ニュースレター(2026年8月7日)米雇用統計で貴金属全面高、金は2020年3月以来最大の週間上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格を比較した一週間の変動率は以下の通りです。
*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。
**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。
- 金:ドル建て価格は、週間の上昇で、2020年3月のコロナ危機以来の週間の上げ幅。
- 銀:週間の上昇で、米国とイランの紛争が始まる2月末以来の上げ幅。
- プラチナ:3週連続の週間の上げで、4月10日の週以来の上げ幅。
- パラジウム:3週連続の週間の上げで、1月23日の週以来の上げ幅。
貴金属市場の動向(週間)
今週の貴金属相場は、米国とイランの和平協議への楽観的な観測に加え、米国で予想を下回る雇用関連指標の発表が続いたことを受けて、上昇基調で推移していました。そこへ、本日発表された米雇用統計が市場予想を大きく下回ったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測が一気に後退し、ドルと長期金利が下落したことから、すべての貴金属が週間で上昇し、いずれも6月以来の高値を付けています。
金は本日、一時的に週間の上昇率が8%を超え、2008年12月以来の大幅な週間上昇となる場面がありました。一方、LBMA価格ベースでは、2020年3月以来最大の週間上昇となっています。また、年初来の騰落率もプラス圏(+0.9%)に回復しています。一方、銀(-10.6%)、プラチナ(-13.4%)、パラジウム(-11.9%)は依然として年初来ではマイナス圏にあるものの、その下落幅を大きく縮小しています。
今週の貴金属相場の動き(日次)
■ 月曜日
金・銀相場は、週末にトランプ大統領が、同日からイランとの和平協議が始まるとして攻撃を見送ると述べたことを受け、週明け早朝に急騰して始まりました。しかし、ロンドン時間午後には、イランがオマーンとのホルムズ海峡運営に関する協議は続けているものの、米国との和平協議の予定はないと述べたことが伝えられ、上げ幅を縮小しました。
同日は、前週の日米共同為替介入と追加介入への警戒感を背景にドルが下落していたことも、当初の上昇を支える要因となっていました。
■ 火曜日
金・銀相場は、米国とイランの和平協議への楽観的な観測を背景に原油価格が3週間ぶりの安値へ下落する中、金は一時トロイオンスあたり4,093ドル、銀は59.98ドルまで上昇していました。
同日、カタールはホルムズ海峡再開に向けた合意案が作成されたと明らかにし、ベッセント米財務長官も合意成立への期待感を示しました。
また、同日発表された米雇用動態調査(JOLTS)の求人件数は、予想と前回修正値をやや下回ったものの、引き続き米労働市場の底堅さを示唆する内容でした。
なお、前週に2%を超える上昇を見せたプラチナとパラジウムは、同日も大きく値を上げ、一時トロイオンスあたり1,734ドル、1,337ドルと、それぞれ6月半ば以来の高値を付けていました。
この背景には、中国の需要増への期待に加え、イラン紛争局面で金・銀に比べて出遅れていた両メタルへの買いが広がっていることがあるとみられていました。
■ 水曜日
金・銀相場は、中東情勢への楽観的な見方を背景に前日に続いて上昇し、金は一時トロイオンスあたり4,267ドルと6月18日以来の高値、銀は62.77ドルと7月6日以来の高値を付けていました。
これは、同日発表された米ADP全国雇用者数が市場予想を下回り、米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利上げ観測が後退したことに加え、ロンドン時間夕方には、イランがホルムズ海峡を通過する船舶の航行についてオマーンと合意に達したと発表したことで、同海峡を通るエネルギー輸送の正常化への期待が高まり、インフレ圧力への懸念がやや後退したことが背景にありました。
ちなみに、金と銀は前日すでに1%を超える上昇を記録しており、同日のLBMA価格ベースでは、金は3.0%、銀は4.2%上昇し、ともに6月半ばの米・イラン覚書合意時以来の高値となっていました。
前日に5%を超える上昇を見せたプラチナとパラジウムは、同日はプラチナが0.7%の上昇にとどまった一方、パラジウムは3.0%上昇し、引き続き堅調な値動きとなっていました。
■ 木曜日
金・銀相場は、中東情勢の緊張緩和期待や米利上げ観測後退を背景とした前日までの上昇の流れを引き継ぎ、ロンドン時間早朝に、金は一時4,303ドル、銀は62.90ドルまで上昇し、金は6月半ば(FOMC後)、銀は7月初旬(前回の予想を下回る米雇用統計後)以来の高値を更新しました。
しかしその後は、ホルムズ海峡の部分的な再開に向けたイラン・オマーン間の合意について、実現までの道筋が当初考えられていたほど明確ではなく、米国の立場も依然として不透明であることに加え、翌日発表される米雇用統計を控えた様子見姿勢から、上げ幅を縮小していました。
■ 金曜日
本日の貴金属相場は、市場予想を下回る米雇用統計を受けて大きく上昇し、すべての貴金属が6月以来の高値を記録しています。
非農業部門雇用者数は、市場予想の約8万人増に反して前月比2万3,000人の減少となり、5カ月ぶりの減少となりました。また、5月と6月の雇用者数も大幅に下方修正され、5月は12万9,000人から6万3,000人へ、6月は5万7,000人から2万人へ修正されました。失業率は4.1%と、市場予想と前月の4.2%を下回り、平均時給も前年同月比3.2%と、市場予想の3.5%を下回っていました。
これを受けて貴金属価格は全面高となり、金は発表後にトロイオンスあたり100ドル超急騰し、銀も65ドルを上回る水準まで上昇しました。
これは、労働市場の悪化を示唆する内容を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測が後退し、ドル指数と米長期金利がともに約2カ月ぶりの低水準へ低下したことが背景となっていました。
発表後、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が据え置かれるとの見方は約6割まで高まり、1週間前の約3割から大きく上昇していました。

その他の市場のニュ―ス
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中国の中央銀行は、7月に20トン金準備を増加させ、2023年10月以来の大幅な増加量となっていました。
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韓国の中央銀行が13年ぶりに金購入を再開。まず金ETFを購入し、今後は国内で生産された金を購入予定と伝えられていました。
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コメックス(COMEX)のデータによれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)を翌日に控えた先週火曜日までに、金と銀はネットロングを減少させ、プラチナとパラジウムはネットロングを増加させていたこと。
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金のネットロングは前週比2.6%減の374.26トンと、前週の1月27日の週以来の高水準から減少していました。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。
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銀の先物・オプションのネットロングは16.2%減の1,304トンと、3月3日の週以来の低水準へ減少していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。
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プラチナのネットロングは4.3%増の9.9トンと前週の3月3日以来の低さから増加していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。
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パラジウムは、2月3日の週以来のネットロングから3月17日の週にネットショートへ転じた後、この週ネットショートは9.2%減の18.7トンと、前週の昨年6月3日の週以来の高水準から減少していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。
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金ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに7.70トン(0.76%)増の1,014.719トンと、6月23日以来の高い水準でへ上昇し、週間の増加傾向となっています。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。
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金ETF第2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに2.58トン(0.56%)減の459.01トンと、昨年9月4日以来の低さで、2週連続の週間の減少傾向となっています。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。
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銀ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに125.73トン(0.84%)増の15,172.99トンと5月28日以来の高い水準で、週間では2週連続の増加傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。
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金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週69台後半で始まり、本日66台後半と下げて、7月初旬以来の低値へ下げて推移しています。2025年の平均は87.85、2024年は84.75、2023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。
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上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、2月27日の週からプレミアムへ転じており、今週の平均プレミアムは7.63と前週の7.53ドルから若干上昇して、7月20日の週以来の高さとなっていたこと。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週の貴金属相場は、米国とイランの和平協議の進展と米雇用関連指標に市場の関心が集まる中、本日の市場予想を大きく下回る米雇用統計を受けて急伸しました。
来週もホルムズ海峡の再開を含む中東情勢が引き続き注目される見通しです。一方、経済指標では、水曜日の米消費者物価指数(CPI)と木曜日の米卸売物価指数(PPI)が焦点となります。
その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026年8月10日~14日をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2026年8月3日~7日)今週のの結果をまとめています。
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主要経済指標(2026年8月10日~14日来週の予定をまとめています。
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金価格ディリーレポート(2026年8月3日)WGC最新レポートで中銀の上期金購入が2022年以来の低水準、金価格は上げ幅を失う
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。
ロンドン便り
今週英国では、イランとオマーンによるホルムズ海峡の運営を巡る協議や、激化するウクライナ戦争の動向が引き続き大きく報じられています。また、イングランドでは干ばつによる水不足への懸念も続いています。
そうした中、国内では一部の受刑者が予定より早く釈放される予定であることをきっかけに、英国の刑務所が抱える深刻な過密問題が改めて注目を集めています。
その発端となったのは、2019年に勤務中に殉職した警察官アンドリュー・ハーパー巡査の死亡事件で、過失致死罪によりそれぞれ13年の刑を受けた受刑者2人が、刑務所の過密対策により刑期の半分を終えた時点で釈放される可能性があると報じられたことでした。
英国では近年、受刑者数の増加に対し刑務所の収容能力が追いつかず、多くの施設が定員を超える状態となっています。このため政府は、比較的軽微な犯罪や再犯リスクが低いと判断された受刑者を対象に、刑期を短縮して早期釈放する措置を進めています。しかし、この対応はあくまで緊急避難的な措置であり、犯罪抑止や市民の安全とのバランスをどのように取るべきかを巡って議論が広がっています。
刑務所の過密化は、施設や職員への負担を増やすだけでなく、更生プログラムの実施にも影響を及ぼすことから、英国では新たな刑務所の建設や量刑制度の見直しを含めた抜本的な改革の必要性が指摘されています。
バーナム新首相は、従来から対象外となっている殺人などの凶悪犯罪に加え、強姦や重大な児童性犯罪、グルーミング犯罪についても早期釈放制度の対象外とする方針を打ち出しました。しかし、今回の受刑者は殺人ではなく過失致死罪で有罪となったため、制度の対象となったと報じられています。
今回の早期釈放を巡る議論をきっかけに、刑務所制度の持続可能性が英国社会の大きな課題として改めて浮き彫りとなっています。




