【銀投資家インデックス】銀投資はコロナ危機下以来の急増となる 2025年5月15日 木曜日 12:55 4月の銀価格急落で銀購入者+108%となっていました。 世界有数のオンライン貴金属現物市場を提供するブリオンボールトにおいて、先月の銀投資の需要は、コロナ危機以来最も速いペースで急増していたことが明らかとなっていました。 この需要の急増は、工業用途が半分以上を占める 銀の価格が、数年来の高値から大きく下落した後に、トランプ米大統領が「解放の日」と呼んで発表した貿易関税の一部を緩和したことから反発したことに起因しています。 5月の最初の週に、ブリオンボールトの24時間休みなく稼働しているオンライン市場を利用し、4月初旬の6ヶ月来の安値で銀地金を購入した投資家は、15.9%(英国ポンド建てでは11.6%、ユーロ建てでは11.8%)の純益を得たこととなります。 このような利益を得ることは、小規模の地金、コインを専門保管業者以外で購入する投資家には不可能であったでしょう。なぜなら、そのような「小売」の単位の取引には、10%の取引スプレッドがあり、それに加えて英国や欧州では20%の付加価値税が課されているからです。 4月の銀投資需要急増の要因は? 2025年に金価格が新記録を更新を続け話題をさらった一方で、銀価格はひっそりと世界金融危機以来のドル建て最高値を更新し、さらに2月と3月にはユーロ建てとポンド建てで 銀価格の月間新記録を更新していました。 しかし、トランプ米大統領の衝撃的な貿易関税の「解放の日」は、銀価格を急落させ、2020年3月のコロナ危機初期の段階の世界株式市場と商品価格の暴落以来、かつてないほどの下げを見ることとなりました。 銀価格が急落したことで、4月中に銀の購入を選択した投資家の数は3月の2倍以上となり、ブリオンボールトの低費用で取引ができるオンライン市場において、2021年3月以来最も多い前月比108.0%増を記録していました。 一方、銀地金を月間で購入量を上回る売却をした投資家数は11.2%減少し、昨年12月以来最も少なくなっていました。その結果、2012年の新年から算出されているブリオンボールト独自のセンチメント指標である銀投資家インデックスは、7.5ポイント上昇し58.3となりました。 これは、過去49ヶ月で最も高い数値であり、銀投資家インデックスは、2020年3月に記録した20.4ポイント以来の急上昇となっていました。 50.0を超える数値は、月間を通じて購入量が売却量を上回ったネット購入者数が、ネット売却者数を上回ったことを意味します。銀投資家インデックスは、コロナ危機が最初に発生した2020年3月に75.1とこの数値としては最高を記録し、昨年3月に価格の高騰からも記録的な利益確定売りが集中した際に45.0と最低値を記録していました。 しかし4月の銀投資需要の急増は、5月には起きていません。4月の需要急増は、2020年春に起こったように、銀価格が急落したためであり、また今回の銀需要の急増は、長期的に見ると、銀価格が上昇して投資家が利益確定の売却をした後に、約2年半に渡ってネットの売却が行われた後に起こったものでした。銀投資家インデックスにおいては、過去29ヶ月間でネット売却者数がネット購入者数を10回上回っていました。 また、重量ベースにおいても先月急増し、17.8トンが追加保管されていました。これは、2021年2月のネット需要の25.3トン以来の1ヶ月間の増加量であり、当時の背景はソーシャルメディア上の #silversqueezeの盛り上がりに牽引された投資急増となっていました。 ブリオンボールトの顧客が選択したロンドン、シンガポール、トロント、チューリッヒのいずれかの保管場所で、安全に保険がかけられて保管されている銀地金総量は、7ヶ月ぶりの高さで1,160.5トンとなっていました。 これは、 先月0.5トン減少していた金地金とは対照的で、ブリオンボールトの顧客の金地金総保有量は43.8トン以下となり、2024年3月の記録的な1トンの金地金の利益確定売り以来、ほぼ5年間で最も少ない量となっていました。 しかし、評価額ベースでは、顧客が保有する金地金の額は再び過去最高を更新し、46億ドル(34億ポンド、40億ユーロ)に増加していました。一方、銀価格の下落は、投資家の需要の急増を意味し、顧客の保有銀地金評価額は、米ドル建てで3月の過去最高を3.9%下回る12億ドル(ポンド建てでは6.9%減の9億ポンド、ユーロ建てでは8.5%減の10億ユーロ)となっていました。 今後を展望すると、米中貿易戦争が早期に解決するか否かにかかわらず、トランプ大統領の関税政策によるショックは、世界の貿易と経済成長の重荷になることでしょう。トランプ大統領のクリーンエネルギーに対する政策は、銀にとっては向かい風となることでしょう。それは、過去10年間に過去最高を記録した総産業需要の伸びの3分の2近くを、世界の太陽エネルギー部門が占めてきたからです。 そのため、金と同じようにインフレや地政学的緊張に銀価格は長期的に左右される一方で、 産業用途が強いため、長期的な需要の伸びを享受するだけでなく、銀の価格は経済不安により脆弱なのです。そのため、先月、銀は安全資産である金よりも40%も変動が大きく、短期トレーダーには大きな利益をもたらしましたが、リスクも大きくなっていたのです。