金市場ニュース

ニュースレター(2021年1月29日)レディットユーザーのショートスクィーズと見られる動きで銀価格が3週ぶりの高さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1865ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.7%高と2週連続の上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり27.44ドルと3週間ぶりの高さで、前週のLBMA価格(午後12時)から8.4%高で、2週連続の上昇となっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1112ドルと前週LBMA価格から1.8%高で5週連続の上昇となっています。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週顕著な動きを見せたのは銀となりました。これは、今週米国株式市場で起きていたレディットのユーザーによるショートスクィーズが昨日行われた模様で、コメックスの銀オプションの取引量が急増し、価格が3週ぶりの高さへ上げ、本日もその基調を受け継いで上昇をしています。

年初からの銀価格の動き

それに対し、金の上げ幅はドルと米10年物金利の動きに反応する形で限定的となっています。なお、プラチナは工業用途やグリーンエネルギー用途の期待からも堅調に推移しています。

日々の金相場の動きと背景について

週明け月曜日金相場はロンドン昼過ぎにドル安金利安でトロイオンスあたり1867ドルまで一時上昇したものの、その後ドルが強含んだことからもほぼその上げ幅を戻して前週末終値の1854ドルで終えていました。

同日も価格幅はトロイオンスあたり20ドルで、価格を動かす決め手がない中で、先にあるようにドルと長期金利に反応するような形で推移することとなりました。

翌火曜日金相場は、欧米株価が上昇しドルが弱含む中で、トロイオンスあたり1849ドルと2営業日連続で多少ながら下げて終えていました。

この金の動きは、コロナ感染者数拡大への懸念がある中でもワクチン接種が広がり、また主要国の経済対策による経済回復への期待もあり、強気と弱気の双方に引っ張られていること、また昨年大きく価格が上昇したことへの値固め、そして翌日はFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見もあることから動きが抑えられていました。

水曜日は、株価が下げてドルが強含む中で、金相場はトロイオンスあたり1831ドルと1週間ぶりの低さへ一時1%ほど下げるなど、現金化の動きが出ていました。

この背景は、EUとアストラゼネカがワクチン供給の遅れでもめており、英国は本同日ロックダウンを2月半ばから3月初めまで延長し、ECB関係者が金利引き下げの可能性を市場が低く見ていると述べたことも伝えられユーロが弱含み、すでに株価の下げで上昇していたドルをさらに強含ませることとなりました。

そこで、欧州株価指数は5週ぶりの下げ幅、米株価指数もS&Pは3週間ぶりの下げ幅を見せて、恐怖指数と呼ばれているVIX指数も同日30へと上昇していました。なお、この株価の下げは、SNSサイトのレディットのユーザーによる、ゲームストップ等の株価へのショートスクィーズで株価のボラティリティが高まっていたことが背景とも分析されていました。

なお、同日FOMCの金融政策発表が行われ、予想通り金利と資産購入プログラムはともに現状を維持し、パウエル議長の記者会見もテーパリング(金融引き締め)を議論する時期ではないと全般ハト派的なものとなっていました。

木曜日金相場は、株価が全般上昇し、ダウ工業株30種平均が6営業日ぶりに反発して始まる中でドルが下げ、一時トロイオンスあたり1863ドルと1.4%上昇していましたが、その後上げ幅を失って1840ドルで終えていました。

この動きは、米新規失業保険申請件数が予想の87.5万件を下回る84.7万件で、米GDPが前期比年率4.0%と予想どおりであったことが発表されたことに株価やドルが反応したことが要因となり、また前日のFOMC及びパウエルFRB議長の記者会見のハト派的内容も先の動きをサポートしていました。

しかし、今週レディットのユーザーがゲームストップ等の株のショートスクィーズをすることで上昇させてことでヘッジファンドが大きな損失を出したこと、それによる他の株の売却、そしてレディットユーザーが多く利用していたネット証券のロビンフットが急騰銘柄の取引制限をしたことなどで市場の懸念の広がりが、国債購入を進めて金利が上昇することで金の頭を抑えた模様です。

この間銀相場は、3週間ぶりの高さのトロイオンスあたり26.96ドルまで一時上昇していました。この背景として、一部メディアはレディット を通じて動いている個人投資家が背景とも伝えていましたが、実際に銀先物・オプションの取引高は昨年8月の7年ぶりの高値を付けた際以来へと大幅に増加していました。

本日金相場は一時トロイオンスあたり1875ドルと年明け8日以来の高さを付けた後に1850ドルまで下げて推移しています。

この上昇の背景は、長期金利とドルが下げていたことからでしたが、その後米株価が反落で始まり、長期金利とドルが上昇を初めたことで再び押し下げられることとなりました。

株価の下げは前日取引制限を入れたネット証券のロビンフットが取引制限を緩和すると発表したことで、再びボラティリティが高まることへの警戒感からと伝えられています。

そこで、米株価指数が10月以来の一週間の下げ幅を付ける方向で推移しています。

リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • 今週ワールド・ゴールド・カウンシルが発表した最新の2020年の金需給のレポートで、昨年の金需要が世界金融危機直後の2009年以来の低さの4000トン割れとなっていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日19日までの一週間に、貴金属価格が狭い範囲で推移する中で、全ての貴金属でネットロングポジションが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、0.3%減の326.6トンと2週連続で下げて、ワクチンニュースで1800ドルを割っていた11月24日以来の低さへ下げていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.4%減の6,453トンと2週連続で下げて10週ぶりの低さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比6.4%減の17トンと6週間連続で減少し、11月24日の週以来の低さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.6%減で10トンと2週連続の下げで3週ぶりの低さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で8.5トン(0.7%)減で1165トンと3週連続の下げの傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で0.88トン(0.17%)減で528トンと、週間の減少傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週211トン(1.2%)減で17,652トンでと前週6ヶ月ぶりの増加率を見せた後に週間の減少傾向であること。

  • 金銀比価は、今週73台前後を推移した後に本日は68と4年ぶりの低さ(銀の割安解消)となっていること。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格は今週ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)となり、週平均は4.46ドルと先週の一年ぶりの高さから多少下げているものの、春節前の中国の需要の増加が見られること。

  • コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、昨日銀がレディットを利用した投資家ののショートスクィーズで急増していたこと。しかし、金は多少減少し、プラチナは多少増加と変化はあまりなかったこと。週間では、金とプラチナはそれぞれ7%と10%減少し、銀は38%増加していること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は米雇用統計が金曜日に発表され、その先行指標と見られている水曜日のADP雇用者数、また本日も市場を動かした木曜日の新規失業保険申請件数等が重要指標となります。そして木曜日にはイングランド銀行の金融政策も発表され市場は注目することとなります。

また、来週も新型コロナウィルスの感染拡大、移動制限、ワクチン関連ニュースは重要となります。そして、引き続きバイデン大統領の追加経済対策関連ニュースも市場を動かす可能性があります。

その他主要経済指標の詳細は主要経済指標(2021年2月1日~5日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

木曜日の銀相場を解説している米主要経済サイトのMarketWatchの記事「銀がレディットのショートスクィーズを行うの投稿で上昇」で、弊社のリサーチディレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

ここでは、銀価格が3週間ぶりの高さへ上昇したことに触れ、レディットのユーザーが、銀のショートスクイズを起こすことを提案した後であったと伝えています。

エィドリアンは、「多くの資金が一定の派生商品に集まることで価格を急騰させることができても、レディットのユーザーの注意を引き続けて、木曜日の銀の上げ幅を保つことは難しいでしょう。」と述べ、「株価の140%高に対し、在庫が日々の先物取引量の3倍に過ぎない銀へのショートスクィーズは次元が違います。」と続けています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週も英国のニュースは新型コロナウィルス関連ニュースが日々トップニュースとなっていますが、本日はノヴァヴァックスとジョンソン・ジョンソンの新たなワクチンのニュース等明るいニュースも入ってきています。

そのような中、今週EUが域内で製造されたワクチンの輸出規制を発表しており、ワクチン争奪戦に関しても伝えられています。

このきっかけとなったのは、英製薬大手アストラゼネカの3月末までのEUへのワクチン供給量が、域内で製造されているワクチンに問題があったことから、予定を大きく下回る見通しとなったことからとのこと。

本日は英国、米国、カナダ、オーストラリア等のワクチン接種が進んでいる国への域内で製造されたワクチンの輸出は、明日からEUの承認が必要になると伝えられています。

英国はアストラゼネカのワクチン製造拠点があり、この供給は問題なく行われるとのことですが、ファイザー・ビオンテックのワクチンの製造はEU域内であるようです。

すでに英国は昨日までの段階で人口の11.4%へのワクチン接種を終えて、先進国の中ではイスラエルに次ぐ接種率となっていますが、EUは2.3%に過ぎないことからも、ワクチン供給の遅れへの危機感は高いのでしょう。

新型コロナウィルスから自国民を守るためには、他の国の人々が同様にワクチンの接種がされなければならないことも事実です。

ワクチンナショナリズムが広がることなく、先進国や後進国に関わらず。世界の国々が協力してワクチン接種を最も効率よく最速で進めることができることを祈るばかりです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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