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金価格ディリーレポート(2024年3月19日)日銀がマイナス金利を解除する中で日本円建て金価格が史上最高値を更新

金価格は、火曜日に欧米通貨建てでほとんど変化しなかったものの、日本銀行が物価2%目標を持続的・安定的に達成できる見通しがたったと判断し、マイナス金利解除を決定する中で、「安全資産」である貴金属は日本円建てで史上最高値を更新しています。
 
米国連邦準備制度理事会(FRB)は明日、12月の金融政策決定会合時に市場にとってはサプライズとなった、四半期ごとに発表される、経済、インフレ、金利予想を行う「ドットプロット」予測を発表する予定であることから、ドル建て金価格は火曜日に、ロンドン取引でトロイオンスあたり10ドルほど下落し2153ドル前後を推移しています。
 
しかし、円建ての金価格は史上最高値を更新し、先週のこの時点から1.5%上昇し、グラムあたり10,450円を超える水準で取引されています。
 
日銀が過去10年間ゼロ金利、もしくマイナス金利を維持する中で、日本円建て金価格は2023年までの10年間で140%以上上昇しています。
 
一方、日本の金宝飾品需要は計161トンで、日本現物金ETF信託銀行(TYO: 1540)は23トン相当の資金流入を記録していますが、小型の金地金とコインにおいては3トンのネットの売却を記録しています。
 
日本の金需要と日本円建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
1989年末に日本の株式市場と不動産市場のバブルが崩壊して以来、賃金と物価のデフレとの戦いを続けてきたものの、「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた」と日本銀行は述べ、一連の政策変更を発表し、実施するために6つのプレスリリースを発表していました。
 
新型コロナウィルスのパンデミックが終焉した後、世界的なサプライチェーンショックが発生し、そしてロシアのウクライナ侵攻によってインフレが本格化したにもかかわらず、日銀は「マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールなど、大規模な金融緩和策がその役割を果たした」と主張しています。
 
世界金融危機の2009年から2010年にかけて、最初に預金金利をゼロ以下にしたスウェーデン国立銀行は、2022年4月に8年間続いたマイナス金利政策を解除していました。
 
その後、欧州中央銀行は2022年7月に8年間のマイナス金利政策を終了していました。スイス国立銀行は2022年9月に7年半続いたこの政策を終了し、同時期にデンマーク国立銀行も2014年以来初めてプラス金利に移行していました。
 
「日銀はゼロ金利政策を終了し、17年ぶりに利上げを行ったが、期待値やポジションに対して タカ派的ではなかったため、日本円は弱含んだ。」とMKS Pamp社のNicky Shiels氏は述べていました。
 
「日本の中央銀行は)小さな引き締めサイクルに入っているに過ぎず、インフレを考慮した後の実質金利はマイナスを維持するだろう。(円建てで取引される金が)とんでもなく高い水準からさらに上昇したのはそのためだ。」
 
「金は)日銀が金融政策のコントロール(と信用性)を失ったことを示している。」と続けていました。
 
米FRBは明日、年末の金利見通しを更新する予定で、前回12月の「ドット・プロット」では4.6%とされていましたが、今日の先物市場では、2024年末時点では 4.65%というコンセンサス予想が示され、月曜日の急騰から2ベーシスポイント下落し、ドル建て金価格がトロイオンスあたり1980ドルで取引されていた10月末以来の高値となっていました。
 
また、イングランド銀行は木曜日に政策金利を発表し、現在の金利に変更を加えないことが予想されています。
 
英国ポンド建て金価格は、本日トロイオンスあたり1700ポンドを割り込んだものの、前週終値の1692ポンド前後を推移しています。また、ECBが今月初めに主要政策金利を再び据え置いたユーロ建て金価格は、1982ユーロ前後で取引されています。
 
日経平均株価は本日の日銀の決定を受けて0.7%上昇しましたが、日本の株式市場が長い期間を経て回復し、1989年末のバブル期の最高値を超えた2月下旬の史上最高値には届いてはいませんでした。
 
欧米の株式市場は明日のFRBを控えて非常に静かに推移していましたが、暗号通貨と呼ばれるビットコインは1月に承認された米国上場のBTC ETFからの資金流出が激しく、同日7%以上下落し、先週末から12%下落していました。
 
世界最大の退職金積立金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は火曜日、金とビットコインを含む「流動性の低い資産」への投資に関する 情報提供依頼を発表していました。
 
2023年までの1.5兆ドルのポートフォリオを、国内外の債券と株式で25%ずつ振り分け、GPIFは昨年、日本円建てで12.0%のリターンを上げていましたが、米ドルではわずか4.1%となっていました。
 
2000年に入ってから、GPIFは円換算で143%の成長を遂げています。
 
この間円建てで取引される金は881%上昇しています。
 
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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