ圏のZEW景況感調査、米国の小売売上高と鉱工業生産、水曜日の英国とユーロ圏の消費者物価指数、米国の住宅着工件数、木曜日の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数と新規失業保険申請件数、金曜日の日本の消費者物価指数と日銀金融政策決定会合議事要旨、英国の小売売上高等となります。

ブリオンボールトニュース

日経ヴェリタスの先月末の記事「金投資、コロナ禍で増す輝き」で、日本マテリアルや田中貴金属工業で金需要が3月にコロナ危機で高まっていることを紹介するとともに、弊社の金購入者数が一ヶ月の増加率としては過去最高となったというデータも紹介されていました。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週英国では、新型コロナウイルス感染関連とともに、先週末行われた、先月米ミネソタ州ミネアポリスで白人警官の暴行によってジョージ・フロイド氏が死亡した事件への「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」の抗議デモ関連ニュースが広く伝えられています。

英国は現在もロックダウンが行われているために、本来であればイングランドは6人を超える集まりは禁止されています。しかし、先週末は1000人を超える集会がロンドン市内や多くの都市で行われていました。

そして、今週末もその可能性があるために、英国政府は改めて感染拡大を防ぐため、また極右派がこれらの抗議デモに対して週末何らかの動きをするとの情報もあるようで、衝突の危険性からも抗議デモに出かけないことを呼びかけています。

また、先週末は英国南西部の都市ブリストルにあった17世紀の商人エドワード・コールストン氏の銅像が、この抗議デモ参加者と見られる人々に引きずり降ろされ、ブリストル湾に捨てられ、抗議デモの一部の人々が暴力行為や器物破損したことも問題視されていました。

コールストン氏は遺産の多くを慈善団体に寄付したことから多くの記念碑がブリストルには残っていますが、その富は、約8万人の子供を含む人々をアフリカ大陸かアメリカ大陸へ奴隷として送り込んだ貿易会社「王立アフリカ会社」の一員として得たものとされています。

コールストン氏の銅像は引き上げられ、将来博物館などで歴史を伝える形で展示されるとのことですが、英国全土で抗議運動がこのよう大英帝国時代に人種差別の元凶に関わったと見られる人々の銅像や彫像についても取り除くことが求めており、政府や地方政府は騒ぎが収束するまで破損されることを避けるために一旦別途保管する、警備を高めるなどと対応を進めています。そして、先週末に人種差別とは全く関わりのないチャーチル元首相の銅像への落書きなども行われたことから、破損や落書きを防ぐために、本日チャーチルの銅像をすっぽりと板で囲んだことも伝えられています。

人種差別を無くすこと、そのために機運が高まっている際に活動をしなければならないことは理解しますが、破壊活動はどのような理由であってもするべきでは無いと思います。これまでも多くの変革の機会がある中で未だ人種差別が残っていることは悲しいことですが、少なくとも今回のジョージ・フロイド氏の死が再び無駄に終わらないように、短期的ではなく持続的に既存のシステムを変える方向への行動へと動くことを個人的に希望し応援したいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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